脱兎の如く
視線の先に居るのは日本風の蛇の様な龍ではなくて、二足歩行できるタイプの体型のドラゴン。大きさは高さ10メートルといった所。今迄会った魔物達の中でもダントツのサイズだ。
「ど、どうしましょう、あのドラゴンさんメッチャこっち睨みつけてますけど」
「距離はそこそこ開いてるからいざという時には森の中に逃げてしまえば追いかけては来ないんじゃ無いか?」
「こっちを見てはいるけど襲いかかって来る気配は無いわね」
ドラゴンは尻尾を地面にビターンビターンしながら此方を見つめている。
「ドラゴンは高等な魔物、もしくは妖魔とされてます。もしかしたら話が通じるのではないでしょうか?」とファリスさん。
「それ、誰が確かめに行くのよ」
「リーダー?」
「俺かよ!」
「防壁魔術なら掛けられます!」
「よしリューゼ、任せたわよ」
「私達は、見てる」
「…神の怨敵と戦いしこの者に、御身が盾を授けたまえ。プロテクション!」
キィィン!リューゼさんの周りに透明な盾が展開される。
「え?マジで俺が行くのか?リーダーとか安請け合いするんじゃなかったぜ」
「ファイト〜!」
私達に送り出されたリューゼさんはおっかなびっくりの体で1歩1歩ドラゴンに近づいて行く。ドラゴンがリューゼさんの方を向いて…あ、あれはブレスの予備動作?
「リューゼさん逃げて〜!」
「くそぉぉ、やっぱりこうなるんじゃねぇか!」
ダッシュで此方に逃げ帰ってくるリューゼさん。
「GOAAAAAAA!」
ファイアーボールの何十倍も大きな火球がドラゴンの口から放たれ、地面を焼きつつリューゼさんに迫る!
「うぉぉぉ!」
「〜〜〜、アースウォール!」
リエルさんの魔術がリューゼさんを含む私たちを覆い、ドラゴンの火球が直接当たるのを遮るものの、周囲の温度が一気に上がって暑い!熱い!周りの木に延焼してる!
「今のうちに逃げましょう!」
「そうだな、あれじゃあ話し合いなんてできそうも無いしな!」
「原因究明ですもんね、依頼は。あのドラゴンのせいで決まりでしょう」
そんな感じで這々の体で逃げた私達。ドラゴンが追いかけて来てないことを振り向いて確認しながら街へ戻る為にまた森を歩き始めた。
………
街に戻った私達は探索者協会に入り、ギルドマスターのクライブさんに報告をした。
「そうか、ドラゴン…参ったな。倒せる戦力を集めようにも近隣の街にはドラゴンと戦えるような者は…」
額に手を当てて困った顔のクライブさん。
「もしあのドラゴンが原因で魔物たちが森から押し出されて来ているのだとしたら、氾濫はそんなに長くは続かないのではないでしょうか?森の魔物の数にも限りがあるでしょうし」
と、クライブさんに進言してみる。
「だとしても、そのドラゴン自体がもし街に来た場合の事を考えて、対抗できる戦力が必要だ。国王に嘆願書を書いて騎士団を派遣してもらうか…」
成る程、居るだけで脅威って事か。あんなのが街にやってきたらとんでもない被害がでるもんね。納得。
「よし、何はともあれだ。今回はよく頑張ってくれた。報酬は受付で受け取ってくれ」
受付で報酬を受け取った後、クイナさんとファリスさんと別れた私達は宿に帰った。
「歩きっぱなしだったから足が疲れたわ」
「ゆっくりお風呂でも入って疲れを癒しましょう」
「そうだな、俺も汗かいたし先に風呂にしよう」
私達はお風呂に入った後、着替えを済ませて宿の食堂に来た。それぞれ好きなものを頼んでテーブルに着く。因みに私はオムライスにした。
「しかしあのドラゴン、どうやって倒すんだろうな?」
「騎士団がどうとか言ってたけど、それで何とかなるのかしら」
「ヒムロなら勝てるかな?」
「流石のヒムロでも無理じゃないかしら?」
『ブレスは避ければよいし、あの手のドラゴンの動きは我にとってはそれほど速くないから負けはしないが…勝つのは難しいだろうな』
「どうして?」
『爪が竜鱗に通らないと思う』
「防御力が高すぎるって事か」
「リエルさんの一番威力の高い魔術は?」
「炎の上級のインフェルノね。うーん、でも火は効かなそうよね。他の属性の上級は使えないし」
「防御力が高いと言えば道中のイービルエイプも硬かったな」
「リューゼさんの一撃を耐えてましたもんね」
「切れ味が悪いんじゃない?武器を新調したらどうかしら?」
「あの大剣は元々叩き潰すタイプの頑丈さが取り柄な剣だからな。最初っから切れ味なんて物はないんだ」
「へぇ〜」
「それにあの大剣に慣れちまってるから、普通のロングソードとか使ったらすぐ折っちまいそうだ」
「マコはなんか隠し球はないのかしら?」
「隠し球ですか?うーん…」
コスモじゃ初級魔術2.3発しか撃てないし。
一応錬金術で作れる爆裂玉とかあるけど多分通用しなさそうだし。
錬金術といえばアビラタさんだ。師匠なら何とかなるかな?
「ナワイカの外れに私の師匠のアビラタさんがいるのですが、師匠なら何とかなるかも知れません」
「悠久の魔女アビラタか」
「魔女!そんな凄い人が師匠だったの?羨ましいわね」
「手紙でも出してみましょうか?私が箒で飛んでった方が速いですけど、1人だと怖いし」
「私も会ってみたい!錬金術屋で売ってる箒を買えば私も行けるわ。リューゼは箒乗れる?無理ならお留守番になるけど」
「いや、乗ったことが無いから遠慮しておく。この街の観光でもしてるさ」
「では出発は明日の昼にしましょうか。今晩はもう錬金術屋さん開いてないでしょうから」
「明日の昼ね。魔女に会えるなんてワクワクするわー」
一旦師匠の所に戻ることになりました。2人とも元気かな?




