第3話 パパはお留守番
どうも皆さんこんにちわ。
とーってもかわいいアーシャちゃん9歳でーす。
ハイエルフの9歳は人間で言うところの6歳くらいらしいです。ってシエラ先生が言っていました。
シエラ先生は私の家庭教師です。ウチの国には珍しいドライアドさんで、本当は軍のえらい人だったらしいのですが、私のためにパパが家庭教師に引き抜いたしたらしいです。5歳になる前の子供に軍のえらい人を家庭教師に引き抜いたりして大丈夫なんでしょうか?
大丈夫です。パパは国王様だから黒いものも白と言えば白になるらしいです。
でもママが黒だよと言えばあっさり黒になるらしいです。パパはそれは仕方ない事なんだよっていつも言っています。確かにママには誰も勝てないと思います。
ところで、わたしは今とってもダンジョンに行きたいんです。
まあ今、というか5歳の誕生日からずーっとだけども。
というわけで家庭教師のシエラ先生にいつものおねだり作戦を開始だ!
「シエラ先生ダンジョンに行きたいよぉ」
「アーシャ様はまだダメです。早すぎますよ!」
「大丈夫だって。本で見たけど入り口近くにいるスライムとかゴブリンとかどう見ても弱そうだよ?」
「どう見ても弱そうですし、実際弱いですけど。でも、そう思って入った人から死んでいきますよ。アーシャ様に何かあったら国王様も王妃様も悲しむと思いませんか?」
「それは……そうです」
「そうでしょう、そうでしょう。もう少し大きくなってからにしましょうね?」
「むむむ。は~い」
どう考えても私はスライムにやられるほど弱くないんだけど!
そう思いながら午前中にはシエラ先生の授業を受け、午後からはカリナと遊ぶという日々を送る。
そして今日も午前の授業が終わり、お昼ご飯の後でカリナと一緒に街にお出かけする。
この午前に授業、午後にお出かけというサイクルはもう2年くらい続いている。5歳の誕生日が終わってから外出が許されるようになったのだ。カリナ同伴で、と言う条件はあるけど。
お城の玄関を出て、城門の方へと歩く。
王城の正門にはいつもの警備のおじさんが居る。5人くらいで交代でやってるみたいだけど、みんな私達が通ると嬉しそうにニコニコしてくれるから私もニッコニコになる。
警備のおじさん達に手を振って私達は門の外に出る。門を出るときは警備のおじさん達は私に対して目礼をして見送ってくれているのだ。そのみんなに見送ってもらって私たちはお城を出るわけだけれども、私達が出て行く門は正門。正門とは反対側に裏門があり、そちらは普段はあんまり使わない。私も裏門からはまだ出た事がないんだよねー。裏門の方も街があって楽しそうなんだけど、裏の方には冒険者ギルドやダンジョンが無いからなあ。
お城の外に出ると、大きな通りがあり、両側にはいろんなお店が出ている。
ここは王都のいちばん大きな中央通りだ。高そうな服屋さんに宝石屋さんが並び、その奥に行く道の方には劇場や闘技場なんかがあるらしい。
それから中央通りをもう少し進むとお魚屋さんにお肉屋さん、八百屋さんなんかの食料品のお店がある。その次にあるのは武器屋さん防具屋さんと道具屋さん、魔石屋さんに素材屋さん、そしてそのさらに先にある大きな建物が冒険者ギルドだ。
そして冒険者ギルドを右手に見ながらすこし先に進むとユグドラシルがあり、ユグドラシルダンジョン入り口の壁とそれを監視する建物がある。
王都は上から見ると碁盤の目のような形をしているらしい。その中央やや北側に王城があり、南の端にユグドラシルがある。ユグドラシルは町の中心ではないのだ。そして中央通りはその碁盤の目の一番太い通りになっている。
今日も私達の行き先は冒険者ギルドだ。今はまだユグドラシルのダンジョンには行かない。ママから禁止されちゃってるから行きたくってもいけないのだ。
ユグドラシルには世界でも最高難度と呼ばれているユグドラシルダンジョンがある。
ユグドラシルダンジョンは通称『神々のダンジョン』とも呼ばれている。神々がダンジョンをクリアをさせないようにするために難しくしたんじゃないかと思うような難易度らしい。なんでも世界で一番攻略難易度が高いんだと。
そしてそのダンジョンに挑む人材を育成する冒険者ギルド、はユグドラシルダンジョンの入り口がすぐそこに見える所に構えられている木造の大きな建物だ。町の中でも一、二を争う大きさで、剣を持った勇者と弓と杖をそれぞれ持った2人の人物の像が飾られている。
この3人が大昔の勇者パーティーらしい。彼らが冒険者ギルドの元になった組織を作ったとか。
冒険者ギルドはダンジョン攻略や場合によっては魔王討伐などの様々な冒険に対する支援を行うことを名目として作られている。だから内部には冒険者さんが利用するための色んなお店や酒場なんかもある。
私も中に入ってお店を覗いたことはあるし、食堂の方でご飯を食べてみたこともある。お城のご飯とは大分違ったけどこれはこれですごく美味しい。
武器や防具のお店も覗いたことがある。
シエラ先生の持ってた装備やママの持ってる剣のほうが強そうだったなーとは思うけど、ここに有る武器もなかなか捨てたもんじゃなさそうだった。特に武器屋さんの奥に飾ってあった『覇龍の大剣』なんかものすごい迫力だった。この剣を使ってドラゴンを倒した人がいるそうで、ドラゴンの血を吸って更に武器も進化したそうだ。
私がお願いしても武器屋のおじさんは危ないからって言って『覇龍の大剣』には触らせてもらえなかった。でも、あの剣はすごい。遠くから見ても濃厚な魔力が宿っているのが普通に見て分かるほどだった。まあ、残念ながら今の私には重くて持てそうに無かったけど。
あとは防具屋さんに飾ってあった『不死者王のローブ』もすごかった。これも恐ろしいほどの魔力が宿っている事が一目で分かる品だ。魔法攻撃に対する耐性も状態異常体制もすごく高いらしい。
でもそれ以上に禍々しさが半端じゃなくてとても着たいとは思わなかったけど。
私が思ったのと同じ感想を持つ人がほとんどのようで、上記の2種類の装備はいつも武器屋さんと防具屋さんのオブジェにしかなっていないらしい。
でも、普通の装備も中々いいのが揃えられていると思う。店頭にあるコンポジットボウはどう見ても良い品だったし、聖属性付与のかかった破邪の剣もすばらしい一品だった。あのあたりは体が大きくなったら使えそう。むしろ今からでもちょっと欲しい。今の私じゃ剣と言っても包丁くらいのサイズじゃないと振れないけど。
冒険者たちはここのお店で武器や防具、それに回復アイテムに食料なんかを揃え、ダンジョンに潜ったりダンジョンから溢れた魔物と戦う。そう、この王都は神々のダンジョンからあふれ出してくる魔物と戦うための、『防衛のための都』という側面もある。
まずはダンジョン内部で、ダンジョンから溢れた場合はギルドの建物を拠点にユグドラシルダンジョンを囲う壁の中で防衛し、その間に王城の城壁へと避難する。それからさらに街でゲリラ戦を行い、それでもだめな場合は王城の城壁を使って防衛線を行う。そしてその間に避難民は裏門から避難する、という何重にもの備えをしているのだ。
ユグドラシルダンジョンはマメに掃除をしてないと時々モンスターが溢れてきちゃうダメな子だ。だから防衛計画はかなり厳重に立てられているらしい。今までも王城の城壁まで攻められたことはあるが、城壁を落とされたことは一度も無いらしい。中央通りにもまっすぐな通りのようだがさまざまな仕掛けがあるらしい。私にはただの道に見えるけども。
そんなユグドラシルダンジョンから出現するモンスターはすごく強い。だからそれを討伐する冒険者はすごく強い。当然だよね?でもどうみても・・・・・・
「いつ見ても私より弱い人いるよねえ?」
「それはそうですけど。やっぱり時間が悪いんじゃないですか?昼過ぎとか頑張ってる人たちはダンジョンに行ってると思いますよ?それに、きっとアーシャ様がダンジョンに潜ると罠の処理なんかで失敗したりしちゃうんじゃないですか?それで眠っちゃって全滅とか、毒になっちゃうとか。」
「罠かあ。罠探知とか出来るようになってよカリナぁ」
「アーシャ様がお望みなら覚えるのはやぶさかではありませんが・・・・・・私もダンジョンに入る前提なのですね?」
「もちろんだよ。いいでしょうー?」
「もちろん、アーシャ様の頼みとあれば私は嫌ではありません。ですが私達2人だけでは厳しいのではないでしょうか?他のメンバーも探さないと」
「そうだねえ。ママとシエラ先生は確定でいいとして。」
ママは当然だ。難しいダンジョンへ行く時なんか、むしろ置いていったら怒るだろう。
「王妃様は確かに置いていくと拗ねそうですね。国王様は……」
「パパはお留守番だね。しょうがないね。」
パパは忙しい。仮にも国王様が子連れでダンジョンで遊ぶなんてどう考えてもダメだ。
別に含みがあるわけではない。だって、王様がダンジョン探索するなんて有りえないよね?
門番のおじさんを連れて行く方が現実的でしょ?
町並みの説明回です。書くのはすごく時間がかかるけど、読む側だとこういうのってあんまりちゃんと読まないですよね。自分も大体読み飛ばします。後はギルドのランクがどうとかとか通貨がどうとかのあたりも読み飛ばしちゃいます。
というわけで面倒なところは読み飛ばしちゃってください