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行方不明

 今日はギバラを出発する日だ。細々とした旅の準備を済ませ、馬車に全員の荷物を積み込み、宿のチェックアウトをして、後はヒューマ君が来れば出発。なんだけど…


『来ないな、少年』

「いつ集合って伝えたの?」

「この青薔薇の宿に朝来てって言ったけど」

「あー、それならもう来ててもおかしくないわね」


 今は朝の時間を少し過ぎたぐらい。確かにもう来てないとおかしい時間だ。


『こっちから探しに行くか?』

「でもここを離れるとすれ違っちゃうかも?」

「じゃあそのヒューマ君を知ってる人がここで待機しておけばいいんじゃ無いかしら?」

「そうなると、マコか、リューゼか、ムニ、ギリギリ私だな」

「私は会ったこと無いし、リューゼと一緒にここで待ってるわ」

「了解」

「リューゼさんリエルさん、お願いしますね」


 と、いう事でリューゼさん達を馬車ごと宿に置いて、そのほかの皆でヒューマ君を探す事にした。

 一先ず何度か行ったことのある人集りの出来る食堂前迄来て見たけど、特にヒューマ君が居ると言う事も無く、行方は分からなかった。

 というかヒューマ君の家とか知らないし、探すの難しいなこれ。後は…道場?確か秋葉流剣術道場に通ってるとか言ってたな。取り敢えずそこに行ってみようか。


 街の人達に場所を聞きながら道を行く事10分程でたどり着いた秋葉流剣術道場。中々道場らしい道場だ。外から声をかける。


『たのもー!』

「なんだ?」


 ムニの挨拶から少しして出てきたのは体格が良く、ヒゲを生やした男性。中々に強そうだ。そんな彼が訝しげに此方を見下ろしている。


「すみませんいきなり訪ねて。あの、ヒューマ君を知りませんか?」

「ヒューマ?あいつは昨日旅に出るからって道場を辞めて出て行ったぞ」

「あー。じゃあ住んでる家とか知りませんか?」

「んぁ?ちょっとまってろ。おぉーい、ヒューマの家知ってる奴居るかぁ?」

「あ、俺知ってる」


 知ってるらしいその子はヒューマ君と同い年ぐらいの男の子で、ヒューマ君のご近所さんなんだそうだ。待ち合わせをしていたけど、時間になっても集合場所に来ないから行方を探しているという話をしたら家まで案内してくれると言う事になった。

 道場を出て男の子の案内で街の裏道を奥へと進んでいく。裏道は知らないまま入り込むと迷うから通ったこと無かったけど、結構お店とかもあるんだな。思ったより賑やかだ。

 そんな街並みを眺めながら暫く歩き、ようやく辿り着いたのは一件の家。男の子がその家に指を指す。


「この家だよ」

「有難うね、これお礼だよ」

「わ、良いの?ありがとー!」


 駄賃をあげると喜んで、ホクホクの笑顔で来た道を帰って行った。

 で、ヒューマ君宅。見た感じ周りの家とそんなに変わらない普通の一軒家だ。ドアに付いたノッカーを叩いて少し待つと、中から女性が出てきた。


「はい、どちら様でしょう?」

「初めまして。私、マコと言います。ヒューマ君は今ご在宅でしょうか?」

「あら、貴女がマコさんね…ふふ、成る程。私はヒューマの母でノエラです。で、ヒューマだけど、それこそ朝早くに旅の準備をして貴女が泊まってる宿に元気に向かいましたよ?」

「朝早くにですか?」

「ええ、ワクワクした顔で…もしかして宿に辿り着いてないのですか?」


 …ぬぅ?


「はい、待ち合わせの場所に来ないので探しに来たのですが…ねぇムニ、ナターリアさん、どう思う?」

『…コレは事件の香り』

「誰かに連れ去られたんだろうか?」

「…一度宿に戻って、それでもヒューマ君が着いてないようだったら手分けして探しましょう」

「急ごうか」

「ノエラさん、ちょっとヒューマ君を探してきますので早々で申し訳ないのですが失礼します」

「息子の事、お願いしますね」

『任された!』






………






「オラァ!」

「ぐっ!」

「もう一丁!」

「ガッ!」


 痛ぇ…力一杯殴りやがって。


「テメェが白い女の事知ってるのは分かってるんだ。吐けよ!」

「ぐがぁぁ、だ、誰が言うか」


 髪の毛を掴まれ殴られ蹴られて踏みつけられ…俺が一体何したってんだよ…


「あの白い女、10倍にしてやり返さなきゃ気が済まねぇ」

「クズが!テメェらなんかにぐうっ!」

「ガキが!楯突くんじゃねぇよ!」


 ボコボコにされて詰られて…ここはスラムのどっかにある広い建物の中。スラムに入った事ないから正確な場所は知らない。このままどうなるんだ…助けは来るのか?表通りを歩いていた時に連れ去られたから目撃者は多少はいると思うけど、衛兵に通報してくれただろうか?

 それと、マコさん達もう出発してしまったかな?置いてきぼりはやだなぁ…それとも俺のこと探してくれてるだろうか?でもここにいる連中はどうもスラムの実力者が混じってるみたいだし危ない目にあって欲しくは無い。コイツらも俺の命を取るまではしないだろう。

 …しないよな?不安になって来た。スラムの隅っこにでも投げ捨てられたら住民に身ぐるみ剥がされてトドメ刺される可能性もある。ダメだ、生き延びなきゃ。せめてコイツらが飽きて俺を捨てた時に逃げ出せるだけの余力を残さないと…生き延びてマコさん達に追いついて旅をするんだ。

 しかしいつまで殴り続けんだ…手加減しろよ。


「おい、コイツ口から血吐いてるぞ。流石に殺しちゃ不味くねぇか?」

「はっ、俺たちがやったってバレなきゃ良いんだよ。やっちまったほうが口止めが楽で良いじゃ無いか」


 あ、ダメだ、コイツらこのままトドメ刺すつもりだ。逃げ出さなきゃ…でもどうやって?今俺の襟首掴んでやがる奴の手に噛みついて手を離したその隙にダッシュで逃げるとか?出来るのかこのボロボロの身体で?でもやってみるしかないか。

 と考えていると、タンタンタンタン…と、この部屋の外から広い建物に反響する足音が聞こえて来る。走っているようでどんどん近づいて来るその音は…


「いた!ヒューマ君!!」


 …あれは…マコさん!?助けに来てくれた?でも、マコさん一人?ダメだ、危ない!


「おおっと、逃がさないぞ?」


 マコさんが入ってきた入り口を親分とか呼ばれてる男が塞ぐ。


「飛んで火に入る夏のお嬢ちゃんだね」

「こんなスラムの奥まったところまで一人で来ちゃうなんて危機管理が足りないな」

「白い女の連れだよな?あいつは何処にいる!?」

「逃げられないように足の一本ぐらい折っといた方がいいんじゃねぇか?」


 マコさんが周りの男達を見流し、俺を見つめた。数秒俺のことを見て、その瞳を細めた。

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