フレイザムへ
師匠の家から空を飛んで、途中の街で宿に泊まりながら4日程でキョットーに着いた。絨毯へラザちゃんと2人乗り、ヒムロの運転だ。ヒムロが連れてきたサクヤちゃんは今回師匠宅に預けて来た。まだ子猫すぎて危ないので。
私の荷物はバックパック1つ。ラザちゃんは空飛ぶ箒とバックパックだ。内容物は乙女の秘密。
街門を抜け、見えてくるのはキョットーの街並み。
「今日はこの街の宿に泊まろうか」
「初めて来たけど何もかもがでっかいねー!」
「国の中心街だからね」
おのぼりさんの様にキョロキョロと周りを見回すラザちゃん。
「あ、遠くに城があるー!すっごいおっきい!ねぇねぇ、王子様はカッコいいかな?」
「あー、どうなんだろね?」
そういえば見た事はない。王子様ねぇ。王子様と結婚出来れば玉の輿なんて言うけど、そんないいもんじゃ無いと思うんだけどな。政が大変だろうし、ドロドロの大奥事情みたいなのもありそうだし。絶対自由に暮らせる方がいい。
少し探してそこそこ良い宿を確保、まだ昼前後なので荷物を置いてヒムロに留守番して貰い、ラザちゃんと2人でキョットー見物と洒落込む。
「皆なんかオシャレだなー」
「確かに良い服着てる人が多いね」
「私達、ちょっと田舎者っぽい?」
「うーん、そうかもね?とは言っても同じ様な魔術師の格好してる人もチラホラいるよ」
「そうだね、あ!獣人の人だー!猫だよ猫!ねぇマコっち!」
「南に来るとそんなに珍しくは無いんだよラザちゃん…それより声が大きい」
「えー?普通だよー」
と、割とどうでもいい会話をしながら、色んな店を冷やかしていく私とラザちゃん。取り敢えずお昼ご飯という事で入ったのは、自家製手打ち麺を出してるうどん屋さんでバツツル製麺所という名前だ。
店内に入るとすぐそこで生地を捏ねている人がいて、威勢の良い声で「いらっしゃいませー!」と出迎えられた。
席に座って、ラザちゃんと一緒にメニューを眺める。
「キツネうどんにしようかな?」
「私は肉うどんー」
私的にキツネうどんは至高だと思う。お揚げは味もさることながら食感もモチモチとしてて尚且つ歯ごたえもそれなりにあってジューシー。
だけどラザちゃんの頼んだ肉うどんも素晴らしい。肉の脂がツユに溶けて、うどん全体が肉の旨味でグレードアップ。あの麺とお肉の相乗効果には私も心揺らぎそうになる。
更にサイドメニューで鳥天や海老天なんかをチョイス。お腹空いてるとついつい一杯頼んじゃうよね!
店員さんに声を掛けて注文を済ませ、持ってきてくれたお冷を飲む。
「うどん屋かぁ。ナワイカとは違ってキョットーは色んなお店があるんだねー」
「そだね、専門店も多くて欲しい物や食べたい物は大体手に入るよ」
「途中の店で並んでたケーキが食べたいな」
「じゃあこの後で寄ろうか」
なんてたわいもない話をしてたら、注文したうどんが届いたので美味しくいただく。
「次の目的地は確かトシュコだっけ?」
「そうそう。エスペリアの南の端」
「ワープゲートってどんなんだろうね?」
「さぁ…でもゲートって言うだけあって門の形をしてるんじゃ無いかなぁ?」
「想像つかないねー…こっからどれぐらいで着くかな?」
「うーん、キョットーより南に行ったことないから分からないけど、10日以内には着くんじゃ無い?」
「10日かー…空を飛んで旅すると結構退屈」
「確かにね。魔物にも会わないし」
★
それから思ってたより早い6日でトシュコにたどり着いた。
他の街より少し発展してるかな?という感じの街並みで、人間族に獣人、エルフっぽい人やドワーフらしき人等、通りを歩く人達の人種が千差万別だ。
「あの街の上に飛び出してる丸いのがワープゲートかなー?」
「多分そうなんじゃないかな?」
「フレイザムかー、どんな所だろうね?」
「まず名前が暑そうだよね」
「確かにー」
ワープゲートらしき物へ向かって歩いていくと、広場にたどり着いた。ここからだと広場の中心にあるワープゲート?の上の部分が見えるけど、見た目はほぼ地球儀。中の球がゆっくりと回っている。
明らかにあの建造物だけ雰囲気が違う。違う文明の産物なのだろうか?周りの雰囲気と比べて違和感しか無い。
「何か並んでるね」
「あの列に並べば良いのかな?」
ワープゲートの周りには壁があって、入り口の所に十数人程の兵士らしき人が、ワープする人やして来た人の身体検査や出国、入国手続き等をしている様だ。なんだか忙しそう。
列に並んで暫く待っていると私達の順番かやって来た。兵士さんがこっちに来て尋ねられた。
「何処へ行くんだい?」
「フレイザムへ行きたいと思ってます」
「フレイザムか。ではこの出国の為の書類を書いて貰う事になるけどいいかな?」
「はい」
手渡された書類に名前や年齢、目的なんかを記入していき、兵士の人に確認してもらう。
「ふうん、目的は観光?フレイザムは観光地じゃないぞ?」
「私達、見聞を広める修行の旅の途中なんです」
「あー、それで観光か。まぁ良いだろう」
と、言って出国を承認するハンコを押して貰った。
「この書類は向こうの世界で国に入国する為に必要だから大切に持っておく様に。失くすと結構面倒臭い事になるから注意する様に」
「はい、有難うございました」
「ましたー」
「ん、気をつけてな」
兵士の人に見送られて壁の内側にあるワープゲートに近づく。近くでみると、一層異様だ。地球儀の球に当たる位置にある、大きな半透明の球体の中に、大体10個ほどの玉が中心に沿ってゆっくりと、しかしバラバラに回っている。
少しの間ワープゲートに魅入っていた私達。そんな私達に案内をする人だろうか?職員らしき人が声を掛けてきた。
「ここに来るのは初めてかい?」
「はい、そうです」
「何処へ行くんだい?」
「フレイザムなんですけど…」
「じゃあこのワープゲートの台座に手を当てて、フレイザムと言えば転送されるよ」
「あ、そんな簡単なんですね。分かりました…フレイザム!」
台座に手を置き、移動したい世界名を唱える。すると私の身体が徐々に光の粒子になっていく。隣を見るとラザちゃんも光っていた。
やがて光で何も見えなくなり…一瞬の浮遊感と共にその光が収まった時には既に違う場所に来ていた。隣にはラザちゃんもいる。不思議な体験だ。
「凄いね、何かふわぁーってなったよー」
「このワープゲート凄いね。仕組みが全く分からないよ」
「だねー」
「あ、君たちこっちに来てねー」
兵士さんに連れられてワープゲートの間を出て、受付に通される。ここでまた身体検査をされ、出国手続きの書類を見せ…中々手間が掛かるな。
なんやかんやと諸々が終わり、解放される迄に30分程掛かった。
「世界を移動するのは結構大変なんだねー」
「うん、こんな面倒だとは思わなかった」
気を取り直して。フレイザムに着いたので、先ずはこのラクシュの街で1泊。付近の住民達に聞き込みをして、鍵があると言うピラミッドの情報を教えてもらおう。
翌日。
この街の人達に聞き込みをしたところ、ピラミッドはこの街から北へ馬車で4日の所にあるリルハという街を、更に別の乗り物に乗り換えて砂漠を半月以上北上した先にあるルーベンの街の近くにあるそうだ。
「砂漠かぁ。でも絨毯なら2、3日で行けそうかな?」
「ねぇマコっち、砂漠ってどんな所かなー?」
「砂ばっかりの所だよ。凄く暑かったり寒かったりするらしいよ」
「何かあんまり想像つかないけど。テントとか毛布とか用意した方が良いかなー?」
「かな?出来れば砂漠で夜過ごしたく無いんだけど…」
砂漠の過ごし方を知らないので何があるか分からなくて怖い。出来れば夜も飛んでいたいけど、真っ暗な中飛ぶのも怖いし、ヒムロも休ませてあげないとだし。
「次の街で案内してくれる人を見つけて砂漠を歩いて渡るのはー?」
「それだと半月掛かっちゃうよ?」
「あー、じゃあ私箒あるから自分で飛んで、案内の人絨毯の後ろに乗せてさー」
「うーん、よく知らない人を後ろに乗せるのは嫌」
「なんでー?」
「それで前に首切られた事あるから」
「わぉ…確かにそう考えると無防備だよね。私は良いの?」
「ん、ラザちゃんなら大丈夫」
「へへ、そっかー」
「砂漠の夜の過ごし方を詳しく聞いて、何泊かする覚悟で行こうか」
「そうしようー」
街の外に出て絨毯に乗り、ヒムロに飛ばして貰う。
そのまま道の上を絨毯で6時間程飛んで、次の街、リルハに到着した。今は昼過ぎと言った所。
今晩の宿を取り、荷物をヒムロに見て貰ってリルハの街で聞き込みを開始する。
街の人達に話を聞くと…
「砂漠の夜の過ごし方?そもそも女の子2人で砂漠で寝ようもんなら盗賊や魔物に襲われるぞ?悪い事言わないからやめとけ」
「貴女達2人で?やめときなさい、ここら辺の魔物は狡猾で獰猛よ。それに動物も肉食系が多いから探知の鈴も余り意味ないわ」
「嬢ちゃん達に砂漠を行くのは無理だよ。ここの砂漠は昼間は40度超え、夜は零下を下回る事もある過酷な環境だ。魔物も出る。ルーベンとの間を往復してるキャラバンも、頻繁に犠牲が出るって話だ」
…等々、一言目にはやめておけと言われる事が多く、中々情報が集まらない。
「ルーベンの街に行くにはキャラバンに便乗するのが正規のルートみたいだねー」
「そういえば探索者って居ないのかな?護衛の依頼とか頼めないかな?」
「この世界には居ないんじゃない?何かそれっぽい人見かけないしー」
「かなぁ?ちょっと聞いてみよう、すみませーん!」
「ん?何かな?」
「この国に探索者って居ないんですか?」
「探索者?さぁ?聞いた事ないね」
「そうですか、ありがとうございます」
他にも何人か聞いてみたけど、どうも探索者協会自体がない様だ。
「もう、こうなったら昼に私達が、夜に目が見えるヒムロに飛ばして貰って、徹夜で行こう!そしたら多分翌日には着くんじゃないかな?」
「分かったー、じゃあ明日は朝早くから出発だね」
という方向性で行く事にした私達はちょっと早めに就寝する事にした。




