第21話 串焼き三昧
お金が出来れば心に余裕が出来る。
つまり1000万ゼニーも持ってしまった私は余裕たっぷりの心で買い食いをしてしまった。
もちろんカリナも一緒に買い食いをしている。
「おっちゃん串焼き5本くださーい!」
「おお、姫さん久しぶりだなあ。学校はどうだい?」
「楽しいよ。部活でダンジョンにいけるんだよ!」
「姫さんは変わらねえなぁ。学校に行ってもダンジョンかい」
「あっちにはおいしい串焼き屋さんがなくってさー。おじさんの串焼き食べたくなっちゃった。お休みの日だしたまにはね!」
「へへ。嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。一本オマケしておいてやるぜ!」
「おお!ありがとおお!」
やったぜ!
私はユグ裏へ通っている時に串焼きおじさんの屋台で毎日のように買っていたのだ。
何を?勿論串焼きを。そのときはバジリスクの肉が多かったみたい。
ほとんどとり部分なんだけどたまに混じるヘビ部分も乙なもので。
コリコリして美味しかったんだなあ
ダンジョンに行くたび買い食いしていたからなあ。そう考えると長い付き合いだなあ。
この串焼きとも長い付き合いだ。もしゃもしゃ。
あれっ!?今日のはなんだか一味も二味も違うぞ?
「気付いたか。さすがは姫さんだな」
「おっちゃんこれ……肉も違うけど他にも違うね?」
「よく分かったな。これは南方のザルダタンで取れたガルーダの肉だぜ。なかなか乙なもんだろ?それに塩も違うんだ。この塩はガルーダと同じ地方の岩塩だ。相性が良いかとおもってなあ」
「なるほど。なかなかいけるねえ!」
いけるいける。魔物の肉も奥が深いもんだ。
噛み応えのある肉だけど、丁寧に処理してあるからそれほど食べづらい感じではない。
塩味だけでやや硬いんだけど、噛めば噛むほどほど味が濃くなって。肉汁もいっぱい出てくるし、いつものも良いけどこれもサイコーじゃないか!
でもガルーダと言えばなかなか賢い鳥だろうし、テイムできたらいいかも?とか思うけどこの味を味わってしまうと今後ご飯としてみてしまいそうだ。
ドラゴンステーキなんてのもこの世にはあるんだけど食べちゃうと私のドラゴンちゃん (予定)とかエルリーシャさんのシロちゃんとかの事もおいしそうに見えてしまうんじゃないか。うーん。それを考えるといろんなのを食べるのは怖いなあ。うん怖い。モグモグ。うん美味い。
「何を難しそうな顔をしてるんでい?」
「え!?いやあ、おいしかったんだけどさあ。今度からガルーダちゃんを見たら『よし!テイムしよう!』じゃなくって、『美味しそう!』になりそうだなって」
「そりゃまあしょうがねえ。『生き物は何かを食わなきゃ生きていけねえんだ』ってことをよく言うじゃねえか。こうして串焼きでいろんな肉を試したりしてるが、俺だって昔は冒険者やってたんだ。コカトリス焼きながらコイツに喰われた知り合いもいたなあ、何て思うこともあるぜ。」
「それはなんともまあ。」
「まあそりゃこれだけ人もモンスターもいれば色々有るからな。俺にできることはいい肉を美味しく仕上げてやることだけさ。」
深い。なんだってダンジョンがお休みの日に串焼き屋のおじさんとこんな深い話をしているんだろう。
しかもおっちゃんは串を焼きながら。私はもしゃもしゃしながら。
あ、もう5本目が終わった。あとはオマケの一本だ。これは見た目から違う肉だ。
何のお肉かな?って期待しながらかじりつく。
むうっ!これは!
カッ!と目を見開く。もちろん効果音付だ
「これも味が違う!これは牛?いや、ミノさん?」
「ミノタウロスのバラ肉だ。バラ肉っていっても脂がほとんど無くって、引き締まって硬いくらいなんだが、それをやわらかくジューシーに仕上げるってのも腕ってもんよ!」
「くっ!うまい!」
ものすごいドヤ顔のおっちゃんになぜか言い知れない敗北感。
だが美味しい。くっそう!
どっしりとした赤身にほんの少しの脂。スパイスが効いて臭みは殆どないというのに、牛肉特有の幸せな香りと甘みがこれでもかって押し寄せてくる。おいしいんじゃあああああ!
美味しいものを食べたら幸せな気分になる。
それと同時に串焼きの奥の深さとおっちゃんの技術の前に何だかいいようにやられたような気分。
幸せな満腹感をお腹に。少しの敗北感を胸に。
私も美味しい料理が出来るようになりたいなあ。
遅くなりました。
料理をさせる予定はとりあえず今のところは無しです。




