表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/108

薬師マコ

 購入した馬車でリーモアの街を出てから1日が経った。今は昼時だ。


「あぁ〜、やっと魔物が居なくなったわね」

「リーモアに来た時よりは少なかったですけど、それでも沢山出てきましたね」


 リーモアの街を昨日の朝出て今まで頻繁に魔物に襲われたお陰で昨晩はあまり睡眠が取れず皆寝不足だ。

 

「夜寝れなかった分交代で仮眠をとった方が良さそうだな」

「私が先に見張りをしよう」

『あたしもまだ平気だから見張りをするぞ』

「ナターリアさんとムニが後ですね。ヒムロにも周囲の警戒をしてもらいましょうか」

「クロエも手伝ってくれ」

『いいよー』

「じゃあここら辺で一旦止めるぞ…あーやっと休めるな」


 ずっと御者をしていたリューゼさんもお疲れの様子だ。馬達を馬車から外すと草原に大の字になって寝転んだ。馬達はそこら辺の草を食べている。

 リエルさんもリューゼさんの身体を枕にして横になる。


「おい、俺は枕じゃ無いぞ」

「いいじゃない…あーでもゴツゴツして心地悪いわね」

「文句があるなら他所で寝ろ」


 ヒムロは馬車の幌の上に乗ると周りを見回し始めた。サクヤちゃんとクロエちゃんも一緒だ。

 そういえばクロエちゃんは魔法が使えるって前言ってたけどどんな魔法なんだろうな?見た感じ黒猫だからなんか暗黒魔法的なものを使ったり?

 …まぁいいや、取り敢えず仮眠取ろう。馬車の中に戻ってタオルケットにくるまって枕に寝転がる。

 このタオルケットや枕はリーモアを出発する前に買った物だ。馬車を買って良かったことは荷物の他にもこういう小物類を置いておける所だね。新車だから床板も綺麗だし雨漏りの心配も無いし。流石に全員が大の字に寝転がれるほど広くは無いけど旅は快適だ。いい買い物したかもしれない。


 ふわぁ〜ぁ。眠い。寝る。お休みぃ…



「おーい、マコ」

「ん…はい、起きました」

「そろそろ交代しようか」


 ナターリアさんが起こしにきた。まだちょっと眠いけど…起き上がって伸びをする。くぅ〜っ、よし。


「何時間ぐらい寝てました?」

「2時間って所だな」

「ですか。それじゃあナターリアさんごゆっくり〜」

「あぁ、頼んだよ」


 馬車の外に出てもう一度伸びをする。リューゼさんとリエルさんは既に起きていて何か話をしてるな。

 ヒムロ達は引き続き幌の上で周囲の警戒をしてる。

 ムニはどこ行ったんだろう?姿が見えないけど…ちょっと聞いてみようか。


「ムニがどこ行ったか知りません?」

「なんかさっき向こうの方に走っていったぞ」

「何しにいったのかしらね?」


 リューゼさんが指さすのは遠目に森が見える方角。なんだろ?お手洗いかな?分かんないけどまぁムニだし大丈夫でしょ。


 そのまま周囲を警戒しつつ3人で談笑してると、ムニが走って帰ってきた。何故か小脇に女の子を抱えて。

 近くまで来たところでそっと女の子を立たせると私達の前まできた。

『大変だ!』

「どうしたのムニ。その女の子は?」

『危ないのだ、父が!』

「…どういうこと?」

『大怪我の父を助けたいのだ!』

「んー?その子の父親が大怪我してて危ないから助けたい…で良いかな?」

『そんな感じだ!』


 分かりにくいムニとの話を一旦切って、女の子に話しかける。


「お名前は?」

「…ミュー」

「ミューちゃんだね。お父さんの大怪我を治したいって?詳しく聞かせてくれるかな?」

「えっとね…」


 ミューちゃんは近くにある村の女の子。少し前に大量に湧いた魔物達を撃退していた村の防衛隊の隊長だった父親が、魔物に大怪我を負わされて。それを治す薬草を求めてミューちゃんが村の外の森に入ったが薬草の形が分からず困っている所にムニが来て、ここに連れてこられたという話だ。


「ミューちゃん、森は危ないから入っちゃダメって言われてなかった?」

「うん…でも」

「でももだっても無いんだよ?ミューちゃんが危険な目にあったらお父さん悲しむよ?」

「…お父さ、うぇぇぇ〜」

「よしよし…お姉ちゃんがお父さんの事見てあげる。コレでもお薬にはちょっとだけ詳しいんだ」

「うぇ、ひっ、ほんと?」

「うん、本当。だから村まで案内してくれるかな?」

「…うん」


 ナターリアさんには申し訳ないけど休憩を切り上げ、一路ミューちゃんの住んでいる村へ向かった。


………


「おぉ、ミュー!」

「ミューちゃん!」

「貴方がたが見つけて下さったのですか!」

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 村ではミューちゃんが居なくなって捜索をしている所だったようだ。ミューちゃんを連れて来た私達をみて村人達は安堵と共に私達に感謝の言葉をかけた。


「ミューちゃん、お父さんの所に案内して」

「うん、あっち!」


 案内されたのは一件のちいさな家。扉をノックすると中から母親らしき人が出てきた。


「だ、誰ですか…ミュー!」

「お母さん!」


 ひしっと抱き合う母子。


「何処へ行っていたの?」

「森…このお姉ちゃん達が連れてきてくれた」

「そうなの…皆様ありがとうございます…!」

「それでね?お姉ちゃんがお父さんの怪我を治してくれるって!」

「…本当、ですか?」


 不安に思うのも仕方がない所だと思いながら、


「魔女アビラタの弟子、マコと言います。コレでも錬金術はそれなりの勉強をして参りました。どうか信用して頂ければ」


 実際半年程度の修行だったけど、薬のアレコレは結構勉強してる。やれない事は無い筈だ。


「…わかりました、お願いします」

「はい、では案内を」

「こちらです」



「コレは…」


 ミューちゃんの父親を見て一目で毒に侵されているのが見て取れた。顔が青白いを通り越して紫だ。この地方に生息する魔物の中で毒を持つ魔物は蛇の魔物のポイズンスネーク一択。父親の身体を検分すると、腕を咬まれた跡が、胸に巻かれたサラシの下には裂傷が見られる。大怪我というのはこの裂傷だろう。大怪我で安静にしてたけど、腕の咬まれた所から毒が回って重症化したと言う感じじゃないだろうか。

 胸の怪我自体は手持ちのポーションである程度治る。傷跡は多少残るかも知れないがこの怪我自体は血が殆ど止まっている所を見てもそれほど差し迫ってはいない。

 だけどこの毒は治療しない限りこの人を死に至らしめるだろう。体内でどんどん強くなっていき、自然治癒は望めない。そういう毒だ。

 多少の解毒作用のあるポーションは持ってはいるが、既にこれほど毒が回っていると気休めにしかならない。専用の解毒薬を作る必要がある。メンバーに回復魔術を使える人が居れば話が早いのだけど無いものねだりしても仕方がない。


「どうなんだ?治りそうか?」

「治せる…と言いたい所だけど時間との勝負。このままだとこの人はもって明日ぐらいだと思う。投薬するならそれよりももっと早く。その間に出来るだけ速く皆に探してもらいたい材料がある」

「なんだ?何が必要だ?」

「多分森にあると思うけど、まずキーア草」

「キーア草…どんな形の草なんだ?」

「えぇーっと…コスモ!キーア草の図を出して!」


 コスモを取り出してページを開く。そこには薬草の絵とその特徴等を書いた文章が表記されている。


「おぉ、これはすごいな。この草はどれぐらい必要なんだ?」

「5本も有れば充分です」

「他にもあるのかしら?」

「あとはジェネの花を5本ぐらい…一年中咲いてる花で多分この森にも有ると思うけど…」


 コスモのページをめくってジェネの花の図を皆に見せる。


「わかった。他には?」

「ホベマの実、ミオスの葉、ミホイ草とかが有れば助かります」

「分かった。クロエ、探すぞ」

『あいあいさー』

「リエルさんにはリーモア迄箒で飛んで貰って、レイちゃんのお店で調合器具とさっき言った薬草類か解毒薬があるか見てきてもらってもいいですか?薬草類や解毒薬は保存があまり効かないから無い可能性が高いですけど」

「分かったわ。レイに聞けば器具は分かるのよね?」

「蒸留器と薬研と濾紙って言えば伝わると思います」

「了解、行ってくるわね」


 それぞれ仲間達が散開していく。


「まず先に怪我をある程度治療しておきましょうか」


 バックパックの中に入っているポーションを手に持ち父親の傷に振りかける。かなりハイレベルな奴なだけあって傷が殆ど治る。


「ぐっ…コ、コレはすごいな」

「お父さん助かる?」

「助けるよ。一応村に道具や素材持ってる人が居ないか確認しておこうか」

「案内する!」

「ん、ミューちゃんお願いね」



 ゴリゴリゴリ…

 ゴリゴリゴリ…


 今は皆が持ってきてくれた素材を薬研ですり潰している所。場所は馬車の中だ。皆こっちを眺めてたり寝てたりする。


「ここにジェネの花弁を混ぜて…」


 ゴリゴリゴリ…

 ゴリゴリ…


「リエルさん。蒸留器の下のアルコールランプに火を付けて貰ってもいいかな?」

「分かったわ。〜〜、リトルファイア」


 ボッ、と、小さな火が透明なガラスのフラスコの下に灯る。これはリエルさんが買ってきた蒸留器だ。蒸留器で真水に近い水にしてあげた方が薬と混ぜた時の効能が安定する。

 水を沸かしてるその間に薬研に出来上がってる半ペースト状の薬草ブレンドを濾紙の上に乗せる。その下にコップを構えて上から蒸留した水をゆっくりと回しかければ…イメージはコーヒーのドリップ。搾りかすが濾紙に残って成分がコップに抽出される…



「出来た!」


 毒消し薬完成!時間は真夜中だけど急いだ方がいいので早速ミューちゃん家に向かう。


「すみませーん」

「…はーい!」


 ミューちゃんの母親が出てきてコチラを見つめる。


「お薬が完成したので投薬しに来ました。上がらせて貰っても大丈夫ですか?」

「はい、構いません」


 父親の寝ている所へ行く。すると父親は起きてコチラを見ている。丁度良い。


「コレを飲んで貰えますか?」

「…これは?」

「毒を治療する為の薬です。あと身体を徐々に回復させる効果も有ります。ちょっと青臭さと苦味が強いですが」

「…そうか。有難くいただくとしよう」


 父親は躊躇いなく薬を服用した。ちょっと渋い顔をしてる。私も試しにと飲んだことあるけど不味いんだよねこの薬。粉薬にした方が飲みやすいんだけど薬草を乾燥させる時間が無かったから仕方ないね。


「服用後は安静にしてご飯食べられるようになったらちゃんと食べる。そうすれば問題なく治ると思います。一応ある程度回復するのを確認出来るまで私達も村に滞在しますので何かあったら声を掛けて下さい」

「何から何まで面倒をかけてすまないな」

「いえいえ」


 見ず知らずの人であったとしても、知ってしまった以上見て見ぬフリなんか出来ない。助けられるのであれば助けたい。ただそれだけだ。


「じゃあそろそろ私は寝るとしますので。お大事に」

「ああ、おやすみ」


 挨拶をしてミューちゃん宅を後にして、馬車に入って毛布に包まる。流石に一日中作業していたので疲れた。目を瞑ればすぐに寝られそう…うにゃうにゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ