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 起き上がって周りをゆっくりと見渡す。どう見ても森の中だ。天国…じゃないだろうな。地獄でも無さそうだけど。


 はて?何で森で寝っ転がってたの?


 意識を失う前は何していたっけ?…そう、ハイリア王国のスパイだったタカヒロさんに首を切られて…私、死んだのかな?と、首元を撫でてみる。が、傷らしきものはない。確かに切られた筈なのに。


 そのまま下を見ると服が学校の制服に変わっている。足には上履き。


 右手にはコスモがある。あれ?コスモも何か見た目が変わってる…というか鍵を開ける前の最初の見た目に戻ってる。


 どういうこと…?


 手の中のコスモを開いてみる。すると、


”はい、端的に説明いたしますと、貴女がタカヒロ氏の攻撃で死にかけた為、私が魔法で始まりの時点…要するに過去に飛ばしました。ここはこの世界に来たばかりの時に居たナワイカの森の奥です”


 …過去に戻ってきた…?コスモ、そんな事が出来るの?


「コスモの見た目が最初の状態に戻ってるけど、もしかして封印も最初の状態なの?」

”はい、鍵も集め直しですね”

「そっかー、まぁ仕方ない…か」


 まぁでもあのまま死んでしまうよりはやり直せるだけ良かったのかなぁ?


 もう一度周囲を見渡してみる。視界に広がる森…よく見れば確かに見たことある様な景色だ。


 さて、ここからどうするかな…やっぱり先ずはアビラタ師匠の所へ行くべきだろうな。


 取り敢えず歩き始めた私は、落ちてるブトゥバスの木の枝やラルーの細枝等を勿体ない精神で拾いながら、師匠の家に向かって歩いていく。この辺りは箒の素材を集める為に何度か来たことがあるから大体の道は分かる。

 奥地で余りウロチョロしてると魔物が出てくる可能性もあるので急足だ。しかし上履き歩きにくいな。制服も森歩きには合ってないね。後、過去に戻ったせいか私の筋力が思ってるよりない事に気がついた。歩いてて辛い。あー、また特訓しなきゃだなぁ。

 何て考えながら暫く歩いてると車一台通れるかなってぐらいの道に行き当たった。コレを左に曲がれば師匠の家。右に曲がればナワイカの街だ。


 …このままナワイカの街に行くとどんな感じになるだろう?先ず守衛さんに止められて、市民証とかが無いから取調室で話をしなきゃでしょ?そこから…何も出来ないなー。探索者協会に登録したって今の私じゃFランクだろうからちまちま稼がなきゃならないし、あ、でも箒を作ればお金は稼げるな。生きていけない事もないと。でもやっぱり師匠のお世話になった方が色々と捗るよね。今回も居候させて貰えるかなぁ?


 という訳で道を左に、道なりに歩いて行く。


「あ、見えてきた」


 煙突が屋根から飛び出した見た目の2階建ての一軒家。師匠の家だ。

 一先ず抱えていた枝達を一旦玄関横に置いて…あ、ちょっと緊張する。

 ドアをノックしながら声を掛ける。


コンコン「すみませーん!」


 ちょっと待ってみる。するとガチャッ、ギィィ…とドアが開いた。


 とんがり帽子にローブ姿の、一言で表すなら「魔女」。アビラタさんだ。


「ふむ、まぁ入んなさいな」

「ありがとうございます」


 アビラタさんはそう言うなり家の中に入って行った。それについていく私。





「そこの椅子にでも座んな」

「はい」


 勧めてくれた椅子に座り、周りを見渡す。鍋やらフラスコやらが所狭しと並んでる。うーん、師匠の家だなー。


「先ずはこのスープでも飲んで身体を温めるといい」

「ありがとうございます!」


 スープを飲んで一息。確かこの日のスープは薬草が入ってるんだったっけな?じわりと回復する体力にほぅ…と息を吐くと、師匠がコチラを見つめていた。

 

「…お主、不思議と落ち着いておるな。格好を見た所この世界に来たばかりの彷徨い人に見えるが」

「あぁ、それは…実はこの状況、2回目なんですよ」

「ん?2回目とはどういう意味じゃ?」

「えーっと…今から1年程先の未来で私、殺されかけたんですけど、この本の力で過去に戻ってきたんです」

「…ふむ?」

「私が前いた世界をA、今のこの世界をBとします。Aの世界に来た当初、右も左も分からない私はアビラタさんにお世話になったんですが、Aの世界の1年後に殺されかけた私はこの本の力でBの世界の始まりの時点に戻ってきたんです。で、今ここに…この家に来るのは2回目なんです。この後ラザちゃんが大荷物で帰ってきて、師匠ー!荷物がー!って叫ぶという事も分かります」

「ほぅほぅ、成る程のぅ。面白いの。その本を見せてもらっても?」

「はい、いいですよ」


 師匠にコスモを渡す。色んな角度から眺めてる。


「その本…コスモって言うんですけど、私以外には使えなくて、見ても多分何も分からないとは思います」

「ふーむ、時空を越える力がある本か。凄いのぅ」

「あ、そうだ。私の名前はマコって言います」

「うむ、マコじゃな」

「で、いきなりやってきて厚かましい話なんですが…私を暫くここに置いておいてもらう事は出来ないでしょうか?自立出来る様になるまでで良いので…」

「いいぞ?面白そうじゃし、もっと話を聞きたいからの」

「ほんとですか?良かったー」


 流石師匠、優しい!


 それからも暫く師匠と会話をしていると、


「師匠〜!帰ってきましたよー師匠ー!」


 と、元気な声が玄関の方から聴こえてきた。ラザちゃんだ。


「そんなに大声出さなくとも聞こえとるよ、早く入っておいで」

「師匠ー!手が塞がってます!荷物が大量過ぎてドアを開けられません!」

「一回荷物を地面におけばいいじゃろ」

「だってこの荷物、割れ物注意って書いてあるんですよー!割れても私の責任にならないのであれば!地面に置く事も吝かではないですけどー!」

「…マコの言っとった通りじゃな。しょうがないのう、この老婆を働かせるとは」


「あ、アビラタさん、私が開けてきましょうか?」


「ぬ、良いのか?じゃあお願いしようか「師匠ー!開けてくださーい!」


 相変わらず賑やかだなぁ。

「今開けまーす!」「ししょ…」


 私の声でラザちゃんの声が止まったけど気にせずオープン!私をみた途端固まるラザちゃん。


「…誰ですか?何故師匠の家にいるのですか?…もしかして流行りの詐欺ですか!?年のいった師匠をカモにしようという詐欺ですか!?この家にはお金なんてないですよー!」

「大丈夫、落ち着いてラザちゃん」

「…何故私の名前を…はっ!下調べまでしてー!用意周到かこのぅ!手が塞がってなければすぐさま叩き出してやるのにぃ!」

「どぅどぅ」

「何がどぅどぅですか、馬鹿にしてるんですかー!?表でろこのやろぉ!木の棒でビシバシ叩いてやる!」

「ごめんなさい、あははは」

「何で笑ったの?師匠ー!?この人なんですかー!?」

「くく、楽しそうじゃのう。今日から暫くウチに寝泊まりする事になったマコじゃよ。ちゃんと挨拶しなさい」

「ん?そうなんですか?何で泊まる事に?」

「このマコは彷徨い人で、特殊な事情があって自立出来るまで面倒を見る事になったのじゃ」

「特殊な事情とはなんですかー?」

「後で説明するから一先ずその荷物を中に置くと良い」

「わかりましたー」

「取り敢えずお茶を淹れてくるかの」





 師匠のお茶で一服。


「未来から戻ってきた…そう言われてもそうですかとは中々頷けない話ですね。でも、詐欺の人じゃ無いって事は何となく分かりました。ギャーギャー言っちゃってごめんなさいマコさん」

「いえいえ、こちらこそ煽っちゃってごめんなさいねラザちゃん」


 …ちょっと沈黙が流れる。


「で、師匠、言われたものを大体買ってまいりましたー」

「大体?何か足らんのか?」

「ホベマの実の値段が高すぎて予定の3分の1程しか買えなかったのとラメの葉が品切れでしたー」

「予定の3分の1か。まぁ倉庫にまだ残ってるから注文分は足りるじゃろ。してもラメの葉が売り切れとは珍しいの、まぁ他の素材で代用すれば良いか」

「他には…」

「ふむふむ…」

「アレはどうすれば…」

「それはじゃな…」


 師匠とラザちゃんの、以前に一度聞いた会話を聞き流しながらゆっくりとお茶を啜る。


「こんな所かの。所でマコよ」

「はい、何でしょう?」

「前の世界ではワシと師弟契約を結んでいたのかの?」

「そうですね、コントラクトの魔術で弟子にして貰いました」

「…となると前の契約はどうなっているのかのう?試しにもう一度契約をしてみてもいいかの?」

「はい、お願いします」

「じゃあそこの絨毯の上でこの羽を持つんじゃ」


 この契約、懐かしいな。


「じゃあその羽を胸の前に掲げて…そうじゃ。では始めるからの」


 師匠が何処からともなく取り出した杖を振るって呪文を唱え出した。


「〜〜〜、コントラクト!」


 絨毯が光輝いて何かキラキラしたものが手にした羽根に集まり、消える。


「…ふむ、契約成立したの」

「と言うことは以前の契約は無効になってたって事ですよね?」

「そうなるの。マコの立てた仮説が違うのかも知らんの」

「Aの世界からBの平行世界に来た訳ではないって事でしょうか?」

「単純に未来Aから過去Aに戻って来たと言う可能性もある」

「服とかも過去と同じものですけど記憶は保持してるので、意識だけが過去のこの地点に飛んできた…」

「それが答えに近そうじゃの。じゃがそう仮定すると本来辿っていたマコが死んでしまったAの世界はそのまま続き、今のこの世界はその出来事を知っていて回避行動が取れるマコが居るBの世界が出来ると言う事にならんか?」

「そうなります…かね?」

「すると世界はマコが過去に遡る度に増えていく…それは果たして…」

「なんか難しい話してるですー…」



 あれから10日程経ちました。今は錬金術を教えて貰っている所。と、言っても一度習った事のある部分なので、スイスイと進める事が出来た。


「マコっち凄いよねー!調合とか教えなくても殆ど出来るし!」

「凄いのぅ、これなら早々に次の段階の錬金技術を教えても良さそうじゃな」

「はい、お願いします!」


 早い段階で次のレベルに到達出来るのは有難い。まだまだ知らないレシピもあるだろうからワクワクしてくる。


「まぁ今日は錬金術はここ迄じゃ。夕方迄の時間を体力作りに当てると良いの」

「走り込み付き合いますよー!」

「ありがとラザちゃん」


 そんな訳で次は走り込み。師匠の家の付近をぐるぐると走る。

 分かってた事だけど体力面では身体がこの世界に来た当初のレベルにまで戻ってしまっている私では、この世界の人であるラザちゃんに全く歯が立たない。また鍛えなきゃいけない。コレが中々大変だ。思ったように身体が付いてこないのが結構辛い。


「いっちにー!いっちにー!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「さんしー!さんしー!」


 ラザちゃんが買ってきてくれたハイネックブーツを履いて走り回る。

 ラザちゃんの体力底なしだなぁ…私ちょっと限界…


 走り込みが終われば素振りにラザちゃんとの打ち合い、その他諸々の特訓が終わって汗だくのクタクタだ。


「マコっちお疲れ様!師匠ー!そろそろ日が暮れそうなので帰ります!」

「気をつけてな」


 ブンブンと手を振って箒に跨りナワイカの街へかっ飛ばすラザちゃん。あんなにスピード出して怖くないのかなぁ?


「さぁ風呂の準備をしておいたから先に入っておいで」

「あー、ありがとうございます師匠」


 師匠の入れてくれたお風呂で身体を洗って、さっぱり。そのままコレまた師匠が作ってくれた晩御飯を食べて。至れり尽くせりです。


「…ほぅ、リーモアにドラゴンが出て来るのか」

「そうなんですよ。師匠とラザちゃんに手伝って貰って退治したんです。師匠のディバインサンダーはカッコよかったですねー」

「今回も出るんじゃろうな」

「その時はまたお願いするかも知れませんね」


 夜は新作の魔術紋様を絨毯に縫いながら師匠と話をしたりして。そう、空飛ぶ絨毯です。乗ってみて分かったけど箒よりは安定するし、何人か乗れる。荷物も積めるし良いんじゃないかなという事で。箒よりはスピード出ないけど、私はジェットコースターみたいなあの浮遊感を味わいたく無いのでコレで良いのです。縫うのが大変になるのでサイズは畳一畳ちょい程度の大きさ。2人用になるかな?それでも1ヶ月は掛かりそうな大作だ。一応お金稼ぎの一環で箒も作ってるけどね。


「しかしこの箒は見事なものじゃのう。完璧な紋様じゃ」

「お世話になる代わりと言ってはなんですが師匠にその1本あげますよ」

「いいのかの?乗るのが楽しみじゃ」


 あー、ヒムロを召喚するためにツカオ節作らなきゃな。今回も来てくれると良いけど。





 ガタゴトガタゴト…


 今は馬車にのってナワイカの街を目指している所です。何でナワイカに行っているのかというと、今朝師匠の家の前でトレーニングをしてた私の前にビックパイソンの魔物が現れて、それを師匠がアイシクルコフィンの魔術で氷漬けにして。

 で、それを売る為にラザちゃんが馬車を手配して売りに行く事になったのに私がついて来たと。まぁそういう訳です。これは前回にもあった流れなので、予め用意していた酔い止めの薬飴を舐めながら、周囲の景色を眺めている所。


 ガタゴトガタゴト…


 ナワイカに到着した私とラザちゃんは、守衛さんに私が彷徨い人で市民証などを持っていない事を説明してなんとか通して貰い。


「はい、これ、100万ルビね」

「ありがとーお兄さん!」

「こっちこそいいビックバイソンをありがとな」

「いえいえ、どういたしましてー!」


 と、市場でビックパイソンを下ろして卸業者の人に100万ルビで買い取って貰い。


 今思うと身体が大きいとはいえ、魔物1体100万ルビって中々の高値だな。


「マコっちコレからどうしようかー?」

「お昼だしご飯?でも私、お金持ってないけど」

「ご飯のお金とかは心配しなくても師匠が持たせてくれてるよー。ランチね、あ!そしたらアレだ、魔術師協会!あそこでランチが食べられるし、ついでにマコっちの登録もしておけば良いと思うー!」

「うん、分かった、そうしよっか」

「探索者協会でも良いけどあそこはちょっと荒くれ者が多くてうるさいから落ち着かないんだよねー、昼間っから酒飲んでる人達もいたりして絡まれたりねー」

「あー、それはヤダね」


 確かに探索者協会は絡まれるな。うん、絡まれたわ。その時はムニがボッコボコにしてたけど。


 馬車を返した後、2人でナワイカの街を歩きながら魔術師協会へと向かう。


 やがて5階建ての大きくて綺麗な建物、魔術師協会に到着した。


「建物見ても驚かないね。やっぱりその前の世界?で来たことあるの?」と、ラザちゃん。

「うん。今と同じ状況でラザちゃんに連れられて来たね。その後も何回も来た事があるよ。

多分今日の受付はクレアさん」

「そうなの?」


 と、話しながら協会のドアを開けて中に入る。


 カランコロンカラン…


「あ、本当にクレアさんだ。クレアさーん!」

「あら、ラザちゃんいらっしゃい。その後ろの子は誰かな?」

「こないだ出来た妹弟子のマコっちだよー」

「マコッチちゃんね、はじめましてクレアです」

「あー。マコです。マコッチじゃなくて…」

「あらら、そしたらマコちゃんね、宜しくね」

「はい、宜しくお願いします、クレアさん」


 クレアさんも久しぶりだな。相変わらずおっとりしてる。


「所でラザちゃん達は何しにここへ?」

「ご飯食べに来たー!あと、マコっちの協会登録もするつもりー」

「あら、それじゃああっちのテーブルにどうぞ。お水汲んでくるから」

「はぁい!」「はい、お邪魔します」 


 窓際のテーブル席。優しい光の差し込む特等席だ。メニュー表を開き、視線を彷徨わせる。うーん、どれにしようかなぁ?と悩んでるうちに、クレアさんが来てしまった。


「メニューは決まったかしら?」

「私はハンバーグ定食!」

「私は生姜焼き定食で」

「ハンバーグ定食と生姜焼き定食ね。はい、承りましたっと。じゃあ少し待っててね」


 お冷を置いてカウンターの奥へ行くクレアさん。


「マコっちにはここの説明要らないんだよね?」

「うん。大丈夫」

「マコっちは本当に未来から来たんだねー」

「そうだよ?ラザちゃんの身体のホクロの場所まで知ってるよ」

「な!?何で!?未来で私に何したのマコっち!?」

「師匠の家で一緒にお風呂入った事が有るから」

「あ、なーんだ。良かった」

「うふふ」

「え?何も無いんだよね!?」


 ラザちゃんが顔を真っ赤にして食いついてくる。勿論そんな事実は無いけどね。


「もう、マコっち破廉恥だよ!」


 プイっと横を向いてしまったラザちゃんを眺めながら、コレからの事に思い耽る。


 暫く待っていると、クレアさんが料理をお盆に乗せてやってきた。


「はい、お待たせ〜、ハンバーグ定食と生姜焼き定食ね〜」


 この後ご飯を食べて、初級魔術師として登録してから帰った。





「それでは、始めるかの?」

「はい、お願いします!」


 1ヶ月程経ったある日。今から師匠宅のリビングで始めるのは使い魔召喚の儀式だ。

 勿論用意したのはツカオ節。会心の出来だ。魔術紋様の縫われた絨毯の真ん中にお皿を用意して設置。

 前回より儀式をする時期が早いけど、今回もヒムロが来てくれると良いなぁ。


「準備は終わったの。では始めるのじゃ」

「はい、では…

”我の名は「マコ」、類稀なる縁にて声届きし者よ、その運命に従い我が身の前に顕現せよ″

 ●、サモンファミリア!」


 パァァァァァ!っと凄い光がリビングを照らし始めた。眩しい。


 ァァァァ…と、やがて光が収まっていく。召喚は成功したかな?


 3メートルはあろうかという大きくしなやかで真っ白な身体、2つに分かれたゆらゆらとゆれる尻尾、その眼光は私をじーっと見つめて離さない。


 ヒムロだ!成功っ!


『この供物は何という?』

「あ、ツカオ節だよ」

『初めて聞くが、この供物は匂いからして食べ物であろう?』

「うん、そう」

『どうやって食べるのだ?硬すぎて齧れないのだが』

「削って食べるんだよ。ちょっと待っててね」


 用意していたナイフでお皿にモリモリとツカオ節を削る。それをぺろぺろと舐め取るヒムロ。


『ふむ、気に入った。日にコレ一本だ』

「あー、そのペースで作るのは大変でとてもじゃ無いけど出せないから、このツカオ節を月1本と、それ以外に毎日お魚とかのお肉を供物として捧げるのはどうかな?」


『ぬ、よいのか?』

「えぇ、大丈夫」

『二言はないな?』

「なんなら家族を連れて来ても良いよ?」

『な!?そこまでしてくれるのか!…分かった、ならば今日からお主の使い魔となろう』


 ヒムロは尻尾をピーンとしてご機嫌の様だ。


「早速連れてくると良いよ。あ、君の名前は、ヒムロ、ね。宜しく」

『ヒムロか、分かった。宜しく』


 そう言い残して風船が萎むかの様に程々に小さくなると器用に玄関のドアを開けて何処かへ行ってしまった。


「中々な大物を使い魔にしたもんじゃな」

「えぇ、前回もさっきのヒムロだったんですよ」

「成る程、何か縁があるのかも知れんな」

「でしょうかね?」


 無事ヒムロを使い魔に出来たし、さぁコレから忙しくなるな。

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