表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/108

少しずつ違う世界

 ナワイカから半日、夕方頃ポサロに着いた。守衛さんに全員のカードを見せて防壁の門を通り抜け、先ずは馬車の一画を占拠してるムーンベアを売りに行く。卸市場で75万ルビで売れたのを皆んなに等分して、レンタル馬車を乗合馬車の駅に返し、宿を取った。その頃には外はもう暗くなっている。


「明日は自由行動で、明後日の朝に出発します。ポサロからリーモアの街まで3日程掛かりますので、食べ物など必要な物は各自で購入しておいて下さい」


 今は宿の食堂で晩御飯を食べている所。私の話が終わった後は皆それぞれ好きにご飯食べたり喋ったりしている。


「自由時間か。俺、今日のムーンベアに盾を凹まされたから武具屋に行きたかったんだよな。臨時収入も入ったしちょうど良いぜ」

「私は教会へ行って安全な旅が出来るようにお祈りしてきます」

「ねぇリューゼ、この後酒場にでも行かない?」

「良いぞ。マコも行くか?」

「あー、私は遠慮しておきます」

「あら、そう?ミケイ君達は?」

「行きたい所なんだが、エルザが15になるまでダメって言うから行けないんだ」

「ははっ、尻に敷かれてんな」

「じゃあマコやミケイ君たちは荷物番お願いね。ご飯も食べ終わったし行くわよ、リューゼ」


 食器を片付けてリューゼさんとリエルさんは宿を出て行った。私も食べ終わったし、そろそろ寝ようかな?



 ★



 次の日、自由行動という事で私はポサロの武具屋を訪ねた。


「すみませーん」

「ん?いらっしゃい」

「見させてもらっても良いですか?」

「良いぞ。嬢ちゃんは魔術師だろ?入り口から見て左奥に魔術師用の武具が置いてある。ゆっくり見ていってくれ」

「ありがとうございます〜」


 ここの武具屋に来た目的は…えーと、あったあった。


『魔女の帽子 詳細不明 値段応相談』


 これこれ。前回この店で買った帽子だ。良かった、売れ残ってた。

 精神、幻惑、幻覚系の魔術に対する防御が掛かってるとんがり帽子。デザインも可愛い。


「すみませーん、この帽子っていくらですか?」

「ん?あぁ、その帽子な。大分前の仕入れに紛れてた奴でな。効果も分からんし…そうだな、5万ルビでどうだ?」

「良いんですか?」

「あぁ、置いといても売れないし、ここで飾られてるより使ってもらった方がこの帽子も嬉しかろうよ」

「じゃあ、これで」

「ん、確かに。そのまま被って行くか?」

「はい、折角買いましたので」

「そうか。ありがとうな」


 とんがり帽子を被って、店主さんに見送られ店外に出る。

 そのまま街の中心へ歩いてると公園が目に入ってきた。確かここで屋台とかフリーマーケットをやってるんだっけか。

 特に他に用事もないのでふらっと寄ってみる事にした。


 フリーマーケットの商品を眺めながらブラブラと。お、こんな所に刀が置いてある。店主さんに断りを入れて抜いてみて眺める。太陽の光が反射して赤く輝く刀身が綺麗だ。


「その刀は曽祖父が戦場で使ってた刀で、軽くて片手でも振り回しやすいんだとか。刀身が赤いのは、戦場で吸った血が染み込んで赤くなったものだと伝えられていて、名前は紅。お安くしときますよ」

「因みにおいくらで?」

「はい、50万でどうでしょう?」


 刀が50万は安い。さすがフリマ。


「じゃあ買います」

「ありがとうございます…お嬢さんがお使いになられるんですか?」

「いえ、知り合いに刀が大好きな人がいるのでお土産に」

「成る程。そうですか」


 代金を払って刀を腰に…挿す帯なんか付けて無いので仕方なく手で持って歩く事にする。


 他に面白そうな物は無いかなと、トテトテ歩きながら見物。すると武器や防具を並べてるお店で、商品を眺めてるミケイ君が居た。


「ミケイ君おはよ」

「ん?マコか。お前も買い物か?」

「まぁそんな所。ミケイ君は盾見てるんだね?」

「あぁ、この盾かその盾かで悩んでるんだ」


 片方はちょっと重いけど鋼の盾、片方は軽くて強度も同程度、だけどちょっと高い蛇鱗の盾。確か前回もこの2つで悩んでたな。


「ちょっと高くても使いやすいのが良いと思うよ。身を守る物だし」

「…だな。親父さん、これ売ってくれ」

「はいよ!」


 代金を払って蛇鱗の盾を装備するミケイ君。ホクホク顔だ。


「マコはこの後どうするんだ?」

「そうだねぇ…お昼ご飯かな?」

「じゃあエルザ拾ってどっかで食べようぜ」

「エルザちゃんは教会?」

「そ、エルザは用事が無ければ大体神様に祈ってるよ」

「へぇ、信心深いんだね」

「そのお陰で俺は多少の怪我は気にせず戦える訳だ。エルザの回復魔術は結構凄いんだぜ?確か2等級って言ってたな」

「おぉ、それは凄い」


 エルザちゃん達回復術師が使う回復魔術や補助魔術は神から与えられた恵みの力と言われていて、本人の資質と魔力量と神への献身の度合いが回復魔術の効力に直結する。なので、いくら資質や魔力量が有っても神に真摯に祈らない人間には回復魔術は使えないし、幾ら資質が有って真剣に祈っても魔力が少なければ回復魔術は発動しない。資質が無ければ言わずもがな。回復術師は割と狭き門だ。

 資質があるか無いかは教会に昔から伝わる選別する為の秘術があって、その街や村の神父にお願いすればその術を試して貰える様になっている。詳しい内容は受けた事がないので知らないけど。

 で、回復魔術はポーションなどに比べてコストが掛からないし嵩張らない事、魔力と祈りが足りていれば死にかけているレベルの生物も回復させる事が出来る事、毒や麻痺等の状態異常の回復も出来る事等、利点が多くその使い手は引く手数多。

 そんなエルザちゃんの2等級というのは全部で6段階ある等級の上から2番目。これが1等級となると国に数える程しか居ない聖者又は聖女と認定されるらしい。エルザちゃんはそれに次ぐ実力者という訳だ。


「果報者だねミケイ君は」

「まぁな。俺には勿体ないと思うよ」


 ミケイ君と雑談しながら街の中を歩き、教会まで来た。

 教会に入ると中央奥に女神像が祀られていて、その前に立つ神父さんが語っている。それを聴いている参拝者たち。

 エルザちゃんを探すと、中列辺りの椅子に座って祈りを捧げているのが見えた。

 ここで大声を出すのはなんなので、エルザちゃんに近づいて肩を叩く。


「おはよー、エルザちゃん」

「エルザ、飯食いに行こうぜ」

「あら?マコさんとミケイ君?もうそんな時間ですか?」

「もうちょっとで昼だ」

「じゃあお祈りはここまでにして、ご飯食べに行きましょうか」


 エルザちゃん、ミケイ君と一緒に教会を出てお昼ご飯を食べに行く。






「やっとリーモアの街ね」

「魔物だらけだったな」

「疲れたぜ…宿でゆっくり休みたいな」

「もうちょっとの辛抱です」


 リーモアの街に向かい3日ほどの道中、特に3日目はひっきりなしに魔物に襲われたけどなんとか街壁の門にたどり着いた私達。


「身分を証明出来る物は?」


 と、守衛さんに聞かれたので全員が探索者カードを出す。


「おぉ、全員探索者か!それもCランクが3人も!良いタイミングで来てくれたな。ここに来るまでも恐らく魔物に頻繁に襲われたと思うのだが、その氾濫の原因を突き止める為の潜入メンバーがまだ心許ないそうなんだ。構わなければ参加して貰いたい。今でも流通が滞っているせいで食料や日用品の価格が高騰してしまっていてな、街の人達の不安や不満が爆発しそうなこの状態が続くのはまずいんだ」

「そうですか。今日はもう遅いので、一先ず宿で1日休んでから協会に顔を出すようにします」

「ああ、宜しく頼むよ」


 と、守衛さんとの話を終えて街に入った。道中馬車の一角を占領してた魔物の素材等を卸市場で売り捌き、約150万ルビになったのを皆に均等に振り分ける。思いの外多い臨時収入にミケイ君が喜んでいた。

 でもまぁ正当な報酬だ。これだけメンバーが揃ってるからこそこれだけの量の素材や魔石が手に入ったんだから。私1人なら空飛ぶ絨毯で飛んでスルーだし。


 そのままレンタルしてた馬車を駅に返し、宿を取った。

 その後食堂でご飯を食べながら明日からの予定を告げる。


「明日は自由行動にします」

「ん?協会に顔出すんじゃ無かったのか?」

「ちょっと私は用事がありまして。協会に向かうのは明後日にしようかと」

「そうなのか?」

「じゃあ俺は街を探索するかな。新しい剣も見たいし。エルザ、ついてくるか?」

「そうだね、一緒に行くよ」

「ミケイとエルザはデート?良いわねぇ。そうだリューゼ、明日この街を案内しなさいよ」

「なんで上から目線なんだ?まぁ良いけどよ」

「ついでに今晩は飲みに行きましょうよ」

「あぁ、行くか」


 私も誘われたけど丁重にお断りした。しかしリューゼさんとリエルさんは飲むの好きだなぁ。





『こんな感じで良かったでしょうか?』

「うんうん、大丈夫だよー」


 次の日、早朝からバックパックにくくりつけていた空飛ぶ絨毯を広げて、サクヤちゃんの運転でリーモアの山の封印岩に向けて階段の上を飛んでいる私達1人と2匹。


 封印岩。この山の頂上に鎮座しているこの岩の下には、この街を恐怖に陥れたと言われている大妖魔が封印されている。その大妖魔がムニだ。

 前はドラゴンを倒した後にムニが仲間になったけど、今回は居場所もわかってる事だし、先に仲間にしようと思ってる。ドラゴン相手でも前衛を任せられるだろうムニが居れば態々師匠を呼ぶ必要無いかなって。


 麓から飛ぶ事暫くして、山の頂上に着いたので絨毯から降りた。目の前には〆縄が巻かれた大きな岩がある。

 近づいて行って、縄を触ってみる。すると腐ってたかのようにボトッと縄が落ちた。

 うーん?なんでか分からないけど、私には封印を解く力が備わってる?なんで?

 ちょっと考えてると、岩が少しぐらついた。そろそろ出てくるかなと、岩の上を見てるとムニがひょっこり出てきた。仁王立ちだ。


『娘よ、今は赫暦何年だ?』

「1209年ですよ」

『1209…200年近くも経っているのか…』


 スッポンポンで物思いに耽るムニ。見た目は中学生の女の子ぐらい。下から見上げる形なのでとにかく目のやり場に困る。


『ぬぁー!シャバの空気が美味いな!…そうだ、何か着るものはないか?服が朽ちてしまっていてな。シャバの空気ちょっと寒いし』


 と、言いつつ岩から飛び降りてきたムニ。


「ありますよ。取り敢えずこの服を着てください」

『おぉ、感謝感謝!』


 ポサロのフリマで事前に買っておいた服を着せる。ちょっとダボってるけどまぁ良いでしょ。どうせすぐ街で買うんだし。


『助かったぞ娘よ!封印を解いてくれて、服まで用意してくれたお主に何か礼をしないとな!』

「お礼。なら、暫くの間私の旅の護衛としてついて来て貰っても良いですか?」

『旅か。ふはは、あたしがついてれば家内安全!…少し待っててくれな?』


 と言って、大岩の方へ行き、岩に手を差し込んだムニ。『そいっ!』という掛け声と共に岩をゴロンとひっくり返した。相変わらず凄いパワーだ。

 それでその岩の下に埋まってた刀を拾ってきたムニ。


『うむうむ、3本とも無事で良かった』

「じゃあ山を降りましょうか」

『うむ。ところで娘の名は何という?あたしはムニだ』

「私はマコって言います」

『マコだな。では行こうじゃないか!』


 2人と2匹で絨毯に乗って下山する。服屋で上着や下着等を何セットか購入、次に武具屋で防具を見繕う。ムニに防具はあまり必要ない気がするので鉢金と胸当て程度に留めておいた。必要だったら自分で買い揃えるでしょ。

 その後宿に戻ってリューゼさん達に顔合わせをしたら速攻で意気投合して一緒にお酒を飲んだりしていた。まだ昼間なんだけど…



 ★



 次の日の朝、皆を連れて探索者協会へ来た。そこそこ並んでる受付の列に並ぶ。リューゼさん達と談笑しながら暫く待っていると私達の順番が来たので受付のお姉さんにムニの登録と、森の異変の調査の参加を伝えた。


「調査への協会感謝します。先ずはムニさんの登録からしましょうか。この登録用紙に記入をお願いします。代筆は必要ですか?」

『大丈夫だ。ばっちり書ける』


 用紙を受け取ったムニはサラサラっと記入していく。師事した人はお父さんか。ムニのお父さん…さぞかし強いんだろうなぁ。


 やがて登録用紙を書き終わって受付のお姉さんに渡したムニ。お姉さんは受け取った用紙を見て、自信があるならと、飛び級制度について説明をしてくれた。勿論自信の塊のムニはそれを受ける事にし、早速筆記試験をするために2階の部屋に案内されて行った。


 30分程適当に時間を潰してるとお姉さんとムニが降りてきた。


「正解は6割程、ギリギリ合格と言った所ですね」

『ふぃー、常識問題が多くてなんとかなったわ』


 筆記で合格をもぎ取ったムニ。そのまま実技もするという事で、皆で連れ立って訓練場へ。


「試験官を連れてくるのでここで少々お待ち下さい」


 と、言い残しお姉さんは建物に戻って行った。


「ムニって強いのか?大妖魔って言われてるんだろ?」と、ミケイ君

『大妖魔云々は知らんが、腕には自信があるぞ!』

「じゃあ、今まで戦った中で1番強かったのは?」

『うーん…あたしの姉かな』

「ムニとどっちが強いんだ?」

『多分姉だろうな。今も健在かは知らんが』

「ふぅん。まぁ良いや、ちょっと手合わせしてくれよムニ」

『いいぞ』


 訓練場の空いた空間でミケイ君とムニが向かい合う。ミケイ君は訓練場の隅に置いてあった木剣と盾、ムニは木刀を構える。


『いつでもいいぞ』

「じゃあお言葉に甘えて」


 開始の合図もなく2人の手合わせが始まった。ミケイ君は私の身体強化した動きについてくるだけの実力がある。だけど…


「くっ…!」

『歳の割には出来る方だがまだまだ』


 特に本気でも無さそうなムニにいいようにあしらわれてる。実力差は歴然だ。

 次第にミケイ君が息切れし始め、動きが精彩を描いてきた。その隙をついてムニがミケイ君の首筋に木刀をピタッと当てる。


「はぁっ、はぁっ、こ、降参だ」

『そうか。まぁ悪く無かったぞ。将来いい剣士になりそうだ』

「本当か!?」

『あぁ』


 負けたけど、ムニに将来性を褒められて喜んでるミケイ君。


 そうこうしてると、受付のお姉さんが人を連れてやってきた。


「お待たせしました。ムニさんにはこの方と模擬戦をして頂きます」

「俺はスレイだ。宜しくな」


 スレイと名乗った男性は豹をイメージさせるようなしなやかさを持った細マッチョな体格で、出来るオーラが身体から滲み出ている。


「スレイさんはBランクで、このリーモアの常駐探索者ではトップです。実力も折り紙付きですので安心して胸をお借り下さい」

『わかった。早速始めよう』

「じゃあ位置について下さい」


 ムニとスレイさんが向かい合う。互いの距離は20メートルと言ったところ。ムニはさっきも使ってた木刀、スレイさんは木剣だ。盾は持ってない。


「では、始め!」


 受付のお姉さんの声で模擬戦が開始されたと同時、2人は急接近してぶつかり合う。

 凄い速度で数合打ち合って、一旦離れる両者。


「こりゃあ…強いな」『中々やるな!』


 一言言い合い、再び打ち合いが始まる。凄い、2人とも動きがブレて見えるよ。

 この模擬戦をよく見る為にコスモで身体強化をして動体視力と思考速度を上げる。


 じっくり観察をする。スレイさんは自然に身についたのか、身体強化を使いこなしてるみたいだ。動きのキレがハンパない。そして流れる様な動きでムニを攻め立てている。

 それに対してムニは未だに強化せずに戦ってるように見える。本気出したらどこまで強くなるんだろう?


 そんなあまりの激しい打ち合いに、私達や周りで見学してる探索者達は呆然と戦いを見守っている。


「速すぎて何してるか分かんないわ」

「ムニもスレイさんもスゲェな!」

「後で俺も模擬戦してもらおうと思ってたがやめとく。ありゃバケモンだな」

「あんなに激しく…怪我しないか心配です」


 カァン!と、一際大きく剣がぶつかり合う音と共に再び両者が離れる。


「これじゃどっちが試されてるのか分かんねぇ。ここらで全力で行かせて貰うぞ」


 そうスレイさんが言って、魔力を練り始めた。スレイさんの身体の周りが陽炎の様にゆらめき始める。


『中々の練度の身体強化だな。ではあたしも全力で相手しようか』


 ムニの全力…?


 戦いが始まってから初めてムニがちゃんとした構えを取った。大上段の構え。ムニの周囲には魔力が渦巻いている。

 対峙するスレイさんはその圧倒的なムニの闘気に近づけないでいる。


『”我が一太刀に斬れぬモノ無し”』


 ムニが呪文らしき物を唱えたと同時に強化されたこの目にさえ見えない速度で振り下ろされた木刀。と、同時にスレイさんの持っていた木剣が音も無く斬り飛ばされた。刃の付いてない木刀な上、数メートルは離れているのにだ。


「…降参だ。なんだよ今の技は」

『私の奥義の一つだな』

「…詳しく聞きたい所だが奥義って言うからには秘密なんだろう?」

『別に教えても良いんだが、極意を掴むには何十年も掛かるだろうな。人間だと先に寿命が来るだろう』

「そうか…まぁ良いとするか。オリビアちゃん、終わったぞ」


 スレイさんが受付のお姉さんもとい、オリビアさんに声を掛けた。


「まさかスレイさんが負けるとは思ってませんでした。実技は文句無しですね。Cランクと致しましょう」


 この後受付で手続きをして、晴れてムニはCランクとなった。





 あの後、ムニのカードを受け取ると同時に森の異変の調査への参加を皆で申請して数日後。今いるのは街の入り口の防壁門の前。


「皆、よく集まってくれた。俺はこの探索部隊を統括する事になったこの街のギルドマスターのクライブだ。皆には私の指示に従ってもらうようになる。今回集まってもらった者で、原因の究明と、魔物の間引きをして貰う事になる。今回の探索で何か分かった事が有れば俺に伝えて貰いたい。また、決して無理はしない様、怪我などした場合は早めに探索を切り上げてくれ」


 今この場には数十人の人達が待機している。森の異変の調査に参加する探索者達だ。


「…では、チームを作って貰いたい。なるべくバランスの良いメンバーを揃えてくれ」


 前は斥候が出来るクイナさんと回復魔術が使えるファリスさんを仲間にして探索したけど、今回は私、リューゼさん、リエルさんに加えてミケイ君とエルザちゃん、更にはムニも一緒だ。ヒムロも居る。サクヤちゃんはお留守番。

 メンバー的には十分だし、このままでいいかな?でも斥候が出来る人は欲しいと言えば欲しい。クイナさんを見かけたら声を掛けようか。が、ちょっと探してみたけど見つけられない。そうこうしてる内に大体メンバーが固まってしまった様だ。


 そしてクライブさんの激励を背に森に向かう探索者達。私達も遅れないように森に入った。

 森の中を行く事数十分。


「アレはターミネートボアですね」

『デカいなー』

「並の探索者じゃキツい魔物だな」

「私が先制で魔術を撃つわ」

「お願いします」


 ターミネートボア。体高2メートル程の大きさな上に全身筋肉で覆われていて、その身体から繰り出される突進で目の前にある物を全て薙ぎ倒す脅威の猪。

 そんな猪にリエルさんが魔術を放つ。


「〜〜〜、ストーンキャノン!」


 ギュン!ダァァン!!と、勢いよく放たれた石砲の魔術がターミネートボアの足にぶつかる。が、分厚い筋肉に弾かれてしまう。


「あんまり効いてないわね…」

「こっちに気付きましたね」

「突進してくるぞ!」

「避けて!」


 巨体だというのに初動から凄いスピードでこちらに向かって突進してくるターミネートボア。私達は急いで左右に避ける。そのまま私達の後ろにあった木にぶつかり、その木をへし折った。


「すげーパワーだな!」

「よし、今のうちに攻撃するぞ!」

「うらぁぁ!」

「〜〜〜、フリーズランス!」


 リューゼさんが大剣を叩き込み、ミケイ君が剣を突き刺す。更にリエルさんの氷槍の魔術が

身体に深く突き刺さった。それでもまだ元気そうに暴れながらこちらを向いたターミネートボア。


「ヒムロ、動きやすい程度に大きくなって!」

『承知』


 ニャオォーーーーン!体高1メートル半ぐらいのサイズになったヒムロ。そのままターミネートボアを回り込みながら爪で無数の傷をつける。それに気を取られたのかヒムロの方を向いて突進の構えをした。


「ムニ、お願い!」

『任された!』


 ムニが見えない程の速度で木を蹴って立体的な機動をしながらターミネートボアを深く切り刻む。その間にリューゼさんやミケイ君も攻撃を加え、次第に動きがぎこちなくなっていく猪。遂には血が足りなくなったのか横倒しに倒れた。


「なんとかなったな」

「中々強かったわね」


 ターミネートボアの巨体から魔石をなんとか抜き取り、私達は更に奥地へと進む。


 他にもヴォーパルキャットにイービルエイプと、本来なら森のもっと奥地に生息する強い魔物に時間を取られながら、何とか森を奥へ奥へと進んでいく。


 そして森が途切れ、結構な広さの平地が広がった場所にたどり着いた。その中心には…


「うわぁ…」

「アレが今回の原因かしら?」


 そいつは、寝そべっていた身体を起こし、大きな翼を更に大きく見える様に広げ、こちらを威嚇する様に睨みつけている。


「ミケイ君…」


 と、エルザちゃんがミケイ君の袖を掴む。


「流石の俺もアレに突っ込む勇気は無いぞ」

「…しかしこの距離で気づかれるとはな」


 私達の視線の先に居るのは…


「GYAOOOOON!」


 ドラゴンだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ