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林檎の匂い

作者:

『林檎の匂い』




僕の目の前に、林檎はあります。

僕は、その甘えて腐ってしまったような腐臭を嗅ぎます。

僕は、その林檎を、あまやかし過ぎてしまったから。

僕は、その林檎が、可愛くって、切なくって、そうして、とても、やるせなかったから。

僕は、その林檎を、捧げもちます。

甘えた腐臭をこぼした、その林檎は、まるで、僕に甘えているようで、

僕は、思わず困った顔をするのです。

その甘えて腐ってしまった僕の可愛い林檎に見せつけるように。

嗚呼、僕の林檎は、転げてしまった。

あの切ない夢の奥へ。

ねえ、お願いだ、僕の林檎を、踏み潰してしまわないで。

ねえ、お願いだ、僕の可愛い林檎を僕に返してくれないか。

僕の林檎は、とても可愛くって、僕の林檎は、とても切ない。

夢の奥で、僕の可愛い林檎を持ち去ったあの娘は、僕に向かって印象的な瞳でツンと見つめた

ビロードが揺れる

緑の木陰のむこうで

湖で美味しそうに水を啄んでいる白い鳥

嘴を上に傾けて

白いスラリとした喉元が美しい

僕の林檎は、あの夢の奥へ消えてしまった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 退廃的な林檎という果実の存在と『僕』との関係性の神秘が美しい作品でした。 林檎という禁断の果実がエデンの園の神話めいていて、まるで『僕』がアダムのよう。 滴る蜜は罪か罰か?その闇は何処か。…
2017/11/06 18:11 退会済み
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