使い魔召喚!
「それでは、始めるかの?」
「はい、お願いします!」
床に配置されているのはツカオという魚を特殊な捌き方で4等分にし、茹で、無駄な部分を除き、燻製して燻しながら水分を飛ばし、凝縮された物を更に何やかんやした新鮮?なツカオ。
師匠にアレやこれやを教えてもらい、街で魚を取り寄せ、一部イマジネーションで私が作ったその名も「ツカオ節」
最高の一本が仕上がったと自負している。
今日は待ちに待った日。
現在リビングで行われているのは使い魔召喚の儀式。
そう、私にも遂に使い魔が!
使い魔というのは、契約者の周りに付いて、一緒に戦ってくれたり、補助してくれたり色々助けてくれる魔物や動物、妖魔の事。
師匠のフクロウさんとか、ラザちゃんの犬ちゃんを見てて羨ましかったんだよね!
ハイテンションにもなるってもんです!
そして絨毯の真ん中に置かれた皿に供えられたツカオ節。
カンの良い人ならお分かりでしょうが、私が使い魔として召喚したいのは…
「準備は終わったの。では始めるのじゃ」
「はい!では…」
コスモを手に持ち、開いて準備していた呪文を…
”我の名は「マコ」、類稀なる縁にて声届きし者よ、その運命に従い我が身の前に顕現せよ″
「●、サモンファミリア!」
パァァァァァァ…!
ちょっと目を開けてられないぐらいの光がリビングを照らす。
ァァァァァァァァン!
徐々に光が収まってきた。さて、私の使い魔は…
猫。
狙い通り。
狙い通りなんだけど。
天井に届かんばかりの体。
揺れる2本の尻尾。
ア○ックも驚きの白さの体毛。
そんなどう考えても使い魔というより捕食者なオーラを放つ猫。その巨大な猫が私をじーっと見ている。ちょっと気圧される。
『…』
「…」
『…この供物は何という?』
「え?ぁあ、えと、ツカオ節です」
『初めて聞くが、この供物からする匂いからして恐らく食べ物であろう?』
「そ、そうです」
『どうやって食べるのだ?硬すぎて齧れないのだが』
「あ、こうやって削って…」
ナイフで薄めに削って皿の上に乗せる。
ぺろぺろ…猫さんが食べる。
『ふむ、気に入った、日にコレ1本だ』
「いや、ちょっとそのペースは難しいです」
ビタァァァァン!
猫さんが尻尾を床にぺちんとした衝撃で凄い音がする。ひぇー。
『ならばどれぐらいなら良いのだ!』
「うーん、月1本ぐらいなら…」
ダァン!グラァ…
猫さんが足を踏み鳴らした衝撃で建物が揺れる。凄い力!やめて、私の家じゃ無いから!師匠に怒られる…と、思ったら師匠ニコニコしてる。流石、懐深いなぁ。
『月一本では家族が養えないではないか!』
お、怒ってる理由が見た目のイメージに対してなんか庶民的。どうしょ、えぇと、
「コレを一日一本はちょっと難しいんですけど、それ以外に毎日お肉的な物とかを供物として捧げるというのではどうでしょう?」
お、立ち上がって尻尾がピーンってなった。
『よいのか?』
「ええ、大丈夫です。」
『二言は無いな?』
「はい、それぐらいなら」
『うむ、ならば私はお主の使い魔となろう』
やったぁ!コレで私も一端の魔術師ってやつだよね!…だよね?
この子の名前は何にしようかなぁ?
………
「はぁ…寒いぃ…」
外は寒い。
気温は零下。白くなる吐息。
このアースラウンド北部は現在冬に入った所。既に周辺は雪に埋もれ、多数の木が葉っぱを落としている。
「ヒムロー!」
私は使い魔の名前を大声で呼ぶ。
「ご飯だよー!」
『ナァー』
出てきた出てきた。しゃがんで撫でる。
『ナァー』ゴロゴロ…
撫でる。
『ナァーー』ゴロゴロ…
撫で『フカァーッ!』パシィィィン!おお、高速猫パンチ!
『速く肉を渡すのだ!』
「あはは、今日はお魚だよー、っと。はいコレね」
『何故焦らすのだ…まったく』
「可愛くてつい…」
『…フンッ』
用意したお魚咥えて行っちゃった。
そう、ヒムロは自在に大きさを変えれるそうで、普段は子猫サイズになってる。その方が魔力を消費しなくて楽なんだそうだ。
でも大きい姿になったら凄い。そこら辺の魔物なんかどこ吹く風な力強さだ。この近所の大概の魔物はもう舎弟のような物だそうだ(本猫談)
あと、心配になって毎日お魚一、二匹程度で家族が養えるのか聞いてみると、
『妹がいるのだが、我らは小さくなれるが故、コレぐらいの供物とツカオ節のてんば…ツカオ節で事足りているので大丈夫だ』
転売してるらしい。どこに?
まぁいざという時に働いて貰う代わりの供物だし、それで家族を養えてるんなら全然良いんだけど。…幾らで売れてるのかなぁ?貨幣とか使ってないだろうから物々交換?
ま、いっか。これが私の可愛い使い魔、ヒムロです。