ポサロの街
今日は街にやってきました。
いつもはラザちゃんが「マコっち一人じゃ心配ー」と言って付いてきてくれるんだけど、あんまりラザちゃんを付き合わせるのは申し訳ないと思ったし、これも勉強だと考え今回は1人で。
まるで妹にするように(私のが年上だけど)世話を焼いてくれるので、色んな所で助かってるんだけど。可愛い子だ。
ヒムロは今日はヒムロの妹ちゃんの所にいるから用事があれば召喚しろとの事。
そんな今日この頃。何しにきたかと言うと、ショッピングと旅の練習だ。
近いうちに1人で鍵探しの旅に出なくてはならないのに、1人ではこの師匠宅から1番近い街、ナワイカの街にしか来た事がない。この街より南のポサロの街はまだ行った事がないのだ。
で、今回はポサロの街まで行き、何かしらアイテムを買って1泊して帰ってくる、というのが目的だ。
まずは乗合馬車の駅に行くことからだ。
…
…
街の南側にある出入り口の横には待合所がある。そこで馬車に乗って、確かポサロまで…
「ポサロ行き〜!もうすぐ出るよ〜!」
わわっ、丁度出る所!?
「すみませーん。乗せてくださーい!」
「はいよ!1人?」
「はい」
「2000ルビね」
「えーと、はい、2000ルビです」
御者のおじさんにお金を渡す。
「…確かに!はい乗った乗った!」
「お邪魔しまーす…」
馬車内には私以外に5人の乗り合わせた人達がいる。小さく会釈。少し余裕があるので本来は8人ぐらい乗れるんだろう。でもこの方が座りやすくって良いかな?
もう出発と言うことで鞄から私が取り出しますは…酔い止めの薬飴。
正確には酔い止めの薬というより食べてる間、微弱に身体を回復しつづけてくれるリジェネレーション効果のある飴で私のお手製だ。
コレがあれば馬車酔いだって大丈夫。
「出発するぞー!」
…ガラガラガラ…
…
…
…
ガラガラガラ…。
「着いたぞー!降りた降りた!」
道中何事も無く無事ポサロの街に着いたようだ。降りて御者のおじさんに会釈する。見てないかもだけど日本に居た頃の癖というか。
ふー、アレだ。お尻が痛い。
酔い止めが効いてたから気分は大丈夫だけど、揺れたり跳ねたりし過ぎで辛い物がある。今度からクッションとか持参しようかな?でも嵩張るしなー…まぁ我慢しよう。
ポサロの街はナワイカの街より大きく、品揃え等が充実してるらしい。ここで旅のグッズをある程度集める予定。
まずは商店街を見て回ろうかな?
………
あのテントはナワイカには置いてなかったなー、嵩張るから帰りに買おうかな。今使ってるナイフは師匠の借り物だから自分のを買わなきゃ。野宿する為の道具も…と色んな店を回りながら眺めたり買ったりしていく。
そうして表通りをテクテク歩いてると、武器防具店を発見した。コレは日本にはないカテゴリだ。(いや、あるのかな?知らないけど)ナワイカの街にもあるけど入ってみた事は無かった。今のところ武器も防具も入用ではなかったし。でも…気になってはいる。
店の大きさも中々で、品揃えも良さそう?一般的な探索者がどんな装備を求めてるかとか今後の参考にちょっと入ってみよう。
ギィィ…パタン。
店内は静かだ。
奥にカウンターがあって店主のおじさんが剣を磨いている。その様が中々雰囲気があって少し見入ってしまったけど、この前に突っ立っていても始まらないので、
「失礼しまーす。少し見せてもらっても良いですかー?」
声を掛けた。おじさんは此方をチラッと見て、
「良いぞ。嬢ちゃん魔術師だろ?」
「えぇ、そうですが」
「入口から見て左奥が魔術師用の武具を置いている場所だ。ゆっくり見ていってくれ」
「はい、有難う御座います」
店主さんが教えてくれた通り奥に行ってみる。
壁に添えつけられた棚や床には魔術紋様の刺繍がされたローブや帽子、アクセサリーや小物、立てかけられた魔術師用の杖等色々な物が置いてあって、それぞれどんな特徴があるかが値段と共にタグに書いてあって分かりやすい。
『探知の鈴 魔物の気配を察知して10秒程鳴る鈴 2万ルビ』
これはこの世界の定番なマジックアイテムで、何個か置いてある。私もナワイカの街の雑貨屋で購入した。
『ハイドロスタッフ 水属性魔術との親和性が高く、高威力になる(当社比1.2倍)50万ルビ』
小さな水色の魔石の着いた杖。
魔石は魔物や妖魔と称される生き物の体内にある結晶だ。長生きしてたり強く大きかったりする魔物や妖魔ほど、力のある魔石が形成され、その魔石達は主に触媒として使われる事が多いというのを師匠の本で勉強した。
私もこういう杖が欲しいと言えば欲しい。でもフォーチュンちゃんがあるし、2本持つには荷物が嵩張るし。なので見るだけ。
『耐熱ローブ 素材 バブーフ100% 耐火耐冷 オーダーメイド受付可 70万ルビ〜』
何かの拍子に燃えると火ダルマ、凍るほど寒いと体が動かなくなる。耐性は大事だよね。ただ難点は素材の通気性が少し悪い事かな?まぁ私は師匠作のこの黒のローブがあるから必要は無い。
あ、この『腰に着けてるだけで貴方の身を守ります。見守り藁人形 50万ルビ』なんかはかなりハイレベルな結界の魔術紋様が組み込まれてるみたい。でも誰かを呪いそうなこのデザインは共感出来ない。不吉が過ぎるし何故もっと可愛く作らないのか。これで売れてるのかな?
………
などなど、気の赴くままに眺めたり手に取ったりしてると一つの帽子に目がいった。タグを見てみる
『魔女の帽子 詳細不明 値段応相談』
俗に言うとんがり帽子。詳細不明?値段も書いてないし…
「店主さーん」
ちょっと店主さんに聞いてみよう。
「はいはい、なんだい嬢ちゃん?」
「この帽子なんですけど…」
「あぁ、それは大分前に商品を仕入れた時に紛れ込んでた奴でな、調べはしたが性能が分からんし、一応並べてはいるが今まで売れ残ってた奴だ」
「そうなんですか、コレのお値段は?」
「それが決めかねててな。何やら魔術紋様も刺繍されてるしな。嬢ちゃんには分かるか?」
性能が分からない…うーん、気になる。こう、探究心がくすぐられる。師匠なら分かるかな?買ってみようか。
「いえ、私には分からないんですけど、師匠に見せたら何かわかるかもしれないので、購入しても良いですか?値段を決めて貰えたら…」
「うーん…10万でどうだい?」
性能が分からずとすればそんな物かな?
「じゃあその値段で買います」
「はい、まいど。そのまま被って行くかい?」
「そうですね、そうします」
お金を払って被ってみる。被ってみたら何か感じるかと思ったけど特に変わった事はない。まぁいいや。
しかしとんがり帽子に黒のローブ、黒のブーツと中々魔女っぽくてハロウィンの仮装みたい。うん、このままお祭りに出れるねコレは。
「他にも見て行くかい?」
「はい、もう少し見ていきます」
戦士系の剣とか盾とかも見ていこうっと。