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ギバラにて

 タキアの街からロテーク、ジキュウ、トーフクの街を何事も無く過ぎ、20日程でギバラの街にやってきた私達。


 ギバラはヒューマ君が住んでる街だ。あとコマちゃんがスラム街で行き倒れている筈。

 コマちゃんは放っておくと死んじゃうかも知れないから、探してでも拾って行くつもりだ。ヒューマ君は状況次第かな?


 前回も泊まった高級な宿を取って、コレからの打ち合わせをする。


「この街で大体3日程滞在したいと思います。出発する迄に各自旅の準備をお願いします。…じゃあ解散で。あ、リューゼさんは私と一緒に来てもらっても良いですか?」

「おう、何かあるのか?」

「馬車のメンテナンスに行きたいのと、ちょっと後で重たいものを運んで貰うかも知れません」

「任せろ」


 リューゼさんを連れて、馬車で馬車屋に向かい、店員さんにメンテナンスをしてもらう為に馬車を預ける。旅の途中で壊れたりしたら困るからね。


 その後、以前ヒューマ君と出会った食堂の前を通ってみた。前回はここでヒューマ君とチンピラと、それを助けるムニが揉めてたんだけど、何事も無さそうだった。んー、やっぱり日が違うからかな?


 その食堂を素通りして、この街の奥にあるスラム街へ向かう。ある区画を過ぎると少しすえた匂いが鼻をくすぐり始める。ボロボロの建物。道端で座り込み酒を飲んでいる人。コチラを見て目をギラギラさせている少年。


「マコ、こんな所に何の用事があるんだ?」

「人助けですかね。狐の獣人の女の子がどっかに居ると思うんですけど」

「人助け?何で居る事が分かるんだ?」

「んー、説明するのが大変なのでそこはスルーしてください」

「まぁ良いけどよ」


 そんなスラム街を奥へと歩いて行きながら左右を見回す。居た。座り込んで俯き動かないけど、ボロボロの服を着た狐獣人の少女。

 近づくとコチラに気付いたのか顔をあげて私の事を見つめる。早速話しかけてみる。


「ねぇ、君。大丈夫かな?」

「…あんまり大丈夫じゃない」

「怪我は無いみたいだね。お腹が空いてるの?どれぐらい食べてないの?」

「…3日ぐらい」

「そかそか。私がご飯食べさせてあげるよ。ついてくる?」

「…行く」

「よし、じゃあ先ずは身体を洗っちゃおう。立てる?」

「…うん」


 コマちゃんを立たせて、私の『アクア』の魔法で首から下を何度か洗う。3回程水を入れ替えて洗い終わった後、水を飲ませてリューゼさんに背負って貰い、宿に向かって歩き出す。


「…どこ行くの?」

「私達の泊まってる宿に行くよ。先ずはお風呂に入って綺麗にしてからご飯食べよう」

「…どうして助けてくれるの?」

「あのままだと死んじゃうと思ったからかな」

「…お姉ちゃんの名前は?」

「マコだよ。お名前は?」

「…前の名前は捨てた。付けて欲しい」

「じゃあ、コマ、で良いかな?」

「…うん、それで良い」


 宿まで帰り着き、先ずはコマちゃんをお風呂に入れる。頭から尻尾の先までしっかり洗った後水を拭き取って、部屋のテーブルへ。宿の人にお願いして食事を運んで貰い、コマちゃんの前に並べた。


「…食べて良いの?」

「良いよ。胃がビックリしない様にゆっくり食べてね」


 最初は遠慮気味に、徐々に勢いよくご飯を食べるコマちゃん。コレで一安心と言った所だ。


「この後服を買いに行くけど、起きてられる?」

「…ん、大丈夫」

「リューゼさん、買い物にも付き合って貰っても良いですか?荷物待ちですけど」

「あぁ良いぞ」


 コマちゃんがご飯を食べ終わり、前回と同じ様に私の学校のブラウスとスカートを着せたコマちゃんを連れて服屋さんへ。

 小一時間程かけてコマちゃん用の下着やら衣服やらを買って、まだ日が暮れるには時間があったので魔術師協会に寄った。コマちゃんを魔術師の登録をしてカードを発行して貰う為だ。


 ギバラの街の魔術師協会はナワイカのそれよりも小さく、入り口を抜けるとすぐにカウンターがある。受付のお姉さんが座っていて、コチラに話しかけてきた。


「本日はどの様なご用件でしょう?」

「すみません、この子の登録をしに来たんですけど」

「登録するには魔術を使える、またはその素養がある必要がありますが、その子は魔術は使えますか?」

「いえ、まだ使えないと思います。魔術布で適正を見てもらっても良いですか?」

「畏まりました。準備を致しますので少々お待ちください」


 と、受付のお姉さんは奥へ行った。


「俺、魔術師協会初めてだ」

「リューゼさんも魔術布で適正見て貰いますか?」

「あぁ、やってみようかな。適正とやらが有れば魔術が使えるって事だよな?」

「絶対そうとは言えないんですけど、ムニみたいに身体強化するにも魔力は必要ですし見ておいた方が良いかもですね」

「そうか」

「…お姉ちゃん、魔術布って?」

「んーとねぇ…」


 コマちゃんに魔術布の説明をしていると、受付のお姉さんが丁度魔術布を持って来て、近くのテーブルの上に広げた。


「ではこの布に魔力を込めて見てください」

「…どうやって?」

「あぁ、では少し手を出して貰えますか?」

「…はい」


 受付のお姉さんがコマちゃんの手を包み込む。


「何か感じ取れますか?」

「…うん、お姉さんの手の中で何かがぐるぐるしてる」

「それが魔力です。自分の中にも有りますか?」

「…これかな?」

「動かせそうですか?」

「ん、出来る」

「じゃあその魔力を布の魔術陣の中心へ注いでみて下さい」


 コマちゃんが魔術布に魔力を注ぐ。じわじわと魔術陣の光が広がって、一番目と二番目の円の間で止まった。


「魔力量は約18。この年齢としては充分な魔力をお持ちですね」

「リューゼさんもやってみましょうよ」

「おう…俺も魔力ってのがよく分かんねぇんだけど」

「では手を出して貰えますか?」

「あぁ」


 リューゼさんの手に受付のお姉さんの手が重ねられる。


「何かが動いているのは分かりますか?」

「分かる。コレが魔力か」

「自分で動かせそうですか?」

「…うーん、どうやって動かすんだ?コレ。自分の中にあるのは分かるんだが」

「もしかすると魔力量が多くて動かしづらいのかも知れませんね。じゃあもう一度手を出して貰えますか?」


 そう言ってリューゼさんの手を強く握るお姉さん。


「行きます!」

「何を…!うおぉぉ!?」


 今お姉さんがやったのは、リューゼさんの体内に魔力を思いっきり注ぎ込んで無理矢理魔力を動かしたんだろう。コレをやると結構身体がビックリするらしい。


「その動いてる魔力を落ち着けてください」

「スゲェ勢いで魔力が…っく、こうか?いや…」

「この間にお嬢さんの登録を済ませてしまいましょう」


 自分の中の魔力と格闘してるリューゼさんを尻目に、コマちゃんの登録をする。


 コマちゃんのカードを受け取り、更に10分程。ようやく魔力を落ち着けることが出来たらしいリューゼさんが魔術布に魔力を注いだ。魔術布は三番目の円より少し外まで光る。


「約120といった所です。今迄魔術に携わった事が無いとは思えない、凄い魔力ですね」

「120って凄いのか?」

「えぇ、かなり高いです。但し、魔力が多い方はその分魔力の扱いに慣れるのに時間が掛かると言われてますが」

「へぇ」

「登録はしていかれますか?」

「んー、別にいいや。特になんかの魔術が使いたい訳では無いし」

「そうですか。才能がありそうなだけに残念です」


 リューゼさんの魔力量を測ったところでお礼を言って協会を出た。





 それから数日間、毎日ご飯を食べたコマちゃんはすっかり元気になった。

 後、毎日昼頃にヒューマ君と会った食堂の前に来てみたものの会うことは無く。

 出発の日になったのでギバラの街を後にした。

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