第12話 冒険者ギルドへ
隊商のみんなを目的の商業ギルド前まで連れて行ってバイバイしたあとは冒険者ギルドへ。
商業ギルドに着いた時は私を見た人がみんな大騒ぎしていた。
なんなんだ一体?
ギルドでひと悶着あった後、護衛完了のサインをもらって別れる時にずいぶんとみんなお礼を言ってくれた。こんなに安全な旅はなかったって。
私達は特に何もしてなくってみんなでわいわい遊びながら進んでいたイメージしかないのだ。
だからそんなに褒めてもらってもなあ。
でもなんだか『アーシャパラダイス』を覗いてみたらスラちゃんたちもココアちゃんもムカデちゃんもみんな満足そうにしてたからきっと楽しかったんだろう。
そんなこんなで私達は冒険者ギルドへ。
無事に送り届けたよーって報告しなきゃ。
魔族の国『フレスベルク』の冒険者ギルドは大体私達の国と同じような構えだった。
ギルド前にドン!っと置いてある3人の像も大体一緒。顔とか武器とかはちょっと違う気がするけどまあ似たようなもんでしょう。
「こんちわー」
中に入ってご挨拶。挨拶は基本中の基本だってエンヤさんもいってたからね!
みんながこっちをじろっと見て、ビックリした顔。
「あ、あああ!アイーシャリエル様ですね!どうぞこちらへ!」
「はーい」
あれ?何で受付とかする前からばれたんだろ?
受付のお姉さん……は魔族かな?黒い羽がとっても可愛い!角はあんまりわかんないなー。
周りに何人か残ってる冒険者のみんなもものっすごくガン見してくるけど、別に殺気があるとかそういう感じじゃない。学園で男子生徒が見てくるのと同じような視線だ。
「はじめまして。私は冒険者ギルドフレスブルク支部で受付を担当しておりますルールーと申します」
「アイーシャリエルです。えーっとこっちは……」
「カリナです」
「エルリーシャです」
「ユリアンヌです」
「…です。隊商の護衛を完了したので報告に来ました!」
「はい。では依頼表をこちらに……はい、完了です。お疲れ様でした。みなさんの今後の予定は決まっていますか?」
「しばらくはカノープスに通おうかなと考えています。」
「ではギルドにも時々で構いませんので、是非いらしてください。ユグドラシルの冒険者ギルドへは良く通われておられたとのことで……リリーからも聞いていて、ギルド員皆が羨ましがっておりました。もちろんギルド所属の冒険者の皆さんもです。見てくださいあの嬉しそうな顔!」
促されて後ろを見るとみんなホッコリした嬉しそうな顔してる。
でもなんで??
「言ったでしょう。こちらの国でよく記録水晶が売れていると。10年以上前からユグドラシルにいた冒険者や隊商の皆がフレスベルクにきて姫の美しさを喧伝していたようです。ギルドへ良く遊びに来たとか、冒険者の皆さんもギルド職員も会うたびに自慢していたそうですよ。それから商業ギルドで行商をしている方たちもですが……商業ギルド前でもなんだか視線を感じませんでしたか?」
「そういやそうだった」
「そうでしょうそうでしょう。アーシャ様が注目されるのは嬉しいですが、変な輩が近寄ってくるのは困ります。冒険者の皆さんは色んな噂話も知っているからある意味安心ですよ」
「色んな噂話って何のこと?」
「ご自身がソロでダンジョンを攻略した事もそうですが、母親があの王妃様であることとか。他にも師匠がシエラ先生だとか……そのあたりです。まともな冒険者ならおかしなちょっかいは出せませんよ」
「ママはともかくシエラ先生もそういう目で見られてたのかあ」
新事実。
なんとシエラ先生も危ない人だと思われてたのだ!
いや、私が知らなかっただけで考えてみれば当然のことかも。
だってシエラ先生もさあ。訓練の時に私をボッコボコにするし、ついでにカリナもボコボコにしてるし。それで回復かけたら何事も無かった顔でさあ……
他にも軍時代にいろいろ武勇伝があるみたいで、スタンピードのときも現役の軍人さんが従ってたしなあ。
まあ、その辺は深く考えないで置こう。間違っても本人に直接聞いたりしないようにしないと。
「んまあ、そのへんはいいや。私達はしばらくカノープスに行くことになるから、どこかいい感じの宿を紹介してください。」
「それでしたらこちらを出て右奥の方にある金鶏亭などいかがでしょう。皆様高貴な身分のようですし、金鶏亭ならセキュリティもしっかりしていますが……」
「でもお高いんでしょう?」
「1泊お一人様5万ゼニーほどです」
「うーん、却下。序盤の儲けが0になっちゃうよ」
「えっ!?私はそれでもいいけど」
エルさんは全くもー。お嬢様何だから全く、ダメダメだなあ。
お金はもっと大事にしないと。一日何もしなくても5万ゼニーも吹っ飛んでいくんだよ!?毎日赤字じゃん。他にもペットのみんなのゴハン代とかいろいろかかるんだしさー。
大体寝るだけなら私達の空間魔法の中で寝ればいいんだから、下手すりゃ部屋なんて荷物置き……あれ?もしかして荷物もあっちでいい?あれ?もしかして宿なんて要らない?
「宿なんてもしかして要らないんじゃないの?私かエルさんのところで寝ればいいじゃん」
「それを言っちゃだめですよ。姫の引きこもり癖がもっとひどく……おっと。」
「誰が引きこもりだ!」
引きこもり……ではない。
知らない人と話すのがちょっとイヤなだけでちゃんと外に出てる。
宿の人との会話や、知らない冒険者と話すのが面倒だから宿が要らないってわけじゃなくってただ単に経費の節約と言うか……いや、必要なら話すし適当に媚も売る!
情報収集は大事だからね。……って、とにかく!
「とにかく、もう少し、その…リーズナブルな感じの宿でお願いします」
「では同じ系列の銀鶏亭はどうでしょう。一泊1万ゼニーほどで朝食と夕食がついてきます」
「ずいぶん違うね」
「設備の違いのようです。金鶏亭は露天風呂にサウナやジャグジー、マッサージ機などの過去の勇者が愛した設備が整っています。一方の銀鶏亭はいわゆる普通の宿で、お風呂はなくってタライで体を拭くというものですので……」
「タライかあ」
タライで拭くだけって……と思ったけど良く考えたら風呂だけ『アーシャパラダイス』に入りに行くという手もある。やっぱり銀のほうでいいな。ぼったくりの金なんか別にいらないね。
「じゃあ銀でいいっか。ね?」
みんな別に何も言わなくっても銀鶏亭でいいみたい。
そうと決まれば早速宿へ行くぞー!
「じゃあ銀鶏亭さがしてみまーっす。またね~」
「はい。ギルドではダンジョンに行った際には魔石やアイテムの買取なども行いますので、是非お立ち寄りください!」
「はーい。」
バイバイと手を振ってギルドを出る。よーし、宿探しだ。
読んでいただいてありがとうございます。
誤字脱字のチェックありがとうございます。毎回頑張ってみているつもりですが、沢山出てきますね。
ユリアンヌがいつの間にかマリアンヌになっていたりしてもう何がなにやら。




