ポサロの街へ
話し合いも済み、特に問題なさそうだったので4人とも雇用した。私含めて総勢5人と一匹。
ポサロまで乗合馬車で行こうとしたけど5つの空席がなかったので、レンタル馬車を借りる事にした。
ナワイカーポサロ間のレンタル馬車の料金は御者有りで20,000ルビ、無しで10,000ルビ。壊した場合は別途修理代が掛かるという物。
リューゼさんが馬車の操縦を出来ると言う事で御者無しにした。
ナワイカからポサロまでは馬車で半日程度の距離で、現在はポサロへ向かって道半ばといったところだ。
「なぁマコ」
「何?ミケイ君」
「さっきからなんか食べてるだろ?なんだそれ?」
「あぁ、これは酔い止めの薬飴です。コレがないと気持ち悪くなっちゃうので」
「ふーん。それ、美味いのか?」
「苦味がちょっとあって、少し甘いですかね?あくまで薬なのでそんなに美味しいものでは無いですよ」
薬草を煎じて甘味をつけて固めたものだ。酔わなけりゃ良いとして作ったものだからあまり美味しくないのは仕方ない。
「ひとつくれよ」
「良いですけど」
袋から一つ、紙で個包装した飴を出して渡す。ミケイ君それを口の中に入れて舐め始めた。
「うーん、確かに美味いもんじゃないな」
「でしょ」
「コレは船酔いにも効くのか?」
「多分効きますね」
「へぇ。なら悪くないな」
ポサロまでの街道は割と平和だ。魔物がいない訳じゃないけど、居るのはビックシザークラブって言う大きめの鋏を持った蟹の魔物や、氷のつぶての魔法を飛ばしてくるスノーラビット、ファイアボールに似た小さな炎の魔法を撃ってくるファイアフォックスなどが殆どで、それ程脅威的な魔物は居ない。大体は馬車が通ると街道上から逃げていく魔物ばかり。
ただ、この街道の東側にある森深くなんかに行くと、手強い魔物がいる。稀に街道にも出てくる事があり、不幸な事故も起きる事があるのでやはり対策は必須だね。
「なんも出ねーなー」
「出ない方が良いじゃない」
暇な事に文句を言うミケイ君をエルザちゃんが嗜める。私も暗くなる前にポサロに着きたいのでエルザちゃんに賛成だ。
チリーン…チリーン…ん?探知の鈴が鳴り始めた。また蟹とかかな?
「おっと、噂をすればなんとやら。残念ながら魔物が街道を塞いでるぞ。アレはムーンベアだな」
「ふぅん、中々大きいわね。行ってくるわ」
そう言ってリューゼさんとリエルさんは馬車からでてムーンベアの所へ。
ムーンベア。森の奥の方に生息するという夜行性の熊だ。その大きな身体を活かした突進やパンチのパワーは生半可な防具じゃ役に立たず、新人が出会うと生きて帰れないと噂される程の魔物だ。
でも夜でも森でもないこんな場所に出てくるなんて珍しい。
「…神の怨敵と戦いしこの者に、御身が力を分け与えたまえ、ストレングスアップ!」
エルザちゃんの魔術でミケイ君に白い粒子が掛かる。筋力などの体力増強魔術だ。
「腕が鳴るぜ…!」
そう言いながらミケイ君も馬車から飛び出していく。
リューゼさんは前衛で注意を引きつけ、リエルさんは後衛として攻撃魔術を浴びせかけている。そこにミケイ君もアタッカーとして加わった。エルザちゃんは馬車から出て戦況を眺めている。
「グラァァ!」ドンッ!
ミケイ君が吹っ飛ばされたけどちゃんと盾でガードしているようでダメージは無さそう。
「〜〜〜、レイ!」
「ギャァァァァ!」
リエルさんの光の魔術がムーンベアの片目に直撃した。レイは本来なら拡散しがちで制御の難しい魔術だけど、リエルさんのはかなり収束されたレーザー状だ。命中精度も凄い!
「うらぁ!」「ガアァァ!」
ガキィィン!リューゼさんの剣が腕で受け止められる。だけどその理力を抑えきれずムーンベアは体勢を崩す。
「おりゃぁぁ!」
「グァ…!」
ズブシュ、と、後ろからのミケイ君の渾身の突きがムーンベアの背中から胸へと突き抜ける。クリティカルヒットって奴だ。
「〜〜〜、トドメよ!アイシクルコフィン!」
ヒュォォォォ、パキパキパキ…!剣を残してミケイ君が飛び退き、リエルさんの魔術がムーンベアを完全に氷漬けにした。
氷漬けになって動かなくなったので一安心と言ったところ。誰も怪我をしていないようだ。後ろでエルザちゃんがホッとしている。
みんな強いなー、私何もしてないなー。ヒムロも馬車で丸まってるし。
「快勝ね。私たちに掛かればこんなものよ」
リエルさんが腰に手を当ててフフンって顔してる、得意そうだ。
「俺の剣が一緒に氷漬けなんだが…抜けねぇし」
「とりあえず馬車に乗せて街で売るか?熊肉と皮と剣が売れるだろ」
「ふふっ、幾らで売れるかしら」
「俺の剣まで売るなよ!」
そんな感じで談笑しながら、ムーンベアをえっちらと馬車に乗せてポサロまでの道を走っていく。




