第6話 ある日の授業風景1
本日2話目です
次の日から学園は本格的に始まった。
と言っても授業にほとんど興味はないし、知っていることばっかりだから聞く意味も無い。
という訳で私は毎日毎日退屈を持て余す。眠い。
興味があるのはただ一つ。
―――この目の先に映るダンジョンの入り口だ。
まあ正確に言うと、私は窓際の席にいるのだが、この窓の向こうにある3年生の校舎の更に向こう側にある建物、ダンジョンの入り口を囲んである祠だ。
その祠からダンジョンの空気が漏れ出てきている。その空気を感じるだけで・・・
嗚呼、狂おしいほどの歓喜が訪れる。はやく、はやくあそこへ行きたい。
しかし授業は退屈で眠い。
歴史の授業はシエラ先生ではない。
アルイメデス先生という妖精族のおじいさん先生だ。
この先生の言う世界の歴史は間違っているし、おまけに話しに抑揚がないから余計眠い。
―――大体、そこで滅びたのは―――なのにあの時―――
はっ!ダメだ眠い眠い。この授業はホントにダメだな。
春の陽気も手伝って周りの生徒も怪しい。
あの祠の中からダンジョンに入って探索したい。
プリンちゃん達を育成したい。まだ見ぬモンスターをテイムしてもいい。それからそれから……
ぐー…すー…
1年生のSクラスにはとんでもない美少女がいる。
一部の社交界では彼女の事は以前から噂になっていた。
そしてごく一部の紳士諸君の中には知らないものはいないという話だ。
彼らの間では彼女の映る記録水晶がとんでもない値段で売買されているらしい。
その少女は年齢的には『美女』と言うより『美少女』、いや『かわいい子供』なのだが、あまりの愛くるしさ、そして時折垣間見せる仕草には色気すら感じられる。
彼女は窓の外をいつも悩ましげな様子で見ていると言う話だ。その姿がまた―――
試しに見に来た上級生はあまりの美しさに溜息を一つその場に残して帰っていった。
うわさを耳にした他クラスの1年生はその場から動けなくなった。勿論、男女問わずにである。
ぼんやりと見惚れてしまうもの、直視すら出来ずに去って行くものなど様々であるが、それぞれの心の中に彼女が大きな痕跡を残した―――尤も、本人は外を向いたまま寝ていたが。
「…様、アーシャ様?」
「ん、ふあ?カリナ?呼んだ?」
「呼びましたよ。次は外で魔法の実習らしいです。さあ、体操服に着替えていきましょう」
「めんどくさいね?」
「仕方ありません。学校ですからね。ほら、シエラ先生に怒られますよ」
「ダンジョンに行く実習なら頑張るのだけれどね」
「それは無理です。ほら!早く行きますよ!」
しぶしぶながら更衣室へ移動し、外へ出る。他の生徒はもう移動しているようだ。
着るのは『体操服』と呼ばれるものである。
半袖にハーフパンツであり、貴族の姫たるものはしたないとの声も聞こえたが、何代か前の勇者が頑として譲らなかったらしい。
『本当はブルマがよかった!半袖にハーフパンツすら許されないのならもう勇者なんか止めて地球に帰る』
と宣言して以来、このユニフォームが体操のときの『トラディショナルでクレバーな』格好と認定されたのだ。
『トラディショナルでクレバーな』とは件の勇者の言葉である。意味は現在でも解析中である。
着替えて外に出ると男女からの好奇の視線に晒される。ようだ。
私はこの服装に付いてはほとんど気にしていないのだが、カリナはその視線から私を守るように動く。気にしなければどうという事はないとは思うが、男性からの脂ぎった視線は本当に気持ち悪いものだ。
「さっさと授業終わらせて帰りたいなあ」
「まあまあ、アーシャ様そう言わずに」
「おや、アーシャ様。それでは手伝って頂けますか?」
「シエラ先生聞いてらしたのですか?よろしいですが、何を手伝えば?」
「お手本ですよ」
そういうとシエラ先生は土魔法と生物魔法の複合で、木製の人形を的として作り出した。
後ろには土で山を作ってある。弓の的なんかと同じような感じだ。
「はい、皆さんあの的にちゅうもーく。これからアーシャ様があそこへ魔法を打ち込んでくださいます。使うのは初級のファイアーボルトですが、それをある程度以上のレベルまで極めるとこうなるのだ、というところを見てくださいね」
ほう、中々のハードルの上げ方である。
一体私にどうしろと言うのか。
木の的だし消し炭にすればいいのか、それとも溶解させればいいのか、普通に貫通するだけでいいのか?もし大爆発を起こさせるのなら周囲がかなり危険だが。
「先生、どのくらいがよろしいですの?」
「見学している人が危なくない程度でお願いします」
「では……えい、ファイアーボルト」
少し悩んだ後でファイアーボルトを使う。
さっき先生が説明していたが、ファイアーボルトは初級の火魔法だ。
普通は火の玉を飛ばし、対象を炎に包む魔法だ。
技量が上がれば火の玉は通常大きくなり、燃焼範囲も増える。だが。
私はあえて火の玉の大きさを1cm程度に絞って頭部へ打ち込み、貫通させる。
目には見えない速度で飛ばされたそれは人形の頭部を貫通し、奥にある地面にめり込んだ。
地面の表面の土は硝子化が起こっている。人形は一拍遅れて発火し、今では炎上している。
「先生これでよろしかったでしょうか?」
「また制御が上手くなったようですね。流石はアーシャ様です。」
うへへ。褒めてもらっちゃった。それにしても猫を被るのは疲れるなあ




