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呪いの館

 声を掛けられて後ろを振り返ると、そこには品のいいスーツのような服を着た男の人が立っていた。


「貴方は…?」

「失礼、私、このタキアの協会の長を務めております、アグレーと申します」

「は、はぁ。ご丁寧にどうも。マコと申します」


 この協会の偉い人だった。私達に何の用事だろう?


『私はムニだ』

「マコ様にムニ様ですな。いや、声を掛けさせて貰ったのは他でも無い、先程の訓練場でのムニ様の活躍を目にし、一つ依頼を受けてもらえないかと思った次第でして」

「依頼…ですか?」

「はい…この依頼になります」


 と、アグレーさんが依頼ボードに貼り付けられている依頼表の一つを指差す。どれどれ?


ーーーーーーーー

依頼人 探索者協会


種類 討伐依頼


期間 無期限


依頼内容

 街の外れにある大きな館に、正体不明の魔物が住み着いたらしく、その館に向かった者が行方不明になっていて、付近の住民が避難をする事態に陥っている。これを討伐して貰いたい。


条件 Cランク以上推奨


金額 300万ルビ

ーーーーーーーー


 正体不明の魔物…どんな魔物なんだろう?報酬は結構高いけど、その分危なそう。


「事の始まりは半年程前だったでしょうか…暫く空き家だったその館に新しく入居する予定だった者が、館内の見学に行ったっきり行方不明になった事がキッカケで。何故なのか原因を探ろうと今まで数グループの探索者達を討伐に向かわせたのですが一人として帰ってこず…噂が噂を呼び呪いの館と呼ばれ、その恐怖から付近の住民が避難し、依頼を貼り出していても誰も受けない状況に陥っているのです」


 呪いの館。この世界、幽霊的なモンスターとかも居たりするみたいだから、もし館に出てくる魔物がそういう類だとすると依頼受けるの正直やなんだけど。

 そんな事を考えてると、ムニが自信満々に胸を張って、


『魔物であろうが何であろうが私にかかればイチコロだ』


 と仰った。流石ムニ、悩む素振りも見せないね。


「受けるの?ムニ」

『あぁ、金もないしな。丁度良い』

「おお、受けて頂けますか。是非宜しくお頼み申します」

「だけど今からだと遅くなりそうだね」

『そうだな。んー、明日でもいいか?』

「大丈夫ですとも。少しお待ちいただけますか?館までの地図と玄関の鍵をお渡しますので」


 今日は依頼だけ受付で受理しておき、明日その館に向かう事にした。アグレーさんから鍵と地図を受け取って、そのまま探索者協会を後にする。


「リューゼさん達にも声かけようか?」

『別に問題なかろう。マコとあたし、ヒムロで充分だと思う…それに報酬が減るしな』


 まぁ確かにムニとヒムロがいれば大概どうにかなるとは思うけど。


「そう?まぁ大丈夫か」

『サクヤは留守番な。危ないから』

「そうだね」


 行く時はサクヤちゃんをリューゼさん達に預けておこう。館では何があるか分からないから、そんな場所へ戦えないサクヤちゃんを連れて行くのは怖い。

 

『私もお兄ちゃんみたいに戦える様になりたいです…』


 サクヤちゃんが力不足に嘆いてる。サクヤちゃんも成長すればヒムロみたいに大きくなって戦える様になるのかな?


「何にせよ明日だね。もうこのまま宿に帰る?」

『折角タキアに来たことだし、もう少し見てまわりたい気がするが』

「そっか。じゃあ暗くなるまでブラブラしようか」


 その後露店で軽食を買って食べたり、服飾店で服を眺めたりしてタキアの街を堪能した。

 そうこうしてるうちに暗くなってきたので宿に帰るとリューゼさん達も帰っていた。宿の食堂でお酒を飲みながら談笑してる。

 同じテーブル席に座って私達もご飯を頼み、今日あった出来事をリューゼさん達に話す。


「ふーん、呪いの館ねぇ。俺達ついて行かなくていいのか?」

『大丈夫だ、問題ない』

「まぁムニがいれば充分でしょ。でも気をつけなさいよ」

「一応私達護衛なんだよな?マコに付いていなくて良いのか?」

「ムニの非常識さを知らないからそう思うのよ。ナターリアも一度ムニと手合わせしてみたらどうかしら?」

「非常識?そんなに強いのか?じゃあ今度お願いしようか」

『良いぞ。明日帰ってきたらやろう』


 ナターリアさんもCランクの剣士って話だけど、どれぐらい強いんだろう?だけど流石にムニには歯が立たないだろうな。


「呪いの館、どんなのが出てくるのかしらね?」

「幽霊の類でない事を祈ってます」

「幽霊ねぇ。もしかしたら玄関扉を開けた途端急に背後から飛びつかれちゃうかも!」

「もう、脅かすのやめてくださいよリエルさん!」

「あはは、でもそんな事もあるかもしれないわね」


 うぇぇ、やだなぁ…


………


 翌朝、準備を早々に済ませて街の外れにある呪いの館の前まで来た私達。館を見てみると蔦でびっしりと覆われているという事もなく割と綺麗な外観をしていた。


「呪いって感じじゃないね」

『普通だな』


 玄関を見てみると扉が開いていてそのまま中に入れる状態になっている。玄関の鍵預かってきたのに意味ないなぁ。


「なんで開いてるんだろう?」

『なんとも不用心だな』


 と、すたすたとムニが入り口を潜って行くので慌ててついて行く。

 入り口を潜ると吹き抜けの玄関ホールになっていて、左右に2階に上がる階段がカーブを描いている。結構な広さで、明かりがついていないので奥の方は暗くてよく見えないけど荒らされていると言った様子はない。


『部屋を見てみるか』

「そうだね」


 私のライトの魔術で辺りを照らしながら一階の部屋を順番に見て行く。空き部屋、空き部屋、ダイニング、キッチン、風呂場、トイレ…調度品等も普通にあって、怪しい所や人等も見つからずに一階の全ての部屋を見終わった。


「1階は何もないね」

『だな』


 玄関の所にまで戻ってきて、階段を登って今度は2階。空き部屋、空き部屋、執務室、書斎、空き部屋…2階の部屋も特におかしな所は見つからず、2人で首を傾げながら階段を降りて玄関前へ。


「行方不明になった人達の遺体とかが有るかと思ってたんだけど…」

『ネズミ一匹見当たらないな』

「地下室でもあるのかな?」

『これだけの屋敷だと隠し部屋とかもありそうだな。あるとしたら何処だ?』

「台所とか?広かったよね?」

『2階の書斎も怪しいな』


 2人で考える。ふと、玄関が閉まっている事に気がついた。


「ムニ、玄関閉めた?」

『いや?触ってない』

「…」


 玄関の取っ手を持って力を入れてみるも開く様子がない。


「閉じ込められた?」

『かもしれないな…っと、お出ましだ』

「え?」


 ムニの目線を追ってみると…オールバックに固めた髪に黒いスーツの様な服を着た一人の男?が悠々と階段を降りてくる。


「久しぶりの訪問ですね。歓迎致しますよお二方」


 何処にいたのこの人…ん?なんか、見た事がある気がする…


「…アグレーさん?」

「ほう、分かりますか。一応姿は変えているんですが」

「何となく雰囲気で?それで、どうしてここに?」

「マコ様、それは勿論、貴女達を食べてしまう為ですな。食事的な意味で」

「…もしかして今迄の行方不明者も貴方が?」

「ふふ、そういう事です。イキのいい探索者は魔力も濃厚で中々味わい深いんですよ。そして貴女達も今日から行方不明者の仲間入りです」

『ふん、やってみろ』

「ムニ様、確かに貴女は凄くお強い。ですが、世の中上には上がいるという事をその身に知らしめて差し上げましょう」


 此方に向かってアグレーが手を翳した。すると複数の蝙蝠や狼がアグレーの周りに現れ、私達に襲いかかって来る!

 即座に鞄からコスモを取り出し開く。


「ヒムロ!狼達をお願い!」

『承知』


 ニャォーーン!と鳴き声を上げヒムロが巨大化する。そのまま近づいてきた狼達を目に見えない程の速さの猫パンチで吹っ飛ばす。


”大気よ、渦を巻き千の刃となりて我が前に立ち塞がりし敵を喰らい尽くせ”

「●、トルネード!」


 私が放った竜巻の魔術により玄関ホールに無数の風の刃が吹き抜け、上空から此方に襲いかかろうとしていた蝙蝠達を切り刻む。


「ほう、詠唱無し…マコ様も中々やるではありませんか」

『よそ見していても良いのか?』


 此方を見ていたアグレーの前にムニが到達し、背中に背負っていた大太刀を目にも止まらぬ速度で腹目掛けて振り抜いたが、その一刀はまるで霞を斬ったかの様にアグレーの身体をすり抜けた。


『…蝙蝠や狼の眷属に霧変化、ヴァンパイアか』

「ご名答、妖鬼族の姫、ムニ様」

『ん?あたしの事を知っているのか?』

「ええ。妖魔界隈では結構有名ですからね、貴女」

『知っていて喧嘩を売ったのか』

「えぇ…貴女程の妖魔の血を啜れば私は更なる高みに至るでしょうな」

『ふん、上等だ』


 アグレーが赤く伸びた爪をムニに振るうもさっと避けたムニがもう一度、今度は頭から縦に刀を振り抜く。が、先程と同じ様にすり抜ける。


「ふふふ、無駄ですよ」

『…』


 ムニはアグレーを無視して目にも止まらぬ剣速で斬り続ける。


「…むぅ」

『これだと霧状態から戻れないだろ?戻った瞬間バッサリいくからな。その状態だと魔力を消耗するだろうし、何も出来ない』

「成る程。ですが…」


 アグレーは霧状態のままふわぁっと飛び、吹き抜けの天井にぶら下がる大きなシャンデリアまで移動した。そこで実体に戻るアグレー。


「この霧の状態でもこうやって移動する事は出来るのですよ」

「●、レイ!」


 カッ!と収束されたレーザー状の光が私の手から放たれ、アグレーの左胸を撃ち抜いた。

 アグレーは胸に空いた穴を見て、驚きの表情で此方をゆっくりと振り返る。


「…マコ様から一撃貰うとは思っておりませんでしたな。もう眷属達を倒したのですか」


 …心臓を撃ち抜いたつもりなんだけど大してダメージを受けてはいない様子。コスモの制御で完璧なレイだったんだけどな。そう考えているうちにアグレーの左胸の穴が巻き戻ししているかの様に埋まっていく。服まで元通りだ。ダメージ無し?


「お返しです。〜〜〜、フレイムランス」

「っ!アクア!」


 アグレーの手から放たれた炎槍が私に向かって飛んでくるのをアクアの魔法で発生させた水の塊で相殺する。ふぅー、間に合って良かった…アクアの魔法は出が速いから助かった…でないと黒焦げだったよ。


「ほう。マコ様、少し貴女を侮っていた様だ。お詫びに貴女に相応しい相手を召喚いたしましょう。■ ■■、サモンデーモン」


 カッ!と、玄関ホールの絨毯が燃え上がり、炎の中から一体の魔物が現れた。…ううん、あれは多分…悪魔だ。


『お呼びで御座いますか、アグレー様』

「えぇ、そこの娘を殺さない程度に甚振ってあげなさい」

『お安い御用で』


 そう言って、私の方に向かってゆっくりと飛んでくる悪魔。人型では有るもののその姿は動物のような特徴が色濃く、身の丈2メートル強程で顔は山羊、身体は筋骨隆々とした人型で強そうだ。手には1メートルを超えるぐらいの大きな鉈を持っている。


 契約された悪魔というのは、雇用主に忠実に従うものの、相応の対価を要求してくる事で有名で、悪魔を召喚する術は禁呪指定されている。大概のケースで召喚主ごと、周りに大きな被害を齎すからだ。

 そして下位の悪魔でも小さな街程度なら壊滅させるほどの力が有ると師匠の文献に載っていた。


『とっとと降りてこいアグレー』


 と、ムニが一足飛びで天井まで跳んでいってシャンデリアの根元を斬り落とす。1階のホールに飛び散るシャンデリアの破片と共にアグレーが落ちてきた。そこを狙ってムニが襲いかかる。


「血界」


 アグレーの周りに血の色をした膜が張られ、ムニの刀を受け止めた。


『さっきの霧と言い、守ってばかりか?臆病者』

「いえいえ、これからですとも」


 覆っていた血の膜が宙に浮く大鎌の形になり、それを手にするアグレー。ムニの刀とアグレーの大鎌が激しくぶつかりあう。


 その間に私とヒムロの前に降り立った悪魔。

ニヤニヤと笑みを浮かべた様な顔をしながら私にゆっくりと襲いかかってくる。


 首を狙って振り抜かれた大鉈をしゃがんで避け、後ろに逃げる。危ない!いきなり首狙いとか、殺さない程度にって言うアグレーの指示を守ってなくない!?


 その間にヒムロが背中側に回り込み、爪で悪魔の背中を引き裂く…が、悪魔はさほどダメージを受けた様子もなく引き続き私を追いかけてくる。

 この悪魔には物理的なダメージは効果が薄いのかな?魔術なら通る?


「●、アイシクルコフィン!」


 ピキピキ…と、悪魔の周囲に霜が降り始め、その全身を凍りつかせる。が、悪魔が咆えると拘束していた氷が砕け散り、魔術が霧散する。

 あっさりとレジストされた…


 悪魔が私に接近してきて大鉈を振るい、それは何とかギリギリ回避したものの、追い討ちの蹴りをお腹に受けた。


「かはっ!」


 壁まで吹き飛ぶ私の身体。壁にぶつかった衝撃で呼吸困難になる。ずるずると下がる身体。内臓が、背中が、身体が痛みで重くて動かない…


 ダウンしている私へ、悠々と近づいて来る悪魔。その顔は嗤っている。

 その間に私に接近してきたヒムロが私の服の襟元を咥えて、子猫の様にぶら下げて玄関まで走る。玄関の扉を体当たりで壊す勢いで開け、そのままその場から逃げるヒムロと私。


 玄関から出た勢いそのままに街の中を突っ切るヒムロ。先程までのゆっくりとした動きから一転、高速で飛翔してくる悪魔。私を咥えているがために全力で走れないヒムロが少しずつ、着実に追いつかれている。


「なんだあの魔物は!?」

「あれは悪魔だ!逃げろー!」

「キャァァァァ!!」


 通りを歩いていた人達の怒号や悲鳴が飛び交う中走り抜けること数十秒。門をすり抜け、なんとか追いつかれずに街の外まで出てきた。


『これ以上逃げられそうにないぞ?』

「…うん、ここで良い。止まって」


 ヒムロに止まってもらい、振り返って悪魔を目視する。距離がちょっと近いけど、多分大丈夫!


「コスモ!シューティングスター!」


 キュン!チュドォォォォン!


 見てからでは回避困難な速度で上空から飛来した魔力塊の直撃を受けて、その肉体を木っ端微塵に吹き散らす悪魔。咄嗟にガードした大鉈がへし折れ、腕や足が飛散し、悪魔のいた場所を中心に半径5メートル程のクレーターが出来上がる。それに伴う衝撃波と土と悪魔の肉等が伏せている私達の身体をバッシバッシと打ち付ける。痛い痛い!


 ゴゴゴゴゴ…


「ぶへっ、ぶへっ」


 土が口の中に入った…うぇぇ。


『…やったか?』

「見た感じどう考えてもやってるんだけど…」


 そのままの体勢で1分ほど待機していたけど、復活して襲いかかってくる様子は無い。


「良かった、流石に効いたみたい…」

『吃驚しました』

「!?」


 クレーターの底からボロボロの山羊の頭だけになった悪魔が浮き上がってくる。


「そんな状態でまだ動けるの!?」

『いえ、流石にここまで肉体を損傷した状態から贄も無しに肉体を復活させる事は出来ません。貴女方の勝ちですよ。まさかこんな隠し球があるとは思っておりませんでした』

「…それにしてはなんか流暢に喋るね悪魔さん」

『ええ、肉体は吹っ飛んでしまいましたが精神体は無事ですから』


 取り敢えず大丈夫そうだ。良かったー、もうコスモの魔力も限界だろうし、私の身体も先程の蹴りの一撃でガクガクだ。これで悪魔がまだ元気だったらどうしようも無かったよ。


『そうそう、話は変わりますが私、貴女の様な人が好みでしてね』

「え?急に何の話!?」


 浮かぶ山羊頭に好みとか言われても嬉しくない。


『貴女の死後の肉体を贄に、私を使役してみませんか?コレでも私、悪魔としては中々グレードが高いのでお役に立てると思いますが』


 コレは悪魔の契約…?確かに悪魔を使役出来るならかなり心強いけど…悪魔に関する魔術関係はバレたら捕まっちゃうらしいからな。ダメダメ。

 私はノーといえる女!


「い、いえ、結構です」

『そうですか。残念です。では、またいずれ会える事を楽しみにしておりますよ』


 そう言い残して悪魔の魔力が消えた。山羊頭がポトリと地面に落ちる。うーん、私はできれば会いたくないなぁ。


 ちょっとその場にうずくまり体力の回復に努めていると、騒ぎを聞きつけたのか街の方から兵士数人が駆けつけてきた。そして私とヒムロとクレーターの中の山羊頭を見ながら、


「お、おい、そこの嬢ちゃん。もしかしてこの悪魔を倒したのか?」

「ええ、何とか」

「なんだこの穴は…」

「何の魔術だ?それとも後ろの召喚獣が?」

「私の魔法で吹っ飛ばしました」


 暫く兵士さん達の質問に答える私。呪いの館の事、アグレーの事、悪魔の事を包み隠さず答えた。


「…あの呪いの館はそんな事になってたのか。何にせよ悪魔を倒してくれて有難うな嬢ちゃん。先程からうずくまってるが立てるか?」

「体調は回復したので大丈夫です」

「そうか」

「ヒムロ、もう小さくなっても良いよ」

『ああ』


 シュルシュルと小さくなり私の肩に乗るヒムロ。それを見て驚く兵士さん達。

 ムニの事を手助けしに行きたいのは山々なのだけれどもう私には余力がないし、あのアグレー相手では全快でもちょっと役に立てなさそう。

 ムニが勝って帰ってくる事を祈ろう。


………


「ハッ!」『フッ!』


 マコやヒムロが悪魔を連れて館から出て行った後も、ガキィン!ギギギと刀と大鎌で打ち合いをするあたしとアグレー。

 暫くそうしていると、ふとアグレーの顔が驚いたかのように変わり、あたしの刀を弾いて距離を取った。


「なんと…驚きました。まさか私の悪魔がマコ様に負けるとは思っても見ませんでした」

『ほう?という事はお前の助けはもう来ないという事だな』

「はっは、私一人でも貴女を相手取るには充分ですとも」

『ぬかせ』


 再びぶつかり合うあたし達。時折アグレーがフレイムランスやアイスアロー等の魔術を放ってきたりはするがそれは回避し、こっちの攻撃がアグレーを捉えては霧となってすり抜け鎌で防がれ、お互い決定打を与えられないまま時間だけが過ぎていく。

 …このヴァンパイア、ここまでやるとは思ってなかったな。中々突破口が掴めない。奴も多少なり魔力は消耗してるだろうけどあたしも身体強化で魔力を使ってるからおあいこだ。しかしこのままじゃ早々決着がつかないな。仕方ない…


 後ろに下がって一旦距離を取る。


「おや、諦めましたかな?」

『せいっ』バキッ!


 空間に穴を開けて一本の刀を取り出す。


 破魔刀 朧月夜

 強大な破魔の力と斬れ味によって、斬った者の肉体、精神、魔力を分断するあたしの切り札。が、使用者の魔力を急激に吸い取る為に並の人間にはマトモに扱えない。

 今こうして手にしているだけでも魔力がごっそり吸われている。


「な、何ですかその禍々しい刀は!?」

『ふん。いくぞ』


 身体強化を全開にし、床を蹴る。一瞬で天井迄到達し、天井を蹴って強襲…この一撃で!

 

「くっ!血界!」


 アグレーが張った血界と大鎌の守りごと、アグレーを唐竹に断ち切る朧月夜。一瞬霧になろうとしたアグレーだが、刀の力で霧になる事叶わずそのまま頭から真っ二つになる。


『どうだ?効いただろ?』

「ウガグ…キィェェェァァァ!」


 半分に切れた身体であたしに襲いかかってくる。流石の生命力だが、その動きは既に精細を欠いている。この刀の効果で精神まで斬ってしまったから気が触れたのだろうな。こうなってしまえばもう敵では無い。


『じゃあな、アグレー』


 縦横斜めと縦横無尽に斬り刻み、ダメ押しとばかりに袈裟懸けに斬りトドメを刺す。アグレーの身体か崩れていき、灰となって地面に散らばる。その灰を暫く見つめていたが復活する様子はない様だ。

 朧月夜を鞘に戻して異空間に仕舞う。


『はー、疲れた』


 さて、報酬を貰って美味い酒でも飲みながら皆に武勇伝でも語るとするかな!

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