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タカヒロ氏

 武闘会の帰り、タカヒロさんとヒューマ君と一緒に軽くお茶でもと言う事で闘技場から程近い喫茶店に入った私達。

 席に着いてケーキセット等各々食べたいものを注文し、店員さんが復唱して店の奥に戻っていった。

 出された水で喉を少し潤し、早速といった風にタカヒロさんが話し始めた。


「では改めて。俺はタカヒロ、彷徨い人として日本からこの世界にやって来て4年程になる。今は19才だね。この世界に来た時に得た力は膨大な魔力量と魔力回復力。ただ最初は魔術を使うと言うことに苦労したけど」

「私はマコです。この世界に来て1年と言うところです。多分16才ぐらい?です。私がこっちの世界に来た時持ってたのがこの本で、会話したり魔力を持ってない私が魔術を使える様にしてくれる機能があります」

「うん?魔力を持ってない?するとマコちゃんの力の源はその本だって事だね」

「そうですね。無いと魔力の無い唯の一般人になっちゃいます」

「成る程ねぇ。その本ちょっと見せて貰っても良いかな?」

「良いですよ。私以外には使えませんが」


 肩掛けバッグからコスモを取り出して手渡す。そのコスモを上から下から眺めているタカヒロさん。


「鍵穴?ふーん?開いてみても?」

「はい、大丈夫です」


 本を開いてページを捲るが何も書いてない白紙状態のコスモを見てゆっくりと閉じた。


「何か特殊な紋様とかそう言うのがあるのかと思ったけど、何処に繋がってるかわからない変な鍵穴があるぐらいで他は普通のというか白紙の本だね」

「そうなんです、自分でも調べたんですが詳しい事はわかりませんでした」

「そっか。有難う、返すよ」


 コスモを受け取り、バッグに仕舞う。


「でさ、あの星降りの魔術の事なんだけど、俺にも使えるかな?あんなに物理的威力のある魔術初めて見たからさ、是非教えて貰いたいと思って。あとあの空飛ぶ翼の魔術。浮かぶだけなら今も出来るんだけど速くは飛べないし同時に魔術は撃てないし」

「どちらもそう難しくは無いですよ。例えば…」


 タカヒロさんにメテオストライクの魔術原理と空飛ぶ服の説明をした。


「成る程、大元はロックスパイクの魔術なのか。それを高い上空から下向きに加速つけて落とす魔術と。それなら俺にも簡単に出来るかな?いや、手元を離れれば離れる程制御が難しく…それに一つ間違えれば自分も巻き込むのか。で、自分が空に居れば安全と」

「ですね」

「服の刺繍と皮鎧の準備かー。俺不器用だからその手の作業苦手なんだよな。やるとしたら何処かの刺繍屋に頼むかなぁ。もしくは箒で飛んで…箒も高いんだよね」

「なのでお金がそこそこ掛かります」

「だよねぇ。一攫千金目指して武闘会出たけど負けちゃったしな」

「いやー、何か申し訳ないです」

「はは、マコちゃんが謝る事はないけどさ。真剣勝負なんだし…で隣のヒューマ君にも聞きたいんだけど、あの急に加速する動きにはどんな秘訣があるんだい?なんかの流派の秘術とかで教えられないなら無理に聞かないけど」


 タカヒロさんが今度はヒューマ君に話を振る。


「教えてはいけないとは言われてないです。魔力を身体の中で満遍なく巡らせ浸透させる事で思考速度や身体的能力を上げる技なんですけど…」

「巡らせる…浸透…ちょっとやってみる」


 目を瞑って何やら魔力を操作しているらしいタカヒロさん。


「うん…うん…出来なくは…?いや、喋ったら集中が切れてうまく行かなくなった」

「そうです。その操作を息をする様に自然と出来る様にならないと実戦では使えないんです」

「うーん、コレは難しいね!でもやってみる価値があるのはすごく分かる。因みにヒューマ君はどれぐらいで出来る様になったの?」

「俺は今習い始めて3ヶ月です。教えてくれたムニさんに比べると児戯に等しいレベルですけど」

「3ヶ月!たったそれだけであれだけの強さを!?凄い!俺も特訓しよう!」


 ヒューマ君の話を聞いてメッチャ喜んでる。確かに画期的な技だもんね。


「いやー、食事に誘って良かったよ。ちょっと話すだけでこれだけ有益な情報を教えてもらえるんだから。しかし貰ってばかりもあれだし、何か聞きたい事とか有れば答えるよ!」


 聞きたい事…聞きたい事ねぇ。


「膨大な魔力って言ってましたけど、協会の魔力測定の魔術布はどこまで光ったんですか?」

「あれね。一番外の円の更に外側まで光って、1000以上で正確な数値は測定不能って言われたよ」

「1000…」

「やろうと思えばコキュートスの連打とかも出来る」

「凄いですね。その上級魔術を使えるのは、何処かで教えて貰ったとかですか?」

「あぁ、魔術師協会に上級魔術師として所属してるから上級の書庫で魔術論文なんかを見て勉強して覚えたよ」

「上級の書庫に行けばあるものなんだ…」

「キョットーの魔術師協会の書庫は中々見るものが多いよ。俺もまだまだ勉強中」

「上級かー、直ぐには難しそうだなぁ」

「その本を題材にして論文書いたり複製をしてみたりすれば結構あっさりなれるかもね?」

「うーん、でもさっぱり仕組みがわかりませんからね」

「だから面白いんじゃ無い?」


 なんて話をしてると店員さんが注文してたケーキセットやらを持ってやって来たので一旦話を中断する。


「以上で宜しかったでしょうか?」

「はい」


 私が頼んだのはモンブランとオレンジジュース。今は大体秋頃といった季節なので栗が旬なのだ、多分。一口食べる…うん、モンブランだね。


「食べながら話すけど、身体強化の仕組みや効果の論文でもいけると思うよ。むしろなんで今までこの技術が広がって無かったのか不思議なくらいだ」

「確かに。誰かが気づきそうなものですよね」

「実践で使うには中々難しいからじゃ無いでしょうか?特に魔力が多い人は魔力を練るのが大変というのが大きいかと。あと、ムニさんは武術面で鍛えられた人は無意識の内に身体強化を使ってる人がいるって言ってました」


 あー、あの騎士様なんかはそんな感じだろうな。重い防具付けてるのに走るの速かったし動きも機敏だった。


「そのムニって人は会場に来てなかったの?」

「ムニさんは多分家でコマちゃんって子の面倒を見てると思います」

「ん?ムニさんって言うのはマコちゃんの旦那さんとか?で、2人の子供がコマちゃん?」


 え?違う違う!?私まだ16だよ!?


「違いますよ。ムニさんは女性ですし、コマちゃんは9才の女の子です」

「あぁ、そうなんだ…俺もそのムニさんって人にさっきの身体強化って奴を教えて貰ったりは出来ないかな?」

「多分大丈夫だと思います。今度会わせましょうか?」

「お願いできるかな?魔術面ではそこそこ強くなった自信はあるけど、フィジカル面はこの世界の人達に比べて弱いからさ。この世界、何があるか分からないし強くなっておきたいじゃん?」

「分かりますその気持ち」

「だろ?」


 タカヒロさんとヒューマ君が意気投合してる。良きかな良きかな。しかしタカヒロさんの魔力で身体強化を身につけたら手がつけられない化け物が生まれそうだ。

 他に聞きたい事…


「私達の他にも彷徨い人というか日本人っているんですか?」

「結構いるみたいだね。俺が直接知ってるのはマコちゃん除いて3人だけだけど」

「へぇー、私、こっちの世界に来る前の事が曖昧で苗字も思い出せないんですけど、タカヒロさんや他の人もこっちに来る前の記憶が曖昧だったりします?」

「うん、俺もそうだし、他の皆も漠然としか思い出せないらしいよ」

「そうなんだ…何故なんでしょうね?」

「さぁ…過去を振り返らずこの世界に馴染みやすくする為?うーん、そればっかりは俺達を転移させた神様にでも聞いてみないと分からないね?」


 神様ねぇ…何処かに居たりするんだろうか?日本に居た時は神様の存在を余り信じて無かったけど、この世界には神様が居てもおかしく無いって感じられる。回復術師の人とか神に祈って魔術使ってるし。


「そうだ、マコちゃんが次に当たる選手、あれは多分強いよー?」

「どんな感じでした?」

「闇系魔術で相手の魔術師の足を止めて、速攻で間合いを潰して首元に剣を当てて終わり。無駄が無い動きだったね」

「へぇー、対策は思いつきます?」

「うーん、近接戦闘が得意そうだから兎に角近寄らせない様に牽制かな?」


 あ、モンブラン食べ終わっちゃった。





「ただいま〜」

「…おかえり」

『今日は遅かったな』

「うん、ちょっとね。んで作るのしんどいから今日はお弁当ー。ヒムロ達には今日は味付けミンチ肉ね」


 タカヒロさんとのお話もひと段落してお開きにし、家に帰ってきた。今日は昨日と比べて中々動き回って疲れたので、お弁当屋さんで4人分のご飯を買ってきた。

 先にお風呂に入りたい気持ちがあるけど、お弁当が冷めちゃうので先にご飯。


「コレはのり弁、コレは幕内、んで焼肉弁当とチキン南蛮弁当。どれにするー?」

「…チキン南蛮」

「俺は幕内で」

『あたしは焼肉かな』

「じゃあ私はのり弁か」


 お弁当をそれぞれに配る。ここのお弁当屋さんは米が美味しいんだよね。米が良いのか炊き方が良いのか…米の質も良いんだろうけど、炊飯器なんて物はこの世界に無いのによく綺麗に炊けるなぁと思う。


「コマちゃんは今日何してたの?」

「…ムニ姉と公園で遊んでたよ。近所の子達も一緒に鬼ごっことかしてた」

「へぇ。ムニも参加したの?」

『あぁ。鬼役でな』


 まぁ鬼役って言うか元々鬼だもんね。


「…ムニ姉足が速いからあっという間に捕まる」

「身体強化とか、大人気ない事したんじゃないでしょうね?」

『あたしはそんなの使わずとも普通の人より身体能力が高いからな。ましてや相手は子供だしそりゃあっさり捕まえられるさ』

「あ、そう?」

「…所でお姉ちゃん達、大会はどうだった?」

「2人とも勝ち残ったから明日も試合があるよ」

『コマ、明日は観に行くか?』

「…うん、観てみたい」

「流石に準決勝ともなると相手も強いでしょうから勝てるとは限りませんが」

『我が弟子は弱気だな』

「今日だって結構ギリギリでしたからね」


 明日はコマちゃん観にくるのか。良いとこ見せなきゃだ。

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