第5話 転移珠
5階層のボスを倒したらそこには宝箱のドロップがあった。
ホブゴブリンを倒したところに宝箱が置いてある。
正直ビビリながら槍の先でつついて開けることに。
「お、押すなよカリナ!?」
「押しませんよ。正面からじゃなくて横からの方がいいですよ」
「そっか。こうかな??」
横から槍で持ち上げる。
箱はパカッと開いたけど、特に煙も出ないし矢も飛ばなかった。
罠なんかはなかったようだ。ほっとしたわー……ハッ!
「びびってないよ!?」
「はいはいそうですね。普通警戒するものですから別にビビっても問題ないと思いますよ。」
箱の中にあったのは魔鉄だ。塊で500gくらいあるかな??
「ふいー、緊張した。でもさ、初めてのまともなドロップだね。やったね!」
「そうですね。深層に行けばミスリルやらオリハルコンやらが出るといいますし、回収したドロップでどんどん武器を強くしていく!これぞダンジョンですね!」
「そう、その通りだな!カリナいい事言うじゃん。いやあ楽しいなあ。」
「楽しくなってきたところでそろそろ時間なので帰りましょう」
「え!?ちょ!これからってとこじゃない???」
「残念ですが王妃様との約束です。ほら」
そう言ってショックを受ける私に腕につけた魔道具を見せてくれる。
いつどこにいても現在の時間が分かると言うすぐれものだ。高級メイドの必需品でもある。
確かにもう夕方ですねえ……
「とほほ。せっかくここまで来たのにまた1層からかあ」
「良いではありませんか。マッピングも出来たことですし、ボス部屋に何度も通えばもっといいドロップがあるかもしれませんよ」
「そういうことにするかあ。あーあ、私も転移魔法が欲しいなあ」
「ダンジョン内ならそのうち転移珠が出る可能性もありますよ」
「そうだね。ボスを倒したら出るって言うし」
転移珠とは望んだ階層へと移動できるようになる魔道具のことだ。
ボス部屋をクリアした後に宝箱が出て、宝箱からのドロップでたまに出るらしい。
転移珠を使えば以後は入り口からそこへ転移する事ができるのだ。
そう。ダンジョン内だとキャンプしたりしなくてもいいのだ。
勿論平地のモンスターを狩ったりする場合は違う。
普通に目的地まで行って、そこの近くの村に止めてもらったり場合によっては野宿したりする。
そして目的を果たしたら徒歩や馬車なんかで帰る。
そういう冒険も正直してみたい。
でも私はダンジョンに行かないといけないのだ。
何で?さあ?何となくだなあ。
しかし、今日は5層攻略で時間がなくなって帰るようになった。
今後頑張って早く来てもそこまでタイムは縮まらないだろう。
精々10階くらいか。
こうなったら…
「こうなったら毎日5階層まで降りて、ボス倒して宝箱で珠狙って!出なかったら戻って入りなおしてもう一回5階層に行って……ってやろうよ!」
「本格的にダンジョンを攻略するつもりのある冒険者は皆もっているらしいですよ?他のダンジョンでも登録すれば使えるようですし」
「登録ってどうやるの?」
「さあ?一回行けばそれで登録完了だと聞いていますが、私も他のダンジョンでは登録しておりせんのでちなみにコレが転移珠です」
「おおー!」
カリナは持ってんだな。くそう。
転移珠は緑に輝くこぶし大の宝石のようだ。
キラキラしてきれいだけど、全く同じ形で宝箱から量産されるために装飾品としての値段はつかないらしい。だって飾りに使ってたら一目で分かるんだもん。
『あら、あの奥様転移珠使ってますわよ!?』
『んまあ。よくもあんな安物を!オホホホホ』
『あそこのお家にはアレくらいがお似合いですわねオーッホッホッホ』
ってな感じで馬鹿にされちゃうんだって。
でもそんな転移珠すら私は持ってない。カリナは持ってるのに。くやしい。ぐぬぬ。
でも安いんだから買ってもいいかな?
「買うって手もあるんだよね?」
「結構ホイホイ出ますが1万ゼニー程度はしますよ。少し頑張れば出るのでもったいなくないですか?」
1万ゼニーかあ。まあいいか。自力で出そう。
しかしカリナにまたしても先を越された。
まあ先に冒険者になってるんだし、年も上だし仕方ない。そういう事にしよう。くやしいなあ。どうして私はもっと早く産まれて、もっと大きくって、もっと強くないのか。
―――もっと私に力があればあんな事には……
あんな事?ってなんだ?
良くわかんないなあ。
しっかし転移珠は私のような日帰り冒険者には必須のアイテムのようだな。
お昼過ぎから夕飯までに1層から始めてダンジョン攻略しろって言われても、どうやっても間に合わないじゃん。
でも転移珠があれば明日は6階層から、あさっては7階層からとどんどん先に先に進んでいける。
良いではないか!良いではないか!ぐっへっへ
「はいはい、とりあえずはさくっと帰りましょう。」
「はーい。明日から転移珠狙いだね!」
「そうですね。頑張りましょう」
(頑張るプル!)
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