第3話 入学式その2
魔力を使ってトレーニング……というより遊んでいたけど、話が長い長い。
生徒会長の次は地元の自治団体だとか騎士団だとか。
ほんっとどうでもいいなあ。
ますます退屈になってきたのでお手玉の数を増やす。
5個からはじめていたが、6個7個8個……20個を越えた所で学園長先生がプルプルしているのが目に入ったのでこのへんで止めようかな?そろそろ怒られそうだしね。
(アーシャちゃん。だめよ?)
(はーいママ)
ちょっと遅かった。怒られたので仕方なく魔力の塊を片付ける。お手玉の一つ一つから魔力を吸い出して、自分にもういちど吸収。出した分より吸収した分の方が少なくて効率が悪い。
でも思ったけど、困った時の魔力ポーションの代わりになるかもなあ。一応。
(いい子いい子。じ~っと我慢してたら今度ママが一緒に魔王領にあるカノープスのダンジョンに連れて行ってあげるわね)
(やった!ママ大好き!)
(ちょっと待って!僕は?)
(あなたはお仕事がんばってね。ウフフ)
(パパ!がんばってね!)
(そんなあ)
なんだかパパから悲壮な空気が出てきているが、あんまり気にしない。気にしない。
入学式のあとは各教室へ移動して、担任の教師からのありがたいお言葉や自己紹介なんかの時間だ。
クラスはSからEクラスまで分かれており、私のクラスは各国の王族や上級貴族が集うSクラスである。
別に王族やら貴族だからと贔屓されてSクラスになっているわけではない。
各国の王族や上級貴族の子弟はそれだけ教育をしっかりされている割合が高いというだけのことだ。
だが3年間の学園生活のうちで2年生になると早くも入れ替わりがかなり有り、3年生までずっとSクラスでいられるのは極少数らしい。ってなことをカリナが昨日言っていた。
私はあまりにも興味がなさ過ぎてすごくどうでもよかったのに、カリナが横で何回も言うから覚えてしまった。
そんなカリナは今も私の横に座っている。同級生・・・らしい。
「……ねえ、カリナって年誤魔化して」
「な・に・か おっしゃいましたか?アーシャ様?」
「何でもございませんわ。お、おほほほ」
「そうですわね。今後ともよろしくお願いいたしますわ」
(学園ではちゃんと猫かぶっていてくださいね)
(えー!)
おかしい。カリナは私が生まれたとき、10歳のはず。
カリナは10歳の時からメイドとして、私の側仕えとして一緒に成長してきた。いくらエルフで普通の種族より年をとらないとは言え、セーフなのか?15歳でみんな入学するところをカリナだけ25さ・・・げふんげふん。ダメだこれ以上はダメだ。隣が怖い。
ちなみに私はハイエルフ。
15歳のハイエルフは人間換算だと8~9歳程度らしい。人間は成長が早いなあ。
「先生がいらっしゃいましたよ」
カリナが言うとほぼ同時に音も無くドアが開いて先生が入ってくる。
「シエラ先生だ……」
「はい、アーシャ様。ご紹介いただいてありがとうございます。わたしがこのSクラスの担任になりましたシエラ・エ・ドライエデスです。種族はドライアドになります。よろしくお願いしますね」
シエラ先生はこちらを見ながらニッコリ微笑む。
「それでは皆さん自己紹介をして頂きましょうか。ではまずアーシャ様から」
ええっ!私から?めんどく……いえ、ナンデモナイデス。
シエラ先生からの鋭い視線の前に、私は瞬時にして素直で可愛いお嬢様モードになるのだ!
「わたくしはユグドラシル王国の第一王女、アイーシャリエル・エル・ラ・ユグドラシルと申します。種族はハイエルフです。皆様と共に学ぶこのような機会をいただけで光栄ですわ。よろしくお願い致しますね。」
そういって静かに着席する。いまさらだが、席は予め決められている。
こういうのも身分やら成績やらを加味して決めているんだろうなあ。先生方も大変そうなことで。
しっかし、猫をかぶるのって疲れるなあ。挨拶一つでこれだよ。
他のクラスメイトたちはドンドン自己紹介をしている。ぶっちゃけどうでもいいなあ。
ああ、こんなどうでもいいことは早く終わらせてダンジョンに行きたい。
課外実習とか早く始まらないかなあ。
「わたくしはユグドラシル王国のイラーシュ伯爵家の次女、カリナ・イル・ラ・イラーシュと申します。種族はエルフです。よろしくお願いしますね」
お、カリナだ。なんだかカリナも猫かぶってるなあ。
カリナはメイドと友人と姉を兼ねた様な存在だ。カリナの両親は私がお腹にいるときにまだ小さかったカリナを側仕えとして王城へ出し、そのまま奉公させている。
ところで、年のことは言わなくってもいいんだろうか?
「私はラウルーラ王国の・・・
「僕はリリーレン共和国の・・・
「俺はルーレウス皇国の・・・
「わたくしはレイランザ教国の・・・
「僕はローランド帝国の・・・
どうでもいいその他大勢の自己紹介が続いている。
この中で私の興味を引くのはシエラ先生とカリナと、あともう一人だけだ。
「私はシーレーン帝国の第3王女、ユリアンヌ・ル・ウンダラグネと申します。種族はセイレーンです。よろしくお願いいたします」
そう。彼女である。
セイレーンは水の精霊だけあって私の苦手な水魔法が非常に強力だ。
水魔法は攻撃に回復に日常生活にと汎用性がとっても高い。それにセイレーンの種族特有のスキルとして眠りや混乱の状態異常を齎すスキルを覚える。
さらにダンジョン探索には必須である水を簡単に補給できる。
勿論種族特性だけではない。彼女自身も魔力が今にもあふれ出そうとしているほど充実している。
素晴らしい逸材じゃないか。ぜひ仲良くしていただきたい。主に私のダンジョン生活のために!
まだそれほど力を蓄えているわけではないようだが、その身に宿す魔力の質からも潜在能力はかなり高そうだ。是非うまく育って欲しいものだ。
いや、うまく育ててみせる!この私が!
導入編という感じです。
登場人物を増やさないととは思うけど増やしすぎてもどうか。按配が難しいですね。
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