Cランク
「お待たせしました。これが今回の報酬となります」
ドン!とカウンターに載せられる報酬袋。
「今回の金額は、本来の依頼表記載の報酬に加えて、街の脅威となり得た悪魔の討伐、アグレー元協会長であるヴァンパイアの討伐の特別報酬を合わせて…」
『合わせて?』
ワクワクした顔で受付のおねーさんに食いつくムニ。流石に今回は心配していたけど傷一つないその姿を見て安堵したのはつい先日。
「1200万ルビとなります」
『おお〜パチパチ〜』
提示された報酬額に拍手するムニ。
「又、悪魔を倒されたマコ様は、特別措置でCランクへの昇格試験が受けられる様になりました」
「Cランクですか」
Fランクの駆け出しから始まって、初心のE、中堅のDときて、Cランクともなると1流の探索者って奴だ。大概の人はこのランクで止まってる。これ以上のランクに上がるには複数の街の推薦やそれ相応の実力、難しい筆記試験をクリアしなきゃならないからだ。そこまでしなくてもCランクともなれば余裕を持って生活ができるだけの収入が得られるというのもある。
特例として、凄い功績を立てたり、枠に収まらない実力を認められた場合に一気にBやAランクに昇格する事もあるらしいけど、そんな事はそうそう無いらしい。
『Cというとあたしと同じだな!』
「どうしますか?今からでも試験は受けられますが」
「そうですね…時間もあるし折角なんで受けてみようかと思います」
「では副協会長を呼んで参りますのでそこの椅子にお掛けになってお待ちください」
呪いの館でのゴタゴタがあった日から3日。私達が巻き込まれた事件の調査が終わるまで街から出ないで欲しいと言われ、兵士さん達や探索者協会の副協会長さんが泊まっている宿にやって来て当日の悪魔の討伐の状況、アグレーとの話の内容等を聞かれ、ようやっと行動が解禁されたのが昨晩の事。
アグレーは倒した時灰になったらしくて、死体が無くて検分が出来ない状況だった事もあって事実確認に時間が掛かったけれど、その事件の日に何処かに出掛けてから協会に戻ってこず行方が分からない事と私達の証言を受けて、呪いの館で今迄行方不明になった者達の加害者はアグレーだったと言う事に落ち着いた。
で、自由になった今日、報酬の受け取りに探索者協会の受付にやってきたと言う所です。
報酬を受け取った後、少しの間椅子に座ってボーッとしていると、副協会長さんがやってきた。何度か宿に来て話をした事があるので顔見知りだ。名前は確かトリマさんだったかな。
「お待たせしましたマコさん。昇格試験を始めたいと思いますので、訓練場までお願いします」
「分かりました」
トリマさんの後に続いて訓練場までやってきた私達。木人が立っている所まで来てトリマさんが振り返った。
「それではあの木人に貴女の得意な魔術を撃ってください」
「得意な…ですか?」
うーん、コスモが制御してくれるお陰でどの魔術も同じように撃てちゃうから得意も苦手も無いんだけど。
…コスモを取り出して開く。どの魔術にしようかな?うん、君に決めた!
「じゃあ撃ちますね。●、レイ!」
カッ!と収束されたレーザー状の光が私の手から放たれ、木人の頭を貫く。木人の頭には3センチ程の穴が空いた。この魔術は収束させればさせるほど威力が上がる。このレベルに収束させるにはかなりの魔術制御力が必要になるので試験には丁度良いんじゃ無いかなって。
「おおっ、素晴らしい!詠唱もせずにコレ程の魔術を!他にはどんな魔術が使えますか?」
「えぇーっと…」
トリマさんに私の使える魔術を説明した。初級の魔術から最近リエルさんに教えてもらった
中級魔術等々。
「ほほう、バリエーション豊かですね。悪魔を倒したのは先程のレイの魔術ですか?」
「あ、いえ。シューティングスターという私の魔法です」
「シューティングスター、魔法…ですか?初めて聞きますがそれを見せて頂いても構いませんか?」
「あー、構わないんですが。結構周りに被害が出るので周辺の人をちょっと避難してもらえれば」
「それ程の威力があるのですか?分かりました」
トリマさんに周囲の人を爆心地になる木人から遠ざけてもらって、いざ!
「シューティングスター!」
………
「Cランクへの昇格、おめでとうございます。コレが新しいカードになりますので無くさないようにご注意下さい」
「有難う御座います」
受付のおねーさんからカードを受け取る。Cランクのそれは銅の色をしたカードだ。
「それからこの証書をどうぞ」
なんか渡された。その証書とやらに目を通してみると、どうも私がBランクに上がる時に必要な実力証明書という事らしい。今後、他の街の協会で依頼をこなして行って、この証書を3枚集めればBランク昇格試験を受ける事が出来る様になるそうだ。
「トリマ副協会長の推薦となります」
『おー、目指すはAだな!』
「私は別に今のランクでも良いんだけども」
Cランクの時点で大半の依頼は受ける事が出来るしなぁ。Bランク以上で受けられる特典もあるみたいだけど…指定の宿や武具屋で割引してもらう事が出来るようになったり、街の入り口で貴族用の門が使えて待ち時間が少なくなったり。他にもあるけどまぁ有れば確かにお得で便利で、でも別に無くても困らない。
「それではマコ様、今後のご活躍、期待しております。本日は有難う御座いました」
「はい、此方こそ」
受付のおねーさんに挨拶をして、探索者協会から出る。
『コレからどうする?出発は明日なんだろう?』
「どうしよっか?お金も入ったしご飯でも食べに行く?」
『そだな!肉が食べたいな』
「お肉かー。人に聞いてみようか。あ、すみませーん!」
………
翌日の朝、馬車に荷物を積み込んで準備を済ませ、数日滞在した宿を引き払い南の門へやってきた私達。門番さんに協会のカードを見せ、馬車の中を改められて問題なしという事で。
「道中お気をつけて!」
「有難う御座います」
門番さんに返事をして馬車をゆっくりと進ませる。今馬車を操作してるのは私だ。一応隣でリューゼさんが見守ってくれてるけど。
タキアの次の街はロテーク。大体5日程の日程で、途中に峠道があるそうだ。その峠道では野盗が出やすいとかなんとか。まぁもし出てきてもこのメンバーなら大丈夫でしょう。
最近夏が近づいて来た事もあって少し暑い。元々涼しい所に住んでいたらしいヒムロやサクヤちゃんなんかは昼時になるとグデーンってなってる。そんなんで本格的に夏場になった時大丈夫なんだろうか?
出来れば真夏になる迄にはキョットーに辿り着きたい所だ。




