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討伐を終えて

「ぬぅ、持って帰る方法を考えてなかったのぅ…グラビティゼロで浮かすにしてもこのサイズじゃと数十秒が良い所じゃし」

「バラバラにして運ぶのはどうかなー?」

「成る程。でもどうやって切るのかしら?」

「うーん…」」


 ここは森の中にある直径200メートルぐらいの範囲で木の生えていない土地だ。荷車を持ってこようにも森が邪魔だ。


「そうじゃ。精霊を召喚して森に道を作ろうかのう」


 精霊?


「■ ■■、サモンスピリット『ドライアド』」


パァァァァァ…前にヒムロを召喚する時に見たのと同じ様な光だ。

 光が収まるとそこには木が人間になってみましたって感じの人が立っていた。


「呼んだ?アビラタ」

「あぁ、森に道を作って貰いたいのじゃが」

「対価は?貴女特製の栄養剤がいい」

「今持ち合わせてないのじゃ。魔力では駄目かの?」

「残念。また今度差し入れて」


 師匠がドライアドに魔力を注ぐ。その魔力の譲渡は結構長い時間行われた。


「ふぅ。それで、ここから向こうへ森が途切れる所まで道を作って貰えんじゃろうか?」

「分かった」


ズオォォォォォォォォォォ…


 木がまるで海を割ったかの様に左右にズレていき、直線上に数キロメートル程の道が出来る。凄い光景だ。


「コレでいい?」

「うむ」

「じゃあね、アビラタ」


 そう言い残しドライアドは光の粒子になって消えていった。


「精霊召喚…初めてみたわ」

「私も初めて見ました」

「コレで後は協会に運んで貰えば良いじゃろ」


………


「クライブにはワシから話をしておくでの。お主達は今日の所は宿に帰るといい。ドラゴンの解体の時には連絡をするからの」

「分かりました」


 探索者協会の前で師匠とお別れをし、宿に向けて帰る。


「あの雷魔術は凄かったですね」

「アレは上級なのかしら?それともその上なのかしら?大気の神と呼びかけてたから少なくとも風や水の属性よね」

「そうですね、細かくは分かりませんが」

「今度練習してみようかしら?」

「暴発させないように気をつけないと危なそうですよ?雷が自分に直撃してしまうかも」

「そ、そうね。うーん…」


 宿に着く頃には丁度日が落ちて薄暗くなっていた。


「おっ。お前ら無事だったか?」

「ただいまです、リューゼさん」

「リューゼ、貴方こんな時間から飲んでるの?」

 あ、本当だ、もう飲んでるこのお兄さん。


「まぁいいわ、給仕さん、私も一杯頂戴!」

 リエルさんも飲むのかい!


 私は一日中飛び回って疲れたので寝室へ向かった。



 ベッドにボフッと寝転がって全身で疲れた〜を表現する。だって箒作ってて睡眠不足なんだもの。


 脅威だったドラゴンは倒したし、これで氾濫もきっと止まってくれると信じよう。少なくともドラゴンが相手とかじゃ無ければこの街の探索者に任せておけば大丈夫だと思う。


 他にこのリーモアの街に用事がある訳でもないから、街を見て回った後、協会で護衛を1人か2人雇ったら出発しようか。あ、ナターリアさんがリーモアに来るって言ってたから護衛を頼んでみようかな。


 そういえばミケイ君達はどうしてるんだろう?この街の探索者協会の依頼でもこなしてるのかな?



『ナァー!』

 考え事をしてる内にいつの間にか寝ちゃってた様だ。ヒムロの顔面肉球連打で起こされた。


「ごめ、ごめんってば、ご飯だよね?ね?」

『もう夜中だ』

「わかった、ちゃんと食堂でお魚注文してあげるから」

『うむ』


 食堂へ降りるとリエルさんとリューゼさんがまだ飲んでいた。2人とも飲兵衛だな。


「おう、マコ、これからどうすんだ?」

「え?どうするとは?ご飯食べますけど…」

「そうじゃなくてだな、旅だよ旅」

「ん?旅は続けますよ?」

「マコ、貴方、箒が有れば馬車で行くよりも速いじゃない。むしろ何で今迄馬車だったのよ?」

「あぁ、それはですね、空高く、速く飛ぶのが怖いからですよ。あ、給仕さん、生の魚を二匹と〜、うーんと、卵焼き定食をお願いします」


 魚はすぐ持って来てくれた。それを皿のままヒムロの前に。


「…それだけ?」

「後は色んな経験を積みつつ、鍵を探すと言うのも理由でしょうか。少なくとも一度キョットーに着くまでは馬車旅です」

「ふうん…私ものんびり馬車で旅してたし。ま、いっか」

「そうか、なら問題ない。そうと決まれば酒だ!マコも飲め!」

「せめて先にご飯食べさせてください」



………



 今日、私が来たのは魔術師協会だ。ちょっと探したい魔術書か論文があるのです。


 チリンチリン…ドアを開けて中に入る。

 ナワイカの街の協会と違って、1階がレストランになったりはしていない様で、正面にホテルのフロントみたいなテーブルがあって、そこに受付の女性が座って書き物をしている。


 何か作業をしている所申し訳無いけれど、その受付の女性に話しかける。


「すみません、魔術書や論文の閲覧をさせて貰いたいんですが…」

「はい、では魔術師協会の会員カードをお願い致します」


 クレアさんに頂いた銀の会員カードを渡す。


「確認させて頂きました。それではこの鍵をお持ち下さい」

 

 リングにぶら下がる2本の鍵を渡される。


「この建物の3階にある書庫の鍵です。銅色の鍵が下級の書庫、銀色の鍵が中級の書庫を開ける鍵です。尚、書庫内にある物の持ち出しは固くお断りさせて頂いておりますのでご注意下さい。もし汚したり破ったり…」


 あと、ちょこちょこと注意事項を説明されてから3階の書庫に案内してくれた。


 さて、お目当ての本はあるかなー?



 『魔石の活用教本』

 『魔術紋様の歴史』

 『飛行魔術研究録』

 『私は鳥になりたい』


 丁度良さそうな本を発見。私が探しているのは空を飛ぶ為の魔術に関する情報。自力で安全に飛ぶ方法を探しているのです。

 それが出来れば空飛ぶ箒から落ちても大丈夫だし、怖さが和らぐかなーって。

 レビテーションの魔術を使えば浮くことは出来ますが、その為には私の場合、魔導書のコスモを取り出して片手で開き、書かれた呪文をもう片方の手でなぞる必要があります。落ちてる時にそんな余裕は多分無いんです。


 取り敢えず本を読んだり、書き取りしたり。何か学生に戻った気分です。


………


「いらっしゃーい、マコちゃんおはよ」


 魔術師協会でお勉強をしたあと、錬金術屋へ来た。店番をしているレイちゃんが出迎えてくれる。


「うん、おはよー。刺繍の材料あるかな?」

「刺繍?魔術紋様を縫う糸とか?」

「そうそう」

「今度は何作るの?」

「ふふ、ひみつ〜」

「えー、気になるなー。っと、こっちだよ」


 案内してくれた所には色とりどりの魔糸がある。魔糸は特殊な液体に漬けて魔力が通るようにした糸だ。

一先ず欲しいのは細くて頑丈な針と、それを入れとくケースと魔糸。んで、糸は何色にしようかな?




「ちょっと悩むけど、これを買います」

「魔糸は結構高いけど、そんなに買うの?」

「余ってもそんなに嵩張らないしいいの」


 バックパックはまだ余裕があるから大丈夫。


「ふーん?えーっと、この針は3000ルビで、ケースは500ルビ、糸はその量で15万ルビで…おまけして15万でいいよ」

「いいの?レイちゃんありがとー」


 ちょっと思ってたよりは高かったけど魔糸ゲットです!


「で、結局何に使うの?」

「ふふ、ナイショ〜」

「えぇー、マコちゃん意地悪だ!」

「無事完成したら見せに来てあげるよ」

「本当?」

「うん、本当」

「そっか。待ってるよ〜」


………



チクチク、チクチク…


 ヤバイ。刺繍舐めてた。これほど細かく、気を使う作業だとは…いや、小学生の時やった事あるか。なんか円形の枠に布貼ってチクチクと。けれどもそれとはまた違った大変さがある。


 魔術紋様を縫う時は少し紋様の形がズレると効果を発揮しない。太い線にしたり細い線にしたりしないといけない。魔石に穴を開けて縫い込む事も有る。


 師匠の作ってくれたこの様々な耐性の付いた黒のローブは一体どれだけの手間が込められてるか改めて気付かされる。師匠、ありがとうございます。


チクチク、チクチク…


………


 っは!熱中し過ぎて時間を忘れていました。

 でも、直ぐには完成しなさそうです。一応ここ迄は順調に縫えてますが。

 気分転換に外でご飯でも食べるとします。


「お?マコ、どこ行くんだ?」


 食堂のイスに座ってたリューゼさんが聞いてくる。


「外で少し遅いお昼ご飯をと思いまして」

「そうか、美味い所連れてこうか?」

「それじゃあお願いしましょうか」


 何を食べるかリューゼさんとあーだこーだ言いながら宿を出た。

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