キョットー到着
「どう?ここが私の生まれ育った都、キョットーよ」
ギバラからハセンへ、ハセンからキョットーへとたどり着いた。リエルさんが胸を張って言うだけあって、キョットーの街は今迄見てきたどの街よりも発展している。建物の大きさや高さ、材質、歩いている人種の多さやその人達の格好、馬車が8台は通れる程の大きな道、そしてその道の奥に見える大きな城。そんな街を眺めながら、今は探索者協会キョットー本部へ向かっている所。
「あの店はお菓子やケーキを売っているわ」
「へぇー、スイーツ店なんてあるんですね」
「コレが中々美味しいのよ。あ、あとあそこに見える店が…」
今は私とリエルさんが御者台に座ってて、道案内をしてもらってる。リエルさんはキョットー生まれキョットー育ちなのでこの街の地理に詳しく、案内役を買って出てくれている。
大通りを遠目に見える城に向かって進んでいる内に、一際大きな建物が見えてきた。
「アレよ、あの建物が探索者協会」
「アレですか」
他の街よりも幾分背が高い探索者協会の入り口の横に馬車で横付けをする。ていうか馬車何処に停めれば良いんだろ?一旦宿屋探して馬車止めるべき?と、思ってたらリエルさんが御者台を降りた。
「道幅が結構あるから数台止まっても大丈夫。でも1人は誰か置いとかないと物取りに会うかもしれないわね」
「そっか。んー、誰を残しておこう?」
「俺が残って番をしてますよ」
「そう?じゃあヒューマ君お願いね。オマケにヒムロとサクヤちゃんを付けるよ」
「はい、任せてください!ヒムロさんサクヤさん宜しくです!」
『あぁ』『はい』
「じゃあ協会に入りましょうか」
リューゼさん、リエルさん、ナターリアさん、ムニ、コマちゃんを連れて協会に入る。広いロビーに入ると同時に突き刺さる視線。探索者協会のお約束だ。だけど今日は6人も同時に入ったから視線がばらけて大した圧は感じない。
そのまま私が代表して受付カウンターのおねーさんに話しかけに行く。
「今日はどんなご用件でしょうか?」
「護衛依頼の完了報告をしたくて来ました」
「はい、お疲れ様でございました。依頼人は貴女様で宜しかったですか?」
「はい、そうです。これが依頼表です」
受付のおねーさんにナワイカの街で作成したリューゼさんとリエルさんの分の依頼表と、リーモアの街で追加で作ったムニとナターリアさんの分の依頼表を渡す。
「中々遠距離の護衛ですね。えー、掛かった日数は〜…手数料を合わせて、一度マコ様は協会に224万ルビをお預け下さい」
言われて財布からお金を出して受付のおねーさんに渡す。
「では、そちらの…リューゼ様、リエル様、ムニ様、ナターリア様、探索者カードをご提示頂けましたら依頼表の通りに達成報酬を振り分けますのでこちらにお並び下さい」
皆が順番に探索者カードを提示した後、依頼料を受け取っていく。
「悪くない仕事だったぜマコ。暫くはキョットーにいるつもりだからまた会うかもな」
「はい、リューゼさん2ヶ月程のあいだ助かりました。また会いましょう」
リューゼさんと握手をする。ゴツゴツの大きい手だ。大剣を振るい、私達を守ってくれたリーダー的存在だ。別れが寂しい。
「私はある程度キョットーを見物したら、ゆっくりとナワイカに戻っていくつもりだ。マコと旅したこの一月半、楽しかったよ」
「ナターリアさん、有難う御座いました。私もナターリアさんがいてくれて楽しかったです」
ナターリアさんとも握手をする。マメの出来た手は毎朝起きると宿の庭等で剣を握り素振りをしているのを思い出させる。努力家の彼女にはこれからも有意義な人生を送って行ってほしい。
「私は家に暫く居ると思うから別に別れの挨拶は要らないわ。寂しくなったら会いに来なさい」
「はい、リエルさん」
リエルさんとは握手しない。家に行けば会えるだろうから。家の住所を聞き、また会う約束をして終わりだ。
『ん?別れの挨拶みたいになってるが、私はマコについていくぞ?』
「え?ついてくるの?どうして?」
『少年に剣の先生になってくれと言われてな。だから最低でも少年が免許皆伝する迄は一緒だ』
「…そうなんだ?」
挨拶は終わり、ムニとコマちゃんを残して皆はそれぞれ依頼ボードに向かったりそのまま協会を出たりして去っていった。
さて。どうするかな?まずは住む所を借りてキョットーに拠点を作らなきゃ…コマちゃんやヒューマ君はまぁ良いとして、ムニの住処の面倒も見なきゃいけないのかな?まぁでも自分で稼ぐでしょ。家賃は払ってもらお。その前にそれまでの宿も探さなきゃだ。
あと、コマちゃんの市民証だ。確か市民証を作るには住んでいる場所がその街であるっていう不動産屋さんで貰える書類と、その街の領主の承認のハンコを押して貰ってこなきゃいけないとかなんとか。めんどくさいな。私も定住してないから市民証は持ってない。一応探索者協会や魔術師協会のカードがある程度代わりになるしね。その線で行こうか。
「そういえばコマちゃんって、何歳なんだっけ?」
「…9歳」
「まぁそれぐらいだよね。探索者協会で登録出来るのは12歳からだし無理だね。じゃあさ、魔術が使えるとか言うこともない?」
「…わかんない」
小首を傾げるコマちゃん。うーん、可愛い。
「そっかー、明日にでも魔術師協会へ行って調べてみよう」
「…どうして?」
「身分証の代わりを作る為と、将来自分で稼げるようになる為、だね。私におんぶに抱っこじゃいつまでも自立出来ないでしょ?」
「…わかった」
「でもコマちゃん、取り敢えず宿を探しに行こうか」
「…ご飯が美味しいところが良いな」
『だな!』
2人を連れて探索者協会を出て馬車に戻る。
「それじゃあ今から泊まれる宿を探しに行くから…皆は馬車を見てて」
『うむ、任された』「…待ってる」
「どんな宿を借りるんですか?」
「馬車ごと泊まれるのが絶対条件で、値段は別に高くても良いから綺麗そうな所。あと…」
「…ご飯が美味しい所」
「の、3つだね。じゃあ行ってくるからお願いね」
『はいよー』「お気をつけて」
馬車を離れ、街行く人々に聞き込みを開始する。幸いこの街は今までの街と比べて人が多いので聞き込む相手には事欠かない。ここまで旅をしてきた私にはこういう聞き込みする時に聞くべき人が分かる。経験則だ。
まず普通の服を着たこの街に住んでそうな一般人然とした人は除外だ。だって住む家があるんだから宿なんかに態々泊まらない。大体知りませんって返答が帰ってくる。
次に比較的新しくてシンプルな武器防具を装備した探索者らしき人達、この人等が泊まる宿はあまり高くない手頃な宿の可能性が高い。低ランクの間はそれ程お金を稼げないからだ。
熟練の探索者達の装備というものは多少なり使い込まれてて、魔術紋様が縫われていたりと性能の高い武具だったりする。そういう人はそれなりの宿に泊まってるか、部屋や家を借りている人が多い。蓄えた知識も豊富なのでそれなりに求めてる情報を教えて貰える。
明らかに高い身分の人や身なりのいい人、又は商人。こういう人を見つけたらラッキーだ。良い宿をかなりの確率で知ってる。
そんな私の鑑定眼が唸りをあげ、10人程の人達から集めた情報から導き出した宿の名前は…!
「ここから大通りを城に向けてちょっと行った所にある旅館がお勧めだって」
「旅館ですか。分かりました」
「魚の刺身とかも出るんだってさ」
「…刺身、それ、おいしい?」
「どうだろうね?多分美味しいよ」
『私は唐揚げが食べたいな』
「それは良いけど、ムニは宿泊費自分で払ってね?」
『最近マコが冷たい!』
と、まぁひとまず今日は宿に泊まって、明日にでも魔術師協会と暫く住むための部屋でも借りるようにしようか。




