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深窓の令嬢はダンジョンに狂う  作者: 吉都 五日
第5章 少女は一流冒険者になる
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第19話 覚悟

なんとしても、断固たる決意を持ってダンジョンに向かう。


ダンジョンを……ダンジョンを早く攻略しないといけない。

そうして失った大切なものを取り戻すのだ。

そのためには私自身がどうなっても構わない。


そのくらいの覚悟、決意を持ってダンジョンに挑んでいた。はずだった。


以前からずーっとダンジョンのことばかりを考えていた。5歳くらいの時からずーっとだ。

何がどうなってダンジョンに挑まなければならないのか、失ったものとは一体何なのか。

わからない。わからないからこそ攻略して、忘れていても何であっても取り戻してしまえば良い。

そう考えてダンジョンへ挑んでいた。すべてを投げ捨てる覚悟はあったはずだ。




―――それなのに昨日は焼肉弁当に負けてしまうような有様である。いい年して一体どうなっているのか。

すべてを投げ捨てる覚悟とは一体何だったのか……






「でもさあ、やっぱり食欲には負けちゃうよね」


「誰に言ってるんですか」


「なんとなく…?」



ノンビリと朝食タイム。

断固たる決意はどこへ出張してしまったのか。とりあえず近くには見当たらない。


さて、宿の朝食は今日もドカンっと肉料理だ。

なんと言うか魔族のご飯は男らしいのが多いね。素晴らしいことだ!



今朝のメニュー大はっぴょー!


私の拳大の肉塊を3個串に刺し、炭火でよく炙った串焼きがまず一品。

それとお肉の付いた骨でよくダシをとって、濁った豚骨?スープ。豚じゃないかも。牛骨や熊骨かもしれないけど。そのスープの中には骨付き肉と申し訳程度の野菜が。

それに追加で雑炊もあった。スープはさっきの骨付き肉の入ったスープで、ごはんに染み込んで美味しいことこの上なしじゃ!



最初の日はかなり奮発して野菜を出してくれたみたいだけど、やっぱりこのあたりだと野菜は貴重品らしい。私が野菜よりお肉たっぷりがいいよって言ってからはこんなもんだ。


それと昨日焼肉丼を激しく希望して作ってもらったからか、お米を炊いてくれた。

お米は過去の勇者が持ち込んだみたいでこっちでは割と主食なのだ。

水はあんまりないんだけど、畑としては使い物にならないような沼地が沢山あって、勇者が無理やり品種改良してそこで勝手にお米が生えてくるようになったんだって。


偶にはいいことするんだなあいつらも。と思ったら本人が食べたかっただけらしい。

食欲には負けるよね。しょうがないね。



「今日は…モグモグ…40層はクリアしたいね…ガツガツ」


「食べながら話さないでくださいよ」


「いいじゃんカリナのケチ」


「エンヤさんに報告しますよ。映像付きで」


「そ、それはちょっと待って欲しいかな??」




そう言ってカリナのほうを見ると、不思議な輝きを放つブローチが。

これ…もしかして撮ってるのか!

はわわわ!やばい!


私はしゃきっと座りなおし、今までガツガツかぶりついていた串焼きを泣く泣く串からはずしてナイフとフォークで切って食べる。静かに、流麗に。エンヤさんの授業で習った事を思い出しながら。


どうも所作はきれいだったみたいで、カリナたちはこちらを見てうっとりしているし、よく見たら宿の給仕に来ていたお姉さんも時間を忘れたように見つめている。

だが私は内心では複雑なのだ。すごく。



くっそう!噛み付いてブチィっとしたほうが絶対に美味いのに!


凄く肉肉しい食事をガッツリ、ムシャムシャと食べるつもりだったのに、おしとやかに食べたせいでなんだか物足りない。


カリナが言うには、『どうせみんな正体知ってるからガツガツ行っていい』らしいのだけど、それもどうなんだ?


そんなこんなでにくニク肉の食事をおしとやかにゆっくり食べるというミッションをこなしたのだ。

ちなみに私の食事姿はライブ中継されていたようで、パパとママはかわいいかわいいって言ってくれてたみたいだけど、その後ろで観ていたエンヤさんはちょっと怒ってたみたい。

最後は諦めて一緒になってニマニマしてたらしいけどね。

決意も覚悟も食欲の前には一蹴されてしまうのであった。

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