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深窓の令嬢はダンジョンに狂う  作者: 吉都 五日
第2章 幼女はスライム育成の夢を見る
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第21話 晩餐会その2

席に座って落ち着いたらそれを契機に色んな人たちが私とママの所にご挨拶に来てくれた。


主だったところは魔王国のエルメロイ公爵にシュバルツ伯爵、妖精の国の女王イルリーシャ様、それに人間の国ローレル王国のアリトメロル外務大臣にドワーフの国ドヴェルグ王国のザルクサリル大使、あんたら戦争してなかったっけ?何でここにいるの?


他にも一杯きてくれた。

エンヤさんの予想通りの人がほとんどで水晶で顔を見た事がある、気がする。

名乗られた時にその名前の響きを聞いた事がある?そんな人が一杯だった。

エンヤさんすごいなあと思いつつ、私はただニコニコ顔でご挨拶するだけ。


それだけでみんなご機嫌になってくれるんだから、もうこれでいいや。

名前なんて覚えなくってよかったんだ。

あの時間と努力は無駄なものだったのかもと思うと正直悲しいけど。



「エンヤが泣くわよ。ヤマはほとんど全部当たってたじゃないのよ。もうちょっと覚える努力をしなさいよ」


「無理。もうちょっとね、特殊な魔法が使えるとか言ってくれれば覚えるんだけどなあ」


「ああ、そういうアプローチをすればよかったのね。イルリーシャ女王は精霊魔法の使い手で乗騎は白輝竜よ。ほら覚えられたでしょ?」


「にゃんと……そういうのもっと早く言ってくれればゆっくりお話できたのに……くそう!」



そういう情報が欲しかったんだよ!顔と名前だけポイポイ出されて覚えられるわけないじゃない。

試しに実験させたカリナだって10分持たずに寝てたよ!あのポンコツめ!



「まあ、宴もたけなわって奴ね。そろそろダンスが始まるわ。」



気がついたらママはパーティーのご飯をもしゃもしゃ食べながら話している。

そういうのマナー的には完全にアウトなんだけど?おかしいな?あれ?



「私はもういいのよ。みんなにこうだってバレてるし。アーシャちゃんは頑張らないとね!」


「お母様?それはちょっとおかしいのでは?」


「大人とは卑怯なものなのだよ」



私は仕方なくお上品に気をつけながらお料理をいただく。

全く食べないのも失礼だし、ガツガツ食べるのも論外らしい。難しいなあ。


お上品に音を立てずに。

座って食べる席は各自に用意されているが、結構砕けた感じみたいでみんなあっちこっちフラフラしながら飲んで食べてしてる。

こんな感じで良いならあんまりマナー気にしなくってよかったと思うんだけど。


でもせっかく覚えたんだから頑張ろう。

もう熟練度が上がったのか、あんまり発光してない纏いをナイフとフォークまで伸ばし、出来るだけスムーズな動作を心がける。前菜もスープもお肉もなかなかいい。さすがは晩餐会で出す料理だ。

豪華だけど重過ぎないラインで仕上げてきてある。



「美味しいですね、お母様」


「そうね。ウチのコックといい勝負だわ。なかなかやるわねえ。所でアーシャちゃん、パパがダンスをアーシャちゃんと踊りたいみたいよ?」


「ええ?ちょっと恥ずかしいです。お母様」


「頑張りなさいよ。ほらこっち見てアピールしてるわよ」



パパはこっちをじーーーっと見てる。

これはママと踊りたいんじゃないの?



「お母様が踊られればよいかと思いますが」


「ママはパスよ。頑張ってらっしゃい」



そう言われても嫌だなあと思ってると、我慢できなくなったのかパパがこっちへ来た。



「アーシャちゃん、パパと一緒に踊ってくれないかな」



パパは姫君に傅く騎士のようなポーズで手を差し出し、私を誘う。

うーん、嫌だけど流石にこれは断りづらいなあ。



「1曲だけですよ、お父様。あと、他の人は断ってくださいね」


「勿論だよ。ドコの馬の骨か分からないような奴にアーシャちゃんを触らせる訳がないだろう?」


「あ、はい」



パパはぶれないなあ。私とパパはホールの中央へ移動し、ダンスを踊る。


パパは踊り慣れているのでそのリードに従ってできるだけ滑らかに、スムーズに。


エンヤさんが見せてくれた作法は全てに通じている。


食事にダンスに剣に。魔法だって同じだ。要らない力を抜いて、必要なところで少しだけ。


後は動きを切らせないように、流れを壊さないように。―――流水のように。




私はパパと一体になる事だけを考えて踊った。

途中からはそれすら考えなくなったけど。




だんだん楽しくなってきたなと思ったらあっという間に曲が終わり、ダンスが終わった。


気が付くと周囲は静まり返っていた。

その事に気が付いてあれっ?と思ったら急に大歓声が起こった。

私は何が起こったのかよく理解できないままパパにエスコートされてママとカリナのところへと帰った。



「すごかったですあーじゃざまあああ!記録水晶持ってきておいてよかったです!シエラ先生に自慢しないと!はあああん!」



カリナがまーたおかしくなってる。ホントに大丈夫かなあ?



「おかえり。すごく上手だったわよアーシャちゃん」


「ただいま帰りましたお母様。思ったより楽しかったですよ」


「アーシャちゃん、とっても上手くなってたよ。途中でママと踊ってるみたいに錯覚しちゃった」


「ほんと?えへへ」


「本当さ。ああ、他のやつが言い寄ってこないか心配だなあ。ちょっと威嚇してくるね!」



威嚇って。犬か何かかな?

パパは行く所行く所で声をかけられ、自慢げに胸をそらしている。どやあああああ!って顔だね


パパが上手く断ってくれたみたいで、他にダンスの誘いはなかった。

私も後は色々話しかけられても適当にニコニコしているだけで乗り切ったので思ったより楽だった。

こうして初めての晩餐会は終了したのだ。

晩餐会でのダンスのシーンを書こうと思ったのがこの章を書き始めたきっかけでした。

ところが気がついたらこんなに寄り道をしまくり。

こいつはダンジョンに狂う気があるのかと……

2章も次で終わりです。

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