ドラゴン退治
平地の中心からこちらを睨みつけながら苛立たしげに尻尾を地面に叩きつけているドラゴン。完全にこちらに気づいている。
それを見て、リューゼさん達は流石にアレは無理じゃね?と逃げ腰だ。ムニ以外は。
「どうする?協会に報告しに戻るか?」
「いえ、ここで倒してしまいましょう」
「マコ、勝てる算段があるの?」
「ムニとヒムロに前衛をお願いして惹きつけて貰ってる隙に私が魔術で倒します」
「そう…大丈夫かしら…」
『よし、あたしは前衛だな?別に倒してしまっても良いのだろう?』
「ムニが倒せるならそれでも良いです。リューゼさん達はここで待っていて下さい」
「あぁ、ドラゴン相手じゃ何も出来無さそうだしな」
「ご武運をお祈りしてます」
リューゼさん、ミケイ君、エルザちゃん、リエルさんはここでお留守番して貰って、私と大きくなったヒムロとムニでドラゴンに近づいていく。
ある程度近づいたところでドラゴンが大きく息を吸い込んでブレスの予備動作に入った。
「散開!」
私の合図と共にムニとヒムロが左右に分かれて走っていく。私はそのままの位置でコスモを構えた。
「GOAAAAAAA!!」
ファイアーボールの何十倍も大きな火球がドラゴンの口から放たれ、私に向かって直進してくる。
「アクア・ストリーム!」
私の突き出した手から放たれた水の奔流がドラゴンのブレスにぶつかり派手に蒸気を上げながら押し流す。
その間に目にも止まらぬ速度で接近したヒムロがドラゴンの身体や足、尻尾等を引っ掻き傷をつける。それに激昂したドラゴンがヒムロを目で追い始め、その大きな隙にムニがここぞと反対側の足を大太刀で斬りつける。傷は結構深い様でドラゴンの身体が少しぐらついた。ダメージに驚いたのか、ドラゴンが一吼えしたかと思うと周りに障壁が発生した。その障壁に阻まれてヒムロやムニの攻撃が届かなくなる。ならば!
”法則を捻じ曲げ 撃ち放つは神の怒り 刹那にて迫り来る慟哭に 秩序を失くす世界 それが汝の審判の時”
「●、ジャッジメントライトニング!」
カッ!ダァァァァァァン!!と、空から雷が落ち、ドラゴンを穿つ!
張られていた障壁は砕け散り、その身体からプスプスと煙が上がっていてダメージはそれなりに大きそうだが、まだまだ元気な様だ。
雷に怯んだドラゴンを、ヒムロとムニが此処ぞとばかりに攻め立てる。ヒムロの攻撃は浅いけど着実に傷を付けていて、ムニは重い一撃を叩き込む事でドラゴンにとって無視できない深い傷を負わせていた。
「GAaaa!!」
堪らずドラゴンが吼えるとドラゴンを中心に放射状に衝撃波が発生して、ヒムロ達を吹き飛ばす。
「GU…GOWAAAA!」
続けてドラゴンが唸ったかと思うとその周りに数十個の火球が出現した。一つ一つがファイアーボールぐらいあって威力も高そうだ。その内半分ぐらいはムニに殺到、残りの半分づつがヒムロと私に飛んできた。
私に飛んできた火球はトルネードの魔術であちらこちらへと吹き飛ばす。
ヒムロはそのスピードで全部避けた様だ。
一番火球が殺到していたムニは捌ききれずに何発か貰ってしまった様で火球の爆発に平地の端の方まで吹き飛ばされている。一応無事ではある様子。
この中で1番の脅威と見たのだろう、ムニに向かってブレスの予備動作を始めるドラゴン。
充分に溜めて、そしてカッ!と発射されるブレス。さっきのと違って放射状のレーザーと言うべき勢いのブレスが襲いかかる。それを凄い反射神経と速度で横に回避するムニ。ムニの立っていた地面は熱でドロドロになっている。
あのブレスはちょっとやばい。ダラダラと時間かけてると、誰かがさっきのブレスでやられてしまうかも知れないな。
避けられた事で尚一層ムニを注視するドラゴン。その隙に、
”死の支配する世界で弔うは誰の亡骸か 忘却の彼方へ置き去りにされし神は哀しみに涙する 涙が堕ちる先に広がる地獄は”
「●、コキュートス!」
キィィィィイィィィン!
ドラゴンの周囲を氷の柱が埋め尽くす。そしてドラゴン自身も分厚い氷柱に取り込まれる。範囲と即攻性に優れた氷系の上級魔術だ。
この魔術の氷に囚われた者は、次第に身体の力を奪われていき、やがては死に至る。
ドラゴンは脱出しようともがいている様だけど、私渾身の魔術でその身体を覆った氷を直ぐには破れない。
その氷の塊に閉じ込められたドラゴンにヒムロが近づいて、追い討ちの氷魔法『ブリザード』を放った。それによって更にドラゴンは凍りついて、もはや氷の柱と化す。
氷柱に覆われたドラゴン。そこにムニが近づいていく。大太刀を背中の鞘にしまい、腰に差していた刀に手をかけた。その瞬間ムニの身体から魔力が爆発したかの様に渦巻く。
『”我が一太刀に斬れぬモノ無し”』
キィン!
呟き、そして地面がめり込む程の踏み込みとともに居合の形で振り抜かれた刀は、金属を打ち合わせた様な音を上げてドラゴンの首を周りの氷ごと斬り飛ばした。
ゴトリと地面に落ちる凍りついたドラゴンの首から上。流石に首を飛ばされては生きていられなかった様で、凍りついたまま沈黙した。
戦いが終わったのを見て、リューゼさん達が森から出てきた。
「本当にドラゴンを倒しちまうなんてスゲェなお前ら」
「ホントよね。マコもヒムロも凄い魔術使ってたし」
『さっきの火の玉で服が焦げた…』
「ムニさん、回復魔術を掛けましょうか?」
『うむ、ちょっとだけ火傷をしてしまってな、お願い出来るか?ここなんだが…』
ムニの治療も終わり、さて帰るかという段階で。
「で、このドラゴンどうすんだ?」
「このまま放置するのは勿体無いわね」
『あたしの異空間収納には大きすぎて入らないな』
「私が精霊を呼んで道を作って貰います」
「道?そんな事出来るの?」
「ええ、師匠に教えて貰ったので。”樹の精霊よ、我との契約に従い、今此処に顕現せよ”
●、サモンスピリット『ドライアド』」
パァァァァァ…ヒムロを召喚する時に見たのと同じ様な光。
光が収まるとそこには木が人間になってみましたって感じの人…ドライアドが立っていた。
この精霊召喚は師匠の切り札の一つだそうで、例えば自身で10の魔力を消費する魔術を使うよりも、召喚した精霊に10の魔力を譲渡して魔術を使って貰った方が効果が格段に高くなる。そして精霊にしか出来ない、魔術で再現出来ない魔術もある。
精霊にも色んな種類がいて、水を自在に操れるウンディーネや、サラマンダーといった辺り一面を焼き尽くす精霊が召喚出来たりと何種類も居る。
で、今回召喚したのはドライアド。草木の成長を促したり樹を動かしたりと、植物を操れる精霊だ。
「呼んだ?マコ」
「呼びました。この森に道を作って欲しいんですが」
「対価は?」
「師匠特製の栄養剤を此処に」
「!分かった。喜んで」
この時の為に師匠から貰っておいた瓶に入った植物用の栄養剤。こうかはてきめんだ!
「どっちに道を作ればいい?」
「あっちの街がある方の木を左右に寄せてください。幅は10メートルも有れば」
「分かった」
と、相槌を打った途端、森の木々がズオォォォォっという音と共に数キロに渡って左右に分かれていった。
「凄い光景…」
『中々爽快だな!』
「終わった。マコ、栄養剤頂戴」
「はい、どうぞ」
ドライアドに栄養剤を渡すと、足を肩幅に開き左腕を腰に手を当てて飲み始めた。良い飲みっぷりだ。
「ぷはぁ!生き返る」
「美味しそうで良かったです」
「じゃ、帰る」
「はい、また宜しくお願いしますね」
挨拶を交わし合い、ドライアドは光の粒子になって消えていった。
「なんか精霊って思ったより人間ぽかったわね…」
「他の精霊も割と人間に似た姿をしてますよ」
「へぇー」
「じゃあ後はクライブさんにお願いするとして、私たちも街に帰りましょうか」
「そうだな」
ドライアドの作った道を歩いて街に帰ってきた私達。クライブさんに事情を伝え、ドラゴン素材の分け前や買取について話し合い、宿に帰り着いたのは夕暮れ時。
そのまま宿の食堂の円卓に皆んなで座ってご飯を食べる事にした。
「あー、やっと帰って来たな」
「ドラゴンに緊張して疲れたわ。お陰でお酒が美味しいわね」
「リューゼとリエルはいっつも酒飲んでるな…なぁエルザ、俺も「駄目です」…そうか」
『なんで駄目なのだ?エルザ』
「成人してからじゃ無いと身体にあまり良くないと聞いたことがありまして」
『適量の酒は百薬の長だ。飲み過ぎなければどうという事は無いぞ?』
「それでも駄目です」
『エルザは堅いな。なぁリューゼ』
「俺に振るなよ…」
皆の話しをBGMに、今日の晩御飯である照り焼きチキン丼を食べる。うまうま。
★
次の日。ドラゴンが街に運ばれるにはまだまだ時間が掛かるので、何してようかなと考えた末にこの空いた時間を使って前回武闘会で大活躍だった空飛ぶ服を作ろうと思い立ち、刺繍用の糸と針を買うために錬金術屋にやってきた。
お店のドアを開けるとカラーンカラーンと軽快な鈴の音が鳴り、奥から年若い魔術師然とした女の子が出てきた。この錬金術屋の看板娘のレイちゃんだ。
「いらっしゃい。何をお探しですか?」
「魔糸と針を買いに来たんだけど」
「じゃあこっちです」
刺繍関係のアイテムのある場所まで案内して貰い、魔糸と針を選ぶ。今回の空飛ぶ服は、前回のよりグレードアップする予定だ。
その刺繍に必要なかなりの量の魔糸と、針のセットを選んでお店のカウンターへ持って行く。
「これ、買います」
「はぁい!…糸、こんなに?結構値段しますけど」
「大丈夫」
「因みにコレで何を刺繍するんですか?」
「空飛ぶ服を作ろうと思って」
「空飛ぶ服?」
「着た人を空に飛ばす服ですね」
「へぇ!面白そう!それって作るのにどれぐらい掛かるんですか?」
「多分10日ぐらい…かな?」
「そんな短期間で!?出来上がったらそれって見せてもらったり出来ます!?是非教えて欲しい!」
「じゃあ出来上がったら持って来ますよ」
「良いんですか?やった、楽しみー!」
おぉ、喜んでる喜んでる。箒で空を飛ぶのが大好きなレイちゃんが見事に食い付いた。目をキラキラとさせてる。
前回より複雑にする予定の刺繍だけど、それでも多分リーモアにいる間には出来上がるはず。見せにくる事も出来るでしょう。
とりあえずレイちゃんにお金を払い、商品を受け取ってバッグに入れる。
「他にも見させて貰っていいかな?」
「良いですよ!ゆっくりしてって下さい!」
断りを入れて店内に置いてある商品を眺めていく。前はゆっくり見なかったから、錬金術屋にどんな物が置いてあるか細かくは知らないんだよね。
30分程店内をぐるっと見て回って満足した私はレイちゃんに手を上げて錬金術屋を後にした。
★
ドラゴンを討伐してから5日程。ドラゴンが街に到着したという連絡が入ったので、私達は
街の入り口の外にある広場に来た。
広場を眺めてみると、大きな荷車に凍りついたドラゴンが横たわっている。私達が来た事に気づいて、1人こちらに近づいてきた。
「お前達か。丁度今から解体を始める所だ」
声を掛けて来たのはギルドマスターのクライブさん。その他の協会職員達は皮を剥いだりツノや牙を取ったりしている。が、凍りついてるのもあって中々苦戦している様だ。
「優先的に素材が手に入るお前達が羨ましいな。で、何処の素材が欲しいか言ってくれ」
私達はそれぞれ欲しい部位をクライブさんに伝えて剥ぎ取って貰う。
リューゼさんは皮。新しい皮鎧を作るらしい。
リエルさんは翼膜。マントの素材にするそうだ。
ミケイ君は竜鱗。盾を作るとか。
私は竜鱗5枚と血液と皮。師匠へのお土産と、前回と同じくコルセットの様な皮鎧を作る予定。
エルザちゃんとムニは欲しいものが無いという事で何も選ばなかった。
クライブさんが一通り聞いて、解体してる職員さん達に指示を出す。暫く解体の様子を眺めながら待ってると順番にお願いしていた素材を持ってきてくれた。
「コレで全部か?よし。残りの素材は協会が買い取る。査定が終わったら連絡を入れるからな。数日後になると思うがそれまでリーモアに滞在しててくれ」
「分かりました」
それぞれ自分の欲しい素材を手に入れて、特にミケイ君がメッチャ喜んでる。
「ドラゴンの鱗で作った盾…ロマンだ」
「良かったね、ミケイ君」
「よし、一回宿に戻って荷物置いて、皆で昼飯食いにいこうぜ」
「良いわね」『サンセー!』
「何処が良い?」
「ラーメンが食べたいわね」
「私はお好み焼きでしょうか?」
『はいはい!焼肉が食べたいぞ』
「焼肉?昼飯だぞ?あーでも、ランチもやってる所があるな」
他にもスパゲッティだとか丼物がとか、あーだこーだと中々決まらず、最終的にアミダクジで決めることになった。結果はラーメン。
そんな感じで宿の近所にあるラーメン処『らぁめん』にお邪魔した私達。6人掛けのテーブルの席に着いて、皆メニューを眺めている。少しして、可愛い女の子の店員さんが水とおしぼりをもってやって来た。
「俺は此処に来たらゴツ盛りラーメン1択だな」
「リューゼさんは決まってるんですね。うーん、牛すじラーメンとか美味しそうじゃないですか?」
「牛ホルモンつけ麺にする」
「へぇ、美味しそうだけど脂が凄そう。私はコーンラーメンにするわ。エルザは?」
「えーと、うま塩ラーメンにします」
『あたしはとんこつラーメン大盛りで!』
それぞれ何を頼むか決めて店員さんに伝える。復唱して店の奥へ行く店員さん。
「この店は最近改装して店は綺麗だし、メニューも割と今時の内容だが、大将が40年間ずっと手打ち麺でやって来たラーメン屋でな。このツルシコの麺のファンが多くて昼時になったら客が行列になる人気店なんだが…」
「それにしては何か人が少ないですね?」
「そうなんだよな。この時間、いつもならこんなにすんなりとは入れないのによ?」
それ程広いお店じゃない。なのに私達以外の客はまばらで、とても行列の出来る人気店といった雰囲気ではない。
「何があったんでしょうね?」
「さぁな…」
そんな話をしてると店員さんがラーメンを持ってきた。
「冷めちまうから来た奴から待たずに食い始めてくれ」
「そう?じゃあ先に頂くわね」
リエルさんとエルザちゃんがラーメンを食べ始める。
「どうです?美味しいですか?」
「ええ、美味しいわ」
「はい、麺もお話通りツルッとしてて美味しいです」
「味が落ちたとかそういう訳じゃ無い?」
うーん、何でだろ?
で、次から次とラーメンが運ばれてくる。私の牛すじラーメンも来た。
「おお、リューゼさんの、本当に凄い盛りっぷりですね!」
リューゼさんの頼んだラーメンは確かゴツ盛りラーメンだったかな?私のラーメンの3倍はありそうなボリュームだ。
「あぁ、そうだろ?こいつを食べるのは時間との勝負なんだ。早く食べないと折角の麺がのびる」
と、言いながらラーメンを一心不乱にすすり始める。凄い食べっぷり…私も食べよっと。
結構な量の牛すじの上に辛味ペースト的なのが乗ってて、その下に野菜と麺。チャーシューにゆで卵も完備でとても美味しそうだ。
「頂きます」
先ずは麺を一口。おぉー、確かにツルシコ。ススッと口の中に入って、絶妙な歯応え。
レンゲでスープを飲めば醤油ベースの深い味。辛すぎず甘すぎず、絶妙な加減だ。
次に上に乗った牛すじに辛味ペーストを少しつけて食べる。うん、牛すじ!
コレは今迄食べたラーメンの中でもベスト3に入るよ。日本にいた頃の記憶あいまいだけど。
皆黙々とラーメンを食べてると、急に入り口の扉がダーン!と開いて人が店の中に入って来た。
「おぅおぅおぅ!まだやってんのかジジイ!」
「無駄な足掻きだってのがわかんねぇのか?」
「客だって減っちまって赤字だろう?とっとと辞めてこの土地を渡せってんだ!」
チンピラ3人組があらわれた!皆の箸が止まる…いや、ムニは気にせず食べてるな。
それを見たチンピラAの攻撃!私達の座ってるテーブルをひっくり返そうとした!
ミス!リューゼさんに手を払われた!
「なんだテメェ…俺達に楯突く気か?」
「アニキ、手が、手が折れちまったよぉ!」
「おぅおぅおぅ、こりゃ慰謝料指揃えて払って貰わなきゃなぁ?」
チンピラ3人組の口撃!他の客は固まり、そそくさと店を出て行く!
「慰謝料?いくら払えば良いんだ?」
ズズッ!ズルズル…
リューゼさんが問う。それにチンピラ達は調子に乗った様で、
「そうだなぁ、治療費に100万ルビの金を用意して貰おうか!」
ズズッ。ズルズルズルッ!
「おい!そこの女!悠長にラーメン啜ってんじゃねぇ!」
チンピラがムニに向かって吠える。ムニはどこ吹く風だ。
財布を右手に持って立ち上がるリューゼさん。
「あいにくそんな金持ち合わせて無いんでな。100万発分の拳じゃ駄目か?」
「ああ!?何言ってんだテメ」 ドゴォッ!
リューゼさんの財布を握りしめたパンチがチンピラAの顔面に突き刺さる!壁まで吹っ飛んで崩れ落ちるチンピラA。
「あ、アニキ!大丈夫すかアニキ!」
「やってくれたな!俺達に逆らった奴らで生きた奴は居ねえ!テメェの面覚えたからな!」
チンピラAをBCが肩を担いで店から立ち去って行く…
「ったく。ラーメン食わせろや…のびちまうだろうがよ」
「お、お客さん。逃げた方が良いですよ!」
さっきの店員さんがこちらに駆け寄って来た。随分と慌ててる。
「何でだ?逃げる必要が無い」
「あの人達は唯の末端で、親分って人が上に居て何十人も構成員がいるこのリーモア筆頭の荒くれ者達なんです!今日は一緒じゃ無かったですけど強い用心棒を雇っていて」
「へぇー」ズズッ。
「ふーん」ズズズ…
ミケイ君とリエルさんは生返事をしながら興味無さそうにラーメンを啜ってる。エルザちゃんはあわあわしてるけど。
「何処に本拠地があるか分かるか店員さん」
「い、いえ、分かりませんけど…どうするつもりなんです?」
「そりゃまぁ…ケンカ売られたからには潰すかな」
「え!?話聞いてましたか!?悪い人達の巣窟ですよ?危ないですよ!」
店員さん焦ってる。
『店員の嬢ちゃん』
「は、はい?」
ムニがメニューに目をやりながら、
『替え玉をお願いしたい』
「あ、俺も」
「は、はい…」
ムニとミケイ君が替え玉を注文する。皆マイペースだ。
「あのチンピラさん、今日またやって来るのかな?」
「来るんじゃね?」
「じゃあこの店で待たせて貰うんですか?」
「まぁサイドメニューでも食って待ってようぜ」
「まだ食べるんですか!?」
「私はパス。お腹もいっぱいだし、上手く手加減出来ないから」
と、リエルさんは立ち上がって自分の分のお金を置いて店を出て行った。まぁ街中で攻撃魔術ぶっ放したら捕まっちゃうしね。
それから30分ほど食べたり話したり店員さん(この店の大将のお孫さんでヒナちゃんと言うらしい)を揶揄ったりして時間を潰してると、店にさっきのチンピラBCとゴツイガタイをしたDが現れた。
「逃げずに待っているとは殊勝な心掛けだな」
「調子に乗った事、後悔させてやるよぉ!」
リューゼさんが立ち上がり、チンピラに近づいて行く。
「アニキの仇を討たせて貰うぞ?先生お願いします!」
ゴツイチンピラDとリューゼさんが向かい合う。おぉー、リューゼさんってメッチャガタイがいい方なんだけど、チンピラDも負けてない。ムキムキだ。
メンチを切り合う両者。それをエルザちゃん以外ワクワクしながら見守る。
先に手を出したのはチンピラD。リューゼさんの顔に向かって体重の乗ったストレート!それをくぐり抜ける様に相手の懐に潜り込み、鳩尾に拳を突き立てるリューゼさん。崩れ落ちるチンピラD。…あれ?
「おいおい…」
「よっわ!」『見掛け倒しだな』
「先生!?そんな、先生が一撃で!?」
「しっかりしてください先生!」
チンピラDに縋り付くBとC。その襟首を掴んで持ち上げるリューゼさん。
「じゃあ、アジトに案内して貰おうか」
「「ひぃぃー!」」
その後、私はついて行かなかったけど、リューゼさんとムニとミケイ君(と、エルザちゃん)で荒くれ者達の本拠地に殴り込みに行って、親分とやらをボコボコにして壊滅させたらしい。
それによって晴れて営業妨害から解放されたラーメン処『らぁめん』、きっとあの美味しさならお客さんも取り戻せるでしょう。




