第38話 いえ~い!
「知らない天井だ!」
勇者の間で『一度は言ってみたかった台詞』の上位にランキングされている台詞だ。
でもこうなんと言うか。こんなきれいな青空を指して言う言葉じゃあないとは思う気はするんだ。
足から水魔法を吹き出して、私はそのまま水面の上空に浮かぶことが出来た。上空といっても3mくらいの所だけど。そして私は足から出せるなら全身から出してもいけるやろと思ってあらゆる所から水魔法を出してみることにした。
なーんだ簡単にできるじゃん。
肩から、ヒジから、掌から。そして後頭部から、髪から、腰から、踵から。
そうすればまっすぐ上を向いて寝たまま浮いていられるのだ。こりゃあいいとぼんやりゆらゆら浮いているとだんだん眠くなってきて……気が付いたらすっかり寝ていたみたいだ。
(…聞こえ……プル…?)
『んあ?呼んだ?……じゅる』
(あ、やっと通じたプル!ずっと呼びかけてたのに遮断してたプル!もしかして寝てたプルか!?)
『や、やだなあ。そんな訳ないじゃないっすか。おきてたプルっすよ!』
(怪しいことこの上なしプル。よだれ啜った音もしてたし……はあ、とりあえず無事で良かったプル。空に向かって花火でも打ち上げて欲しいプル)
『あいー』
ダンジョンの内部とはいえ、晴れたきれいな青空だ。
こんな真昼間から花火を打ち上げてもあんまり見えないんじゃないか。まあそんなことはどうでもいいのかな?折角のリクエストだし、精々きれいな花火を打ち上げてやろうじゃないか。
「む~~~ん」
気合を込めて魔力を集中させる。イメージは大きくてカラフルな花火だ。
「せいやっ!」
右腕から思いっきり魔力を放出する。
しかもひゅ~~~~っという効果音も付いているのだ。どういう風に鳴っているのかは不明だ!
ドォーーーン!……バラバラバラ……
花火といえばやっぱしだれ柳でしょ!
バーンっと開いてからのぱらぱら~っと散るような花火。これぞ至高!
(はあ、夜に見たかったプルねえ。まあとりあえず見つけたプル。そっち行くから待ってて欲しいプル)
『はーい。浮いとくねー』
(浮く?うーん、分かったプル。)
私は今大体水面から10mくらいのところで浮いている。
だって下を見るとサメやらワニやらいっぱいウヨウヨなんだもん。ああ、これも言っとかなきゃ。
『サメとかいっぱいいるからこっそり来てね。プリンちゃんだけでさくっと』
(分かったプル。5分もかからないと思うプル)
『はーい。』
待つ間は暇なので上空からペチペチと土弾で狙撃する。
狙撃なんていうほどそんなに上等なものじゃない。なんせ狙わなくっても当たるくらい密集しているのだ。
ああ、今こそ雷魔法を使えばいいのか。
「ライトニングボルトぉ!」
ペチペチ単体攻撃からのいきなり雷魔法。本来はこれも単体魔法なんだけど、水に伝わって一気に広がる。いやあ、爽快爽快!ストーンキャノンなんてペチペチ撃ってたのがあほらしいわ!
「わはははは!ライトニングボルト!ライトニングボルト!とーう!くらえーい!ライトニングプラズマ!ふーははー!」
(ちょ!もう近くに行るからビリビリはやめてほしいプル!)
『はいはーい』
調子に乗って何発も撃ってたら怒られた。
倒さないならする事がない。しょうがないから水上を浮いたまま遊ぶ。
こういうスポーツあったなあ。何て言ったっけ?
……スポーツ?また変なの混じったぞ?
まあいい。とりあえず足から水魔法を噴射しながら走って飛んでくるりんぱ!
縦にぐるんぐるんに横回転もだ!だんだん楽しくなってきたぞ!
「いやっほーう!」
「楽しそうねえ。」
「ワシも混ぜてもらいたいモンじゃのう。」
「ん?」
そこに突然現れたのはおじいさんと綺麗なお姉さんだ。
おじいさんのほうは杖を持っていて見た目はお年寄りなんだけど、すごく若々しい溢れんばかりの生命力を感じる。でも見た目はジジイなんだけど。
お姉さんの方はなんとなくママに雰囲気が似てる。こっちもどう見ても強そうで魔力も漲っている。でもどこかで見たことあるような気がするなあ。
「えーっとこんにちわ?どこかで会ったことあるかなあ?」
「有ると言えば有るし、無いと言えば無いわ」
「ワシはこんなめんこいお譲ちゃんはじめて見たわい」
「そうだっけ??」
「そうじゃそうじゃ。ところでアーシャちゃんや、ごはんはまだかのう?」
「さっき食べたでしょ?おじいちゃん?」
「ワッハッハ!」
「うふふ。このやりとり久しぶりねえ!」
「ん?そう??」
何だかつい勝手に口から出たセリフなんだけども、2人をすごく喜ばせるセリフだったらしい。
「うーん?ホントにどこかで会ったっけ?覚えてないなあ??」
「うふふ。いいわ。またそのうち会えるでしょう。その時を楽しみにしておくわね」
「じゃあワシらはこの辺でのう。この後も気をつけるんじゃぞ」
「?うん。」
おじいちゃんとお姉さんは私の頭をポンポンってして行っちゃった。
消えるようにシュンって転移してだ。あんなすごい転移魔法、ママみたい。
「すごい2人だったなあ」
(そうプルね。ものすごく強そうだったプル)
「うわっ!プリンちゃんいたんだ?」
足元を見ると水面で保護色になってるプリンちゃんがいる。
気をつけないと全く見えないなあ。私の水魔法で波が立ってるから余計に見えづらい。
そんなプリンちゃんはあの二人の事をものすごく警戒していたみたいだ。
「ママとどっちが強いかな?ってくらい?」
(そうプルなあ。いい勝負しそうプルなあ)
「私とだとどっちが強いかな!」
(うーん、3アーシャくらいじゃないプルかな)
「なにそれ?私が3人分ってこと?」
(大体そういう意味プル。1アーシャ=2カリナくらいプル)
「へー?じゃあプリンちゃんは?」
(僕は秘密プル。さあ、この話はこのあたりまでにして。帰るプルよー)
「はーい。ねえねえ、乗っていい!?」
(大丈夫プルよ~)
強さ議論の後はサーフィンだ。と言わんばかりのプリンちゃんはサーフボードのような形に変形すると波に乗って進み始めた。
「いえ~~い!」
(楽しいプルなあ)
ザッパーンと波に乗ってしゅぱーん!
そしてざざざざ~っと行って、カットバックでエアリアルなのだ!
前半も後半も何をいっているのかわからないと思うけど私にもよく分からない!
もちろんサーフィンをしながらモンスターを倒しまくるのだ!あんまり得意じゃない地属性魔法を場チュンバチュンと打ちながらざざ~んなのだ!
サーフィンしながらだし照準も適当だけど、周りに人がいない状況なら好きに打ちまくれていいね!
(そろそろ合流プル)
「わーっはっは!っと、カリナたちか。」
(危ないプルなあ)
「危うくカリナの脳天ふっとばすとこだったね!」
「ああ、アーシャ様!心配いたしましたよ」
「えへへ。ごめんね?」
あぶねえあぶねえ。
心配も出来なくさせちゃうとこだった。もうちょい気をつけないとなあ。
サーフィンのところはめちゃ適当です。間違ってると思うけど雰囲気でお願いします




