第9話 お試しで……
結局私は鍛冶場で短剣を2本と投げナイフ3本、ブーメラン1本と手裏剣3個作った。
投げナイフはいい。まあまあの出来だね。
よく刺さりそうだし、牽制用にもいい。
投げずにそのままナイフとして使うにはやや脆そう。使うなら刺突専用かな。
それから、林檎の皮をむいたり、ちょっとした細工にも使えそう。
手裏剣も庭でちょっと練習した感じではいい武器だ。
ナイフだと回転しちゃうと刺さらないからダメだけど、手裏剣は回転させると遠心力がついて攻撃力が上がる。うっかり投げる時に間違えないようにしないとなー。
でもノリで作ったブーメランは色々危ない。
刃をつけた方がきっと強い!いっぱいのモンスターを切り刻んで帰ってくるなんてカッコイイじゃないかと思った。
投げたあと帰ってくるように設計にしたので、敵に当たらなかった場合は刃がクルクル回りながら帰ってくる事になる。コレはどう考えても危険しかない。
帰ってきたブーメランをヒョイっと掴んでもう一回投げればすっごくカッコイイと思うが、敵に当たってないということは仕留めてないと言う事だ。
そうすると帰ってくるのは恐らくその投げつけた敵がこちらに向かってきて、戦っている最中だ。
うーん、危ないなんてもんじゃないなあ。
このブーメランは封印かな?
よし、いまからお試しに行こう!そうだそうしよう。
短剣を装備して、槍は置いていく。
「じゃあちょっくら行ってきまーす」
「今からですか?」
「うん。さっくりいってみよ?」
もうおやつの時間も過ぎている。
残りの自由時間はあんまり無いから1周軽く行くだけしか出来ないけどまあそれはいいだろう。
「いっくぞー!」
「がんばりましょう。」
短剣を両手持っていざ出撃。
一応慣れるために4層でホブゴブリンを何度かたおしたあと5層へ移動。
いざボス部屋へいくぞ!
もう慣れきった扉を開ける。
さーって今日の構成はっ?と
剣ホブ1鈍器ホブ1 弓ゴブ2魔法ゴブ1
あら珍しい。ホブゴブリン2体だ。今までに1回だけあったなあ。
「ホブ2だって。珍しいね」
「慣れない武器ですが大丈夫ですか?」
「いざとなったら魔法使うから大丈夫だよ」
「そうですね。では頑張ってください」
「まかせとけ!いっくぞー!」
2体並んでホブゴブリンがこちらに向かってくる。
綺麗に2対1になってしまう状況だ。ここでこそ投擲武器を!
手持ちのナイフを1本剣ホブに投げ、続けて投げナイフを2本剣ホブへ。
最初のナイフと投げナイフ1本は防がれたが、もう一本が腕に刺さって動きが止まる。
ここで鈍器持ちに向かってダッシュ。振り下ろしをかわして足を切る。
「フレアミサイル×2!」
弓ゴブ2体に魔法攻撃。
そして魔法ゴブのファイアボルトを短剣で弾いてお返しに手裏剣を食らえっ!
手首を使って回転を与えて手裏剣を投擲。
スコーン!っと魔法ゴブの額に刺さる。
よし、後はホブ2体だけだ!
足を切ったほうから少し距離をとって、元気な方の剣ホブに秘蔵のブーメランを投げる。
試しに投げてみたブーメランだけど、剣ホブはブーメランをあっさりと避けてこっちに近づいてくる。この展開が一番いやな展開じゃないか!
やめてくれよもう!
帰ってくるブーメランとこっちに近づいてくる剣ホブ。
当然のようにブーメランは剣ホブに刺さらずに私のほうへと向かってくるのだ。
「あぶねっ!」
あわててブーメランの射線から逃げ、剣ホブのほうへ向き直る。
もう振りかぶっている剣ホブ。
やばばばば!
「エレメンタルアロー!」
フォローのために弓を装備していたカリナの手元から、一本の矢が放たれ、剣ホブの頭に刺さった。
そのまま倒れる剣ホブ。
「ごめんカリナ、ありがと!」
「いえ、アーシャ様!まだ鈍器持ちがいますよ!」
鈍器持ちのほうへと駆け寄る。
牽制に最後の投げナイフを投げ、鈍器を使って弾いた所へ狙い済ました一撃!
首を刎ねて終わった。
「ふいー。手こずっちゃった。カリナありがとう。」
「いいのですよアーシャ様。油断禁物ですよ」
「全部ブーメランのせいだよ。何でこんなの作っちゃったんだろうなあ」
「アーシャ様がついでに作ってみようって言い出したんじゃないですか」
まあ、それはそうなんだけど。シュバババッと薙ぎ払うブーメランとかかっこいいじゃないか。そう思ったんだけど、実際のところは危ない刃が飛び回るだけの武器だった。
しかも当たらなかった場合は自分めがけて襲ってくるのだ。危ないなんてもんじゃない。
コレを戦いながら自分で捕まえてもう一回投げてできるってどういう人なんだろ?
無理無理。そんなん絶対無理だよ。
さあ、投げたナイフを回収して帰りましょうかねえ。
「アーシャ様、箱出てますよ」
「ああほんとだ。ボス部屋のゴミ箱が出てる」
一見宝箱だけど最近こいつが全く信用できてない。
たまに矢が跳んでくる時もあるし、あって魔鉄、はずれだと魔石がコロコロっと出てくるだけなのだ。
魔鉄で喜んでた時代が懐かしいなあ。
槍がないからもうそのままちょっと横からぱかっとあけちゃう。どうせあっても矢くらいだし。
中には魔石とあんまり変わらない大きさの玉が入ってた。新手のゴミか?
「おおおお!」
「お?」
「おめでとうございます!転移珠ですよそれ!」
「これが?ほんとに!?」
「いやあ、おめでとうございます!出るかなーってちょっと思ってたんですよ!武器変えたり、気分変えて違う事したりしたらポロッと欲しいもの出たりするんですよね!」
「ははは…」
嬉しいけどなんだか複雑。あんなに頑張って槍で頑張ってたのに、短剣で来てみたらあっさり出た。
しかも夕飯前のお試しの1回だけで。
いやすごく嬉しいんだけどね。ちょっとね。
槍の気持ちを考えると複雑と言うかさあ。
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