ミスティカの街
カサエラの街を出発した私達は道なりに絨毯を飛ばして行く。道中出会う飛行タイプな魔物はサテラの闇の雫で吹き飛ばして突き進む。特に大きな出来事も無く大きな街を転々としながら3日かけて獣王が住むと言うアクラムの街、別名ビーストキングダムに到着した。ムニが言うに、街の名前であるアクラムは初代獣王の名前なんだとか。
絨毯をムニに担いで貰い、街門を通ろうとして、獣人の兵士5人に止められる。うん?なんかかなり警戒されてる?
「そこに居るのは妖鬼族だろう?通すわけにはいかない」
『何でだ?あたし何もしてないぞ?』
「ミスティカとは戦時中だ。何なら捕まえたい所だがここで暴れられても困る。だから帰れ」
「ワタクシの魔法で押し通る?」
「いえ、やめときましょう。別にこの街に特に用事がある訳では無いですし、次の街まで行きましょう」
『なんかすまんな』
兵士達に睨まれながら門から離れて絨毯で空を飛ぶ。日が暮れるまでには次の街にたどり着くと思うけど…
「よく見るとお城が半壊してるわね?」
『ホントだ』
遠くに見えるお城の右半分が強烈な爆発か何かで吹き飛ばされた感じになっている。何があったんだろう?
そんなアクラムの街も程なくして見えなくなる。地上を通る道に沿って更に北へ北へ…
★
更に2日かけて見えてきたミスティカの街。街壁の大きさから言って中々大きな街だ。
街門の近くに降り立ち、絨毯をムニの異空間に片付けてもらって門に向かう。ある程度近づくと、門の兵士さんがこちらにやってきた。
「そこで止まってください。先ずは身分を証明出来るものを」
丁寧な口調で話しかけてくる門兵さんに私とムニは探索者カードを、サテラは幻術で探索者カードに似せた葉っぱを兵士さんに見せた。
「はい、確かに。お返ししますね…そちらのムニさんは妖鬼族でいらっしゃいますよね?」
『そうだな』
「ムニ…聞いた事あるような…?」
ムニを見て首を傾げている兵士さん。
『あたしは大分前にこの街から武者修行の旅に出ていたのだ。顔を知らなくてもおかしくないぞ』
「あ、そうなんですか。じゃあ帰郷してきたという感じでしょうか?」
『そんな感じだな』
「そうですか、お帰りなさいませ。それではお通り下さい」
兵士さんが道をあけてくれたので3人で門をくぐる。割とチェックは緩いんだな。
そのまま街の中央通りを歩いていく。なんか今まで寄ってきた街と違ってすごく発展してる…道の両脇には街路樹が植えられてて、道は広くて石畳で綺麗に舗装されている。歩道と馬車道に分かれていて、歩道では小綺麗な服を来た家族が和やかな雰囲気で横を通り過ぎていった。
キョットーの街並みよりも綺麗かも。
そして、少し歩くだけでも様々な人種の人が目に入る。鬼っぽい人、蜥蜴の見た目な人、悪魔の様なツノが生えてる人、カエルっぽい人や巨人ってぐらい身体の大きい人、エルフやドワーフも居る。獣人はあまり見かけないな?
カサエラの街にも色々な人が居たけど、ここは更に異色だ。
『凄く変わってる…あたしがいた頃とは別の街に見える』
「ちゃんと衛生管理もしっかりしてるみたいだわ。良い街ね」
歩いてるとチラチラ目に入る、騎士っぽい正装?をした人達。一見してかなり強そう。コレは期待出来るかも知れないな。
「先ずは探索者協会に行ってみますか?」
「そうね」
近くを歩いてた通行人を呼び止めて探索者協会の場所を聞いてそこに向かう。
暫く歩くと見えてきた中々大きな建物。アレが協会っぽいな。
建物に入ると酒場の様な…というか殆ど酒場なレイアウト。受付がバーのカウンターみたいになってて、そこに山羊のツノが生えた悪魔系の綺麗な女性が居て暇そうにグラスを磨いている。
探索者協会…だよね?入り口の看板は協会のマークあったから間違って無いと思うけど。
とりあえずはその受付嬢らしき人の所へ行って話しかけてみようか。
「すみません」
「はいはーい…初めて見る顔ね?探索者協会ミスティカ支部へようこそ〜」
「あ、どうも」
何か軽いノリだな。まぁ別に良いんだけど。
「あれ?後ろの子、妖鬼族…ムニじゃない?」
『うん?あー、見た事ある…ミスティ?』
「わー!超久しぶり!えーと…250年くらい振りかな?なのにムニ、全然見た目変わってないね?」
『色々あってな?ミスティはまだ小さかったけど、大人になったな。見違えたぞ?ガイは元気か?』
「お兄ちゃんは騎士やってるよ。結構出世してる。ナンバー2とか言ってた」
『ほー』
ムニと受付嬢もといミスティさんが和気藹々な感じで話し始めた。流石地元なだけあって知り合いもいる様だ。…250年って事はこの人少なくともそれぐらいの年齢って事か…全然若い。
この世界に来たばかりの時は師匠の年齢聞いてびっくりしたけど、他にも長寿な種族は結構居るんだなぁ。
「で、ムニ達は何の用事なの?」
『魔王に会いに行きたいんだけどな?強い戦士か僧侶が居ないか探しにきたんだ』
「魔王?戦力探してるって事は喧嘩売りに行くの?いやー、幾らなんでも無理じゃない?この協会で今一番強い子だって魔王と戦うには実力が全然足りないよ…ミズキ君がいれば紹介したんだけどね」
『ミズキとは?』
「ついこの間までこの街…というか城に騎士として滞在してた男の子なんだけど、なんか自分の世界に帰る方法を探すためとかで旅に出たのよ」
「ミズキ…」
その名前、何か聞いたことある…でも何か霞が掛かったかの様に思い出せない。
『まぁ居ない奴の事を話しても仕方ない。ミスティ、あたしの父や姉は元気か?』
「ガドー様は150年ぐらい前に行方不明になった…多分神の園へ行ったんだと思う。シャニ様はガドー様の代わりにこの国の女王様やってるよ」
『そうか、姉が…会いに行ってみるか』
…うん?お姉ちゃんが女王って、もしかしてムニってこの国の王妹殿下って事?
「私がアポ取りしてこようか?それとも直接行く?」
『知ってる奴もそんなに居ないだろうし頼もうか』
「うん、手続きしておくね。今日泊まる宿はもう決めてるの?」
『まだだな』
「なら宿は…」
ミスティさんに宿を教えてもらって、そこで待機する事になった。事情を話すと出来るだけ急いでくれるとの事。そんなに待たせない筈、なんなら明日には謁見できるかもって言ってた。
ムニのお姉ちゃんか。どんな人なんだろうか?




