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舞踏会

 日が沈み、夜の帷が降りる時刻。松明や魔石灯の光がキラキラと反射する、煌びやかな飾り付けがされたお城の広いホール。


 そこではクラシック感のあるお貴族様なドレスやマーメイドラインのドレス、燕尾服やゴシック調のパンクなスーツ等の様々な衣装等を着た人達が歓談している。


 今はまだ舞踏会は始まっていない。ホールには楽団によって緩やかな音楽が流れている。


 今日はコマちゃんと一緒に来た。コマちゃんは黒いヴェールに黒の生地のドレス。膝下まで伸びるスカート部分にはスリットが入る、子供ながらにセクシーな衣装だ。金髪でスラッとしてるコマちゃんにとても似合っている。尻尾は腰の後ろの穴から出していてゆらゆらと揺れている。可愛い。


 私はAラインの膝丈ドレス。色はコマちゃんと合わせた黒で、生地にレースが重なっていてちょっぴり大人な雰囲気の衣装。髪はアップに纏めて、首元にはチョーカー、手にはコスモの入ったバッグを下げている。

 ダンスの特訓の時に履いてたとはいえ、ヒールが履き慣れないので何とも足元に違和感というか何というか。


 そんな私達は隅っこの方でホール内の観察。


「…あのドレス凄い。見てるだけで面白い」

「だねぇ」

「…お姉ちゃん、料理も色んなのがあるね」

「自由に食べて良いらしいよ」

「…お城の料理、美味しいかな?楽しみ」

「多分美味しいんじゃ無いかな?始まったら早速食べてみようか」


 それから少しして、司会の人が始まりの挨拶

をした。舞踏会の始まりだ。


 早速踊り出す人達や料理を食べる人達、歓談してる人達など、その行動は様々。それを見て、割と自由で良いんだなと、コマちゃんと近くの料理が乗ったテーブルへ。


 そんな花より団子、色気より食い気な私達に寄ってくる何処ぞの貴族令息達。


「良い食べっぷりだね、俺、料理を美味しそうに食べる女性って素敵だなと思うんだ。それを食べたら食後の運動がてら俺とダンスを踊らないかい?」

「マコさんって確か武闘会で優勝した方ですよね?凄いですね!今度私の家に来て、魔術の稽古をつけて下さいませんか?」

「その猫の様な目、艶やかな黒い髪、スラっとした身体、何処をとっても美しい!是非私と結婚を前提としたお付き合いを…」

「コマちゃんって言うんだ?可愛いね。ちょっとおじさんと2人であっちのバルコニーに星を見に行かないかな?」


 沢山の男性が話しかけてくる。その度に食事の手を止めて対応しなきゃ行けないので大変だ。中にはコマちゃんを連れて行こうとする人もいて目が離せない。コマちゃんは大体無視してるけど。誰に似たんだか…


「…次はあっちのテーブル」

「あ、コマちゃん待って」


 私をここに置いてかないで!


 次に選んだテーブルには伊勢エビっぽい物からローストビーフらしき物などが並び、コマちゃんが大喜びで皿に盛り付けている。あんまり食べるとまたくるしくなるよ?


「君との婚約を破棄する!」

「私の何処が至らなかったのですか?」

「私は真実の愛と言うものを見つけたのだ!」

「そんな…」


 なんか修羅場ってる空間の近くで、ローストビーフを食しながら見物。


 話を聞いてると、そこの女性が他の女性に意地悪をして、その女性を男性が庇ってる内に愛が芽生えたんだとかそんな話。ふーんって感じ。


「ほう、今回の婚約破棄は一周回って懐かしい」

「あんなに涙目になって…あんな可哀想な令嬢久しぶりに見ましたとも」

「後でどんな気持ちか根掘り葉掘り聞き出したい衝動に駆られますな」


 …何か周りの人の反応おかしくない?


 そんな寸劇を観ながらこのテーブルの料理を満足するまで食べて、そこそこお腹が満たされたので、コマちゃんとダンスを踊りにホールの中央に行く。

 背丈も違うし、慣れてないしでチグハグな踊りになったけど割と楽しかったので良き良き。


「国王陛下のご来場です!」


 司会の人が大きな声で王様が来た事を知らせると、ダンスや歓談が止まり、音楽が荘厳な雰囲気の曲に変わる。ホールの奥まで敷かれたレッドカーペット上にいた人が横に逸れた。


 ホール入り口から入ってくる王様に、ホールにいる全ての人が頭を垂れる。


 王様はゆっくりと奥へ歩いて行き、豪華な椅子に座って王様が喋り始めた。


「先ずは面を上げよ。皆のもの、私が主催するこの舞踏会へ良く来てくれた。固い挨拶など全部抜きにしよう。ゆるりと続きを楽しんでくれ」


 王様のそれでいいの?ってぐらい超短いお言葉の後、またダンス向きの曲が流れ始める。


 その曲に合わせてコマちゃんと暫く踊った後、給仕さんが持ってきてくれたドリンクを飲みながら休憩していると、また男の人が集まって来てダンスに誘ってくる。それを愛想笑いで躱しながらコマちゃんが連れて行かれない様に注意する。


 そんなこんなで時間が過ぎていき、片っ端から断る私に声を掛けてくる人が少なくなってきた所で、何やら太ってて禿げてて脂ぎってる狸って感じのおじさんがお供を連れて私の方にやって来た。


「おぉ!そこにいらっしゃるのは武闘会で優勝したマコ殿ではないか!間近でみるとなんと美しい」

「は、はぁ。どうも」


 何か意気揚々と話しかけて来た。


「私はこのエスペリアの伯爵である。マコ殿、其方の活躍はこの目でしかと見させて貰った。そこで我が管理する私設騎士団に入る栄誉を与えようではないか」

「は?」

「何、遠慮は要らん。我がサボンベルク私設騎士団は名だたる猛者達が集まる、国内でも有数の騎士団だ。物怖じする気持ちも分からんではないが」


 何?強引な勧誘?でも私はその私設団とやらに全く興味が無い。


「…いえ、結構「なんと!?この栄達を極める我が騎士団への勧誘を、よもや断るつもりでは?いかんな、まだ若いのもあり世の条理という物が分かってない。いや、我が私設団の事を知らないだけかも知れんな。いいか?在籍している者達はこのエスペリアの十指に入ると言われる者が数人、…」


 こっちの言葉に被せて来た。そこから暫く説法を説くかの様に語り出す狸。


「…と、言うわけで理解したかな?マコ殿はまだ若いのもあるし、私設団の中では末席になるが。何、マコ殿の実力であればすぐに上に上がる事が出来る。何も心配せず我が私設団に入ると良いぞ」

「あ、いえ、結構です」


 すげなく断ると伯爵様の顔が真っ赤になった。ってか10分ぐらい語られて正直ゲンナリなんだけど。コマちゃんもさっきからずっとポカーンとした顔。


「…そうか、断るとは…ちっ!お前ら行くぞ」


 お供の人を連れて遠くのテーブルへ行く伯爵様。しかしまだ遠目からチラチラ見て来ている。まだ諦めてない?


 まぁ良いや、無視無視。


 落ち着いた所で1人の女の子が近づいて来た。金髪に碧眼で私と同い年ぐらいの、この世界では特別珍しくない見た目の子だ。


「ねぇねぇお姉さん」

「はい?何でしょう?」

「もしかして武闘会で優勝したマコ選手じゃないですか?」

「あ、はい、そうです」

「やっぱり!貴女の試合、予選から全部観てて!凄かったです!」

「お褒め頂き恐縮です」

「握手してくださいませんか?」

「良いですよ」


 と、握手しようと右手を出した瞬間、バッと身を翻して私の喉に向けて何処からか取り出したナイフを振り抜く女の子!


 キィィィン!


 その一振りは私のチョーカーに仕込まれた結界に弾かれた。キャァァァ!と、周りにいた人達から悲鳴が上がる。


「結界!?想定外!」

「なっ…!?」

「お姉ちゃん!」


 近くにいたコマちゃんが闘気法で強化された脚でその女の子の手を蹴り上げ、ナイフが天井に刺さった。

 その間に急いでコスモを取り出して身構える。


「くっ!鳥の4!」

「〜〜、フレイムピラー!」


 襲撃してきた女の子が何かを叫んで下がると同時にどこからか魔術を唱える声が聞こえ、ゴォォッ!と、私が立っている場所を中心に広範囲の柱状な炎が噴き出す。それを近くにいたコマちゃんも一緒に咄嗟に『アトモス』の魔法で遮った。危なぁ!


 少しして魔術の炎は消えたので、直ぐに見回したけどさっきの女の子は居なくなっていた。バルコニーの方へ走っていく警備兵達を見るに向こうに逃げていったのだろう。


 コスモで『索敵』して、この会場から高速で遠ざかっていく人をマーキング…しようと思ったら3人居て、その内の一人には既にマーキングがされていた。ふーん…取り敢えず3人全員にマーキングをしておく。元々マーキングされていた人には”タカヒロ”と、タグを付けた。


「お姉ちゃん大丈夫?」

「うん、何とも無いよ」


 傷一つついてないし、火傷もしてないし服も焦げていない。


 しかしまさかあんな人が紛れ込んでるとは思わなかった。備えあれば憂いなしと、チョーカーに結界仕込んでおいて良かった〜。また首切られる所だった…


 騒つく会場。遠巻きに人々がコチラを見ている。近づいてくる様子はない。


「何事だ!」


 騎士の人達がコチラにやって来た。


「何があったのだ?」

「女の子にナイフで襲われました」

「何!?怪我はしていないか?」

「はい」

「ちょっと陛下の所へ来てもらうがいいか?」

「分かりました」


 騎士の人に連れられて王様の御前へ。


「おぉ、マコではないか。さっき襲われたと聞いたが怪我は無いか?」

「はい、結界術式を組んだこのチョーカーをしていましたので無傷です」

「そうか…私の主催した会で危ない目にあわせて済まなかった。しかし無事で良かった。皆も不安であろうから少し早いが舞踏会はこれで閉会としよう」


 なんだか私が原因で舞踏会が中断されちゃった感があって申し訳ない。私が悪いわけじゃ無いけど。


「マコよ、夜道襲われぬとも限らぬ。護衛を付けた城の馬車で送ろう」

「お心遣い感謝致します」


 折角なので送ってもらう事に。会場を出て、用意して貰った馬車にコマちゃんと2人で乗って家に帰る。帰る途中に襲われるとか言う事は無く、無事家に辿り着いた。


 自室に戻って戦闘服(いつもの魔女ルック)に着替えて、コスモを開く。


 さぁて、私だけじゃなくコマちゃんまで巻き込む魔術を使ったのは許せない。やり返されても文句は言えないよね!

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