第27話 攻略再開
魔道具を二つ購入した事で80万ゼニーほどが飛んでいってしまった。
またドラゴンの卵が遠ざかってしまった気がするが、これは投資だ。必要な投資なんだ。
……と思う事にしよう。
カリナはカリナで何か買ってたみたいだけど…自分のお金でお買い物できるって幸せだよね!
とりあえずこの指輪とネックレスを部長たちに見せて、欲しい人がいるか聞いてみよう。
「ところで他にお勧めある?」
「素早さだったり腕力だったりが上がるアクセサリーも有るぜ。1割も上がれば上等って所だけどなあ。それから昔お嬢ちゃんに売った一回だけ致命傷を防ぐ魔道具あるだろ?あれなんか後衛に良いぜ。事故が減るからな」
「あーあれ。致命傷を防ぐ魔道具だったんだ?」
「言ってなかったっけ?マトモに喰らったらヤバイ奴だけ反応するんだ。かすり傷なんかで発動しちゃっても困るだろ?」
「まあそりゃそうだね」
当たるか当たんないかわからないような擦り傷でいちいち効果が発動して何十万もする魔道具がパーになるとか、そんな事になったらクレームどころじゃない。魔道具屋さんにとっては美味しい商売かもしれないけど。
いや、そんな物売りつけてたらお客さんに信用されなくなって何も売れなくなっちゃうかな?
って聞いてみると、
「そうだな。そんなすぐ発動してすぐ壊れるモノなんて作ったら商売上がったりさ。だからどの程度で効果が出るかってのを調整するのが腕ってモンよ」
「ほへー。ちなみに宝箱からは出ないの?」
「同じようなのは出るぜ。でもそっちはどんな攻撃でも防げるけど、さっき言ったように転んでも発動するゴミタイプさ。そういうのからアイディアをもらって改良するのが俺たちの仕事だ。そしていずれはダンジョン産より効果のいい物を作るのが夢なんだ」
「すごい!じゃあとりあえずダンジョンのより安くて軽くて便利で強いのを作ってね!」
「おう…『とりあえず』のハードルがものすごく高いな……」
「がんばって!ね!じゃあ私はパーティーメンバーにこの魔道具見せてくるから。追加注文もあるかもよ!」
「そいつは期待しておくよ」
メイドさんに促されて城の中へ入っていくザカンさんを尻目に、私は学園の寮の方へ。
カリナは何も言わずに着いてきている。いつものことだ。
「―――というわけで、私の知り合いの魔道具職人さんが今城に来てるから。追加注文があったら受けてくれると思うよ。」
ここは女子寮のロビー。ロビーまでは男子でも入れるのだ。女子のほうが人数多いんだし部長もちょっと気まずそうにしながらこちらへ。
「一応僕の方で『耐炎のマント』を手配しておいたんだけど、魔道具も見せてもらいたいね」
「おおっ。耐火じゃなくって耐炎!」
「うむ、少し値は張ったけどどうと言う事はない。魔剣も貰ってしまったし、そのお礼も込めて僕のポケットマネーから出しておいたよ」
「ぶちょー!ありがとう!ふとっぱらー!」
「ありがとうございます」
「部長ありがと!」
「さすが部長。ありがとうございます」
みんなからお礼の嵐。
だって耐炎のマントは耐火と比べると倍くらいする物なのだ。
それをあっさりと買ってしまうとはさすが……どこだったっけ?の王子!ふとっぱらー!
そんなこんなで私達は耐炎のマントを手に入れた。
ザカンさんのところでは、以前私が買った致命傷を防ぐ魔道具『障壁のペンダント』を各自が購入。
そして31層へと挑む事になった。
「31層よ!私は帰ってきたっ!」
「姫は楽しそうですねえ」
「そりゃもう。」
わいのわいのと言いながら31層へ踏み込む。相変わらず熱い。
火を吐く蛇ことフレイムコブラに火を吐く鳥ことフレイムコンコルド、火魔法を使う牛ことファイアブル。
どれも耐炎のマントがあれば楽々に狩れる。
なかなか耐性さえ取ればおいしい狩場なんじゃないか?
火属性の魔石も割とホイホイっと出るし、ぼちぼち美味しい狩場なんじゃなかろうか。
熱い事とひたすら飛んでくる火属性攻撃を除いたら、の話だけど。
モンスターの数はやたら多いし、火属性攻撃があっちこっちからホイホイ飛んでくるし。
ダンジョンの内部も今までは通路と小部屋という構成だったが、この階層は全く違う。
通路なんかじゃなく外の景色にしか見えない。大きな山が見えているのだが、ダンジョンの外の山岳地帯に突然放り出されたような状態だ。山肌には火山っぽくマグマが流れているところもある。洞窟を抜けると山の真ん中だった。ってところか。
流れているマグマはすごく熱そうだけど、試しにモノを放り込んでも発火したりはしない。
ならいけるんじゃないか?と思って触るとめっちゃ熱い。ちょっと指が燃えた。
『なにやってるんだ!』ってカリナを含めた全員に怒られた。
山肌は岩が多く、傾斜もあるしマグマもある。やっぱり狩りづらいかな?
でも30層台もまだ始まったところだし、後半はひどい事になるんだろうなあ。




