予選
キョットーに来てから約3ヶ月。月日が立つのは早いもので、この世界に来て大体1年程になるだろうか?
この3ヶ月間でキョットーでの生活にも慣れてきた。キョットーは食材や道具、生活用品等の色々な店があり、その分物が豊富で手に入りやすい。なので街から外れた所にある師匠の家での生活と比べて色々と楽だ。料理が面倒い日は外食出来るしね。
日々の生活面に手が掛からない分、私は参加する事にした武闘会に向けて訓練に力を入れてきた。ヒューマ君と一緒にムニに近接戦闘を教わり、魔術師協会で魔術の研究や特訓をしたりして。
そんな3ヶ月間、他の皆はどうしていたかというと。
この3ヶ月間、ムニにキッチリ鍛えられたヒューマ君はムニの教えが肌に合ったのかメキメキと実力を上げていて、しかも短時間ながらも身体強化まで出来る様になっている。そこらの相手じゃ歯が立たないんじゃないだろうか?
コマちゃんは魔術の素養があったので今は魔術師協会で魔術のお勉強をしている。最近ファイアボールの魔術が出来る様になったとかでそれを見に来てとせがまれて見学しに行ったり。あと近所の友達もできた様で、その友達と近くの公園で遊んでいたりする。
ムニは相変わらず。ヒューマ君や私の特訓に付き合ってくれたり、暇な時には刀探しに出掛けたり。探索者協会へ行って依頼をこなしてお金を稼いだり。んで博打でスッカラカンになるまでがセットだ。まぁ家賃はちゃんと払ってくれてるので良しとした所だけど。
ヒムロやサクヤちゃんも元気だ。ヒムロは暑さが苦手で日陰で涼んでいる姿をよく見かける。サクヤちゃんは最近少しづつ大きくなれる様になって来たとかで、ヒムロを日陰から引っ張り出して狩りに出掛けたりしているらしい。
他にもリューゼさんと探索者協会で再会して最近の冒険話を聞かせてもらったり、リエルさん家に行ってお茶を頂いたりして。まぁ充実した3ヶ月間だったと言える。
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今、私はこのキョットーで3日にかけて開かれる武闘会に出場すべく、城の近くに設営されている闘技場の受付に並んでいる。
並んでいる人達を見ると、ゴツい剣を下げていたり、やたらとガタイが良かったり、魔術師であろうローブを羽織っていたりと様々で、この場所で見るとなんだか皆強そうに見えてくる。
一緒に並んでいるヒューマ君も普段なら私に話しかけてくるのに黙ってる。緊張しているようだ。
この武闘会はまずバトルロイヤル形式の予選がある。それを勝ち抜けば本戦に出場できる。本戦はトーナメント形式。
16人まで予選で絞られ、そこから4勝すれば優勝だ。3位決定戦もある。
私が目指すは勿論優勝だけど、強豪ぞろいの武闘会だ、そう簡単じゃ無い事は分かっている。だけど最低でも3位には入りたいなと思っている。
やがて受付の列が進んでいき、私達の番になる。受付の人が私とヒューマ君に番号札を渡してくる。
「貴女は第2予選。そっちの坊やは第10予選」
この数字は、予選を勝ち抜いた時のトーナメント表の位置をそのまま表している。私とヒューマ君は反対のブロックになるので、出会うとしても決勝戦となる。
「当たるとしたら決勝になるみたいだね」
「俺、頑張って決勝戦に出ます!」
「ははっ、気合十分だね」
ヒューマ君と手を振り合って、それぞれの予選会場に向かう。
★
私が参加する第2予選の会場にやって来た。四角い舞台が設置されたこの場所はそれなりに広く、その会場には15人程の人が集まってる。
まだ時間はあるみたいなので、ストレッチでもしてようかな?
「おいおい、今年は弱そうな奴ばかりだなぁ!今年はこの俺が本戦出場させてもらうぜ」
「どこからその自信が出てくるの?」
「そりゃ、俺のこの筋肉が物語ってるだろう?この筋肉から繰り出される一撃は岩をも砕くぜ?」
「はー、やだやだこれだから筋肉バカは。そんなの私の魔術で軽く吹っ飛ばしてみせるし」
「お前のヘナチョコ魔術なんて俺の筋肉で弾き飛ばしてやるわ」
なんか、筋肉の塊みたいな男の人と、魔術師らしき女の人がなんだかしょうもない言い争いをしてる。筋肉で魔術を弾くとかどういう理屈だよと思いながら、そのやり取りを横目にストレッチに励む私。
暫くして参加者が集まったのか正装をした男の人が皆に声をかける。
「それでは第2会場の予選を始めたいと思います。私はこの第2会場の審判を務めさせていただきます。出場者は番号札を私に見せた後、舞台に上がってください」
皆一列に並んで審判に番号札を見せて舞台に上がる。
「皆様舞台に上がりましたので、これより予選を始めたいと思います。場外になった者、降参した者、戦闘不能とみなされる者は負けとなります。それでは…」
出場者がそれぞれ、自分の間合いを取って構える。私も出来るだけ人が少ない所に陣取る。
「始め!」
「うぉぉぉぉぉお!」
「〜〜、アイスニードル!」
「ちぇあぁぁぁ!」
「いっくぞー!」
「〜〜〜、ファイアボール!」
「アクアプリズン」
皆が周りの参加者を蹴落とそうと躍起になってる所、私はアクアの魔法で私を中心にした出口のないドーム状の水の檻を作り上げた。コレで誰も入ってこられない。残り1人になるまでこの状態で待たせてもらおう。
「なんだ?この水は」
「ウォーターシールド?にしては円形…」
「中に人がいるね?決着が着くまで中にいるつもりじゃない?」
「え!?卑怯!」
「ルールは破ってないし、誰も文句は言えないね」
「〜〜、〜〜〜、フレイムランス!」
バシュゥゥゥン!魔術師が放つ炎の槍が水の檻に突き刺さるが、蒸気を上げつつもあっさりと消えていく炎の槍。私の水の檻はそう簡単には破れない。
「もうほっときましょ、予選で逃げの一手を打つような奴、どうせ1対1なら大した事ないわ」
「だと良いけどねぇ」
私のアクアプリズンから人が離れて行き、それぞれの選手達が凌ぎを削りあう。魔術で吹き飛び場外になる者、剣を首に当てられて降参する者等々…やがて1人の剣士が残り、私に声を掛ける。
「出ておいでよ、君と僕で決着をつけようじゃないか」
その声を聞いて、水の檻の状態を解除する。解除した事で足元は水浸しだ。
「おや、可愛らしい女の子が出て来たね」
「それはどうも」
「女の子と言っても手加減はしないよ?」
「どうぞお気遣いなく」
タタタッと、間合いを詰めてくる剣士。対する私は…
「凍れ」
「なっ!?」
ピキピキピキっと地面に撒かれた水が凍り付いて足元がツルツルになる。その氷に足を滑らせ転び、起き上がる事もままならずまともに動けなくなった剣士の人。苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「●、エアボム」
「ぐぅぅぅっ!」
私のエアボムの魔術で場外まで吹き飛ばされていく剣士の人。コレで舞台の上に立つのは私だけになった。予選通過だ。
「お嬢さん、貴女のお名前は?」
「マコです」
「第2予選を勝ち抜いたのはマコ!勝者に拍手を!」
パチパチパチ…と、ちょっとおざなりな拍手に見送られて、私は会場を後にする。本戦は明日なので後は受付に先程審判の人に渡された2番の番号が書かれたプレートを持って行けば終了だ。
ふぅ、すんなり終わった。ちょっと卑怯だとは思ったけど、勝てば良かろうなのだ。
程なくしてヒューマ君も受付に帰ってきた。ちゃんと10番のプレートを手に持っている。
「予選通過おめでとう、ヒューマ君」
「マコさんも通過おめでとうございます。いやー、大したのがいなくてラッキーでした」
「ヒューマ君強くなったもんねぇ」
「ムニさんのお陰です!」
ヒューマ君も受付にプレートを提示する。このプレートは明日の本戦の切符にもなるので無くさない様にとの事だ。
「じゃあ今日は帰ろうか」
「帰りに何か買って帰りましょうか」
「そうだね、ヒムロ達に魚を買ってあげようかな」
「俺はハンバーグが食べたいです」
「仕方ないなぁ。今晩はマコお姉さんの手作りハンバーグだ」
「やった!コマも喜びますよきっと」
「材料買ってかなきゃね。挽肉とパン粉と玉葱と〜」




