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タキアの街

「リューゼさんはタキアまで出掛けた事は無いんですか?」

「護衛の依頼で行った事は有るって程度だな」

「じゃあ余り詳しくはない?」

「だな。案内できるほどには知らねえな」

「そっかー」


 村を出て、タキアの街へ向かう道中。特に大きな魔物に襲われる事もなく暇なので、リューゼさんと共に御者台に座って世間話をしている所です。


「リューゼさんって、何歳の時に探索者になったんですか?」

「12の時だな」

「リューゼさん今28歳でしょ?と言う事は16年!ベテランですねぇ」

「まぁな」

「どうして探索者になろうと思ったんですか?」

「あぁ、俺が小さい頃住んでた村にある日探索者達がやって来たんだが、その中の1人に大剣背負ってる人がいて、その姿がなんかカッコ良かったんだ。それに憧れて探索者になった」

「はー、成る程」

「それが無くても探索者になっていた気はするがな」

「確かになってそうです。…そうだ、リューゼさん」

「なんだ?」

「私も馬車が操れる様に覚えた方がいいと思うんですが、教えて貰えませんか?」

「あぁ。マコの馬車だしな。覚えとかないと俺が居なくなったら困るわな」

「そーなんですよ」

「んー、まぁ構わないぞ。この馬達も中々賢いからそんなに手間でも無いしな」

「ホントですか?じゃあお願いします」


 そんなこんなでリューゼさんに馬車の操作を教えて貰いながら走っては休憩し、また走るを繰り返している内に夜が近づいて来ました。


「そろそろ野営の準備をするか」

「そうですね、もうちょっとしたら暗くなりそうですし馬車止めましょうか」


 野営をするのに適した場所を探して馬車を止め、皆に準備をしてもらう。薪になる物を探して来たり、食べられるものを探してきたりだ。

 馬達は留め具を外して自由にしてあげた。それぞれ思い思いに付近の道草を食べてる。やっぱりこっちの世界の馬も人参が好物だったりするのかな?まぁ持ってはいないんだけど。


 次に付近の石を上手く積み上げてかまどを作ってその上にリーモアで買った鍋を置いて崩れないかチェック。大丈夫そうだね。

 コスモを取り出してちょっと確認。


「アクアの魔法で出来る水って飲み水にも使えるの?」

”大丈夫ですよ”

「そっか、ありがと。アクア」


 水球を作って必要な分だけ鍋にぽちゃんと放り込む。残りの水を蛇口から出る水の様にたぱーっと出しながら手を洗う。うーむ、便利だ。しかしこの水はどっから来てるんだろう?大気中の水分?近くの川の水?謎だなぁ。


 そうこうしてるとナターリアさんとリエルさんが木の枯枝を集めて来てくれたのでかまどにセットして、ラメの葉で出来た着火剤をカバンから取り出して真ん中に置きます。


「リエルさん、着火して貰っても良いですか?」

「はいはい、〜〜、リトルファイア」


 ボッとリエルさんの手から出た小さな火が着火剤に燃え移り、瞬く間に枯枝にも火がついた。暫く火のお世話をして、鍋が沸いてきたら具材を適当に投入します。

 普通の探索者の野営飯は日持ちして手間の掛からない干し肉とか乾パンみたいな物にとかになりがちだけど、手持ちの馬車がある私達は荷物も充分載せられるので豪華に鍋が出来るわけです。

 暫く具材を煮込んで火が通ったら完成です。

 

「皆さんご飯出来ましたよー」

『腹ペコだー』

「出来たのか。どれどれ?」


 今日のメニューは村で買ったフランスパンみたいな硬さのパンとスノーラビット肉の煮込み鍋です。

 早速受け皿に鍋の中身を盛ってリューゼさんに渡し、リューゼさんが一口食べた。


「うん、まぁ上等だな」

『あたしにも早く!』

「はいはい、順番ね」


 ニャンコ達も含め全員の手元に行き渡ったので自分の分も取り分けて早速いただくことにします。

 うんうん、悪くない。肉の旨みがちゃんと出てるね。


「明日にはタキアに着く予定ですけど、今晩の見張りはどうします?」

「3人と2人に分かれて交代で良いんじゃない?2人の方にはヒムロを付ければ」

「私もそれで依存は無いかな」

「そうしましょうか」


 ムニ、ナターリアさん、リューゼさんが先に見張り、真夜中に交代、私とヒムロとリエルさんが朝まで見張りをする事になりました。


 ご飯を食べ終わったので後片付けをして、馬車に入って早々に眠らせて貰いました。



「マコ、交代だ」

「ふあぁ…はぁい」


 真夜中、ナターリアさんに起こされて目を覚ましてから馬車を出て、アクアの魔法で水を出して顔を洗い焚き火の前まで来て座る。リエルさんも起きて来て私の向かいに座った。


「じゃあ後は頼んだぞ」

「はい、ごゆっくり」


 リューゼさん達が馬車に入っていき、焚き火の前に残る私とリエルさんとヒムロ。ヒムロは寒いのは大丈夫だけど暑いのは苦手らしく、火から少し離れた所で丸くなっている。

 ボーッとしてるだけだと暇なので、リエルさんに質問してみよう。


「リエルさんって、なんで探索者になったんですか?」

「私、親が2人とも実力のある魔術師で、そんな親だから小さい時から魔術を教えられて育って来たのよ。で、折角覚えた魔術を活用できる仕事って考えたら探索者だったって感じかな」

「リエルさん15歳ですよね?それでCランクって、結構凄くないですか?」

「最初探索者の登録をする時に飛び級試験が受けられるじゃない?それで魔術の腕が認められて最初からDランクだったのよ。で、2年程色んな依頼を受けてCランクになったって感じね」

「2年…何歳から探索者になったんですか?」

「12の時から」

「12歳と言うとリューゼさんと同じですね」

「この国だと一般的に12歳で見習い仕事を始めるのよ。家の仕事を継ぐ子達なんかはもっと早くから見習いしてるけど。探索者も12歳からって決まりが有るわ」


 日本で言うと小学校を卒業した年で働き始める感じなんだね。


「この世界には小さい頃から勉強を教わる学校的な所とかは無いんですか?」

「大きな街にある事はあるけど、結構なお金が掛かるから一般的じゃないわね。お金がある家の子とかが、一般よりも一段上の学問を勉強したり金持ち同士の人脈を作る場所って感じ」

「へぇぇ」


 私立の学校って感じかな?お金が掛かるって事は国からお金が出たりはしてないのかな?


「そうそう、マコ」

「はいはい?」

「マコのアクアの魔法ってさ、人肌程度に温めて、浮かべたままその中に入ればお風呂代わりになるんじゃない?」

「おおー確かに」

「あー、でもビチャビチャになるわね。拭き取るタオルを用意しておかないと」

「それに見張り中に全裸でお風呂というのもちょっとどうかと言う所ですね」

「…確か魔法で出た水を自由自在に操れるって話だったわね?」

「そうですそうです」

「じゃあ身体を洗った後、身体や服に付着した水も自由自在に操って乾いた状態に出来るのかしら?」

「うーん…試してみましょうか」


 コスモを取り出してアクアの魔法を唱え、宙に浮かぶ水球を作って自分の右腕を突っ込んでみる。洗う様に水流を作った後、水分が腕に残らない様にイメージしながら引き抜くと、腕は全く濡れていない状態だ。試してないけど布とかをこれで洗っても同じ様に出来ると思う。


「出来ますね」

「ならコレでいつでもお風呂に入れるわね。早速私を洗って貰っても良いかしら?」

「はい、やってみます」


 リエルさんの身体を温めたアクアに入れて、首から下を水流で洗い流してから水が残らない様にアクアを引き抜いた。


「うーん、さっぱりした。出先でお風呂に入れるなんて素晴らしい魔法ね」

「じゃあ私も…」


 自分も新しく作ったアクアの水球で同じ様に身体を洗いスッキリした。コスモの魔力も殆ど使わないみたいだし服も同時に洗えて便利な魔法だ。


 その後はリエルさんに魔術を教えて貰ったり、一緒にアクアの使用方法を考えたりしながら時間は過ぎていった。



 朝起きて軽く朝食を済ませたあと、魔物が出る事もなく順調に旅を進め昼前にタキアに着いた私達。街壁で守衛さんに協会カードを提示して抜け、馬車が止められる宿屋で部屋を借りてから皆に明後日の朝まで自由時間と告げた。


「飯食いに行くか」

「あ、私もついていくわ」

「私は街をぶらつくとするよ」


 リエルさんとリューゼさんはお昼ご飯を食べに近くの食堂へ。ナターリアさんはクロエちゃんと街巡りをするそうだ。


「ムニはどうするの?」

『うーむ、刀探しでもするかな』

「刀探し?」

『以前から名刀をコレクションをしてるのだ』

「あーね。じゃあ武具屋だね…お金持ってるの?」

『いや、殆ど持ってない』

「ダメじゃん」

『まぁ見るだけでも楽しいからな』

「そっか…私もついて行こうかな?」

『うむ。一緒に掘り出し物を探そうか!』


 この街で特にする事が思いつかず、ムニについていく事にした。

 ムニと私(ヒムロとサクヤちゃんも一緒)は街で武具屋の場所を聞き込みしながら歩いていく。タキアの街はポサロやリーモアの街に比べると古い建物や背の低い建物が多くて少し田舎といった雰囲気で、小さな店が軒を連ねてる。


『お、ここかな?』

「トニー武具店…そうみたいですね」


 割と街の中心の方まで歩いて来た所でお目当ての武具屋を発見。中に入る。


「いらっしゃいー」


 店主さんが店の奥の方から声を掛けてくる。あの人がトニーさんなのかな?


『あるかなー?』


 と、ムニが武器の置いてある所を見ている。色々な種類の武器が並んでいるけど、見た感じ刀系統の武器は置いては無さそうだ。


「置いてないねぇ」

『うむ…主人!』

「はいはいー?」

『この店には刀は置いてないのか?』

「刀ですか。あー、あったかなぁ?…ちょっと奥を見て来るから少し待っててね」


 と、言って店の奥へ探しに行く主人。

 店内を眺めながら少し待ってると1本の鞘に入った刀を持って店主が出てきた。


「今ウチにあるのはこの1本だけだね」

『ほう、見せてもらっても良いか?』

「はい、どうぞ」


 ムニが鞘から抜くと、綺麗な刃紋が浮かぶ刀身が露わになる。


「コレはこの店がじいちゃんの代の頃から置いてある奴。今はこの街に刀鍛冶をしてる奴が居ないからウチの最後の一振りだな」

『むぅ。今の主流は刀では無いということか』

「そうだね、普通の剣を使ってる人が多いし、割と高くて扱い方も違う刀を扱うのは難しいんだろうね」

『そうか…』


 シャコンと刃を鞘に戻して店主に返すムニ。


『近くに刀を置いてそうな店はあるか?』

「そうだなぁ、他に刀を扱ってそうな所といえば街の南の通りにある竜骨堂っていう店かな?あそこならあるんじゃないかな?」

『すまんな店主。行ってみるとするよ』

「店主さん、ありがとうございました」

「はは、良い刀が見つかると良いね」

『邪魔をした』


 店を出た私達は店主さんの言っていた竜骨堂と言うお店を探して、道中の色んなお店を冷やかしながら南の通りまで来た。北側の通りと比べ、更に古い建物が並ぶ通りだ。


「なんか違う街に来たみたいですね」

『そうだな。あたしの旅してた時代にあった様な建物が多いな』

「へぇー」


 古びた建物を眺めながらテクテクと歩いてると目当ての竜骨堂の看板を発見。ムニが遠慮なく入っていくのでわたしも後に続いた。


 壺、皿、鎧と、様々な物がごちゃごちゃと並ぶ店の奥には一人の老婆が座っておりコチラを見ている。


「………ごゆっくり」


 ムニが刀を探し始めたので私も店内を見回す。棚の上に腕輪を見つけたので手に取ってみる。装飾が細かく、中央に宝石がはまってて綺麗だ。タグが付いてたので読んでみる。


『魔力盾の腕輪 魔力を込めると簡易的な盾を展開する事が出来る 120万ルビ』


 効果は中々面白いけど…ちょっと高いな。


「コスモ、こういうアクセサリーに魔力を送る事って出来る?」

”私を手に持っていれば出来ますね”


 ふーん、使えない事は無いのか。


 他にも魔力の矢を飛ばす事が出来る指輪や体内に入った軽い毒を打ち消すネックレス等のアイテムがこの棚には並んでるけど、基本的にどれもお高い。

 その隣の棚には杖が何本か飾られている。細い木の枝の様な杖や短い指揮棒の様な杖、大きな水晶を竜の手が掴んでいる形の高そうな杖など多種多様だ。その内の木の枝の様な杖を手に取って見てみる。

 色んな角度から眺めてみるも唯の木の枝にしか見えない。どれどれ、タグはっと。


『霊木の幼枝 枝自体に魔力が宿っており、あらゆる魔術の効果を少し増幅する 300万ルビ』


 あらゆる魔術を強化出来ると言うのは凄いね。コスモの魔術も結構使える様になったし一本こんな杖を持っても良いかもしれない。でも腰に刺すには別れた枝が邪魔だしちょっと嵩張るな…と棚に戻す。

 隣の指揮棒みたいなのなら丁度良いかな?コンパクトで使い勝手が良さそうだし。


『マギタイトタクト 魔素を含んだ希少な金属であるマギタイトで作られた短杖。魔力伝達率が高く、魔術の制御がしやすい 180万ルビ』


 マギタイトというのは金属らしく、持ってみると少し重い。魔術の制御…基本コスモが勝手に魔術を制御してくれるからこの杖の恩恵は感じられなさそうだな。…というかコスモ自体が高価な杖の上位互換のような性能を発揮しているとも言えるね。そう考えるとコスモって結構凄いな。


『マコ、あったぞ』


 声を掛けられたので杖を棚に戻しムニの所へ行くと、壁に立て掛けられた1本の刀が目に入った。


『店主、抜いてもよいか?』

「…構わないよ」


 ムニが刀を手に取り、鞘から抜く。それから上下左右隈なく観察している。


「見ただけで良し悪しが分かるものなの?」

『まぁ私程となればな』

「因みにこの刀は?」

『反りもいい感じでムラなく鍛えられている。中々の刀だ』


 何を見て判断してるんだろう?鞘にタグが付いてたので見てみる。


『銘 白虎刃 600万』


 説明が書いて無いから私には良し悪しが全く判断出来ないな。でも結構な値段。


『うむ、良い物を見せて貰った』


 と、ムニは鞘に刀を仕舞い壁に掛け直した。


「もういいの?他に刀は…無さそうだね?」

『無さそうだな。マコは他に見ておかなくて良いのか?』

「うーん、中々面白い物も置いてあるみたいだし、もうちょっと見てみたいかも?」

『あぁ、良いぞ』


 さて、掘り出し物は無いかなぁー?




「…また来ておくれよ」

「お邪魔しました」

 店主のお婆さんから見送りの声を貰いながら竜骨堂を後にする。


「これからどうしようか?」

『普段なら街でブラブラするか居酒屋で管巻いてるか街の外で魔物を狩ったりしてるな…まだ昼過ぎだし依頼を探しに探索者協会にでも行くか?』

「そうだね〜。あ、そういえばお昼ご飯もまだだね。ついでに協会でご飯でも食べようか」

『ん、そうしよう!』


 街の人に場所を聞き込みながら探す事10分程。探索者協会に到着したのでそのまま中に入る。

 お昼時を少し過ぎているので割と空いている飲食コーナーのテーブルへ座ってメニューを広げる。少しして給仕さんがお冷を持って来てくれたので、それに合わせて私は親子丼、ムニはハンバーグランチ、ヒムロとサクヤちゃんには魚を注文した。

 お冷を少し飲みながらムニと談笑していると、近くでご飯を食べている三人組の男の人達に声を掛けられた。


「嬢ちゃんたち、2人かい?俺らと組まねえかぁ?」

「こっちの黒い嬢ちゃんは魔術師だろ?んでこっちの白い亞人の嬢ちゃんは戦士。ピッタリじゃ無いか」

「なぁ、俺たちとパーティ組んでくれよ〜」

「あ、いや、私達、他にもパーティ組んでる人がいるので結構です」

「まぁまぁそう言わずに。俺たちと組めばここいらの魔物なんて余裕だぜ?」

「他のメンバーとはこの際パーティを解消してさぁ」


 これは絡まれてる…?ラザちゃんが言ってたな。探索者協会では絡まれるって。今頃そうなるとは思ってなかったけど。

 協会の受付の人に視線を送ってみるものの曖昧な笑顔を返される。協会員同士のトラブルは自分でなんとかしてくださいって事かな?


「ランクは精々FかE辺りだろ?俺たちが手取り足取り教えちゃうよ?」

「夜の遊びならAランクだぜ?」

「いや、あの、本当に結構ですから」


 ゆっくりご飯食べたいんだけどこの人達ずっと絡んでくるのかな…やだなぁ。


『じゃあご飯食べた後であたしの喧嘩の相手でもしてもらおうかな?』


 ムニが男達を一瞥し、喧嘩を売った。


「はっは、白い嬢ちゃん一人でかい?」

「勝ったら何してもらおうかなぁ?」

『あたしに勝てたら何でもしてやるさ』

「言ったな嬢ちゃん。後が楽しみだ」

『その代わりあたしが勝ったらお前達、あたしの犬な』


 犬ってどうする気なんだろう…?うーん、こんな状況じゃご飯が美味しく食べられない。そこら辺の飲食店で食べれば良かった…。



 ご飯を食べ終わってそのまま協会の訓練場へ来た。先程の男三人組も一緒にだ。少し間隔を空けて対峙する。


「じゃあ此処で喧嘩と行こうか?素手か?武器有りでも良いぞ?」

『あたしは素手で相手をする。そっちは武器有りでも三人掛かりでも良いぞ』

「あぁん?流石に舐めすぎだろ嬢ちゃん。後悔すんなよ?そっちの黒い嬢ちゃん、開始の合図をしてくれや」


 そう言いながら武器を抜く三人組。一人は直剣を、一人は斧を、一人は弓を構える。


「ムニ、良いの?」

『あぁ。始めてくれ』

「うん、じゃあ始め!」


 開始の合図と共にムニは直剣を構えた一人に向かって歩いていく。普通に歩いてくるムニに気圧されたのか男が少し下がるが、意を決してムニに斬りかかる。


「おらぁ!当たっちまうぞ!」


 腕を狙ったその斬撃を、ムニは指で掴んで止め、そのまま剣を奪い取って投げ捨てた。


「えっ?」

『おらぁ、当たっちまうぞー』


 剣を持ってた人が驚愕の顔で投げ捨てられた剣を目で追っている内に腹にムニの拳が刺さる。それだけで男はうめき声を上げながら崩れ落ちた。


「う、うぉらぁぁぁ!」


 斧を持った男が横からムニの腕辺りを目掛けて振り抜く。それも指で掴んで止める。


「な!?く、化け物か…!だが離さん!」


 相手がしっかり斧を握りしめているのか今度は投げ捨てれ無い様だ。投げるのは諦めてムニは手を離す。そこへ弓持ちの男が足を狙って矢を放つ。その高速で飛来する矢をムニは蹴り上げた。くるくると回転しながら宙を舞う矢。


「蹴りで矢を防いだ…!?」


 その後も男は何本も矢を放つが、ムニは指で止め、足で弾き、一つとして当たらない。その間に斧の男が襲いかかるが、今度は斧の腹を蹴り飛ばされ、かなり離れた所に飛んでいってしまった。そして腹に一撃を入れられた斧の男はそのまま沈む。


 後は一人と、トコトコと弓持ちの男に近づくムニ。


「降参だ、降参する!…こっちへ来るな!うわぁ助けでぶぉ!」


 弓持ちの男にも腹への一撃が入り、沈黙する。


 3人を容赦なく沈めたムニは満面の笑みで私の所に帰ってきた。


『うむ、喧嘩両成敗というしやはり平等でなくてはな!』

「それだとムニも成敗されてるけど」

『しかし犬にすると言ったがこんな弱い犬要らないぞ』

「旅するにも邪魔だしね。このまま置いて行こうか?」

『そうしよう』


 そのままうめき声を上げるも立ち上がれない様子の男達を放置して訓練場を後にし、協会内の依頼ボードで丁度いい依頼が無いか探していると、


「もし、そこの御二方」


 と、声を掛けられた。

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