ハイリア軍
翌朝、いつもの魔女ルックで身を固め、ヒムロとサクヤちゃん、ムニと一緒にキョットーの北門へ向けて歩く。嵩張って重い6人乗りの空飛ぶ絨毯はムニに担いで貰っている。
「おーい!マコちゃんこっちこっち!」
北門に近づくとタカヒロさんがこっちに手を振っているのが見えた。隣にはユズナさんが立っている。
「タカヒロさん早いですね」
「まぁね」
2人を連れて門を抜ける為の手続きを済ませる。
「早速行きましょう」
4人と2匹で連れ立って北門を抜けた街道に出た所で、ムニに持って貰ってた絨毯を広げる。
「ふうん、これが空飛ぶ絨毯か」
「こんなのが飛ぶの?私、ちょっと怖いんだけど」
「割と安定してますよ。馬車と違ってあまり揺れないし、絨毯だからクッション性もあってお尻が痛くなりにくいです」
「へぇ…なんで流行らないのかな?」
「作るのに魔糸を大量に使うのと、魔術紋様を縫うのにかなりの知識が必要だからですね。作成時間も掛かりますので大量生産にも向かないですし、コストが高いんですよ」
「成程ね〜」
全員が絨毯に座るのを確認、ヒムロに絨毯を飛ばして貰う。
「これは良いね!箒よりは遅いけど」
「私はこのぐらいで充分…地に足がついてないのは落ち着かないよ」
私達の乗る絨毯をハイリアに向けて飛ばす。夜は近場の街で宿を取るとして、予定としては約5日の行程だ。
所で、あと5日程でハイリアの軍勢がキョットーを襲うという話をクエルがしていた件については昨日のうちに王様宛に手紙を送っておいた。読んでくれればなんらかの対処をしてくれる筈。
もしかしたらハイリアに向かう途中で敵軍とかちあうかも知れないけど、その時は空から魔力の続く限り魔術でぶっ飛ばしちゃおうと思ってる。
1日目は何事もなく進み、2日目。
絨毯から見下ろすと、大勢の兵士の格好をした人が隊列を組んで街道を南東…キョットー方面に進軍しているのに出会した。
「あれはハイリア軍だね。ほら、あの旗にハイリアの紋章がある。…兵数は2000ぐらい?」
タカヒロさんが教えてくれる。ハイリア軍か。今のうちにダメージを与えておいた方が良いよね?
「マコちゃんどうする?」
「魔術で吹っ飛ばしましょうか」
「じゃあ守りは任せてよ」
「お願いします…●、メテオストライク!」
ゴゴゴ…ズン!ゴロゴロゴロゴロ…
私の魔術により、上空から高速で落ちて来る大岩が先頭集団に着弾後、街道ごと兵士たちを吹き飛ばし、轢き潰しながら突き進んでいく。
「おお〜、今ので200はいったんじゃない?っと、こっちに気づいたみたいだね。〜〜〜、マルチプルシールド」
沢山の矢や魔術が私たちの乗ってる絨毯目掛けて飛んでくるのを、タカヒロさんの複層盾の魔術が遮る。割と生きた心地がしないので、アトモスの魔法を掛けて防御力を強化する。
「よし、マコちゃんもう一発行ってみよう!」
「●、メテオストライク!」
ゴゴゴ…と、高空から高速で飛来する岩が再び敵を蹂躙するかと思いきや、その手前に巨大な障壁が発生して岩を受け止めた。衝撃で岩が砕け、そのまま障壁に沿って地面に転がっていく。
「う、止められた?」「…凄い強度の障壁だね」
驚いていると、ハイリア兵の隊列の中央辺りから巨大な黒い炎が渦巻きながらこちらに飛んできた。アレは障壁だけじゃ危なそうだ。
「アクア・ストリーム!」
聖水と化した水流が黒炎とぶつかる。暫く拮抗した後、私のアクアが勝り黒炎を霧散させる。そのまま突き抜けてハイリア兵たちを押し流していく。
「なんだこの水は!」
叫びながらこっちの絨毯と同じ高度に飛び出してきた人影。水を滴らせ、煙を身体から発しながらこちらに近づいて来る。
見た目は普通の兵士だ。だけど背中には黒い翼を生やし、眼光は紅い。恐らく悪魔憑きなのだろう。
「貴様らはエスペリアの兵か?」
「兵士じゃ無いけど…」
「一般人?だがどちらにせよ我らの軍に危害を加えたのは許し難い。死を持って償え!万雷!」
バリバリバリッッ!!周囲に迸る稲妻が私のアトモスとタカヒロさんの複層盾の守りを削るものの、突き抜ける事はなく、稲妻は霧散した。
「私の万雷が効かないだと!?」
「フレア」
兵士の周りを球状に囲う青白い炎を発生させ、中心…兵士に向かって圧縮、収束させる。推定1万度を超える、聖なる炎に焼かれて灰も残らず焼失させる。
…ふぅ、この使い方、強力だけどかなり魔力を消費するみたいだな?それにアキュラスみたいな転移が出来る悪魔には無駄撃ちになりそう…要改善だ。
コレでここに居る悪魔憑きは倒したし、後はこの眼下のハイリア軍を殲滅するだけだ。消費の少ないメテオストライクを連発して蹂躙していく。ハイリア軍も弓矢や魔術で反撃して来るもののコチラの障壁に阻まれ届かない。次第に無理だと悟ったのか逃げ始めるハイリアの兵士たち。
「マコちゃん1人いれば戦争をひっくり返せるね」
「出来ればこんな事やりたくないですけどね」
今更人を殺める事に大した抵抗は無いものの、流石になんとも思わない訳じゃ無いし。
メテオストライクのお陰でボコボコになった地形とバラバラに散らばって逃げて行くハイリアの兵士たちを尻目に、ハイリアに向けて絨毯を飛ばす。
★
キョットーを出発して2日目の夕方、今夜の宿を取るためにキョットーの北西、エスペリアのチョーヤの街に降り立った…のだけど。
「なんだ貴様らは!」
「旅の者か?いずれにせよ拘束させて貰う」
「抵抗するなよ?痛い目見たくないならな」
ハイリアの兵士達と思わしき人達に囲まれた…どうもこのチョーヤの街はハイリア軍に占拠されている様子。まぁそうだよね、昼間に潰した軍の通り道にある街だし。あー、疲れたから早くお風呂に入って寝たかったのになぁ。
『断る!』こちらを捕まえようとした兵士の1人をムニが殴り飛ばす。数メートル吹っ飛んで転がっていく仲間を見て、周りの兵士達が殺気立つ。
「なっ!?捕らえろ!殺しても構わん!」
剣や槍を構える兵士達。雄叫びを上げながら突っ込んでくるのを、タカヒロさんは石砲の魔術で、ユズナさんはナイフで、ムニは刀で倒していく。私は絨毯を巻き取って担いでいるので不参加だ。ヒムロとサクヤちゃんは私を守る様に横で周囲を警戒している。
「こいつら強いぞ!?サテラ様を呼べ!」
「応!」
兵士の1人が街の奥へと駆け出して行く。サテラ様?ここのボスかな?
暫く周りの兵士を倒しながら街門を通り抜けて街中を進んで行くと、場違いな豪華なドレスを着た女性が兵士達を連れて私達の行手を阻むように立ち塞がった。
「サテラ様、コイツ等です!」
「ふぅん?」
サテラ様と呼ばれた女性が私達に視線を這わせる。
「そっちの小さな女の子以外は皆良い魔力をしてるわね。特にそこの男の子は素晴らしい。…フフフ、さぁ、”ワタクシに服従しなさい”!」
サテラの周りに闇色の魔力が渦巻き、それが私を除く3人に纒わりつこうとした。が、
「あら?ワタクシの力が届かない?何か精神防御系の防具を付けているのかしら?」
アキュラスのカオスティックゾーンに対抗する為に、時間が無くて簡易的な物だけど私の帽子を参考にした紋様を縫ったリストバンドを3人には付けて貰っている。恐らくそのお陰で今の攻撃を無効化出来たのだろう。
「まぁいいわ。じゃあ実力行使しか御座いませんわね…ワタクシ、こう見えて強いんですのよ?」




