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日常?

 タンッ、タンッと玄関のノッカーが鳴らされる音がする。


「ごめんくださーい」

「はぁーい」


 玄関の鍵を開けて外を覗く。


「やぁ、お久しぶりだねマコちゃん」

「タカヒロさん」


 そこには動きやすそうな服を着たタカヒロさんが立っていた。


「どうしたんですか?」

「ほら、前にヒューマ君にお願いしてたけど、ムニさんに身体強化を教えて貰おうと思ってさ」

「言ってましたね。じゃあ立ち話もなんですし一先ず中でお話して貰いましょうか」

「悪いね」


 タカヒロさんをリビングに通す。そこにはコマちゃん、ムニ、ヒューマ君が揃って寛いでいた。


「ヒューマ君!」

「あ、タカヒロさんじゃ無いですか!お久しぶりです!」


 ハグする2人。


「そっちの小さい狐っ子がコマちゃんで、そちらの鬼っ子がムニさんだね?初めまして、俺、タカヒロって言います」

「…よろしく?」

『ヒューマ少年から話は聞いてるよ。先ずはソファーに座って寛ぐといい』

「お言葉に甘えて」


 ムニに勧められてソファーに座るタカヒロさん。


「ムニさんもコマちゃんも可愛いね。一つ屋根の下で3人も…ヒューマ君ハーレムじゃん?」

「俺は本命一人だけで充分ですよ」

「あ、そう?まぁ分かりやすいヒューマ君の色恋事情は横に置いといて」


 真剣な顔でムニに向き直るタカヒロさん。


「早速ですがムニさん、俺に身体強化を教えてくれませんか?」

『ん、良いぞ』

「あざっす!いやね、独学でちょっとやってみようかとも思ったけど、全然コツを掴める気がしないし、剣術も覚えなきゃだし、やっぱり教えて貰おうと思って」

『そうかそうか、まぁ任せておけ。一流の刀使いにしてやろう』

「刀!コレで俺も刀主人公じゃん?」

『主人公?まぁいいか、早速始めよう。先ずは基礎体力からだな。そいっ!』


 バキッ!と空間に穴を開けて木刀を取り出したムニ。


「え?何これ?アイテムボックス的な?出し方が斬新だけどすげー!」

『先ずは木刀で素振りだ』

「頑張ります!」

「俺も素振りします!」


 ムニとタカヒロさんとヒューマ君が庭に行って素振りを始める。それを窓から眺めるコマちゃん。


「一緒に素振りしてくる?」

「…してくる」


 庭に駆け出していくコマちゃん。一人になった私はお昼ご飯でも作ろうと、先ずは近所に買い出しに出かける事にした。


 お昼…お昼ねぇ。チャーハンでも作ろうか。とすればネギと卵とウインナー辺りが有れば…





「はぁっ、はぁっ」

「ふっ!ふっ!」

「…疲れた」

『よし、ヒューマ少年以外はそこまで』

「素振りって、ふぅ。思ってたより、キツイなぁ」

「…腕が、プルプルする」


 タカヒロさんとコマが肩で息してる。


『程良く疲れた所で今度は魔力を自然に動かす練習だ。ヒューマ少年は素振りしながらな』

「「はい!」」「…はい」


 もう魔力を自由に動かせる俺はこの特訓に付き合う意味はないけど、タカヒロさんが身体強化を極めたらどうなるのか興味がある。ていうか魔力量が振り切ってるタカヒロさんならムニさんの領域に到達出来るんじゃないかと。


『2人とも魔術が使えるなら自分の魔力は感じられるな?』

「はい!」「…うん」

『その魔力を先ず2つに分ける。今から使う魔力と使わず置いておきたい魔力だ。大体1割の魔力を今から使う魔力として分けようか』

「センセー、俺の1割がどれぐらいか分かりません!」

「…1割って何?」

『中々教えるのが大変そうな子達だな…そうだな、じゃあファイアボールを1発撃つ魔力と他を分けるイメージで行こう』

「…それなら分かる」「ファイアボールね」

『じゃあその魔力を分けて、使わない魔力は身体の奥にしまっておこう』


 考え込むタカヒロさんとコマ。


「…こうかな?」「な、なんとか」

『それが出来たら、後はその分けたファイアボール分の魔力を身体中に巡らせて浸透させるんだ』


 2人が目を瞑って魔力を巡らせてる。


「…出来た」「んんー…」

『コマはその状態を維持しながらゆっくりで良いから木刀で素振り。タカヒロはもうちょっと安定させてからだな』

「まず安定させるのが難しい…喋るだけでも集中が切れるし」

「…ふっ!ふっ!」ビュン!ビュン!

『お、コマはその調子だ。だが身体強化は身体を限界以上に酷使する技だ。使いすぎると後で動けなくなるから気をつけろよ』

「…はい」「もう使えてるの?コマちゃんすげー」


 そこから数十分。コマはコツを掴んだのか、かなり自由自在に動けるようになって、今はその反動でグテッと庭の端に三角座りで座り込んでいる。

 タカヒロさんはまだ魔力を安定させるのに苦戦してる。どうも魔力が多すぎるせいで魔力を抑えるのが難しい様だ。


「皆〜、お昼ご飯だよー」

『お、取り敢えず訓練はここまで。昼飯食べてからだな!』

「午後からもお願いできますか?ムニさん」

『あぁ、タカヒロだけの特別訓練をしよう』

「お、俺だけの…いかにもな感じ!」

『まずはご飯だ。マコ、昼飯はなんだ?』

「チャーハンだよ」


 マコさんのチャーハンはパラパラしてて、具も一杯で美味しい。


「俺も一緒して良いのかな?」

「タカヒロさんの分も作ってるから大丈夫」

「マコちゃん有難う〜!」

「いえいえ〜」


 その後俺達はメチャクチャチャーハンを食べた。





 タカヒロさんがウチに来て早5日。連日ムニに特訓して貰ってるタカヒロさんは…あまり上達して無いようだ。


『タカヒロはリューゼと一緒で不器用だな』

「ま、まだ5日目です。それにこんなに魔力が無ければ…!」

『魔力が無ければか。確かに魔力が多いと習得に苦労するものだが…じゃあ探索者協会の討伐依頼でも受けて、出来るだけ魔力を消費してから魔力を練る練習をしてみるか?』

「はい!お願いします!」


 タカヒロさんが減ったと思うほどって、街の外の地形が変わっちゃうんじゃないかな?


「…私も外で戦ってみたい!」

『んー、まぁ大丈夫か。コマは危ないと思ったらちゃんと助けを求めるんだぞ?』

「…うん!ムニお姉ちゃん」

「私もついていこうかな?」

「…マコお姉ちゃんも?」


 この機会にパワーアップしたシューティングスターの威力を確かめておきたい。訓練場でぶっ放したらえらい事になりそうだし。


『ヒューマ少年も来るか?』

「俺一人だけ留守番は寂しいので連れてって下さい」

「全員だね。お弁当作っておこうか」

『あたしとタカヒロとヒューマ少年は先に探索者協会で依頼探しだな』

「うぃっす!」「了解です!」



 協会で最近街の付近に増加してきたゴブリンの討伐依頼を受けた私達は、街の外にやってきた。


「この依頼、ゴブリンが出て来なかったらどうするの?」

「その場合は報酬無しみたいです」

「無し…ゴブリン1体で幾ら?」

「右耳一つで1000ルビと魔石代ですね」


 何かの薄い本を読みながらヒューマ君が答えてくれる。


「安いね」

「Eランクから受けられる依頼ですからね、こんなもんでしょう」


 なんて話をしながら、街の街壁付近をぶらぶらしてたら早速チリーンチリーンと私の持ってる探知の鈴が鳴った。


『グレイウルフだな』「3匹ですか」


 グルルル…と、こちらを睨みつけながら間合いを図るように動くグレイウルフ達。


「グレイウルフは魔石を取れば一つ2000ルビぐらいだそうです」

『そうか。タカヒロ、魔石が取れる程度に魔術でぶっ飛ばしてしまえ』

「了解!〜〜〜、フレイムサークル!」


 ゴゴゥ!グレイウルフを囲い込む様に炎の壁が出来上がり、その炎が狭まって中にいるグレイウルフを焼く。見事な魔術だ。炎が収まると綺麗にこんがり焼けたグレイウルフが倒れている。因みにこの魔物は食べられない。


『よし、この調子で片っ端から魔物を倒して行こう』

「誰が剥ぎ取りします?」

「あ、じゃあ私が」


 基本やる事がないので剥ぎ取りを申し出た。コレでも勉強はしてるので魔物の何処に魔石があるかとかは暗記してる。実戦は初めてだけど。


 ちょっと肉や骨に苦戦した物の1匹目の魔石を心臓付近から取り出して2匹目を剥ぎ取ろうとした時、再びチリーンと鈴がなる。


「オークですか」


 説明すると2足歩行の豚。手は蹄ではなくちゃんと指が分かれていて、武器を持っていたり持ってなかったりする。このオークはどっから持ってきたのか角棒を振り回している。


『タカヒロ、やっておしまいなさい』

「豚の丸焼きにしてやんよ!〜〜〜、フレイムランス!」


 ゴォォォォ!っとオークに向かって突き進むフレイムランス。が、手に持った角棒を犠牲に避けたオーク。そのまま近くに立ってたコマちゃんの所まで走ってくる。


「…てゃあ!」バキッ!ドカッ!


 コマちゃんの木刀に打ち据えられブヒッ!と頭を抱えるオーク。


「コマは既に強化を使いこなしていますね」

『タカヒロ、負けてるぞ』

「くっそー!コマちゃん、避けてね!〜〜〜、フリーズランス!」


 タカヒロさんの手から放たれた氷槍の魔術が、横からオークの身体に突き刺さった。倒れるオーク。


「オークは一応魔石とお肉が売れますが、運ぶのが大変な割に安価なので、魔石だけ取る人が殆どだそうです」

「一応は人型な生き物の肉を食べたいとは思わないね」

「脂が凄そうだ」

「本によると意外と美味しいらしいですよ。態々大変な思いをする程では無いだけで」


 取り敢えずグレイウルフの剥ぎ取りを再開し、2匹目、3匹目と順調に剥ぎ取る事が出来た。オークはお腹の中に魔石があるらしいので、以前ムニから貰った小刀を振り抜いて遠くからお腹を掻っ捌く。でろんと内臓が…うぇぇ…


「中々グロいなー」

「まぁコレも生活の為ですからね」

「でも賞金も貰ったんだから余裕はあるんじゃねぇの?」

「300万とか、ちょっと欲しいものがあったら一瞬ですよ」

「何か買ったん?」

「…今マコさんがしてる指輪」

「…おいおいおい、攻めるねヒューマ君!」

「一応魔道具ですけどね」

「あーね?…右手の人差し指か。脈は無さそうだ」

「…くっ、良いんですよ!」


 そんなやり取りが全部私に丸聞こえなのは良いのか悪いのか…ちょっと居たたまれない、恥ずかしい気持ちになりながらオークのお腹の奥から魔石を取り出す。


「ヒューマ君、このオークの魔石は幾らで売れるの?」

「あ、えと、5000ルビぐらいで取引されてる様です」

「そかそか、ありがと」

「いえいえ」


 ニヤニヤしてるタカヒロさん。目を逸らすとその先に居たムニもニヤニヤしてるし…


 アクアの魔法で水球を作り出して魔石と手を一緒に洗ってると、チリーンチリーン…と、また鳴った。街の入り口からそんなに離れてないのに魔物が溢れてるかの様に次から次へと。私達にとってはカモでも、普通の人からしたら脅威だ。


「なんか変な感じがしない?魔物が多いというか」

「普段がどの程度かが分からないのでなんとも言えないんですが、確かに多い様に感じます」


 またドラゴンでもバックに居るのかな?それともここら辺はコレが普通なのか?お弁当を食べる暇がないなぁ。


「うわ、オーガ!?」


 近くの森から出てきたのは、大きな木の枝を持った体長3メートル近い鬼の魔物、オーガだ。


『コレはヒューマ少年がヤれ』

「…ムニさん、俺木刀なんすけど」

『さっきコマもオーク相手に木刀だっただろ?先輩の意地見せなきゃな?』

「えぇー…分かりましたよ、行ってきます!」


 ヒューマ君がビュン!と風を切る様な音と共にオーガに急接近する。そのスピードに驚いたのか咄嗟に木の枝を盾に防御姿勢に入る。


 カァァァン!と木刀での一閃を防がれたヒューマ君は、オーガに木の枝を叩きつけられそうになるが、その身体能力で回避する。


『あたしの生まれ故郷ならこの程度のオーガなんて雑魚扱いだ。ヒューマ少年にはもっと高みを目指して貰わなければな』

「ムニさんは何処出身なんですか?」

『ソダクールだ』

「第9世界でしたっけ?そんなに凄い所なんですか?」

『悪魔も蔓延る世界だからな。並の実力では街にすらたどり着けないだろうな』

「へぇぇ」


 ヒューマ君がオーガの隙を捉えて一つ、二つ、と打撃を与えていく。少しずつ劣勢になっていく戦いに業を煮やしたのか、オーガが木の枝を両腕に持ち振りかぶってヒューマ君に叩きつける!が、冷静にバックステップで避け、隙だらけのオーガの目に突きを入れた。痛みに叫ぶオーガと、そのオーガの後ろに回り込むヒューマ君。


「…全開!」


 一瞬ヒューマ君の周りに魔力の渦が発生したと思った次の瞬間にはオーガの頭が真っ二つに叩き割られていた。まるでスイカでも割ったかの様な割れ方だ。ついでに木刀も折れて先は何処かへ飛んでいってしまっている。

 こちらへ歩いてくるヒューマ君。


「ふう…どうでしたかムニさ『ダメダメー!オーガ1匹にこんなに時間が掛かってたらヒューマ少年の魔力じゃ1匹しか相手出来ないだろ?それに得物壊しちゃその先魔物が出てきたらどうするんだ?』

「は、はい。仰る通りで」

『ヒューマ少年の課題は継続戦闘力と速攻力。如何に少ない浪費で素早く敵を倒すかだ』

「はい、分かりました!」


 おおぅ、スパルタだな。さて、オーガの魔石は鳩尾付近だったかな?と、オーガに近づこうとした時にチリーンチリーンとなる鈴。この魔物の量、絶対おかしいって!Eランクの探索者だったら絶対涙目だよ!

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