第21話 1回休み
ド派手おじさんはさっき一回見ただけで、それ以降は見当たらなかった。
変なおじさんだなあとは思ったけど、おじさんを探してストーキングするためにダンジョンに来たわけじゃないし、ボス部屋探索に戻る事にしよう。
今まで、プリンちゃんと探索し始めてからこんなことはなかったけど、プリンちゃんも何処にボスがいるのか分からないし、それどころかボス部屋の方角もよく分からないようだ。
ド派手おじさんを見かけてから何だかおかしい。
あのおじさんが変なことやってるのかなあ?
まあウロウロしてればボス部屋に当たるだろう。本来探索って言うのはそういうものだしね。
マッピングをちゃんとしながら、15層を隅々まで歩いていく。いつもよりモンスターの遭遇率も高いけど、コレはコレで楽しい。
そう思いながら蟷螂たちを撃破していく。いい練習にもなるしちょうどいいや。
フラフラと探索しているうちにまたモンスターの群れと遭遇した。
コレで何回目だろう。今度は蟷螂1クモ3だ。
水魔法を使ってくる蜘蛛に対してライトニングボルトを先制で打ち込み、そのまま流れで前にいた蟷螂を私が抑えている間にもう2体のクモをカリナとプリンちゃんが片付ける。
そして周りも心配なくなったので蟷螂の鎌を切り落として喉と頭を突いて倒した。
鎌は切り取れば一応売れるらしい。大したお金にはならないけど、対モンスター用じゃなくって草刈に使うと便利だとか。あんまり儲からないし、お城の庭のお手入れをしている庭師さんやメイドさんたちに持って帰ってプレゼントしてあげるのだ。
こういう一部の部位は切り落としてさくっとカバンに入れると消えない。不思議だなあ。
蟷螂は頭も喉もそれほど硬くないから槍でホイホイ突けて切れるから楽だ。
それにしても……
「ボス部屋ないねえ」
「そうですね。いつもは迷うことはありませんが、ナビがないとこんなに不便だったんだなと改めて感じます。」
(ごめんプル……)
「いや別にプリンちゃんが悪いわけじゃないじゃん?多分さっきの変なおじさんのせいだよ」
「そんなにおかしな方だったのですか?」
「そりゃあもう。あんな変なの見たことないってくらいだね」
青白いマジシャンがこんなところ(ダンジョン)でウロウロしてるんだぜ?
そりゃあ気にならないほうがおかしいでしょ?
まあそれを言っちゃ私も『肩の上にスライムを乗せた子供』がダンジョンでウロウロしているんだから傍目にはおかしいかもしれないけど。
おかしいかな?
「ねえカリナさん?私の格好っておかしいかしら?」
「えーっと、正直に申し上げて少しばかりおかしいかと……」
「マジか。何てこった……」
少し変かなとは思ってたけどやっぱりか。カリナのやつめ、ちょっとお嬢様っぽく聞いてみたけど誤魔化されてくれないし。
だめだ。私の格好に付いては気にしちゃダメだ。
あんまりそこに付いて深くは考えてはいけない。冒険者なんて強さを求めればいい。
プリンちゃんが肩に乗っているのは防御力を高めるためなのだ。
今日は連れてきてないしホントに出番が無いけど、抹茶をつれてきているときは両肩に乗せていた。
このあとスライムの数が増えたら頭に乗せたりするかも。細かいことは気にするべきじゃないな。うん。他人からの見た目を気にするくらいならおとなしく姫様をやってればいいのだ。
「……そこは気にしない方向で。ガンガン進もう」
「はい」
(行くプル)
やや震え声になりながらも進むことを選択する。
そうしていつもなら1日に付き一つの階層をあっさりクリアするが、今日はマッピングだけで時間切れになってしまった。
「時間ですね」
「まあしょうがないかあ」
(プル……)
しょうがない、今日のところはおとなしく帰ろうっと。
帰ってママに今日あったことを報告する。
いつも帰ってからは一応報告してるんだけど、今日は変な人を見たから早めに報告だ。
「ママー。今日はダンジョンに変なおじさんがいたよ?」
「ふうん?どんなおじさん?」
「青白い顔なのにね、すごい派手派手なスーツでおまけに真っ赤なステッキだったよ。ダンジョンに何しにきてたんだろうね?」
「派手なスーツに真っ赤なステッキ……ね。アーシャちゃん?明日からおかしな事があれば私を呼びなさい。分かったわね?」
「うん。ピンチの時も呼んじゃうね?」
「それは勿論。ホントに危なそうなら呼ばれなくっても行っちゃうわよ。フフ」
お話の後はみんなで夕飯。
ご飯を食べながらパパにここ数日のお話をする。
パパはまた外国で色々あったらしくって最近忙しい。
あちこちを飛び回ってなかなか一緒にご飯を食べる機会もないのだ。
私は順調にダンジョンを攻略している事。
ややドロップ運が悪い気がする事。
プリンちゃんの成長っぷりや、カリナが最近ますますおかしくなってきている事なんかを報告した。
パパは変なおじさんのところで一瞬変な顔になったけど、ニコニコしながら聞いてくれた。
『危ないおじさんには絶対ついて行っちゃだめだよ?』だって。
今日のご飯はみんなでい~っぱい食べて、美味しかったなあ。
3章ももうすぐ終わりです。
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