武闘会 予選、1回戦、2回戦
そしてあっという間に月日は過ぎて、今日は武闘会の予選の日。闘技場の受付に朝早く到着し、受付の順番の列に並ぶ。コマちゃんも出たいと言ってたけど武闘会に出場出来るのは12歳かららしく、出場出来ない事を残念がっていた。
今日は来てないけど、明日から観戦にくる予定のコマちゃん(とムニ)に良い所見せようと意気込んでると私の順番がきた。
「はい、貴女は第16予選ね」
受付のおばちゃんに番号札を渡される。前回は2番だったのに変わってる。まぁ来た時間も微妙に違うし当然か。
闘技場内を歩いて行き、私が参加する第16予選の会場に着いた。そこそこ広い四角い舞台、その会場には沢山の人が集まってる。
他の選手を見てみたけど、以前に私が当たった人はいないみたい。
暫くして参加者が集まったのか正装をした男の人が皆に声をかける。
「それでは第16会場の予選を始めたいと思います。出場者は番号札を私に見せた後、舞台に上がってください」
皆一列に並んで審判に番号札を見せて舞台に上がる。
「皆様舞台に上がりましたね?では、これより予選を始めたいと思います。場外になった者、降参した者、戦闘不能とみなされる者は負けとさせていただきます。それでは…」
皆がそれぞれ構えをとる。私はど真ん中に陣取る。
「始め!」
「フレア・サークル!」
私は速攻で『フレア』の魔法を発動させる。今回は私を中心とした周囲に、地面から立ち昇る高さ3メートル程の炎を発生させ、それを少しずつ外に向けて広げて行く。
「なんだこの炎は!」「広がって来てるぞ!?」「ちょっと、誰か消しなさいよ!」
「〜〜、ウォーターパレット!」「〜〜〜、アクエリアス!」
「…ダメだ、全然消えないぞ!」
「逃げろ!」「くそぉぉ!」「キャァァ!」
他の選手たちが全員舞台の外へ押し出されて行く。最終的に私一人が焦げた舞台の上に残った。試合時間20秒程の圧勝だ。
「お嬢さん、貴女のお名前は?」
「マコです」
「第16予選を勝ち抜いたのはマコ!勝者に拍手を!」
圧倒的で派手な炎の魔法を観たからか、結構な歓声が私に向けられる。小さく手を振りながら会場を後にする。
そして受付で審判の人に渡された16番のプレートを見せ、名前を伝えてその場を後にした。
帰りぎわにお弁当とお魚を買って、家に辿り着く。
「…おかえりなさい」『おかえり〜!』
「ただいま!お弁当買って来たから一緒に食べよ」
コマちゃんは照り鳥丼、ムニはシャケ弁、私は幕内弁当でヒムロとサクヤちゃんはお魚だ。
『予選はどうだった?』
「ふふん、楽勝だった」
「…さすがお姉ちゃん」
★
翌日、コマちゃんとムニと一緒に闘技場にやって来た。
『じゃああたし達は観客席で見てるからな』
「…頑張ってね」
「うん、応援宜しく」
入り口で別れて私は受付に行く。
闘技場の受付の人に16番のプレートを渡し、代わりに番号の書かれた缶バッジを受け取った。大会に出場する為に必要なバッジで、致死性の一撃を受けた時に一度だけ魔術障壁を展開するというアイテムだ。それが発動した時点で負けになる。
その缶バッジを胸に付けて、控室に入って空いている席に座る。他の人の顔触れを見ると、前回とそれ程変わっては居ない様だ。騎士様もといブロン選手や私の首を掻っ切って下さったタカヒロさん、悪魔の人…たしか名前はオズワルドだったかな?も、奥の方に座っている。決勝戦で私が負けた精霊召喚のエドガー選手も居る。
「それでは皆集まりましたので本戦第一回戦を始めます。1番と2番の選手は舞台に入場して下さい」
ブロン選手と、もう一人は知らない剣士っぽい人が入場口から出て行く。私の出番は大分後だ。
《さぁ今年もやって参りましたエスペリア武闘会!今入場しているのが本戦1試合目の選手達です!1番、プレートアーマーを着こなすブロン選手は大会出場4回目…
実況の声を聞き流しながら、目をつぶって時間が過ぎるのを待つ。
1試合目は騎士様もとい、ブロン選手が勝った。あの人結構強いからな。
2試合目は魔剣士の人と槍使いの人との対戦。そこそこ接戦だった様で10分程して魔剣士の人が勝ち上がった。
3試合目はオズワルドと魔術師らしき人が対戦。対戦時間10秒程の圧勝でオズワルドの勝利。
4試合目は剣士と剣士、知らない人同士の戦いだ。結構剣士系の人が多いのはやっぱりあのそこまで広くない予選会場の仕組みがそうさせるんだと思う。普通の魔術師は近くに近接職がいる状態で充分な力を発揮できない。
そんな殆ど剣士同士の戦いばかりだった前半と比べると、第5試合、タカヒロさんと剣士が当たり、タカヒロさんが相手を近づけない魔術の弾幕を張って圧勝した様だ。
第6試合は魔術師と斧使いの人の戦いで、コレは魔術師が斧使いを抑えて勝利したみたい。
第7試合は精霊召喚のエドガー選手と剣士の一戦だったみたいだけど、エドガー選手お得意の精霊召喚で圧倒したらしい。私が1回戦に勝つと次はエドガーさんか…
そして第8試合。
「15番と16番の選手は舞台に入場して下さい」
16番は私だ。立ち上がって入り口の方へ歩いて行く。15番の選手は腰に剣を帯びてるので多分剣士。
舞台の上に上がると歓声と共に実況が流れる。
《さあ1回戦最後の試合となりました!早速選手の紹介を致しましょう!15番のニキータ選手は大会初出場、予選をその剣一本でくぐり抜けたその腕前や如何に!?そして16番のこちらも初出場のマコ選手!可愛い魔術師さんですね。ですが予選を勝ち抜いた強者、どんな魔術を披露してくれるのでしょうか!?では、早速始めたいと思います!審判!》
ニキータ選手と握手を交わし、舞台の端に移動する。片方または両方が魔術師の場合端っこから始める決まりだ。
「では両者位置について…始め!」
「おぉぉっ!」
気合を入れてこちらに走ってくるニキータ選手。
あまり時間を掛けるつもりは無い。ニキータ選手には悪いけど速攻で決めさせて貰おう。
”大気の神よ 其の力を此処に 玉よ崩りて龍を象れ 咆哮よ彼方へ突き抜けよ 其の一撃は”
「●、ドラゴロアー!」
発動句を唱えると同時、私の頭上に龍が現れ、ニキータ選手に向かって咆哮をあげる。その咆哮が大気を震わせ、無数の風の刃を纏ってニキータ選手を地面から高く舞い上げメッタウチにする。
《コレはマコ選手のオリジナルの魔術か!?龍が現れて暴風を放ちニキータ選手を木の葉の如く吹き飛ばしたぁ!》
少しして風が止まり、ニキータ選手がズシャッと地面に落ちた。一応生きている様だけどバッジは光っている。
「そこまで!勝者マコ選手!」
《ニキータ選手のバッジが光ってます!まさに一撃!強力な風の魔術により試合を制したマコ選手に惜しみない拍手を!》
わぁぁぁっという大きな歓声を受け、満身創痍のニキータ選手と握手を交わして私は控え室に戻った。今日は2回戦までやるのでこのまま控室に待機だ。
「では一番のブロン選手、三番のエリー選手は次の試合ですので入場して下さい」
審判の人に連れられて2人が舞台へ。
《それではコレから2回戦!2回戦第一試合は一回戦で高いレベルの剣術と、そのフルプレートメイルの分厚い守りで終始戦いをリードしたブロン選手!そして、魔術を剣に乗せて戦うという珍しい技で一回戦の相手選手を翻弄したエリー選手。さぁどんな戦いが観られるのでしょうか!?注目の一戦です!》
2回戦の試合が始まった。
ブロン選手とエリー選手の戦いは接戦の末ブロン選手の勝利で終わった様だ。
次のオズワルドと剣士の戦いはオズワルドの勝利。次でオズワルドとブロン選手が当たることになる。
タカヒロさんと魔術師の試合は魔術合戦となったみたいで、最後には魔術師の魔力切れで降参。私が勝ち上がれば次はタカヒロさんとの対戦だ。
「13番のエドガー選手、16番のマコ選手は舞台に入場してください」
今日の最後の試合、エドガー選手との対戦だ。前回はエドガー選手の精霊魔術に負けたけど、今回は魔力も万全に近いからそうはいかない。
私とエドガー選手が入場すると歓声が大きくなった。舞台の中心まで行き、握手を交わす。
《さあそれでは本日最後の試合となります2回戦第4試合!魔弦の塔からの使者、精霊召喚を武器にする万魔、エドガー選手と、一回戦、強烈な風の魔術で相手を一撃で吹き飛ばしたマコ選手!コレはまた魔術合戦が観られるでしょうか!?》
魔弦の塔というのは魔術に関して高い実力を持つ人達が集まった魔術結社の事だ。エスペリアの各地に支部があるらしい。独自で色んな研究をしているんだとか。あんまり詳しくは知らないけどその研究の内容には興味がある。
「では両者位置について」
舞台の端にそれぞれスタンバイ。
「始め!」
「■■ ■、サモンスピリット・フォー」
エドガー選手の周りに魔力の渦が発生し、4匹の精霊が出現する。
《早速エドガー選手得意の精霊召喚だ!今回は4体!》
エドガー選手の精霊は厄介だ。精霊4体召喚して火力が5倍、近づく相手を自動で迎撃と隙が無い。それに対抗する為に私も切り札の一つを切るとする。
”世界に遍く精霊達よ 魔力を糧に我が声に呼応せよ 万象操る力をこの身に賜らんことを”
「●、エレメンタルフォース」
ブォン…私の身体の周りに魔力で出来た力場が発生する。
《マコ選手、何か魔術を使った様ですが…何でしょう?マコ選手の周りが歪んで見えます》
「〜〜、ファイアボール」
『『『『ファイアボール』』』』
ボボボっと、小手調べと言った感じでエドガー選手と精霊から発射される5つの火球。一発一発が速度、大きさ共に充分だ。その火球の群れが私に着弾する寸前、私は「掻き消せ」と呟きながら右手を横に薙いだ。その手の動きに合わせて5つのファイアボールが何処かへ掻き消える。
《当たるかと思われたファイアボールが爆発するでもなくマコ選手の目の前で消えた!何をしたのでしょう!?》
「〜〜〜、トルネード」
『『『『ストーンパレット』』』』
エドガー選手の追撃の魔術で発生した、竜巻に乗って高速で飛来する大量の石礫。当たれば痛いじゃ済まなそうだ。
「障壁」
と、呟くと同時に、以前ドラゴンが張ったのと同じ様な透明な障壁が私の周りに発生して、風の刃と石礫の嵐を防ぐ。
暫く私を襲った竜巻が収まった後には何事もなかった様に無傷の私。それを見て警戒を強めるエドガー選手。
《マコ選手、あの激しい竜巻の魔術の中にいて無傷です!》
「今度はこっちから…精霊達よ、球を象れ」
私か手を前に突き出して呟くと同時、周りに火、水、土、氷、風…更には光や雷、果てには闇、あらゆる属性の込められたソフトボール大の小さな球が無数に発生する。
「っ!?なんだ、その魔術は!?」
と、エドガー選手が驚き声を上げる。
「危ないのでちゃんとレジストして下さいね!…精霊よ、舞え!」
私の周りを浮いていた球が不規則な動きをしながら一斉にエドガー選手に向かって飛んでいく。
「〜〜〜、マルチプルシールド!」
『『『『シールド』』』』
多数の魔術を重ねる事で半球状の結界を展開したエドガー選手。その盾に精霊の球の群れがドドドド!っと、激しくぶつかっていく。
炎が舞い、水が弾け、石が氷が風が、エドガー選手の魔術の盾を削っていく。
この魔術はこの世界に遍く存在する精霊達に、魔力を糧にお願いを聞いて貰う精霊魔術だ。
この魔術の良いところは魔力を見た目程消費しない事。障壁を張って貰えたり、今の様に攻撃も出来たりと色々融通も効く。
暫く私の攻撃を防いだものの、絶え間なくぶつかる球に耐えられなくなったのか、パリィン!と硝子の割れるような音が響き、エドガー選手のシールドが何枚か壊れる。が、流石に分厚い多重結界を壊しきることは出来ず、先にこちらの精霊の球が尽きた。
《マコ選手が放った雨霰と降り注ぐ球を防ぎ切ったエドガー選手、すぐに魔術を唱え始めた!》
「天の竪琴が爪弾かれし時 その旋律に風精が踊り氷精は鐘を鳴らす 宴よ全てを等しく舞い散らせ 高鳴れ!ヘイルストーム!」
『アイスアロー』『ストーンパレット』『ウインドブラスト』『スパーク』
エドガー選手によって放たれた上級魔術と精霊達の魔術が重なり合い、氷、石、風の刃、そして電撃を伴う天を貫く弩級の竜巻を伴う嵐となって、その中心が舞台を深く削り舞い上げながら近づいてくる。
《す、凄まじい複合魔術!こんなの見たこと有りません!これが万魔の本気かー!?》
嵐の中心に向かって風が吹き込んでいき、身体が引っ張られる。まだ範囲に入っていないのに私の張っている障壁に石や氷の矢がぶつかり弾かれていく。流石にこれはエレメンタルフォースで直接掻き消したり直撃を障壁で防げたりするレベルじゃ無い。舞い上げられて滅多打ちにされちゃう。…というかこんなのレジストする方法が無いんだけど、どうしよう?
空を飛ぼうにもこの風の中じゃ煽られて吸い込まれそうだし…とか考えてる間にも嵐が近づいてきて吸い込まれそうになる…
うーん、正面からが無理なら。
”我と汝断ち分つ天に穿たれた虚の門よ 理を歪め此処に彼我の遼遠 繋げ”
「●、ゲート」
ブォン…私の前に人が通れる程の黒い穴が現れる。急いでその穴を潜り、出てきたのはエドガー選手の背後。つまり舞台の端から端へ移動した。
フォーチュンちゃんを構えてまだ気付いてないエドガー選手に飛び掛かる!
『ストーンキャノン』
ギュオン!来るとわかっていた石砲の魔術を闘気法で強化された身体で回避しながらエドガー選手の膝を叩き折る!
「ぐあっ!!」
足の骨を折られて痛みで魔術の維持が出来なくなったのかエドガー選手の精霊達と嵐は霧散していく。
そのままフォーチュンちゃんをエドガー選手に突きつけ、
「降参してくれますか?」
「く…あぁ、私の負けだ」
「勝者、マコ選手!」
わぁぁぁぁ!と歓声が響く。
《なんと!マコ選手、あの凄まじい嵐を操る万魔エドガー選手を下した!しかしさっきの瞬間移動は何だったのか!?これは明日の戦いにも期待です!》
立てないエドガー選手と握手をして舞台を降り、控え室に戻る。エドガー選手には治療員が駆け寄って行った。
流石に強かったな。ゲートが使えなかったらアレはどうしようもなかったかも。
さぁ、明日の準決勝はタカヒロさんか。




