第35話 休憩
30階層のボス、オログ・ハイを倒した私達は31階層へ。
31階層からは火の階層だ。
なんと言ってもここら辺は私たちに相性がいい。
ムカデちゃんは元々赤ムカデだし、プリンちゃんも赤プリン…じゃなくって火属性だ。
赤プリンは辛いプリンみたいでヤだな。まずそうだなあ。
赤ムカデ?大丈夫。最初っからムカデは流石に食べない。
猫ちゃんは私が耐炎マントを羽織っているので私の服の中でゴロゴロしている。
なかなか幸せそうでほっこりするし、子猫はくんかくんかするととってもいい香りなのだ。たまらん!
まあ一回通った道だし、属性相性もいい。苦戦しそうな要素もないし、ボス階以外はいざとなれば隠れればいい。というわけでここも爆走じゃあー!
「ゴーゴー!」
(プル!)
「ゴロゴロ…」
「キシャー!」
ブロロンブロロン!パラリラパラリラ!
爆音を響かせてモンスターの群れをなぎ倒し、打ち払い、かと思ったら時にはひょいっと隠れ。
なかなか姑息な戦術を使いながらあっという間に35層。
ボスはやっぱり火属性のオーガだったからホイホイっと処理。もう苦戦する要素がないね。
さあ、ようやく戻ってきた36層。
いよいよ本格的な冒険の始まりだ!
「…の前に腹ごしらえだよねー」
片付いてきれいになったボス部屋から『アーシャパラダイス』の中へ移動。
中には数え切れないくらいの魔石がばらばらと散らばって……片付けめんどくさいな。
「んー。片付けめんどくさいから高そうなのは置いといて、後はスラちゃんたちで食べちゃっていいよ」
(やったプル!)
「うにゃー」
「キシャー」
「欲しいの?遠慮せずに食べちゃっていいのに」
なんだ。みんな食べたいならそう言えばいいのに。
いやあ、それにしてもプリンちゃんたちと一緒の探索もなかなか楽しいものだ。
休憩はし放題だし、何なら昼寝してもいいだろう。快適快適。後はご飯だけだなあ。
ご飯といえば私はこんなふうに落ち着いてノンビリできるけど地上は大丈夫かな?
一応そこそこ蹴散らしてるけど大きな群れは何個もスルーしてるし、かなりの大群が地上に向かっているはずだ。何千くらいかもなあ。
まあシエラ先生もいたし、軍も出てたし大丈夫だろう。たぶん。
他の先生も…あんまり見かけなかったけど、たぶん頑張ってる。
でもあんまり当てになんないかもなあ。
強そうなのって学園長先生くらいだし。他の先生たちってば……(グゥー
おっと、お腹がなった。ごはんごはん。地上は自分たちでどうにかするでしょ!
私は串焼きをかばんから取り出して、火魔法で炙る。
このとき、適度に水分を追加するとふっくらジューシーな仕上がりになることに気付いたのだ。
右手で火魔法を使って焚き火くらいの炎を、左手でよわーく水魔法を使って霧を作る。
じゅう、じゅう~。という音と共にあふれ出す肉のにおいと滴る肉汁。そして肉汁が炎に落ちたことでさらに溢れ出る肉の幸せ。はわわ~!やっぱり肉ですよ肉。
ダンジョンの中の肉は倒した瞬間に消えていくからなあ。
ダンジョンでは倒したモンスターは霧となって消えていくのだ。でもサッといい感じで火魔法で燃やして、倒す前にかぶりつけば…いや、やめておこう。どう考えてもそれはまずい。一応お姫様なんだし色々まずいよ。
「色々アウトだよね。さすがにね」
(何がプル?)
「モンスターを丸焼きにして消える前に食べちゃおう作戦」
(どうしても食べるものがなければいいけど、やってることは完全にアウトプル)
「やっぱりそうか。ダンジョンで食べるものなくなったらどうするの?」
(帰ればいいプル。普通はただ帰るだけプルよ。何日もダンジョンで泊まる人なんていないプル)
「惰弱なっ!!!!!!」
(プルッ!)
「ニャッ!」
「キシャ!」
「せっかくダンジョンに来ておきながら泊まりもしないだなんて!こんなに衣食住そろった環境はないぞ!」
(全然そろってないプル…)
「何を言うのよ!ボス部屋なんて倒したら昼寝するのに最適だし宝箱は出るし。もしかしたら食料や衣類だって出るかもしれないでしょ!」
(ええ…まあ、百歩譲って衣類はローブなんかが出るけど…食料は…)
「出るときもある!」
(そんなちょうど欲しいものが出るはずないプルよ)
「うぐっ!」
コイツ…言ってはいけないことを!
確かに私が宝箱をあけても欲しいものがホイホイ出るはずがないとは思うけど!思うけど!
でもそれを言っちゃあおしめえよお!
ふるふると震えながら私は告げる。
「みんなに魔石あげるとは言ったけど……プリンちゃんだけはダメね」
(プル!?)
それを聞いたプリンちゃんは咥えていた魔石をコロッと落とす。
ふーんだ!プリンちゃんのバーーーーカ!




