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ムニ

 この階段何段あるんだろう…


 昨日リューゼさんに教えてもらった山の封印岩とやらを見物しに、曲がりくねった階段を登っている。登るというか箒で飛んでるんだけどね。こんな長い階段一段一段登ってられないし。


『マコ様、こんな感じで宜しいでしょうか?』

「うん、上手だよサクヤちゃん」


 今話しかけてきたのはヒムロの妹ちゃんで、箒の操縦をしてもらってる。私が付けた名前は『サクヤ』。桜色の体毛がキュートな子猫ちゃんだ。

 昨夜、ヒムロが連れてきた妹ちゃんは、おずおずと言った所作で私の前まで来て、「これから宜しくお願い致します、マコ様」と、ヒムロとは違って丁寧な挨拶をしてくれた。

 ヒムロみたいに大きくなるのはまだ出来ないけど、魔力自体は豊富らしく、それじゃあという事で箒の運転手をお願いしてる。


「そのうち猫だらけになるんじゃないかしら?」

「あはは、もうこれ以上は増えませんよ、リエルさん…ヒムロ、もう居ないんだよね?」

『あぁ、我と妹だけだ』


 今日はリエルさんと一緒だ。リエルさんはあまり封印岩に興味無さそうだけど、護衛という事でついてきてくれた。リューゼさんはお留守番。


「所でマコの持ってる魔導書さ、今度見せて貰っても良いかしら?」

「コスモですか?いいですよ。ただ、見ることは出来るんですけど私以外の人には使えないと思います」

「良いの。どんな作りなのか気になるだけだから」


 コスモもなー、もうちょっと使い勝手がよくなってくれたら良いのになって思わなくもない。鍵を手に入れて封印?を解かなきゃダメとか、なんでそんな仕組みなんだろうな?


………



 階段上を飛んでる内に階段が途切れて広場に着いた。広場の奥にはかなり大きな岩がある。


「サクヤちゃん、降ろして貰っていいかな?」

『はい、畏まりました』

「岩の近くに行ってみましょうか」

「そうね」


 てくてくと大岩の側まで歩く。この岩には〆縄が巻かれている。話通りだ。

 この縄が封印になってるのかな?と、ちょっと触った瞬間、縄が千切れたのかぼとりと下に落ちた。


「えぇ?これって私が触ったから落ちたんですかね?」

「さあ?既にボロボロだったんじゃないかしら?だって今触れただけだったわよね?」

「そうですよね、私の所為じゃないですよね?」


グラッ…何かこの岩一瞬動いた様な…


「動きました…?」

「動いた…わね?」

『お前達、今は赫歴何年だ?』

「!?」


 リエルさんとクエスチョンマークを頭に浮かべていると上から声がした。いきなりだったので少しビックリしてしまった…もしかして。

 少し後ろに下がって岩の天辺を見上げてみると女の子が岩の上に立っている。


『何年だ?答えろ』

「えーと、赫暦1209年です」

『1209…200年近くも経っているのか…』


 女の子は10代、中学生ぐらいの見た目、髪や肌は白く、可愛らしい顔つきで、燃えているかの様な赤い瞳。額の上辺りに2本のツノが生えている亜人…いや、リューゼさんの話や今の流れなどからしてこの子がその強大な妖魔とやらなんだろう。多分もう封印が切れる時期だったのだと思い込もう。決して私のせいではないはず。


『久しぶりの外気に当たると気持ちがいいな!なぁ、そこの2人よ!』

「いやぁ、普段から当たってるのでちょっと分からないですね?」

「まぁそうよね」

『そ、そうか。所で何か着るもんないか?服が朽ちてしまっていてな、流石に寒い』


 そう言って岩から飛び降りてきた。そう、何を隠そうこの妖魔さん、人間のような姿な上にスッポンポンなのだ。春とはいえまだ肌寒い季節なのでそりゃ寒いだろう。

 しょうが無いので私のローブを貸した。前を閉じれば風除けにはなるだろう、耐冷耐熱だし。ただ、ローブの下はスッポンポンとか何処の痴女だろうかという状態でもある。


『おお、温いな、それに上等な紋様付き』

「大事なローブなので返してくださいよ?」

『いやだ、これはもうあたしのモン…「ヒムロ、大きくなってGO」…いや冗談だからその強そうな猫をけしかけんでくれ』

「強大な妖魔って話なのに、割とフレンドリーね」


 確かに、イメージとはかけ離れている。もっと強そうな怪物的なのが封印されてるのを想像してた。


「何の種族なのかしら?」

『種族名は妖鬼族…つまりは鬼だな』

「鬼ですか。あのトゲトゲした棍棒を持って暴れる感じの?」

『棍棒を振り回したことはあるが、別にところ構わず暴れたりはせんぞ』

「俺、人間、丸齧り、みたいな事も無いんですか?」

『鬼をなんだと思っておるのか。至って人間と同じ様な食性だ。しかし、腹が減ったな。ちょっと齧らせてくれんか?』

「え、嫌ですよ。バックに干し肉ありますからそれ齧って下さい」

『冗談だと言うに。でも干し肉はくれ』


 干し肉と水筒を渡してあげる。


『うぉー!久しぶりの肉!有難う!』


 ガジガジ干し肉を食べては水筒で喉を潤している。師匠特製の干し肉は、長持ちする上に絶妙な旨味が濃縮されてて美味しい。


「所でなんで貴女は封印なんてされてたのかしら?」

『よくぞ聞いてくれた娘よ!それがだな、ある日この麓の街にたどり着いた時に街が魔物の大群に襲われていて、それならばと腕に覚えのあるあたしが退治してやろうと猛奮闘したわけだが、この街の住民がツノが生えてるあたしの事も敵だと勘違いしたのか攻撃してき始めてな。何とか殺さずに撃退してたものの手加減しながらは戦いにくくて、結局この山に逃げ込むことになって、しまいには異界の魔術師の奇妙な魔術でこの岩の下に封印されてしまったと言う顛末だ』

「えぇ、可哀想」

『だろ?』

「昔は魔物や妖魔の区別がついてなかったとか?」

『いや、そんな事はなかったぞ?他の街では普通に生活してたからな』


 まぁ悪い妖魔じゃ無いって事は伝わってきた。


『さぁ、封印を破ってくれた上に服を着せ、やっと出てきて空腹のあたしに飯を食わせてくれた娘に、お礼にいい物をやろう』


 何か貰えちゃうの?でも妖魔さん、何も持ってないと思うんだけど?あと、やっぱり私が封印を解いたっぽい?


 妖魔さんは岩の方に向かって歩いていき、岩の底に手を差し込んだ。


『そいっ!』


ゴロン!ゴロゴロゴロゴロ…うぉぉ、見上げるほどの岩を畳を返すかの様な気軽さでひっくり返した。何てパワー。

 その岩の下には妖魔さんの武器らしきものが埋もれていた。


『よしよし、壊れて無かったぞ。では、この内の1本をやろう』


 それは…どうみても刀と脇差、大太刀。この世界にも刀とかあるんだなー。


「これを私に?でも刀なんて多分使いこなせませんよ?」

『これらはあたしのコレクションの中でも一二を争う妖刀だ。多分素人でも切れるぞ…でも魔術師か…そうだな、それではこの…っよいしょっ!』


 妖魔さんの掛け声と共に放たれた正拳突きで目の前の空間に穴が開く。その穴に手を突っ込んで『あれ、何処言ったかなー』とかやってるけど、コレかなりとんでもない事してるんじゃ…?


「空間魔法かしら?半端ないわね」

「初めて見ましたね」

『あったどー!』


 妖魔さんが穴から引き抜いて取り出したのは小刀だ。


『コレも妖刀だ。振ったらかまいたちが出る。コレを腰にでも挿しておけばいざと言うときに便利だろ』

「有難う御座います、こんな良いものを」

『何、また世界を旅して集めれば良いだけだ。試しにちょっと振ってみるといい』


 お言葉に甘えて鞘から抜いて岩に向けて振ってみる。シュバッと言う音と共に小刀からイタチが飛び出してきた。振り返ってこちらを見ている。


「…」

「…」

『…ぷっくくく』


 カマは何処言った!小刀からイタチが出る時点でどうなってるのって話なんだけど!


『冗談だ冗談。今のはあたしが召喚したイタチだ。こっちが真空の刃の出る小刀だ。ちゃんと本物だぞ?』

「…」


 黙って鞘から抜いて岩に向けて振ってみる。シュン…バシィン!と、岩が少しだけ抉れた。


「ウインドカッターがでる武器ね」

『な、本物だろ?』

「えぇ。今度こそ有難う御座います?」


 確かにこれがあれば魔術の代わりにバシバシ撃てるし便利だろう。


『さて、これからどうしようか?』

「まず服を買いに行くべきでしょう」

「そうよね、マコのローブ着たままだしそのままじゃ変態だし」

『お金…』

「持ってないんですね。貸してあげますよ」

『すまん、恩に着る』


「そう言えば名前はなんていうのかしら」

『あたしか?あたしはムニだ』

「私はリエル、こっちがマコよ」

『宜しくな!』


 山を降りて服屋さんにレッツラゴーだ。

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