リーモアの森
「この探索部隊を統括する事になったこの街のギルドマスターのクライブだ。皆には私の指示に従ってもらうようになる。今回集まってもらった者で、原因の究明と、魔物の間引きを…」
私達は現在街の入り口にある防壁門の前にいる。これから森の中を探索する人達が数十人程度集まっていて、クライブさんの話を聞いている。
「…では、チームを作って貰いたい。なるべくバランスの良いメンバーを揃えてくれ」
突入チームを作るということで、私達以外の足りない役を探している所だ。私達に足りないと言うと…
「やはり先手を取られない為にも斥候職は欲しいな」
「怪我した時の回復役もいるわね」
「わかりました。すみませーん!私達、斥候ができる人と回復魔術が使える人を探してまーす!」
私が声を上げたのを皮切りに彼方此方でも募集の声かけが聞こえ出す。皆声が大きいな。
「これじゃ私の声届かないなぁ」
「ははっ、任せろ」
リューゼさんが変わってくれた。凄い声量だ。その声を聞いてくれたか、短剣装備の黒い服を纏った茶髪の少女と、杖を持って法衣を着たお淑やかな感じの女性が集まってくれた。
「クイナ、です。斥候できるよ」
「ファリスです。回復のほかにも攻撃魔術が使えます。お邪魔しても宜しいでしょうか?」
「はい、是非チームに入っていただければと。私はマコです」
コレで必要なメンバーは揃ったかな?
前衛にリューゼさん、後衛にリエルさん、遊撃にヒムロと私で斥候のクイナさんと僧侶のファリスさんの5人と一匹がチームだ。
「リーダーは誰にする?」
「やっぱり年長のリューゼさん?」
「私は、それでいい」
「俺か?まぁいいが」
皆の賛成によりリューゼさんがリーダーに。頼れるお兄さんだしね。
暫くして周りの人達もメンバーが纏まったみたいでクライブさんが手を叩いて注目を集める。
「チームが出来たようだな。それではこれより森へ探索に入ってもらう!各々充分に注意して行動してくれ!何か原因となりうる物を見つけたら俺の所に知らせに来るように!」
クライブさんの話が終わるのに合わせて防壁門がゆっくりと開いていく。うん、ちょっとドキドキしてきたぞ。
………
森に侵入して2時間ほど奥に歩いた所。
木の密度が高くて、光が遮られ薄暗い。
道などは無く、木の根がそこら中を這っていて、歩くだけでも体力を消耗する。
斥候のクイナさんが頑張ってくれているお陰で魔物に急に襲い掛かられる事は殆ど無いとはいえ、いつ何処に魔物が居るか分からない視界不良な状況は精神を削られる…
シュタッ、と木の上から飛び降りてきたクイナさん。
「もう少し先に、イービルエイプ、二匹」
「うわ、厄介ね」
「とはいえ倒さない訳にも行かないだろう」
イービルエイプは森の奥地に生息する魔物で、その小さな身体からは考えられない腕力で枝から枝へ飛び移り、立体的な機動で襲いかかってくる森のハンターだ。また、知恵も回り、遠距離から石を投げつけてきたり此方の武器などを奪いとり遠くへ放り捨てたり、装備して攻撃してきたりするらしい。それが二匹。
この強敵を放っておけば他の探索者が犠牲になる可能性だってあるので、狩らずに放っていく理由はない。
「ヒムロ、中ぐらいのサイズになれる?こないだぐらいの。それで一匹を抑え込めない?」
ここでは最大サイズのヒムロじゃ木が邪魔で活躍出来ない。
『大丈夫だ』
「流石ヒムロ」
「じゃあやるか?」
「行きましょう!」
先ずはギリギリ見える所からリエルさんの先制の魔法、
「〜〜〜、ストーンキャノン!」
ギュオン!……ダァァァァァン!
「キキィ!?」「キッキィ!」
遠くから撃ったので横の木に当たってしまったけど、急な轟音に二匹とも何事かと慌てている。混乱している内にヒムロが走っていって片方の猿を猫パンチで吹っ飛ばした。手加減無しの爪出し猫パンチだ。
血塗れになって地面を転がる猿にヒムロが追い討ちをかけにいく。
「キィーーー!?」
もう一匹は木の上へ登ってる。メッチャビックリした様子でヒムロの方を見ている。そこへ、ファリスさんのウインドカッターの魔術が猿の乗っている木の枝ごとバッサリと切った。当然猿は落ちてくる。
そこにリューゼさんが走っていって、空中で身動きが取れない猿に大剣の縦割りの一撃。くの字になって大剣に挟まれる形で地面に叩きつけられた猿はそれでもまだ生きている様で飛び跳ねてリューゼさんと距離を取った。
”混沌たる闇、影に潜む者よ、我が命に従い、敵を縫い止めよ、来たれ”
「●、シャドウスナップ!」
ザクン!「キィィッ!?」
私はシャドウスナップの魔術で猿の影を魔力の剣で縫いとめる。
そこへリエルさんの魔術、アイススマッシュが猿に直撃、木の何本かを薙ぎ倒しながら猿を履き潰す。流石にこれには耐えられなかった様で、手足があらぬ方向へ曲がった猿が息絶えている。
一方ヒムロはソロでトドメを刺した様で猿の首を咥えてこちらに持ってきた。流石だ。
「もっと手こずるかと思ったがあっさり片付いたな」
「私達に掛かればこんなもんよ」
『うむ』
「皆さん、凄い」
イービルエイプの魔石を剥ぎ取る。流石強敵なだけあって赤色の濃い大きめの魔石だ。コレなら高く売れそうだ。
イービルエイプの皮なんかも多分売れるんだけど、嵩張るので今回は残念ながら放置だ。
一通りの準備を終えたところで更に森の奥地へ進む。
…
更に1時間ほど奥へ進んだ所に木々が不自然に途切れた200メートルぐらいの広さの平地があり、その中心にこの森には本来生息しないであろう者がいた。
「うわぁ…」
「アレは勝てないわね…」
そいつは、寝そべっていた身体を起こし、大きな翼を更に大きく見える様に広げ、こちらを威嚇する様に睨みつけている。
「やばい、です」
「この距離で気づかれるとはな」
「…今のうちに早く報告しに帰りませんか?」
私たちの視線の先に居るのは
「GYAOOOOON!」
ドラゴンだ。




