準決勝
《やってきました武闘会最終日!本日も晴天なり。最終日の今日は貴賓席にて国王様も観戦にいらしております。選手の皆様、張り切って参りましょう〜!それでは今から準決勝、その第1試合目の選手を紹介したいと思います!先ず紹介するのはエスペリア武闘会初出場にしてオリジナルの魔術と体術を駆使し1回戦を切り抜け、2回戦では舞台の殆どを破壊する程の大魔術で我々含め観客を驚かせた堕天の魔女、マコ選手!続いて紹介するのは魔術、剣術共にレベルが高く魔法も使えるという高い戦闘技術で一回戦、2回戦共に破竹の勢いで勝利を収めてきた、オズワルド選手!》
実況の声や、観客席からの歓声が聞こえる中、舞台の真ん中まで来てオズワルド選手と握手をする。赤い目をしていて、髪は淡い金髪、細身で黒い鎧を着てるイケメンだ。
「お手柔らかにお願いします」
「…」
何やら無口な人だ。それに私を見ている様で見ていない。まるで今この状況に関心が無いかの様な…
「それでは位置について」
審判の声に従い、舞台の端まで行って振り返ってコスモを構える。相手も剣を抜いて此方を見据えている。
「…始め!」
《始まりました準決勝1試合目!開始の合図と同時にオズワルド選手がマコ選手に向かって走っていく!》
うわ、足が速い!近づかれる前に…
「●、ファイアストーム!」
私の前方に燃える暴風を伴った炎が発生し、うねる様に相手に向かって行く。直撃すれば家ぐらい直ぐに燃やし尽くす豪火だ。
「〜〜〜、ウォーターウォール」
オズワルド選手が展開した大きな水の壁によって炎の魔術が遮られる。が、元より足を止めるのと、視界を塞ぐのが目的だ。
「●、フレイムサークル!」
相手を中心に円状の炎の壁を作り上げる魔術だ。目論見通り相手を炎の壁に閉じ込める事が出来た。
《オズワルド選手、炎に囲まれた!さあどうする!?》
「降参しないと炎の壁を狭め…ひゃあ!?」
《なんだ!?マコ選手の後ろに黒い渦のような物が現れると同時にそこからオズワルド選手が現れた!》
ビュン!フレイムサークルの中に居た筈のオズワルド選手がいつのまにか私の後ろに回り込んでいて、剣を振り抜いて来たのを前に飛んで避ける!何で急に後ろに居るの!?
ヒュン!ヒュン!とそのまま追撃を掛けてくるのを身体強化しながら回避するがギリギリだ。このままだと押し切られる…!
「アクア・スプレッド!」
私の目の前で水が発生、それが弾けて、水の粒がオズワルド選手に降り掛かる…寸前に得体の知れない水を被るのを嫌ったのか凄い反応速度で後ろに飛んで回避される。
「〜〜〜、グラビティスフィア」
後ろに飛びながら私に向かって球状の黒い塊を撃ち放って来た。かなり速い速度で私に着弾したその瞬間身体の重さが何倍にもなり、うつ伏せに地面に縫いとめられる。くぅ、動けないっ!
「〜〜〜、ダークネスアイヴィー」
そこへオズワルド選手が追撃の魔術を仕掛けてくる。黒い蔦が地面から生えてきて、私の身体を絡めとろうとする。不味い、このままだと拘束されて負ける!
「うくぅ…『翼展開』!『浮遊』!」
《おおー!マコ選手に昨日見た翼が生えて宙に浮かんだ!》
私の背中に1対の白い翼が生え、服から発生した浮力により重力魔術を打ち消し、そのまま空中に浮き上がって地面から襲いかかる蔦を回避する。
そのまま滞空しながらオズワルド選手の方を見据える。
「天使…だと?」
ん?オズワルド選手の動きが止まってる。何か私を見て驚いてる様だ。
「そうか、貴様は…俺を止めに来たか?止められるものなら止めて見せるがいい!黒翼顕現!」
《オズワルド選手にも黒い翼が生えたぞ!?何だこの戦いは!?》
翼を生やしたオズワルド選手は、目の前の私を無視して、観客席の…貴賓席の方に飛んで行き、王様の前で滞空する。王様の周りにいる騎士達が戦闘態勢に入る。
「試合は続けないのか?オズワルドとやらよ」
エスペリア王がオズワルド選手に問う。
「そんなものはどうでもいい。天使が現れた以上俺には時間がない。王よ…その命、貰い受ける!」
「何っ!?させるものか!」
「王を守れぇ!」
「〜〜〜、グラビティフィールド」
スズゥン!半径20メートルぐらいの範囲が高重力空間に囚われられる。王や騎士達、周りの観客達までが地面に伏す。そのままオズワルドが王に近づいていき、手にした剣を振りかぶる!
「●、レイ!」
私の放った魔術がオズワルドの剣を持った手に吸い込まれる様に直撃する。穴が開いた手では到底剣を持っていることが出来ず取り落とす。
「…天使!どこまでも俺の邪魔を!」
「いや、私は貴方の言う天使とやらじゃ無いと思うんですけど…試合に無関係な人を傷つけるのを見逃せません!」
「何を戯言を!」
激昂したオズワルドが、いつの間にか修復していた手をこちらに向けた。
「イビルフレイム!」
オズワルドの手に発生した黒い炎の奔流がかなりのスピードで私に向かって突き進んでくる!避けたら多分遠く後ろの観客席に突っ込んじゃう軌道だ。
「アクア・ストリーム!」
避ける訳には行かないのでこちらも大量の水を濁流の如く発生させて炎を消しに掛かる。大量の蒸気を発生させながら、黒い炎は水を押し戻す様にジワジワとこちらに侵食してくる。見た目以上に火力が高い!そのまま押し切られ私を中心にゴォッと黒い炎の柱が立つ。
「ふん、天使にしては大したことなかった…」
「●、インパクトウェイブ!」
ドォォォォン!「ぐっ!?」
アクアの魔法で私の姿を模造して黒い炎の身代わりに置いて、その隙に私は回り込んで王様とオズワルドの間に陣取り、強い衝撃波で相手を吹き飛ばすインパクトウェイブの魔術で貴賓席に居たオズワルドを舞台の方に吹き飛ばした。その場から更に追撃の魔術を唱える。
”法則を捻じ曲げ 撃ち放つは神の怒り 刹那にて迫り来る慟哭に 秩序を失くす世界 それが汝の審判の時”
「●、ジャッジメントライトニング!」
カッ!ダァァァァァァン!!と、雲ひとつない空から雷が落ち、宙に浮いていたオズワルドに直撃する。電撃を受け黒焦げになったオズワルドは舞台上に落ちる。バッチも反応した様で光っている。…しかし遠目に見ていると凄いスピードで翼や肉体が回復しているのが分かる。翼といい魔法といい回復力といい、これはもしかして…悪魔の力?
更に追撃しようか迷っているといつのまにか隣に立っていた王様が話しかけてくる。
「マコよ、オズワルドは私に剣を向けた。それにあの姿を見るに外法にも手を出している様だ。国家叛逆で死刑、よって手加減は不要だ。なにか手があるのならばオズワルドを殺せ」
「…分かりました」
舞台の中心で立ち上がろうとしているオズワルドの方へ指を向ける。
「お覚悟!シューティングスター!」
キュン!チュドォォォォォン!!
見てからでは回避困難な速度で上空から飛来した魔力塊の直撃を受けて、その肉体を木っ端微塵に吹き散らすオズワルド。いた場所を中心に半径5メートル程のクレーターが出来上がる。衝撃波と共に飛び散る舞台の破片やオズワルドの身体の一部に、観客席から悲鳴が上がる。
ゴゴゴゴ…
「…マコよ、手加減不要で殺せとは言ったが。もう少し加減出来なかったのか?」
「いえ、トドメを刺そうと思ったらアレぐらいの威力でないと復活しそうでしたので…」
シューティングスターの威力に呆れたように王様が私に話しかけ、私も言い訳を呟く。オズワルドだったものは動き出す気配はない。とはいえ、以前悪魔が頭だけで動いた前例があるので注視しておく。
《えっと…コレは…どう判断すれば良いのでしょうか?マコ選手の星降りらしき魔術で身体が吹っ飛んだオズワルド選手。えぇ…?》
実況の人もちょっと混乱しているようだ。まぁそうだよね。王様に許可を受けて無ければバッチが反応していた後に更に追撃を加えた私が殺人を犯している事になるのだ。
「レオナード陛下、コレを」「うむ」
お付きの人から何かを…拡声器?の魔道具を受け取る王様。
《あー、あー、諸君、私はレオナード、この国の王である。私からこの状況について説明しよう》
王様による説明が始まった。試合中、急に飛んできたオズワルドに剣を向けられた事、私がその間に入って王を守った事、国家反逆の罪でオズワルドを死刑とし、トドメを私に委ねた事。故にこの戦いは私の勝利として扱う様にという話だった。
《最後にマコよ、我が命を救ってくれてありがとう。この礼は必ずしよう》
「有難う御座います」
《陛下のお言葉通り、今回の準決勝は陛下を守り切り悪魔が乗り移っていたと思われるオズワルド選手を打倒したマコ選手の勝利!皆様惜しみない拍手を!》
わぁぁぁ!まーじょ!まーじょ!という拍手と歓声を受けながら控え室に戻る私。
しかしあのオズワルドは何が理由で王様に剣を向けたのだろう?国家転覆?私怨?
控え室に戻るとヒューマ君が心配そうに私に近づいてきた。
「大丈夫でしたか?なんか途中から実況が無かったので何があったのか良くわからないんですが」
「あー、大丈夫だよ。ちょっと相手の選手が王様を殺そうとしただけで」
「えぇ!?それって大事じゃないですか!マコさんが守ったって聞こえましたけど…」
「こう、魔法でチュンってね」
「いや、説明になってませんよ」
その後もヒューマ君とあーだこーだ言ってると、審判の人が控室に入ってきた。
「舞台の修復が終わりましたので、準決勝2試合目を始めたいと思います。選手は準備して入場して下さい」
「ヒューマ君頑張ってね」
「はい!決勝戦で会いましょう!」
「自信満々だねぇ」
☆
《さあ気を取り直して準決勝第2試合!これまでその身体からは予想出来ない素早い動きで相手を下してきた神速の剣士、ヒューマ選手!対するは魔術師の憧れ、魔弦の塔からの使者、これまでの戦いを多彩な魔術で完勝してきた万魔、エドガー選手!》
「宜しくお願いします」
「あぁ、宜しく」
「それでは両者、位置について」
今回相手が魔術師なので舞台の端と端に立つ。
「始め!」
開始の合図と共に俺はうっすら身体強化を掛けながらエドガー選手に向けて突っ走る。さあ、何の魔術を撃ってくるんだ?
「■■ ■、サモンスピリット・ツー」
エドガー選手の周りに魔力の渦が発生し、2匹の精霊が出現する。なんだあれ?
《エドガー選手の得意技、精霊召喚だ!今回は2体!》
「〜〜、ファイアボール」
『『ファイアボール』』
エドガー選手と精霊達から合計3つのファイアボールが発生し俺に向かって突き進んでくる。わぉ、この物量にはビビるけど、でも真っ直ぐ飛ぶファイアボールなら。大きく右に跳び避ける。
「〜〜、ストーンピラー」
『『ストーンピラー』』
ドォンドドン!!俺を中心に地面から不規則に突き上げてくる石の柱を避けきれずに打ち上げられる。痛ってぇ!!
「〜〜、トルネード!」
『アイシクルコフィン』『ブラスト』
暴風の魔術が、氷棺の魔術が、爆発の魔術が同時に俺に襲いかかる!ぐっ、こんな無茶苦茶な…!
体重が軽いことが災いしてか、トルネードの風に身体が浮かされてしまい、切り刻まれ、爆発に塗れ、終いには氷漬けにされてしまう。
《これはもう決着がついてしまったでしょうか?まだバッチは光ってませんが…》
「あぁぁぁぁぁあ!!」バキィン!!
《ヒューマ選手、自力で氷の棺を打ち破った!試合続行の様です!しかし既に満身創痍と言った様子。大丈夫かー!?》
なんとか抜け出せたけど…身体中傷だらけだし、ダメージを受け流す為の身体強化で結構魔力を消費してしまった。もう出し惜しみする程余裕もない。
「身体強化全開!らぁぁぁ!」
「〜〜〜、ストーンパレット」
『『ストーンパレット』』
大量の石礫が多角度から襲いかかってくる!1発1発はそれ程の威力でなくとも、数十発もの石礫を受けてしまえばもう立ち上がれなさそうだ
避けるために思考を加速させ深く集中する。全ての礫の軌道を読んで、奴を俺の間合いに捉える…!
《うぉぉお!ヒューマ選手、凄い凄い!避ける避ける〜!避け切ったぁ!動きが凄すぎて最早気持ちが悪い!》
気持ち悪いって…まぁいい、これで相手の懐に…あれ?
一瞬意識が途切れ、膝から崩れ落ちる様に倒れる俺の身体。身体を動かしてたエネルギーが切れた感覚…魔力切れだ。ついでに既に限界を迎えていたのだろう俺の身体が痛みに悲鳴を上げ始める。
《どうしたヒューマ選手!?急に倒れて動かなくなったぞ!審判、確認を!》
倒れている俺に審判が近づいてくる。
「続行出来そうにないですか?」
「…悔しいですがちょっと無理です」
「分かりました。これまで!勝者エドガー選手!」
《流石にあれだけの魔術を受けて身体が限界だった様です!3位が決定したヒューマ選手にも惜しみない拍手を!》
何とかふらつきながらも立ち上がり、エドガー選手と握手をして、歓声に見送られながら舞台上を去る。
俺はもう試合が無いので、表彰式の時間までは自由にしていいとの事だった。コマ達を探してマコさんの試合を観戦しようか。
くそぅ、負けてしまった…。




