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犯人は一晩だけ異世界チートになるようです  作者: たいよう はさん
破壊神ドカボンの異世界勧誘 − 記録係 : ナナセ
4/20

第2話 「破壊神と旅先を考える」

「にゃ、2話目に入ったな」


ドカボンの第六感が告げる。


あ、そんなこともわかるんだ

そんで結果は?


「PV0」


ピーヴイオー?


「そうじゃない。

 まだどんな神様も うちらのこと見てないぞ」


あ、はい


「にゃ、ヤス君の無能は守られた」


ドカボンそれ言うのやめて、マジで


「にゃ、まあさっさと異世界に降りようか。

 ぶらぶらしながら考えよ」


よいしょとどこからか小さなリュックを取り出す。

そしてそれを抱っこするように、前から肩にかけた。


あれ? それは何というか、能力的なんじゃないの?


「にゃあ?」


何もないところからリュックを取り出したそれ


「にゃ、今この世界は法則性が薄い空間。

 あってないような場所。

 ここなら加護とかなくても、簡単な準備ぐらいできるんだ」


そうなんだ

じゃあ俺も準備したい


「減点1」


は? 何がだよ


「俺口調は嫌い」


あ、ああそうだった


ヤスはぽりぽり頭をかく。


そのなんだ、減点?されていくの何か嫌だし、いっそのこと神の力でしばらく俺口調を封じてくれよ


「にゃ、縛神いるかな・・・」


ドカボンがポケーっとし出す。


他の神と交信中?


「あ、悪魔神が暇だって」


おい待て

悪魔だぁ?

却下だんなもん!


「うーん、めぼしい神は忙しかったりお出掛け中だ」


えーと、そういうアイテムは?


「にゃ、神の道具は奇跡の塊だからな、加護より難しくなるぞ」


これから行く世界にあったりはしないか?


ドカボンは目を見開いて遠くをジッと覗く。


「・・・にゃ、売ってた

 『言葉忘れ』っていう呪いの指輪がある」


呪いの・・・まあいいや

じゃあここで金を造ってあっちで買おうぜ


「にゃ、それは禁止されてる」


え? 駄目なの?


「あっちの貨幣価格を狂わせる恐れ」


あ、一応そういうこと考えてるんだ


「あっちで怪物でも倒して石を集めれば ―――― 」


・・・ん?

また交信か?


「にゃ、ギャンディーが転生者にチェンジくらって、今なら時間あるって。

 え? 何? そんなこと言う必要ないって?」


ぶつぶつと空に向かって会話している。


ふーん、何の神様だ


「にゃ、どうせ行ったら名乗る」


いったんリュックをどこかにしまう。

そしてドカボンがヤスのズボンをむんずと掴むと、


うおお!?


突如風景が変わった。


さっきの草原とは打って変わり、宮殿の内部に自分たちはいる。


「来たわね、転生者。

 ここは神、そう、我の間!」


声は玉座から響いた。

そこにはマントを羽織った女性が偉そうに頬杖をついて座っている。


きらきらと輝く長い金髪の先には少しウェーブがかかり、その下の素顔は不適に微笑んでいる。

マントの下に覗く肢体は豪華な金の刺繍が入った赤い紳士服で覆われ、足を組んで見下ろす姿勢に迫力が増していた。


「さあ、願いを言いなさい。

 その思い、この銭神たるキャンディー様が叶えてあげる!」


立ち上がりつつ片手でマントを翻しながら、銭神と名乗った女性は胸を張ると高らかにそう宣言するのだった。


「にゃ、チェンジで」


「こらクソ猫ぉ!

 心の傷を抉りに来たなら帰れえ! 帰れええ!」


銭の神様か

まあお金は必要っちゃ必要だけど、転生するならもっとこう、なあ?


うんうんと頷くぬいぐるみ。


「・・・ぐ、ぐう! お前らあああ!」


顔を真っ赤にして銭神がぷるぷる震え出す。


「にゃ、いつものくるぞ」


・・・え?


特に説明があったわけでもないため、何のことかわからない。


ドカボンが垂れた犬耳を塞いでいる。

ヤスもそれに習って急いで耳を塞いだ。


きょわわわわん


「うわあああぁああん!!

 どうせ我は銭しか集められない神様よ! 守銭奴よお!

 金を操るんじゃなくて銭を集めるだけよお!

 でもだからってチェンジとか・・・ここはキャバクラじゃないのよ!!

 うわあああん! ぎゃーーーんぎゃんぎゃんぎゃん!!」


銭神の後ろに山のように積まれた銭と称される様々な貨幣、それらが泣き声に共鳴して不協和音を響かせる。


「ぎゃーんぎゃんぎゃんぎゃん!

 ぎゃわーーーん!!」


泣き声が汚え!

ちょーうるせえ!!


「にゃ、これが銭神名物『ぎゃん泣き』」


「ぎゃーんぎゃんぎゃんぎゃん!!」


説明なんていらねえよ!

どうにかしろ!


「にゃ、いいか、うちの言うとおりにしゃべれよ」


ヤスはこくこく頷く。


「ぎゃわーーーんぎゃんぎゃん!!」


銭神様! 銭神様!

先の非礼をお詫び致します。どうかあなた様の力を貸して頂きたい!


「・・・え?」


響いていた音響が静まる。


銭神がずるずると鼻を啜る。


「・・・我の?」


はい! 是非!

私のこれからの旅にどうしても欠かせない加護なのです


「本当に?」


それはもう、銭を集めたくて仕方がない性分でして!


「本当に本当?」


・・・はい! う、嘘偽りありません!


「にゃ、言い淀んでんじゃねえぞこら」


小声で指摘される。


「・・・・・・!」


銭神の顔がぱああっと華やぐ。


うお、美人なだけに罪悪感が半端ねえど


「いいわ転生者! 我の加護『銭奏曲( ぜんそうきょく)』を汝に ―――― 」


「にゃ、ちょい待ちちょい待ち」


そこでドカボンが割って入る。


「何よ猫。今更こいつをあんたになんてやらないんだから!」


「そんなガチなのこいつの器に入らん。

 こいつに運命力は開花してない。体験者だ」


「はあ? ああ、あんたが最近始めたっていう」


「にゃ」


どうもこんにちは

挨拶が遅れました


「・・・そんなのに、我の加護を・・・・・・」


銭神が今度は渋り出す。


「にゃ、こいつはそのトップバッター。

 初めての奴が、始めにどうしてもお前をと聞かんでの。無理を承知で来たが、やっぱり駄目か」


「・・・どうしても(・・・・・)?」


がっくりと肩を落とし、のろのろと隣にやってくるドカボン。


「にゃ、帰るか」


「ちょ、待ちなさいよ!

 なかなか見所があるじゃないそいつ」


腕を組んで偉そうに述べる。

口角がぴくぴく上がり、(かしこ)まった顔を今更ながら保とうとしているが、嬉しそうなのが伝わってくる。

後ろの貨幣の山もしゃんしゃん鳴っていた。


隠し事できないのか


「にゃ」


待ってましたと言わんばかりに顔を上げるぬいぐるみ。


「あんた経由でいいなら、そいつに加護を与えたげる」


ピンと銭神の後ろの山から何かが弾き飛んでくる。


「ありがとうキャンディー」


ドカボンはそれを掌でパシンと受け止めた。


「にゃ、確かに受け取った」


そしてヤスのズボンを掴み、


「じゃあまたな」


銭神へと手を振る。


失礼しました


「猫!

 次の奴も始めにどうしても我をとお願いするなら、考えてあげなくもないわ!」


ドカボンはそれに親指を上げて応える。


「さんきゅー、ぎゃん(・・・)ディー」


ヤスはこのクソ猫ぉ!という怒鳴り声を聞きながら、草原へと戻ってきたのだった。


ぎゃん泣きのギャンディーか


銭神キャンディーのことはヤスの記憶に深く刻まれた。

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