師弟契約
「師匠〜!帰ってきましたよー師匠ー!」
アビラタさんとアレコレお話していたら何か元気な声が玄関の方から聴こえてきた。
「そんなに大声出さなくとも聞こえとるよ、早く入っておいで」
「師匠ー!手が塞がってます!荷物が大量過ぎてドアを開けられません!」
「一回荷物を地面におけばいいじゃろ」
「だってこの荷物、割れ物注意って書いてあるんですよー!割れても私の責任にならないのであれば!地面に置く事も吝かではないですけどー!」
「…しょうがない奴じゃのぅ…この老婆を働かせるとは…」
「あ、アビラタさん、私が開けてきましょうか?」
「ぬ、良いのか?じゃあお願いしようか「師匠ー!開けてくださーい!」
なんかいきなり賑やかになったなぁ。若い女の子?の師匠コールがひっきりなしに聴こえてくる。
「今開けまーす!」「ししょ…」
あ、止まった。知らない声だからかな?まぁいいや開けちゃおう。オープン!すると、やはり想像通りというか?可愛い魔女ルックな格好をした金髪の女の子。
ん?なんか私をみた途端固まったけど…
「…誰ですか?何故師匠の家にいるのですか?…もしかして流行りの詐欺ですか!?年のいった師匠をカモにしようという詐欺ですか!?この家にはお金なんてないですよー!」
なんかメッチャ不審な目で見られ始めてアレコレ言われてちょっとどうしていいかわかんないんですけどー!?
………
「あの、すいませんでしたー!ギャーギャー行っちゃってー!」
「ウチの弟子が喧しくてすまんの」
「いえいえ、何ということも無いですよ」
「ほれ、自己紹介じゃ。」
「あ、私はラザっていいますー」
「私はマコと申します」
「これはこれはご丁寧にー」
「いえいえ」
と、まぁゴタゴタの末に結局アビラタさんが玄関まで来て説明してくれたので事なき?を得た私たちは再びリビング的な所でお茶を啜っている所。これ、なんのお茶なんだろう?そもそもお茶なんだろうか?美味しいからいいんだけど。
「師匠、言われたものを大体買ってまいりましたー」
「大体?何か足らんのか?」
「ホベマの実の値段が高すぎて予定の3分の1程しか買えなかったのとラメの葉が品切れでしたー」
「予定の3分の1か。まぁ倉庫にまだ残ってるから注文分は足りるじゃろ。してもラメの葉が売り切れとは珍しいの、まぁ他の素材で代用すれば良いか」
「他には…」
「ふむふむ…」
「アレはどうすれば…」
「それはじゃな…」
ホベマの実?ラメの葉?分からない名前が出てくるけど何になる材料なんだろう?でも口を出すのは憚られる雰囲気だし一先ず黙っとこ。
…
…
…
「こんな所かの。そうじゃ、所でマコよ」
「はい?なんでしょう?」
「聞いた感じだと、行くあてが無いんじゃないかの?」
「…そうですね、この先どうすれば良いのか正直分からないです」
「この世界の事を知ってから旅に出るのが良いと思うんじゃが、ここでしばし勉強していくかの?」
このノーヒントな状況で困ってる私になんて優しいお言葉!アビラタさんほんといい人だなぁ。
「はい、是非お願いしたいと思います。しかしいいんでしょうか?お邪魔になるんじゃ無いですか?」
「なぁに、儂も彷徨い人と会った事はあってもあまり話をした事は無かった故に儂にとっても勉強になるしの」
「お、マコさん師匠の弟子になるんですか?ふっふーん、わたしもついに姉弟子!ところでマコさんは年はいくつなんですか?」
「えーと…あれ?いくつだっけ?なんか思い出せないけど、高校生なのは間違いないから15から18?です」
「年が曖昧とは不思議です!でもマコさんの方がちょっと年上、私14」
「儂は254じゃ」
「254!?」
この世界の人は長生きなのかな!?地球ならギネスまっしぐら!
「師匠は不老長寿の薬を開発した錬金術師として有名で、世間からも評判のすごい魔女なんですよー!」
「材料的に二度と作れないようなレシピじゃから継承する事もほぼ無いがの。因みにこの世界の人間族の寿命は60前後じゃ」
60…ちょっと日本とかと比べると短いけど。
でも、そんな事よりも私の記憶。名字はおろか年すら思い出せないのはちょっと不安すぎる。順を追って考えてみよう。
名前は一部だけ。マコ。名字がどうも出てこない。
生まれは…あれ?日本って事だけ分かる。何県何市何学校…?つまり何も分からない。
年も15〜18?誕生日もわからない。
高校生なのは覚えてる。
黒髪でロング。今はツインテール、うん。
制服は学校指定の冬の制服のまま。もちろん着替えも無い。黒ストッキングに学校内だったため上履き。上履きちょっと汚れちゃったな。
「マコさんどうしたんですかー?」
「あ、ちょっと考え事をしてます。」
「成る程、じゃあちょっと師匠とお話ししてるので終わったらまたお話ししましょうー!」
「はい、有難うございます」
んで、姿や顔は…後ろに大きな鏡があるからそれで…私の記憶通りの顔形、体型。身長がちょっと低くてツリ目というか猫目ってよく言われる目、童顔といわれる顔出だ。間違いない。
持ち物は少なくて謎の鍵穴の付いた本と木の棒(まだ持ってた)一先ずこれだけ。
先輩の名前は…あれ、これも思い出せない。知ってるはずなのに。
先輩の姿形は思い出せる。癖っ毛の黒髪に制服、ちょっと柔和な表情が素敵な私の…
家は?家どころか家族、その構成すら思い出せない。
って、これってもう殆ど覚えて無いんじゃ…なんでこんな事になっちゃったのかなぁ?
「考えごとは済んだかの?」
と、アビラタさんが話しかけてきた。
「あ、はい、大体は。」
「じゃあ契約をしようじゃ無いか」
「契約…ですか?」
「この場合、師弟の間で交わされる契約の儀の事じゃ。怖いもんじゃないから安心しぃ。弟子でもない相手に勝手にレシピや魔術を広めたりすると魔術師協会にうるさく言われるのでの」
成る程、なんか書類とか書いたりするのかな?誓約書的な?
「そこの絨毯の上に立つんじゃ」
「あ、ここですか?」
「そうじゃ、この羽根を待つんじゃ」
羽根ペンかな?でもテーブルも紙も無いんだけど
「それを胸の前に持ってきて、そう、そうじゃ。でははじめるぞ」
「え?」
え?っと瞬きする間にアビラタさんが何処からともなく出した杖を振りかざし、呪文らしき物を唱えだした!
「〜〜〜、コントラクト!」
うわぁ!絨毯が光輝いて何かキラキラしたものが手にした羽根に集まって来てる!と思ったら羽根が光に包まれて消えてしまった。なんか綺麗だったなぁ。
それにしてもこれはもしかして、魔法というやつでは!?凄い!
「コレで契約は完了じゃ。今日からマコは儂の弟子という事になる」
…こうして私は薬師(魔女?)アビラタさんの弟子になった。




