第33話 アーシャいっきまーす!
アルヘナダンジョン入り口前は物々しい雰囲気だった。
軍によって封鎖されたダンジョンからは濃密な瘴気が噴き出しており、さらには断続的にモンスターがあふれ出てきている。そしてあふれたモンスターは軍所属の魔法使いや弓使いが遠距離攻撃で仕留めている。
ほうほう。ああやって処理するんだなあ。
感心しながら近づいていく。結界が張ってあるのでこ~っそりすり抜けて、中に入ってからその様子を見ているとこちらに気付く者が。というかシエラ先生だけど。
「……何をしているのですかアーシャ様?」
「いや、ちょっと様子見をね。」
隠密を解除して現れる。周りの人たちは突然現れた私にビックリしている。
シエラ先生はなぜか得意気だけど。
「様子を見てどうしようと思われたので?」
「手伝えることがあればやろうかなってね。ほら、私だって一応冒険者だし?」
「うーん。それはそうですが。アーシャ様は私たちが最も守るべき存在なのですよ?」
「そうだけど。おとなしく守られてるお飾りの王族なんていらないでしょ?力があるなら使うべきだよ」
「むむむ」
つまり、先生の『大人しくしていろ』に対して、私は『こんな時にジッとしてられるか』って事だよね。
力があるならばそれを使うべきだよ。
「それで今の状況は?」
「スタンピードが起こることは間違いなさそうですね。あとはどの程度の規模でモンスターが出現するか、それをどの程度の損害で凌げるか。といったところでしょうか。」
「結界は?」
「すでに設置は終了しております。中級以下のモンスターは結界から出ることは出来ないでしょう。」
「ふむ。」
中級以下、と言えばオーガやトロールも含まれる。かなり強力な結界だ。
でもそれ以上のモンスターには破られちゃうんだよねー。
私のようにすり抜けるのもいるだろうし。参っちゃうなあ。
これはもう、あれだ。仕方ない。うん仕方ないね。
一応お姫様らしいこともしないと。そしてその後は……ぬっふっふ。
「では軍の皆さんはこのまま防衛ラインを固めてください。冒険者ギルドにもこの事は通達して。冒険者にはユグDの監視を優先させるように。学園側は上級生は軍の後ろで狙撃準備を。下級生は補給の手伝いをさせるように。教師はそれらのサポートを」
「ハッ」
「軍のほうは退役軍人から増援を募ってくださいね。それから城に連絡して騎士団の配備もお願いします。あとは早急に医療チームを組んで。学園の一部は病院として使用するように。ああ、騎士団に城に保存してあるポーション類をこちらに持ってこさせて。あとは抹茶とトーフも置いていきますね」
「ハッ……置いていく?ですか?」
「ええ。私はダンジョンに今から突入してさくっと攻略してしまおうかなと。ああ、『みなさん!ここの責任者はシエラ先生に任せます!これは第一王女としての命令です!必ず死守するように!』これでやりやすくなったでしょ?じゃあ被害者を出さないようにね。でわっ!」
そういって全く手を抜かずに全力の隠密を発動させる。
プリンちゃんにも過剰なほどの魔力を供給し、気配も音も色も全くない。
そんな状況を一瞬で作り上げたのだ。
シエラ先生も目を点にしてる。ぬふふ。
いつかこっそりママの目を盗んでダンジョンを攻略に行く。
その為に毎日コツコツと鍛えた技なのだ。
スタンピードはダンジョンコアを破壊するか、あるいは停止させれば必ず止まる。
何が原因であったとしても……だ。
といっても主な原因はダンジョン内の魔力枯渇か、あるいは魔力の飽和だ。
ダンジョンにモンスターが増えすぎると内部の魔力が枯渇する。
そして魔力に餓えたモンスターが外の魔力=生き物を求めて飛び出す場合がある。
また、それと反対にダンジョン内部に魔力があふれすぎた場合。この場合はモンスターも過剰に生産され、そして大量のモンスターが内部の魔力と共に外にあふれるのだ。
どちらもスタンピードが起こった後の結果は似たようなものだ。
モンスターは基本的に周囲にあるものを襲い、奪いつくす。そして魔力が落ち着いた後は野生に帰ると言われている。ダンジョン外のモンスターは元々ダンジョン内部にいたモンスターたちの子孫だということ……らしい。ホントかどうかは知らないけど。
―――まあとにかく、どちらの場合もコアを止めればいいのだ。
しかし、モンスターの群れを突っ切って進み、ボスを倒してコアを止めないといけない。厳しい任務だ。隠密を使えてモンスターの群れをスルーできて、さらに単独でボス階も攻略できちゃううーん、そんな適任いるかなあ?
あら?もしかして私が適任じゃないか!
いやあしょうがない。しょうがないから適任の私が行ってこよう
私はコアに接触しなければいけないわけだし、他に適任もいないし (多分)。
こりゃまあ、あれだね。winwinってやつだね。
コアに行きたい私とコアを止めないといけない軍と。
いやあ、なら仕方ないね。ってなわけで。
「アーシャいっきまーす!」
アーシャ:いやあしょうがない。私以外に適任がいないもんね。決してダンジョンに突撃したかったわけじゃあ……ゲフンゲフン いやあ、しょうがない。しょうがないなあ (すっとぼけ)




