4度目のキョットー
ギバラを出発してハセンの街を通り過ぎ、そしてキョットーに辿り着いた。
「あそこに見える店は数年前に出来たタピオカの店よ」
「へぇ、こっちにもタピオカがあるんですね」
「あら、マコの地元にも有ったの?あの粒々、何で出来てるのかしら?」
「…なんでしょうね?」
私も何かを知らないまま疑問にも思わず口にしてたなぁ。なんだろう?卵?スマホがあればすぐにでも検索出来るのにな。
今は私とリエルさんが馬車の御者台に座ってて、キョットー育ちのリエルさんが道案内をしてくれている。
「…それで、あそこに見える大きめの建物が目的地の探索者協会よ」
リエルさんが指差した探索者協会の入り口の横に馬車を止め、コマちゃんとヒムロとサクヤちゃんをお留守番にして他のメンバーで探索者協会へ入る。
リューゼさん、リエルさん、ミケイ君、エルザちゃんはここでお別れだ。代表で私が受付のおねーさんに護衛依頼の内容を説明をして皆に依頼料を払い、それぞれお別れの挨拶をして行く。
「では、皆さんありがとうございました。お陰で無事にキョットーに辿り着くことが出来ました」
「いや、俺たち大したことしてないけどな」
「マコ、武闘会に出るんだろ?観に行くぜ」
「私も観に行くわ。ウチにも遊びに来なさい」
「無理しないで下さいねマコさん」
依頼自体は終わりだけど、ムニにはもう暫く私に付き合って欲しいとお願いした。後々に魔王と白竜を倒しに行かないといけないのでムニという戦力は手放せない。ムニは『腕が鳴るな!』と快諾してくれた。
別れの挨拶も終わり、ムニ以外の皆が三々五々に去って行く。
「じゃあ一旦馬車に戻ってこれからの事を話しましょうか」
『そうだな。コマも待ってるだろうしな』
馬車に戻り、前回泊まった旅館に向かって走らせる。程なくして旅館に着き、取り敢えず3泊程泊まる事にして、仲居さんに部屋に案内して貰い早速寛ぐ。見た感じ畳っぽい床に座布団、床に座るのを前提とした足の短めなテーブル、壁には掛け軸、壺、皿、そして庭の景色が観れる縁側と正に和風な感じ。館内には広い露天風呂もある。コレは日本人の気配がぷんぷんだ。
『中々良い部屋だな。で、これからどうするのだ?』
「うーん、先ずは住む部屋を借りようと思う」
『賃貸か。あたしとマコとコマと、ヒムロとサクヤ、馬2頭。ペット可の物件だな』
狐に鬼に猫2匹に馬が2頭。人間族カテゴリが私しかいない件について。
「まぁそうなんだけど、馬に関しては売ってしまおうかと」
『なん…だと…?私の可愛いオグリとナリタを売るだって…!?』
名前付けてる…
「でも流石に馬車使う用事が有る訳でも無いし、借りる部屋も限られてくるし、ずっと世話は出来ないよ。売った方が…」
『お金じゃ無い!愛はお金じゃ買えないんだぞ!?』
「愛…いや、じゃあムニが面倒見る?馬が過ごす屋根付きの小屋建てたりだとか、それだけの広い土地の有る家を借りるだとか、飼い葉代とか、運動させたりとか、糞の始末とかその他諸々」
『…済まない、あたしの愛が及ばないばっかりに…悲しいけど売ろう』
「だよね。また馬車使うってなった時に馬車屋さんに売れ残ってたら買えば良いんだよ」
『はい。その通りです』
「はい。で、部屋借りたらその後は…コマちゃんを強くしたい、かな?」
「…私を?」
『コマを?武闘会にでも出すつもりか?』
「ううん、この先一人でも生きていける様に、だね。強くなっておいて損は無いから」
『成る程な』
もしかしたら私が面倒見れなくなる時が来るかも知れないし。
「ムニもコマちゃんに色々教えてあげて」
『任せろ』
「あ、あと出来ればムニは武闘会に出場しないで欲しいんだけど」
『ん?何でだ?』
「トキネさんって占い師が居てね…」
私の目的であるコスモの鍵を手に入れる為に武闘会に出場するのは必要な事で、トキネさんにムニの出場は控えて貰った方が良いと言われた事を説明した。
『そうなのか。まぁあたしが出場したら優勝間違い無しだから仕方ないな!』
「うん、実際そうだと思うよ。という訳でコマちゃん、私と特訓しよう!」
「…ん、頑張る」
と、話が纏まった所で皆でお風呂に入りに行った。露天風呂という事で雄大なキョットーの街並みが普通に見える感じ。まぁこの旅館自体街中にあるし。あとこれ、外の人からも見えるんじゃ無い?と思ったら、マジックミラー的魔術具が設置されてて向こうからは唯の壁にしか見えないんだそう。見えないんなら別に良いけど、そこまでしてこの景色を拝む価値があるのかどうか。
お風呂から上がって浴衣を羽織ったら、仲居さんにキンキンに冷やした瓶のフルーツ牛乳を渡された。なので3人揃って腰に手を当てて飲んだ。仲居さんも満足そうに頷く。
晩御飯には刺身が出てきたんだけど、ヒムロとサクヤちゃんにつぶらな瞳で見つめられて泣く泣く分けてあげた。ちゃんとヒムロ達の分のご飯はあるのにだ。私の刺身…
★
翌日不動産屋に行って借家を借りた。4LDKの前回借りたのと同じ借家だ。そこそこ値が張るけど、やっぱり庭が広い方が何かと良いと思って。
で、家具等を整える為に1日費やし住める状態にして、さらに翌日にお引越し。キッチン用品とか細々とした物は追々、必要な時に買い揃えるスタイルで。
『コマ、早速特訓だ!』
「…うん」
『先ずは身体強化を基礎からな』
「…身体強化?」
『うむ、一から教えてしんぜよう。では…』
コマちゃんとムニが庭で特訓を開始。
そんなコマちゃん達を尻目に私は新魔術の開発を主軸に、魔術や魔法の実践での応用を考える。本当は魔術師協会の書庫で魔術書とか論文とか読みたいんだけど、今の私、初級魔術師のカードしか持ってないんだよね。これだと初級の書庫しか見れない。以前にナワイカの協会で作ったっきりで殆ど出入りしてなくて。
どうにかして上級のカード貰えないかなー。
うーん、コスモの複製が出来れば届きそうなんだけど。
物は試し。まずコスモで出来る事を並べてみよう。
1、持ち主への魔力の供給
2、魔力の自動回復
3、呪文詠唱の短縮
4、魔術の制御
5、魔術のラーニング
6、魔法
7、索敵、鑑定等の特殊機能
取り敢えず思いつくのはこんな所かな?で、再現出来そうか考えてみよう。
1、持ち主への魔力の供給
魔石から魔力を取り出す事は出来る。空飛ぶ服にも仕組んでるし。だけど魔石から人体に魔力を直接移動させるのは私の知識では出来ない。それに使用しきった魔石って基本割れるんだよね。その度取り替えるんじゃ取り付けサイズの問題とコストがかかりすぎる。
…あー、前回ヒューマ君にあげた城の宝物庫にあった腕輪。確か魔力を貯めたり取り出したり出来たなぁ。
あの腕輪の紋様と魔石の質が把握できれば…武闘会への準備として実力をつける為に上級魔術師になって論文とか読みたいからコスモの複製をつくろうとしているのに、武闘会の終わった後の褒美の腕輪が欲しい。…どうすれば良いんだ!次!
2、魔力の自動回復
コレはこの世界の生き物の仕組みが分からないから想像するしかない。
魔力の無い私は別として、この世界の人や魔物、妖魔なんかは時間が経つと魔力が回復するよねぇ。私が知ってる人体模型には無い内臓があるのかな?魔力袋的な?それか空気中にある(のかもしれない)魔力を吸って回復してる?どっち?
コレも上級魔術師になる為にコスモの複製を作ろうとしてるのに、それにはハイレベルな魔術理論や人体の研究が必要でというジレンマ。もう!次!
3、呪文詠唱の短縮
空飛ぶ箒や服はレビテーションの魔術や飛翔の為の呪文を魔術紋様に魔力を注ぐ事で詠唱無しに飛ぶ。
なのでこれは出来る。その魔術に対応する魔術紋様が分かれば。
その為には自力で開発するか、既存の魔術紋様を見て覚える必要がある。次!
4、魔術の自動制御
コスモの魔術制御力は凄すぎて再現出来ないけど、常識の範囲内でなら出来る。杖に使われてるようなマギタイトとかで本の装丁を拵えたり、魔力の通り道を表紙とかに書いたりすればいけるはず。但しその場合魔術は本の先から出る。次!
5、魔術のラーニング
コスモはある程度自分で学習してくれるけど、再現する方法が思いつかない。
…あ、以前ピラミッドで会ったミイラの王様は包帯が本体みたいな物なんだから、物に魂的な物を込められる?…どうやって?
それに魂とかそういうのを操るのは多分禁呪扱いで上級書庫にだって無いでしょうし。
うーん、持ち主が自分で頑張って勉強してその本に書くしかないかな。本にするだけの知識を備えてる時点でその魔術は覚えてるんだろうから無意味!次!
6、魔法
どうなってるのか分からないから魔法!次!
7、索敵、鑑定等の特殊機能
論外!終わり!
はぁ。もっと知識が増えれば部分的には再現出来なくは無さそうだけど今の私じゃ使い捨ての微妙な物しか作れなさそう。コスモの複製は一旦諦めよう。
ビュン!ビュン!「ふっ!ふっ!」
『おぉ、コマは要領が良いな!』
「…えへへ」
庭を見ると早くもコマちゃんが身体強化を会得し始めた様で、良い音をさせて木刀を素振りしてる。リューゼさんなんか一月掛けても出来そうになかったのに、ウチの子ってば天才かしら?
…身体強化か。これについての論文を書けば評価してもらえるんじゃ無いかって話、前に誰かさんが言ってたな。
んー、いっちょ書いてみるか!




