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ニアミス

 しとしとしと…


 今日は雨が降っている。憂鬱だなぁ…こんな日は正直出掛けたく無いけど、魔術師協会へ出掛ける準備をする。


 髪を梳かしてサイドに纏めて、こないだ買ったロングTシャツとミニ丈のショートパンツを着て、コスモの入った鞄を肩から掛ければ…夏のお出かけコーデの完成です!

 今日は魔術師協会の上級書庫で魔術書を読み漁る予定。という事で玄関を出て傘を差す。


「…出掛けるの?」


 後ろから声がしたので振り向くとコマちゃんが玄関に立っている。


「うん、魔術師協会に行ってくるよ」

「…ついてく」

「でも私、上級書庫に用があるからほったらかしになるよ?」

「…いい。私もゆっくり本読む」

「そう?じゃあ一緒に行きましょうか」


 コマちゃんも靴を履いて出てきた。傘を差す。


『…出掛けるの?』


 後ろから声がしたので振り向くとムニが玄関に立っている。


「うん、魔術師協会にね」

『…ついてく』

「でも私、ムニは放ったらかしにするよ?」

『…いい、あたしは勝手に遊ぶから』

「そう?迷惑かけそうだから置いてく」

『えぇ!冷たい!』


 そう言い残しムニはあっさりとリビングに戻っていった。


 気を取り直してコマちゃんと2人で魔術師協会迄の道を歩いていく。


「…お姉ちゃん、私ファイアボールが出来る様になったんだよ」

「そうなの?凄いね!誰に習ったの?」

「…キースさん。今は詠唱短縮の早口言葉の練習してるんだ」

「へぇー。どんどん強くなるねコマちゃん」

「…2ヶ月後の武闘会、私も出る」

「え?大丈夫かな?年齢的に」

「…出れないの?」


 もし出場したらムニに闘気法習ってるし魔術も使えるしで、本戦進出しそうな勢い。

 でも流石に9歳の子は出場出来ないんじゃないかなあ?


「出るのは流石にやめとこう?怪我するよ?」

「…大丈夫」

「そう?まぁ後で誰かに年齢制限あるか聞いてみようか」


 そんな感じで会話をしてるうちに協会に辿り着いた。

 カランカランと鳴る入り口のドアを抜けて、受付へ。今日の受付はキースさんだ。


「おや、マコさんにコマちゃん。おはようございます」

「おはようございます」「…おはよう」

「今日はどうしました?」

「書庫で本を読みたいんです」

「分かりました、では鍵をどうぞ。…コマちゃんはコレね」


 私は4本の鍵がついた輪っかを、コマちゃんは1つの鍵を受け取り、3階の書庫に行く為階段を登る。エレベーターは流石に無い。


 少し息を切らせながら書庫前にたどり着いた私達。4つある書庫入り口の扉の前に協会員の人が座っていてこちらを見ている。


「じゃあコマちゃん、ここでお別れね」

「…ん」

「お昼になったら声掛けに行くからご飯食べに行こう」

「分かった」


 手を振って私は上級書庫に入る。日本の図書館とかとは比べられないけど、それでも結構な蔵書量。

 因みに4本鍵がある事からわかるように特級書庫もある。ただ、そこに置いてある本達は内容が難しすぎて理解するのに前知識が要る様なものばかり。今の私にはまだ早い。


 さて、ここにお目当ての本はあるかなー?





 興味の湧いた本を順番に読み倒していたらお昼になったので、初級書庫にコマちゃんを迎えに行く。部屋に入ると、お行儀よく椅子に座って本を読んでるコマちゃんが見えた。


「コマちゃん、お昼にしよう」

「…うん」


 本を片付けて書庫を出て、協会内2階にあるレストランにやって来た。

 テーブル席に向かい合って座り、メニューを広げてコマちゃんとみる。


「…お子様ランチにする」

「サイコロステーキ定食にしようかな?」


 店員さんに注文をして、持って来てくれたおしぼりで手を拭いてお冷を一口。

 店内を見回すとそこそこ人が入っていて賑わっている。


「…ねぇお姉ちゃん」

「ん?何?」

「…さっき本を読んでてふと疑問に思ったんだけど、体内の魔力って自然に回復する以外で回復する方法は無いの?」

「うーん、一部の例外を除いて無い、かな」


 錬金術でも魔力を回復するアイテムは作れない。実は出来るのかもしれないけどそれなら師匠が知らないとは思えない。

 今迄見た中で唯一、ヒューマ君にあげた腕輪だけは装備者の魔力を溜め込み、必要な時に引き出して回復する事が出来る。流石国宝級アイテムと言ったところだ。


「…どうにかして作れないかな…?」

「どうして?」

「…だって、私の魔力量じゃあんまり魔術連発出来ない。回復する方法があったらなって」

「成る程ねぇ。じゃあ私もそれを研究してみようかな?」

「…お姉ちゃんなら出来そう」

「でしょ?」


 コマちゃんの眼差しがくすぐったい。うむ、誰もなし得てない事に挑戦するってそそるよね!


 コマちゃんと話してると、料理を持った店員さんが来た。


「お待たせしました、お子様ランチとサイコロステーキ定食でお間違い無いでしょうか?」

「はい、そうです」


 店員さんが料理をテーブルに並べて、ごゆっくりどうぞと一礼して去っていった。


 コマちゃんのお子様ランチはデミソースの掛かったハンバーグにオムレツ、鳥の唐揚げ、エビフライ、ナポリタン、プリン、ケチャップライスには旗が刺さってると言うかなり豪華なラインナップの一皿だ。

 私のサイコロステーキ定食は厳選牛のサイコロステーキとソース、ポテト、人参、コーンにスープとご飯。お値段的にはお子様ランチの数倍はするのに負けた気分になる。


「…お姉ちゃんのお肉美味しそうだね」

「一切れ食べる?」

「…うん、欲しい」

「はい、どうぞ〜」

「…代わりにエビフライあげる。2本あるし」

「そう?ありがと」


 さて、実食!…おぉ、厳選牛と書いてあるだけあって柔らかくて肉汁が旨味で溢れてる。ソースも濃ゆすぎず、肉の旨みを引き立たせる。肉とソースのコントラストが絶妙で…端的に言えば美味しい!エビフライもカリッとプリッとしてる中々の一品だ。

 向かいの席ではコマちゃんがお子様ランチと格闘してる。ていうかお子様の名を冠してるのに結構なボリューム。コマちゃん食べ切れるのかな?

 という心配をよそにモキュモキュと美味しそうに食べていくコマちゃん。いい食べっぷりだ。


 20分程で食べ終わる私達。お腹一杯だ。


「…お姉ちゃん…くるしい」

「でしょうね」


 流石にコマちゃんの身体には量が多かった様だ。言ってくれれば私が食べたのに。


「ちょっと休んでから書庫に行こうか」

「…うん」


 お冷を一口飲み、周りを見回す。まだまだお昼、席は殆ど埋まってる。ふとレストランの入り口を見ると見た事がある人が入ってきて…うわぁ。

 あれは…タカヒロさんだ。


 速攻で顔を逸らして鞄からコスモを出して、


”其の眼に映るは一時の幻想 それは万華の如き彩”

「●、イリュージョン」


 魔術を唱えると、私の髪の色が金髪になり、肌色が少し白人寄りになる。コレで日本人には思われないはず。


「…お姉ちゃん?」


 更に「索敵」と唱える。するとコスモにレーダーの様な絵が出てきて、大量の光点が表示される。その中のタカヒロさんの光点に視線を合わせて「マーキング」と唱えるとタカヒロさんの光点に三角のマークがついた。


「…お姉ちゃんどうしたの?」

「ん、ちょっとね」

「…?」


 タカヒロさんのマーキングされた光点が店の奥の席に移動したのを見計らって、コマちゃんを連れて店を後にする。

 うー、もしかしたら上級書庫に来るかも知れないな。会いたく無い…今日は帰ろうか。


「コマちゃん、お姉ちゃんちょっと気分が悪くなったから家に帰ろうと思うんだけど、コマちゃんはどうする?」

「…一緒に帰る」

「そっか、ごめんね」

「…ううん。髪の色が金色だから本当に私のお姉ちゃんみたい」

「おそろだね!」


 お腹もいっぱいな事だし、寄り道せずに真っ直ぐ家に帰った。

 金髪色白のままだったので、ムニに『ウチの娘がグレた!』って言われた。

名前 リエル

年齢 16

種族 人間族

性別 女

職業 魔術師


体力 25

魔力 94


技能

 初級魔術Lv5

 中級魔術Lv3

 上級魔術Lv1

 詠唱短縮術Lv3


装備(抜粋)

 大宝玉の杖

 耐魔ローブ

 竜膜のマント

 結界の腕輪


 ※77話時点

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小粒でもピリリと辛い、山椒のようなあの人 [一言] 続き更新ありがとうございます! おかわり効果すごいです。 名前だけで、辛さが口の中に広がります。 やっとおかわりに甘みを感じていたと…
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