第2話 ひさしぶりの学園
いっぱい寝て起きたら学園に行くことになった。
シエラ先生にオハヨーって顔見せに行かないといけないし、部活のみんなにも会わないといけない。
面倒くさくって行きたくないなあ、とか思ってはいけないのだ。いけないのだ。
しっかし、私が知らない間に半年もたってたとか。
半年寝込んでたんだって言われてもまったく実感がないよね。
なんだか変な記憶も時々ふわふわっと出てくるし、寝込むのなんて碌なもんじゃないや。
それと、おかしい事と言うかなんと言うか。
私にはまた色々おかしな力が追加されたみたい。
と言うか使い方が分かった?思い出した?みたいだなあ。まあこの力を使ってモリモリダンジョンを攻略すればいいんじゃないかな!
と言うわけでダンジョン攻略部に行ってみんなで頑張ろうって話だね!
「頑張らないとね!」
「授業をですか?」
「いや、それはない。ダンジョンの話だよ。なんだか前よりもっといっぱい攻略しないとって気になってるんだー。いやあ楽しみ楽しみ。」
「はぁ。とりあえずは今からシエラ先生に怒られるんですけどね」
「うぐっ!…それを言うなよカリナぁ」
(しょうがないプル。ぼくは何回もやめとけって止めたプル)
「うぐぐ。」
それは本当に色々痛い。ひどい叱られ方をしそうだ。
でも私は前よりもっとダンジョンに行かないといけないって感じている。
たぶんこの気持ちは私の中のもう一人のものなのだろう。
ダンジョンで、コアに接触する。
そうする事で……いや、そうする事でしかこのモヤモヤを晴らすことは出来ないのだ。
ふう。っと馬車の背もたれに体を預ける。
足元ではゴロゴロにゃーんっとじゃれ合ってるココアちゃんとカリナのネコ……でかいな。
カリナのネコは私よりだいぶ大きい。えーっと?なんて種類だったっけ?たしか……
「えーっと?真っ赤なパンサーだっけ?」
「マラカイトパンサーです!大きくなったでしょう?」
「そうそう。そうだったね。いやあ大きくなったねえ~。ココアちゃんよりだいぶ大きいよ」
と言うかカリナよりもだいぶ大きい。もう2mくらいはあるなあ。
ココアちゃんは私と同じくらいだから1m20cmくらいかな?
カリナの子に体格だとだいぶ負けてる。ぐぬぬ。
でもココアちゃんのほうは顔や手足にまだまだ子猫感があってかわいいのだ。
大きさのほうは子猫と呼ぶにはだいぶ大きいけど……
カリナに聞いたけどマラカイトパンサーは最大3m近くになるかなり大きな猫科の魔獣なんだって。
もうかわいい子猫というよりは精悍なという表現が似合うようになってきている。
豹柄のボディに新緑のような目がカッコいいなあ!
カリナのネコちゃんもうちのココアちゃんも召喚獣だ。
召喚獣は基本的に召喚している間は魔力を消費し続ける。
私はまーったく問題ないけどカリナはちょっとしんどいみたいでちょいちょい帰したり、『アーシャパラダイス』で休憩させたりしている。『アーシャパラダイス』(あっち)にいる間は魔力の消費がないんだって。もういっそウチの子になるかい?
はあ、それにしても。
この子たちが成長していくところをじっくりたっぷり見たかったなあ。
残念なようなくやしいような。じっくりとココアちゃんと一緒に成長していくところを横で見てたであろうカリナがうらやましいような。
でも記録水晶にきちんと保存してあるのはなかなかぐっじょぶだ。
毎日ニヨニヨ観察しないと!
「かわいいのうかわいいのう」
「かわいいじゃなくてうちの子はもうカッコいいですよ!」
「そうだね。カッコいいね!かわいカッコいいだね!」
そういえばカリナのところの子の名前はカイト君って言うんだ。
マラカイトパンサーだからカイト君。こいつも安直だなあ。
でもそういったら姫には言われたくありませんって。そんなに褒めるなよ。
さーって、モフモフと戯れている間に学園についた。
久方ぶりに訪れた学園は以前に見たときとほとんど変わるところはなかった。
変わっていたのはダンジョンの入り口に通じる祠が閉鎖されていることくらいだ。
立ち入り禁止と書かれた看板があり、軍服を着た人が警備をしている。
今から立ち入り調査に入る部隊もいるようだ。
軍人の中にはこちらを見て手を振っている人もいる。よく見たらお城で見たことある顔だ。
ダンジョンのほうはあんまり心配はなさそうだなあ。
調査部隊の人たちが手を振っているのを見てか、生徒のみんなも私に気付いたようだ。
みんなで私のほうに駆け寄ってきて、「姫様、ご無事で!」とか、「心配しておりました。」とか。後は私がダンジョンに突入したから助かったって。「ありがとう」って言葉が多かった。
うーん、正直複雑だなあ。
学園長たちの言葉だと、どうやら本格的にゴチャゴチャにする気はなかったみたいだし。
私は中に突入せずに、外で防衛部隊に参加していたほうが楽に鎮圧できてたんじゃないかって気がする。
私は自分のためにダンジョンに突入したのだ。でもそれは言えないよなあさすがに。
なんともいえない気分になりながら教室へ。
教室でもみんなからものすごく歓迎された。みんな私の事を凄く心配していたんだって。
私の事をヒーローみたいに扱うのだ。
照れるって言うかなんと言うかちょっと困るなあ。
『私利私欲で突撃して大暴れした挙句、学園長をボコボコにしました!私が行かなければたぶんスタンピードはちょこっとの被害で収まって、学園も平和なままでした!』
なんて言えないよね……
そうこうしている内に授業はおわり。シエラ先生はあの件以降担任からも外れてるんだって。
大変だなあ。
「シエラ先生も大変だねえ」
「概ねアーシャ様のせいだと思いますけどね。完全に人ごとの扱いで私も困惑します」
「ぐぬ。まあ、部活のほうに顔を出そう。そうしようそうしよう」
「はい。」
『はい。』だって。あきれたって顔してるし。
私だけの責任じゃないと思うんだけど。でもまあ概ね私のせいかもなあ。




