第26話 お買い物。
31階層からの炎をどうにかする方法を私なりに考えた。
その中の一つに魔道具職人のザカンさんにお願いしてみようかと言うのがある。
ザカンさんは魔族の魔道具職人なんだけど、口が悪くて仕事が減ってしまったと言うなんともいえない経歴の持ち主だ。でも私達はあんまり気にしないし別にいいかなーって。
そんなわけでザカンさん宛てに手紙を出しておいた。
どうやって?そりゃこないだパパとママが魔族の国に行くって言うからついでに持ってって貰ったのだ。いやあ書いておいてよかった。
普通ならギルドに預けてしば~~~らくかかるところを火竜による直行便だ。
ギルドに預けたら1ヶ月かかるところが1日になった。すばらしいな。
そしてすぐにザカンさんも直行便で送られてきた。ママの火竜の背中に縛り付けられてだ。
この感じ、何だかまた余計なこと言っちゃった罰なんだろうなあ。
「ザカンさん久しぶり~」
「お嬢ちゃん早く降ろしてくれよ」
「うーん、言うこときいてくれないとやだなあ」
「そういう意地悪はナシにしようぜ?な!?」
「しょうがないなあ。エレナちゃんお疲れ様。荷物外すね」
よいしょっと。ってザカンさんを縛っている縄を解いて降ろしてあげる。
ママの火竜のエレナちゃんはすごく賢くってその間もジーっと待ってくれているのだ。
いい子いい子。ヨシヨシっと。
そして玄関から入って応接室へ移動。
「ふあー。えらい目に遭ったぜ……それにしてもお嬢ちゃんも荷物扱いは酷いんじゃねえの?」
「荷物みたいに縛られてたからね。ハハハ」
「まあいいや。それで?俺に依頼があるんだろ?」
「うん。火属性耐性の高くなるような魔道具を売って欲しいんだ。5人分かな?だからおねがーい」
いつものポーズでお願いをする。
これで落ちなかった大人はいないんだぜ!
「うぐっ。しょうがねえなあ。報酬は普通どおりもらうからな?」
「わーいやったー!ありがとー!」
「ふう。で?どんな形のがいいんだ?マント型なんかなら楽だが」
「出来るだけコンパクトなので。マントはマントで多分用意すると思うし。」
部長あたりが。
部としての活動費や5人で稼いだ分の一部を貯めているからそこから用意するだろう。
でもそれで用意できるのは多分普通の『耐火のマント』くらいのもんだからなあ。
耐火のマントは一般的な耐熱装備で、火ネズミや火狐なんかの毛皮を縫い合わせて作られている。
火の攻撃はかなり防げるけど、火がいっぱいのところへ行くのにマント自体が毛皮ですごく暑いというなんともいえない装備なのだ。
あんまり暑い所へ行くと逆に厚着のほうが涼しいというし、ぶっちゃけ冷やすだけなら氷魔法を使えばいいんだけどさー。でも見た目ですごく暑そうなんだよなあ。
まあ耐火のマントはいい。暑い事以外に特に問題点もないし。
私が求めているのはさらに耐性を上げるための装備だ。
という訳でザカンさんに作ってもらいたいのは指輪だったりペンダントだったりとそういう肌に直接付けられるようなタイプの火耐性を向上させる装備、もしくは水属性攻撃を向上させるような。そういう魔道具を求めているのだ。わかったかね!
「……というわけでおねがいします」
「まあ大体言いたい事は分かった。こんなのどうだい?」
いやあ話が早い。
さくっと空間魔法で取り出してくれたのは指輪型の魔道具だ。
「こいつは火魔法を含む火属性攻撃を防ぐアイテムだ。範囲内のほぼ全部の火属性攻撃をキャンセルしちゃう恐ろしいアイテムだぜ。半径20m程度の有効範囲があるからな?ただまあ、自分の火魔法もキャンセルしちゃうところが欠点だな」
「ふわあすごい!」
「すっげーだろ!一個ほんの5億ゼニーだ」
「却下で。」
「……うん。まあそう来ると思ったぜ。流石に高すぎだよな……」
そういって空間収納に戻す。
あのアイテムはそのうち欲しいなあ。
「……物欲しそうに見てるがな、こいつはダンジョンのクリア報酬だ。お嬢ちゃんはそのうち自分で出しなよ」
「へー。いいの出るんだねえ」
「いいだろ?こいつを研究して作ったのがこれだ!」
ドドンッ!と出したのは腕輪だ。
「こいつは食らった火魔法の威力を半分くらいにしてくれる腕輪だ。着けてる奴限定だから使いようによってはさっきのよりだいぶ便利だな」
「おおー」
「ただし、ブレスなんかは防げない。武器に付与してある火属性攻撃もだめだ」
「おおー??」
「さっき出したのよりでかいし能力は低い。まあ敵味方問わずに火属性攻撃を押さえ込む、ってわけじゃない所だけはいい点だな。ダンジョン産の奴を真似してみようと思ったけどこれが限界だったんだ。これでも一個50万くらいだぜ。ほとんどが原価で消えてるけどなあ」
「たっかー・・・?くはないのかな?そんなもんかな?」
「もっといいのを作りたいのは山々だけどなあ。えーっと他には……これなんかどうだい?水属性攻撃の威力を補助してくれるぜ。1割くらいだけど」
そういって取り出したのはネックレス型の装備だ。
綺麗な青色の魔石をはめ込んである。
「悪くはないねえ。ためしてみていい?」
「いいぜ?庭に行くかい?」
「うん。」
外に出て中庭へ。
魔法で的を作り、とりあえずはそのまま撃つ
「ウォーターボルト!…ありゃりゃ」
特になんのひねりもなく、魔力も特に集約もさせず。
土で創った的を吹き飛ばす。
失敗失敗。吹き飛ばしちゃ参考にならないな。
的をもっと分厚くして……っと
「もっかい!ウォーターボルト!」
分厚くした的の半ばまでめり込んで止まる。次はネックレスをつけてっと
「ウォーターボルト!」
さっきのと同じ的の半ばをやや過ぎたところで止まった。
うーん、無いよりマシかな?
「無いよりマシってとこかなあ」
「まあ1割じゃそんなもんさ。無いよりマシってなモンよ。もっと強いのが欲しけりゃそれこそダンジョンでお願いすればいいさ。俺が魔道具で再現出来るのはその辺くらいまでだな」
「うーん。まあとりあえずこの二つください」
「あいよ。まいどあり~」




