リーモアの街
チリーンと探知の鈴が鳴る。
ガサガサと木と木の間から出てきたのは5匹のグレイウルフ。
「またか」
「ちょっとゲンナリしちゃうわね」
レンタル馬車でリーモアに向かって3日目、あとちょっとでリーモアに着くって所なんだけど、魔物が出るわ出るわ。出会うと戦いになる魔物は今日だけで大体10戦目ぐらい。
例の森の氾濫のせいなんだろうけど、それにしてもこの量は異常だ。ポサロとリーモアの間の乗合馬車が運行中止してた理由も分かる。
で、今回のグレイウルフ。名前の通り灰色の狼で、すばしっこくて牙や爪の威力はかなりの物。大体群れで行動して、数の利を生かして多方向から攻めてくる魔物だ。馬が怪我しない様に守らないと、この先の道のりが大変なことになるので動きに注意が必要だ。
「ヒムロ、馬を!」
『あぁ』
ヒムロに馬の護衛を頼み、私も馬車の前に出る。リューゼさんとミケイ君がグレイウルフを引きつける。
「うらぁ!」「ギャゥン!」
リューゼさんの先制の攻撃が命中、吹っ飛んで行って動かなくなる。まず一匹!
「〜〜〜、ファイアーボール!」
ゴォォォ、ドゥン!
命中はしなかったものの、リエルさんの魔法はグレイウルフ達の動きを阻害する事に成功、その隙にすかさずミケイ君の剣が一匹の首を切り落とす。
「やぁっ!」ボクッ!
ファイアーボールの範囲に居なかった一匹が私に向かって飛びかかって来たところをフォーチュンちゃんで叩き伏せる!ふへぇ、頭が陥没しちゃってる…あと二匹。
と、思ったら後の二匹は形勢が不利と判断したのかあっさりと尻尾巻いて森に逃げ帰っていった。ふぅ〜。
「皆さん大丈夫ですか?」
「あぁ、誰も怪我はして無いみたいだ」
「ちょっと温存しないと魔力が切れそうよ」
今日はずっと連戦なのでリエルさんの魔力がピンチらしい。でもここまでずっと魔術使っててまだ切れてない所が凄い。私もそんな風にポンポン魔術を使いたいもんです。
「グレイウルフは狩っても旨味がないんだよな」
「魔石だけでも剥ぎ取っておくか?」
「そうしましょうか」
既に馬車内は売れそうな魔物やその素材等でかなり埋まっててグレイウルフを入れる隙間がない。グレイウルフ自体も大して価値が無いので魔石だけを剥ぎ取る事にした。
「収穫は小さな魔石3個か。安いな」
直径1センチぐらいの薄い赤色をした魔石だ。コレぐらいの色とサイズの低級の魔石は粉々にしたりして錬金素材にすることが多いので一定の需要はあるけど、手に入りやすいのでそんなに高値はつかない。多分一つ2000ルビもすれば良い方だ。
魔石を抜き取ったグレイウルフを街道の邪魔にならない様にサイドの木の側に片付けて出発する。早く向かわないと夜になっちゃう。
………
リーモアの街に到着したのは少し薄暗くなってきた時間帯。街の入り口での検問待ちだ。とはいえそんなに並んでないので直ぐに順番が来た。
「身分を証明出来る物は?」
と、守衛さんに聞かれたので全員の探索者カードを見せる。
「おぉ、全員探索者か!それもCランクが2人も!良いタイミングで来てくれたな。ここに来るまでも恐らく魔物に頻繁に襲われたと思うのだが、その氾濫の原因を突き止める為の潜入メンバーがまだ心許ないそうなんだ。構わなければ参加して貰いたい」
「は、はぁ」
「今でも流通が滞っているせいで食料や日用品の価格が高騰してしまっていてな、街の人達の不安や不満が爆発しそうなこの状態が続くのはまずいんだ」
んー、どうしよう。依頼は受けないつもりだったんだけど、状況が逼迫してると聞かされるとなんとかしてあげたいと思ってしまう。
リューゼさんやリエルさん、それにヒムロもいれば森の中も何とか探索できるとは思うけど…
「報酬も結構出すらしいから是非探索者協会へ顔を出してみてくれ」
…
一先ずは卸市場で道中狩った魔物や素材を売り払う。全部で150万ルビになったので皆に均等に振り分けた。
あと、ミケイ君とエルザちゃんはこの街でお別れなので一緒に探索者協会へ行って依頼終了の報告とお金の受け渡しをした。
その流れで協会の職員さんに「この街からの依頼が…」と話をされかけたけど、明日また来るからと話を断った。
「たった5日護衛しただけなのにこんなにも貰えるとは思わなかったぜ!」
「私は殆ど何もしてないのにコレ程貰ってしまって良いのかなと…」
「良いんです。居てくれてとっても助かりましたから」
あんなに魔物に出くわすとは思わなかったので、先陣切って戦ってくれたミケイ君は勿論、もしもの時の保険としてエルザちゃんという存在も大きかった。決して貰いすぎでは無いと説明する。
「それじゃあ2人とも、元気でね!」
「また会いましょう」
「エルザをしっかり守れよ」
「あぁ、またな!」「神のお導きを!」
手を振ってミケイ君達と別れ、探索者協会を後にする。早く馬車を返して宿を借りなくては真っ暗になってしまう。
………
「森の探索に参加するのか?」
「うーん、どうしようかなと」
「何があるのか分からないのは怖いわね」
宿の食堂でご飯を食べながら談義中。この街の人達が困ってるという話を聞くに何とかしてあげたいという気持ちが湧いてくる。
「どうせ報酬なんてせいぜい10万ルビとかそんなもんでしょ」
「報酬よりも命が大事だぞ?」
「その命が脅かされてるこの街の人達の事を考えると手助けしてあげたいと言うか」
報酬は元々貯めてた旅費含めてそこそこに稼いでて余裕があるぐらいだから別に無くてもいいぐらい。いや、貰える物は貰うけど。
「つまりは受けるって事だな」
「マコはお人好しよね」
「ごめんなさい、付き合わせる事になっちゃうけど」
「まぁいいさ。だけど危ない状況になったら担いででも逃げるからな」
私からすれば2人も充分お人好しだと思うんだけどね。でも2人がついて来てくれたら心強い。
「そうと決まれば酒だ!」
「行くわよマコ、今回は断らせないわ」
「えぇっ、私お酒はちょっと」
「ダメよ、一緒にお酒を飲んで親睦を深めるのよ」
「飲めない歳じゃ無いんだろ?」
「私の元居た国じゃ20歳からで…」
「今いるのはエスペリアよ。15になれば成人、お酒も飲んで良し!」
「うー、あー。じゃあ少しだけ。少しだけですよ?飲んだ事ないのでお手柔らかに?」
「よーし決まり!今夜は飲むわよ!」
「ひえぇ…」
これが社会人の付き合いって奴でしょうか?そのまま酒場に連れてかれて夜中まで飲まされてしまいました。




