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第5世界 ユグドラシル

「ここがユグドラシルかー。フレイザムに比べて空気が綺麗だね」

「だね、砂っぽくない」


 なんやかんやと面倒臭いワープゲートの手続きを終え、第5世界ユグドラシルのハーティの街へとやって来た私達。


「なんかエルフさんが多い」

「言われてみれば確かに」

「エルフは美形ばっかりって聞くけど、本当だったんだねー」


 薄緑の艶やかな髪、白い肌、透き通る様な緑の瞳、そして尖った耳。そして道をすれ違うエルフさん達は、言われてみれば確かに美形ばっかりだ。


 まぁそれは置いておいて、取り敢えずハーティの街の宿を取り、ご飯を食べる事にする。

 宿の食堂はそれなりに繁盛しているようで、結構人が多い。

 日替わり定食を2人分、あと、ヒムロ用に肉のミンチを無理言って注文して番号札を貰った後、席に座った。


 周りの人達を眺めながらセルフで入れてきたお冷を飲む。


「狩人っぽい人が多いねー」

「動物とかを仕留めて生計を立ててるのかな?」


 弓を持っている人が多い。格好も殆どの人が軽装だ。


「明日は街の人に世界樹について教えてもらわなきゃね」

「その占い師のトキネさんって人には何て言われたのー?」

「確か…世界樹の天辺に登ってみるのも良いでしょう…だったかな?」

「登ってみるのも良いでしょう…?天辺に鍵があるのかな?」

「どうだろう?そうだと話が早いんだけど」

「もしそうなら天辺まで絨毯で行けば1発だね!」

「そんなに順調に行くかな…?」

「お、見ない顔だけど、嬢ちゃん達はユグドラシルに来たばっかりかい?」


 30手前と言ったぐらいの狩人風の男の人が話しかけてきた。


「そうです、ちょっと世界樹に用事があって」

「世界樹に?何の用事があるのか知らねえけど、あの地域は入れないと思うぞ」

「入れない?なんでですか?」

「あの辺りはエルフ達の自治領だから、勝手に入るとエルフ達に捕まるんだ」

「捕まったらどうなるんですかー?」

「一応帰して貰えるが、結構長い事拘束されるらしいぞ?」

「へー」

「それでも行きたい場合、どうすれば?」

「エルフと一緒に行動すれば良いんじゃ無いかな?そこまでして行こうと言う奴見た事ないから知らんけど」

「そうですか、有難うございます」

「で、嬢ちゃん達はどこから来たんだ?」

「アースラウンドです」

「あぁ、第3世界の。見たところ2人共魔術師か?」

「そうですねー。おじさんはこのユグドラシル出身?」

「はは、嬢ちゃん達からしたらおじさんか。俺は第6世界のサタリアから来たんだ」

「確か農業が盛んな世界だとか?」

「そうそう。だけど実家の農家を継げなかった俺は心機一転、このユグドラシルに来た訳だ。もうここに来て10年以上になるよ」

「長いですね」

「だろ?もう地元みたいなもんだぜ…おっと、俺番号呼ばれたから行ってくるわ。じゃあなお2人さん」

「はーい」


 立ち去って行くおじさん。それから程なくして私達も番号を呼ばれたので料理を受け取ってテーブルに座る。


「ここの食べ物はちょっと緑が多いけどお肉もあるし、何より辛く無いってのがいいね!」

「フレイザムの食事は全体的にスパイスが効いてたからね」


 今食べてる定食は自然の味そのままドン!みたいな感じだ。それでも十分に美味しい。ビタミンも取れそうだ。


「もう砂漠の時みたいに世界樹までずっと飛んで行こうか?」

「エルフさんに地上から矢とか魔術を撃たれたら危ないよー?絨毯に穴でも空いたら落ちちゃう」

「だよねー。どうしよっかなぁ」

「エルフさんに道案内を頼んでみるー?」

「やってくれる人いるかな?」

「探せば1人ぐらい見つかるんじゃない?」

「うーん…」


 その日は結局答えの出ないまま寝ることになった。





 翌日、街の人に話を聞いていると、ハンターギルドで依頼してみたら?と言われたので試しに行ってみる事にした。

 探索者協会じゃなくてハンターギルド。狩人達がその日取ってきた獲物を売ったり、逆に素材を融通してもらったり、そう言った互助会?みたいな所らしい。


 到着して眺めてみると、2階建てだけどそこそこ大きな建物で、入り口は大きめのスイングドアになっている。見た目は西部劇に出てくる感じのドアだ。


 ギギィ…と、中に入ってみると狩人達がこちらに目線を向ける。私達2人だけ魔術師の格好をしててメチャクチャ場違いだ。

 近くに居たガタイの良い男の人が話しかけてくる。


「君達、来る所間違えてないか?魔術師協会ならもっと南だぞ?」

「いや、依頼を受けて貰えるって聞いて来たんですけど…」

「確かに依頼は受けているが…どんな依頼だ?」

「世界樹まで連れてってほしいっていう…」

「何しに?」

「とあるアイテムを手に入れる為です」

「アイテム?ふーん?世界樹ねぇ…おい、トーヤ」

「なんだい?」


 話しかけられたトーヤと呼ばれた男の…エルフの人がこちらを振り向く。


「この子達を世界樹迄連れて行くことは出来るか?」

「出来るけど、自治領にいるエルフの許可がいるね。拘束期間に見合うそれなりの報酬が出せないならやりたくないかな」

「だとさ、嬢ちゃん達は依頼料としてどれぐらい出せるんだ?」


 どれぐらい…


「200万ルビ迄なら」

「お?結構出せるんだな?どうだトーヤ?」

「へー、それなら充分だ。君達の名前は?」

「マコです」「ラザだよ」

「マコにラザね。俺が君達を世界樹に案内するで良かったかな?」

「はい、お願いします」

「後で何故世界樹に行くのか、詳しい話を聞かせてもらうよ?理由が分からないままだとエルフ達を説得出来ないからね」


 そんな感じでトーヤさんが案内人として仲間になった。

 ハーティの街を出てから、どうやって行くか話し合った結果、絨毯に私とラザちゃんとヒムロが乗り、ラザちゃんの箒にトーヤさんが乗る感じで行く事にした。


 空に上るとハーティの街の周りは見渡す限りの森。どっちの方向を見ても地平線の彼方まで木が連なっている。


「本当なら森の中を歩いて進んで1ヶ月は掛かるんだけどね。コレなら世界樹まですぐだ」


 げ、1ヶ月も掛かるんだったのか。良かった、飛んでいく事にして。


「途中迄このまま飛んでいくけど、多分何処かで狼煙が上るから、その時は一回地上に降りてね。でないとエルフ達の魔術が飛んでくるよ」

「分かりました」


 そのままトーヤさんに先導され、森の上を飛んでいく。


 そのまま数時間程。トーヤさんの言っていた通りに森に狼煙が上がった。


「降りようか」「はい」


 地上に降りると、すぐに十数人のエルフ達にに囲まれた…ちょっと怖い。コッソリとコスモで索敵してみる。ラザちゃんとトーヤさんを除くエルフ達は一応全員黄色だった。敵意は無い様で一安心。


「貴様等は何者か!」


 代表者らしき女性のエルフがコチラに誰何してくる。


「私はハーティの街からやってきたトーヤ。この2人の人間族を世界樹に連れて行く途中だ」

「世界樹に何の用がある?」

「この子の求めている物が世界樹の天辺、またはその周囲にあると言う占いを受けて探しに来たそうだ」

「占い?求めている物とは?」

「はい、この魔導書の鍵を探しています」


 と、コスモを見せてみる。


「鍵…?よく分からんが…では我々の街に案内をするから女王様に伺いを立ててみろ」

「分かりました」と、トーヤさん。


 エルフの女王様…どんな人だろう?





 エルフ達に連れられて森の中を歩く事2時間程。バックパックの重さもあってくたくたになりながらもたどり着いたのは、街壁は一応あるものの、集落と言っても間違いでは無い規模の街だった。

 街の中を連れ立って歩いていく。


「小さい街だろ?ここでエルフ達は暮らしてるんだ。俺みたいにここを出て人間たちと一緒になって狩人や魔術師をしてるエルフも多いけどね」

「何でトーヤさんはこの街を出たんですか?」

「ここの生活は刺激が無さすぎるんだ。毎日畑を弄って、動物や魔物を狩って、服とかを作って…自給自足のスローライフ。それが嫌になるエルフも多いんだよ」

「成る程です」


 さて、そろそろ女王様の所に着いてくれないかな?もしくはせめて荷物を置きたいんだけど…


 街を奥に行く事少し、館に着いた。此処が女王様の棲家らしい。この街で見る他の建物と比べるとかなり大きい。


「入れ」

「あぁ」「お邪魔します」「しまーす」


 中に入るとロビーになっていて、エルフさん達が談笑している姿がチラホラ。


 女性エルフさんは私達を奥の方のソファーへ案内する。


「此処で少し待っていてくれ」


 と、言って何処かへ行ってしまった女性エルフさん。取り敢えず重たかった荷物を下ろす。あー、肩が痛い。


「うー、くたくただよ」

「マコっちはまだまだ鍛えが足りないねー」

「そもそもその荷物、重そうだけど何を詰めてるんだい?」

「服とか、ポーション類とか、鍋とか、保存食とか、その他色々?」

「鍋入れてるの?マコっちそのバックパックちょっと持たせてよ」

「良いけど」

「わ、コレ確かに重い。コレ担いで2時間歩いたらそりゃくたくたになるね」

「でしょう?ラザちゃんは何入れてるのさ?」

「えーと、服でしょー?それからー…」


 それから少しして女性エルフさんがやってきた。


「女王様が今からお会いになるそうだ。案内する」


 ヒムロに荷物番を頼んで、私達はエルフの女王様に謁見する事になった。





「皆さんお待たせしました。私がこの街の女王を務めております、シアラと申します。どうか楽になさってくださいね」


 女王様はかなり柔らかい雰囲気をもった人だった。見た目が特別違うと言う事も無くエルフ的な外見で、想像していたより見た目が若い。


「先程ミーナ隊長から話を伺いましたが、何やら鍵?を探しているとか。それで世界樹の天辺に行きたいと言う話でしたが相違ないでしょうか?」

「はい、間違いありません」

「そうですか。特に問題は有りませんので、許可を与えましょう。但し、守って欲しい事が少し御座います」

「何でしょう?」

「世界樹及びその付近の森で火を使わない事。世界樹の枝を無闇に折ったり傷つけたりしない事。あと、世界樹の天辺には昔からドラゴンが住み着いてます。そのドラゴンと敵対しない事。この3点を守って下さい」

「ドラゴンが居るんですか?」

「はい、長く生きた知恵のあるドラゴンですので、普通に会話をする事が出来ます」

「そうなんですか、わかりました」


 会話の出来るドラゴンか。ちょっと楽しみだ。


「ではこの場はコレにて。どうぞ退室して下さい」


 女王様に促されて退室する私達。しかし話が早い人だったな。


 女性エルフさん改め、ミーナ隊長に連れられて、女王の館を出て一軒の家に着いた。


「ここは?」

「私の家だ。今日はもうすぐ日が暮れる。この時間から出発するのも大変だろうから、泊まっていくといい」


 と、言うので有りがたく泊まらせてもらう事にした。




 翌朝、ベッドから起きた私は外の井戸で水を汲み、顔を洗う。タオルで水気を拭き取った後、少し体操をしてから服を着替えにミーナさん宅に戻った。

 少しして皆起きてきたので挨拶を交わして、ご飯を食べさせてもらう。


「早速今日から行くのか?」

「はい、出来るだけ早く鍵を集めたいので」

「その本の鍵とは一体何なんだ?集めるとどうなるんだ?」

「あー」


 ミーナさんにコスモとその鍵について説明した。


「元の世界に帰る為か。ついでに鍵を集めれば集めるほどマコが強くなると?」

「そんな感じです」

「それは面白そうだな」

「結構大変ですよ?」


 コレでトキネさんの占いが無ければ何処をどう探せば良いか分からない。ピラミッドの王の墓なんてノーヒントじゃ探さないだろうし…一生見つけられないんじゃ無いだろうか?


 食事を終えて準備を済ませて、私達は出発する事にした。


「助かりました。ご飯まで頂いちゃって」

「これぐらい構わないさ。マコ達の旅の無事を祈っておくよ」

「ミーナさんありがとうございました」

「あぁ、気をつけてな」


 街の広場から絨毯と箒に乗って空に上がる。


「トーヤさん、どれぐらいで世界樹に着きそうですか?」

「そうだね、大体2時間ぐらいじゃないかな?」

「そんなに遠くないね。良かったー」

「歩いて行ったら10日は掛かるけどね」

「絨毯作っといて良かったね」

「ねー」


 絨毯と箒を発進させて、世界樹に向けて飛んでいく。

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