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深窓の令嬢はダンジョンに狂う  作者: 吉都 五日
第5章 少女は一流冒険者になる
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第41話 温泉回?

59層での探索は順調に進み始めた。


最初は水中なんてマジでどうしようもないと思ってたけど、『纏い』の応用で自分の周りをほんの少しだけいつもの空間に維持すればいいのだ。そうすると地上と殆ど変わりなく動ける。

魔法も魔力もいつもよりちょっと消費が多いだけであんまり変わらない。


これはセイレーンの奥義のようなものだったみたいで、普段から水中に行くことが多いユリアンヌちゃんは自然と出来てたんだって。教えてくれてもと思ったけど、教えても伝わらないことが多くて、そのうちに奥義になって他の種族には言わないように!ってなったみたいだ。



というワケで私の掴んだコツを二人に伝えたけど、カリナとエルさんはやっぱり苦労してふわふわしている。なかなか難しいみたいだなあ。


「というかアーシャ様の順応が早すぎるのですよ」


とカリナが言えば、


「真似してみたけど魔力の消費が多すぎるじゃない。私には無理よ」


ってエルさんも。私もそう言えばいつもより疲れやすいね。

でもユリアンヌちゃんは水と相性がいいから燃費もいいんだって。変身したらなおさらいいって。

水中を跳ぶように泳ぎながら進んでいる。ずるいなあ。



その後は順調に探索は進み、60層への階段が見えた。例によって階段の途中でもどることにするのだ。この次、最深部もこの分だと水中戦だろうし、帰って休憩してからにしないと。








宿へ戻ってきた。

水中での戦いは体もすごく重くって、いつもよりだいぶ疲れてしまった気がする。

体がなんだかとってもだるい。水中にいるときにはあんまり意識しなかったけど、帰ってきたらすごくそれを感じる。ダンジョン出口のすぐ横に立っているギルドの建物の一室を借りて着替えをして、それから宿に帰ったんだけどダンジョンから出たらみんながこっちを見ていた。


どうやらザカンさんの作った水着が色々注目を集めちゃったみたいだ。いろんな意味で刺激的だったからなあ。特にユリアンヌちゃんだ。あんなにけしからんものを隠していたなんて!

明日から気をつけないとなあ。


それにしても、ダンジョン最下層付近のことだけど。

あそこに出現する影のようなモンスターたちは、今の所ものすごく強いというわけではない。


『敵がすごく強い』って感じはしないんだけど、水中にいるせいで自分の能力が全部下がっているように感じるので戦いにくいったらない。得意な属性も封じられているようなものだし、スピードも力も遅い。相手の攻撃も地上のモンスターよりゆっくりだとは思うけど、こちらも遅いから避けられないのだ。

攻撃がくることが分かっていても避けられない、そんな展開がすごく多かった。


でも水中ならではということはそれ以外にもある。

体当たりや薙ぎ払いで吹き飛ばされて床に叩きつけられるとか、打ち上げられて追撃を喰らう、という心配がないのだ。


さっきだって爪の薙ぎ払い攻撃を盾で受けたんだけど、地上なら吹き飛ばされそうな一撃も水の中で『ぼわん』ってなっただけだったのだ。ダメージも大したことはない。

だからそういう攻撃にあんまり気をつけなくってもいい、そしてその分だけまた違った戦い方もできる。今までにない戦い方ができて楽しい部分も沢山あるのだ。



いいほうにも悪いほうにも働く水、これを如何に味方につけるかが勝負の分かれ目になる。

そう考えている。

んで具体的にどうやるか?そんなの真っ白だよ!



「ねえユリアンヌちゃん。水中での戦いなんだけどもっとコツみたいなのない?」


「コツですか?うーん。私は種族のお陰でしょうか、全然苦にならないので……」


「そうだなあ。いっそのことユリアンヌちゃんみたいにヒレを付けて泳ぐのもアリかもなあ?」


「ああ、人魚形態のことですね?……えいっ」



可愛い掛け声とともに『ぼふん』と不思議な煙が。

そこに現れたのは足が魚みたいになったユリアンヌちゃんだ。


水中でもカッコいいなあと思ってたけど、なんというか改めて見るとすごくかわいい!



「うわあかわいい!いいなあ!」


「かわいいですか?そうですか?えへへ、よっと。」



もう一度『ぼふん』と煙が。

そして元に戻ったユリアンヌちゃん。ああ……



「ああ、人魚が…」


「済みませんアーシャ様。陸上だとすごく疲れるのですよ」


「なるほど。人魚になるとどうなるの?」


「人魚状態だと水中への適応力がすごく上がります。水魔法の適正も上がりますし水中でもすごく楽なのですが、逆に陸上だとものすごく燃費が悪くなってしまいます。疲れちゃうし魔力が駄々漏れになるから困るんですよね……」


「そうなのかあ」



何事にもいい点わるい点はあるものだ。

アレを応用したいけどさすがに無理だろうな。



うーん、という事は出来るだけ基本に戻ってしっかり『纏い』をするのがいちばんいいのかな。

いつもより分厚く、体から少し離す。そうすれば大丈夫のはず。



「どこかで練習したいなあ」


(温泉を深くして練習したらどうプルか?)


「それだ!試してみよっと。いつでも練習できるし誰にも迷惑かけないし、ナイスだね!」



良いねえってことになって4人で『アーシャパラダイス』へ。

温泉を深くする……深く……深く!


「どっせいいいいい!」


スコンと魔力が抜け、世界の改変を感じる。

これで大丈夫なはず……と思ったら水面から不思議な泡がボゴボゴボゴォッ!?


……ザッパーン!「ギニャアアア!グルニャーゴ!ブシュー、ブシュー!」


「あ、ココアちゃんいたんだ?しかもすごい怒ってる」


「よく見ないでいきなりやるからですよ」



温泉の底からココアちゃんがズバーンっとジャンプして現れた。

しかもすごく怒ってら。てへへ。


「イギニャアアゴ!ゴルニャー!」

「ごめんごめんって。そんなに怒らなくてもいいじゃんか」


どうも平和に温泉を楽しんでたら突然底が抜けたみたいになって深い水中に放り出されたんだって。

しかもめっちゃ熱いし上下もわかんないしで大変だったみたい。



((ぷるぷる~))


「あ、みんな入ってたんだ?」



ミルクちゃんたちも続々と出てくる。でもこっちは別に怒ったりはしてない。むしろご機嫌だね!



(遊ぶ所が増えて喜んでるみたいプル)


「スライムちゃん達にとってはそういうものなのかあ。」


「フシャー!にゃにゃにゃー!」


(いきなり何するんじゃぼけー!って怒ってるプル)


「うん、それはなんとなく分かった。ごめんねココアちゃん?」



タオルでふきふきして風魔法と火魔法を上手く使って乾かす。

ママ直伝ドライヤー魔法はいつも便利だ。

さあ、機嫌の治ったココアちゃんは焼肉ゾーンに放置して、練習開始だ!




水中呼吸をかけてもらった私達は温泉にザップーンと浸かる。浸かるといっても全身思い切りである。水面は頭の遥か上のほう、3mくらいあるかな?



「とりあえずさっきの復習だね」


「『纏い』ですよね。全身に纏う魔力を多くするんでしたっけ?改めて言われると難しいような」


「またエンヤさんに特訓してもらえば?」



と私がニヤニヤしながら言うと、


「それは是非勘弁していただきたいですね……むしろ姫様こそ、この間の晩餐会で会われた方の名前は覚えられたので?エンヤ様にまたお願いいたしますか?」


「それはいいです…」



カリナはすばやく切り返してきた。またあの地獄のしごきを体験したい?そんなはずないでしょうが!おー、こわいこわい。まあ修行に戻ろう。


そう思ってエルさんたちのほうを見ると、すごく頑張ってるみたい。エルさんは目に見えるくらいに強力な『纏い』で自分の場を形成している。



「うーん。こう??かなあ?疲れるなあ」


「そうです、そんな感じですよ。自分の支配する世界を広げるような感じです」



というかもうバッチリなんじゃないか。

後はそのまま維持して動けるかどうかだけど。でもうまいこと言うなー



「自分の支配する世界かあ。ユリアンヌちゃん上手いこと言うなあ」


「そうですか?ありがとうございます!アーシャ様に褒められて嬉しいです!思い起こせば私とアーシャ様が……」



やっべまた始まった。というか私がスイッチ押してしまったんだな?

エルさんとカリナもやばいって顔だ。


「さ、さあ、カリナもエルさんも頑張ってみよ」


「「は、はい!」」


スイッチの入ってブツブツいってるユリアンヌちゃんはもう先生としては使い物にならない。

とりあえずカリナとエルさんはなんとかかんとか水中でも動き回れるようになってきた。

でも燃費が悪くて10分くらいしか持たないみたい。


ということで普通のときはこの『纏い』の拡大は行わずに、危ない時だけ使って後はダラダラいくという戦法を採用することにした。



「よし、命名『ヤる時は殺る!の術』だ!」


「なんですかその投げやりなネーミングは」


「いいんだよ!文句ある?」


「いえ全く。アーシャ様が決めたお名前に反対するワケがありませんわ。思えば……」


「が、がんばるぞー!」


「「お、おー!」」


これで今日の私達の特訓は終わった。でも今回も最後までしまりが無かった。

温泉に入って修行する回

略して『温泉回』!!!

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